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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B21D
管理番号 1058221
異議申立番号 異議2001-73223  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-11-28 
確定日 2002-04-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第3171696号「パイプ曲げ加工方法、及び、その方法の実施に用いるパイプベンダー」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3171696号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 【1】 手続きの経緯
特許出願 平成4年10月5日
特許権設定 平成13年3月23日
特許異議の申立て 平成13年11月28日
【2】 本件発明
本件請求項1及び請求項2に係る発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 対象パイプ(P)の管端部を外周側から把持するチャック(1)と、対象パイプ(P)の曲げ予定部に対する曲げ案内用の円弧状部(2m)を形成した曲げ型(2)と、対象パイプ(P)の曲げ予定部を前記曲げ型(2)との間で挟圧保持するクランプ台(3)と、そのクランプ台(3)のチャック側に位置して対象パイプ(P)の曲げ予定部を前記曲げ型(2)との間で挟圧保持するプレッシャ台(4)とを備えるパイプベンダーを用いたパイプ曲げ加工方法であって、 対象パイプ(P)の管端面に対して先端を接当作用させる小径の出退扞状具(36)を、前記チャック(1)の中心軸芯上でチャック先端よりも突出する作用状態とチャック奥部に引退する引退状態とに切り換え操作自在に設けておき、対象パイプ(P)の管芯方向に並ぶ複数の曲げ予定部のうち、チャック側の管端近傍に位置する最終の曲げ予定部以外の曲げ予定部については、前記出退扞状具(36)の引退状態でパイプ管端部を把持させた前記チャック(1)をその中心軸芯方向に移動させるとともに中心軸芯周りで回動させて、曲げ予定部を所要の回動姿勢で前記曲げ型(2)に対する適切位置に位置させ、それに続き、前記クランプ台(3)及び前記プレッシャ台(4)により曲げ予定部を挟圧保持した状態で、パイプ管端部把持状態の前記チャック(1)により対象パイプ(1)の管端部を押圧付勢しながら、前記クランプ台(3)を前記曲げ型(2)と一体的に前記プレッシャ台(4)からの離間側に回動させて、その曲げ予定部に曲げ加工を施し、これに対し、最終の曲げ予定部については、前記出退扞状具(36)の引退状態でパイプ管端部を把持させた前記チャック(1)をその中心軸芯方向に移動させるとともに中心軸芯周りで回動させて、最終の曲げ予定部を所要の回動姿勢で前記曲げ型(2)に対する適切位置に位置させた後、前記チャック(1)のパイプ管端部に対する把持を解除した状態で前記チャック(1)をその中心軸芯方向で前記プレッシャ台(4)との非干渉位置まで引退移動させ、それに続き、前記クランプ台(3)及び前記プレッシャ台(4)により最終の曲げ予定部を挟圧保持した状態で、作用状態に切り換えた前記出退扞状具(36)により対象パイプ(P)の管端を押圧付勢しながら、前記クランプ台(3)を前記曲げ型(2)と一体的に前記プレッシャ台(4)からの離間側に回動させて最終の曲げ予定部に曲げ加工を施すパイプ曲げ加工方法。
【請求項2】 請求項1に係るパイプ曲げ加工方法の実施に用いるパイプベンダーであって、対象パイプ(P)の管端部を外周側から把持するチャック(1)と、対象パイプ(P)の曲げ予定部に対する曲げ案内用の円弧状部(2m)を形成した曲げ型(2)と、対象パイプ(P)の曲げ予定部を前記曲げ型(2)との間で挟圧保持するクランプ台(3)と、そのクランプ台(3)のチャック側に位置して対象パイプ(P)の曲げ予定部を前記曲げ型(2)との間で挟圧保持するプレッシャ台(4)とを備える構成において、対象パイプ(P)の管端面に対して先端を接当作用させる小径の出退扞状具(36)を、前記チャック(1)の中心軸芯上でチャック先端よりも突出する作用状態とチャック奥部に引退する引退状態とに切り換え操作自在に設け、対象パイプ(P)の管芯方向に並ぶ複数の曲げ予定部に対する順次曲げ加工を自動的に実施するのに、それら複数の曲げ予定部のうち、チャック側の管端近傍に位置する最終の曲げ予定部以外の曲げ予定部については、前記出退扞状具(36)の引退状態でパイプ管端部を把持させた前記チャック(1)をその中心軸芯方向に移動させるとともに中心軸芯周りで回動させて、曲げ予定部を所要の回動姿勢で前記曲げ型(2)に対する適切位置に位置させ、それに続き、前記クランプ台(3)及び前記プレッシャ台(4)により曲げ予定部を挟圧保持した状態で、パイプ管端部把持状態の前記チャック(1)により対象パイプ(1)の管端部を押圧付勢しながら、前記クランプ台(3)を前記曲げ型(2)と一体的に前記プレッシャ台(4)からの離間側に回動させて、その曲げ予定部に曲げ加工を施し、これに対し、最終の曲げ予定部については、前記出退扞状具(36)の引退状態でパイプ管端部を把持させた前記チャック(1)をその中心軸芯方向に移動させるとともに中心軸芯周りで回動させて、最終の曲げ予定部を所要の回動姿勢で前記曲げ型(2)に対する適切位置に位置させた後、前記チャック(1)のパイプ管端部に対する把持を解除した状態で前記チャック(1)をその中心軸芯方向で前記プレッシャ台(4)との非干渉位置まで引退移動させ、それに続き、前記クランプ台(3)及び前記プレッシャ台(4)により最終の曲げ予定部を挟圧保持した状態で、作用状態に切り換えた前記出退扞状具(36)により対象パイプ(P)の管端を押圧付勢しながら、前記クランプ台(3)を前記曲げ型(2)と一体的に前記プレッシャ台(4)からの離間側に回動させて、最終の曲げ予定部に曲げ加工を施すように、前記チャック(1)、前記曲げ型(2)、前記クランプ台(3)、前記プレッシャ台(4)、並びに、前記出退扞状具(36)を自動操作する制御手段(17)を設けてあるパイプベンダー。」
【2】 特許異議の申立てについての判断
特許異議申立人は、本件請求項1及び請求項2に係る特許に対する特許異議の申立ての理由として、次のものを掲げている。
甲第1号証(特開平3-297517号公報)、甲第2号証(特開昭63-295024号公報)、甲第3号証(特開昭53-63260号公報)及び甲第4号証(特開昭62-97717号公報)を本件特許に係る出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物として提出して、本件請求項1及び請求項2に係る発明が、甲第1号証刊行物ないし甲第4号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであると主張している。
【3】 前記理由について検討する。
甲第1号証刊行物ないし甲第4号証刊行物には、それぞれ次の発明が記載されている。
1 甲第1号証刊行物
加工対象パイプを把持するチャックと曲げ型とクランプ台とプレッシャ台とを備えたパイプベンダーを用いてパイプの曲げ加工を行うにあたり、チャックを移動させると共に回動させて、曲げ予定部を所要の姿勢で曲げ型に対して適切位置に位置させ、パイプをチャックにより押圧付勢しながら曲げ加工すること。
2 甲第2号証刊行物
パイプ押具と曲げ型とクランプ台とプレッシャ台とを備えたパイプベンダーを用いてパイプの曲げ加工を行うにあたり、パイプ押具を軸方向に移動させ、パイプをパイプ押具により押圧付勢しながら曲げ加工すること。
3 甲第3号証刊行物
加工対象パイプと係合するものであって、チャックに把持された栓体と曲げ型とクランプ台とプレッシャ台とを備えたパイプベンダーを用いてパイプの曲げ加工を行うにあたり、チャックを移動させると共に回動させて、曲げ予定部を所要の姿勢で曲げ型に対して適切位置に位置させ、パイプを押圧付勢しながら曲げ加工すること。
4 甲第4号証刊行物
加工対象パイプを把持するチャックと曲げ型とクランプ台とプレッシャ台とを備えたパイプベンダーを用いてパイプの曲げ加工を行うにあたり、チャックを繰り返し往復動と共に回動させて、曲げ予定部を所要の姿勢で曲げ型に対して適切位置に位置させて曲げ加工し、最終の曲げ加工直前のストロークにおいてはプレッシャ台との非干渉位置にチャックを位置させること。
本件請求項1に係る発明について検討する。
本件請求項1に係る発明と甲第1号証刊行物に記載された発明とを比較すると、両者は、加工対象パイプを把持するチャックと曲げ型とクランプ台とプレッシャ台とを備えたパイプベンダーを用いてパイプの曲げ加工を行うにあたり、チャックを移動させると共に回動させて、曲げ予定部を所要の姿勢で曲げ型に対して適切位置に位置させ、パイプをチャックにより押圧付勢しながら曲げ加工する方法である点で一致し、少なくとも次の点において相違する。
相違点:本件請求項1に係る発明が、対象パイプの管端面に対して先端を接当作用させる小径の出退扞状具を、チャックの中心軸芯上でチャック先端よりも突出する作用状態とチャック奥部に引退する引退状態とに切り換え操作自在に設けておき、対象パイプの管芯方向に並ぶ複数の曲げ予定部のうち、チャック側の管端近傍に位置する最終の曲げ予定部以外の曲げ予定部については、出退扞状具の引退状態でパイプ管端部を把持させたチャックをその中心軸芯方向に移動させるとともに中心軸芯周りで回動させて、曲げ予定部を所要の回動姿勢で曲げ型に対する適切位置に位置させ、それに続き、クランプ台及びプレッシャ台により曲げ予定部を挟圧保持した状態で、パイプ管端部把持状態のチャックにより対象パイプの管端部を押圧付勢しながら、クランプ台を曲げ型と一体的にプレッシャ台からの離間側に回動させて、その曲げ予定部に曲げ加工を施し、これに対し、最終の曲げ予定部については、出退扞状具の引退状態でパイプ管端部を把持させたチャックをその中心軸芯方向に移動させるとともに中心軸芯周りで回動させて、最終の曲げ予定部を所要の回動姿勢で前記曲げ型に対する適切位置に位置させた後、チャックのパイプ管端部に対する把持を解除した状態でチャックをその中心軸芯方向でプレッシャ台との非干渉位置まで引退移動させ、それに続き、クランプ台及びプレッシャ台により最終の曲げ予定部を挟圧保持した状態で、作用状態に切り換えた出退扞状具により対象パイプの管端を押圧付勢しながら、クランプ台を曲げ型と一体的にプレッシャ台からの離間側に回動させて最終の曲げ予定部に曲げ加工を施すのに対して、甲第1号証刊行物に記載された発明が、この点を具備していない点。
そこで、前記相違点について検討する。
甲第2号証刊行物に記載された発明は、加工対象パイプ回動させるチャックが存在しないものを前提とするものであって、チャックとプレッシャ台との干渉という課題が存在しないのであるから、加工対象パイプを回動させるチャックが存在することを前提とする第1号証刊行物に係る発明に甲第2号証刊行物に記載された発明を適用することについての動機付けがないばかりでなく、適用したとしても、甲第2号証刊行物には、チャックそのものが存在しないことからして、甲第2号証刊行物に記載された発明におけるパイプ押具を甲第1号証刊行物に記載された発明に適用しても、チャックとの相対的な位置関係についても構成要件としている本件請求項1に係る発明における出退扞状具のごとき構成とはならない。
また、甲第3号証刊行物には、前記したごとく、チャックを具備し、パイプを押圧付勢しながら曲げ加工する点については記載がある。
しかし、甲第3号証刊行物に記載された発明におけるチャックは、加工対象パイプを把持するものではなく、栓体を常に把持しているものである。
また、甲第3号証刊行物に記載された発明における栓体は、チャックに対して常に所定の位置に固定されるもであり、状況に応じてチャックとの相対的位置が変化するものではない。
したがって、甲第3号証刊行物に記載された発明における栓体を甲第1号証刊行物に記載された発明に適用しても、チャックとの相対的な位置関係が状況に応じて変化することについても構成要件としている本件請求項1に係る発明における出退扞状具のごとき構成とはならない。
さらに、甲第4号証刊行物には、加工対象パイプを押圧付勢しながら曲げ加工することを前提とするものではないことからして、加工対象パイプを押圧付勢する手段については何ら記載がない。
したがって、このようなものを適用しても、加工対象パイプを押圧付勢する手段であるところの退扞状具を具備していることを前提としている前記相違点において掲げた本件請求項1に係る発明の構成のごとくすることは当業者が容易に想到することができたものではない。
そして、本件請求項1に係る発明は、前記した構成要件を具備していることにより、加工対象パイプを把持するチャックと曲げ型とクランプ台とプレッシャ台とを備えたパイプベンダーを用いてパイプの曲げ加工を行うにあたり、チャックを移動させると共に回動させて、曲げ予定部を所要の姿勢で曲げ型に対して適切位置に位置させ、パイプをチャックにより押圧付勢しながら曲げ加工することを前提とするもにおいて、「最終の曲げ予定部に対する曲げ加工においてチャックとプレッシャ台との接当干渉を回避できることにより、従前の如く対象パイプに製品としての必要長さ以上のものを使用することでチャックとプレッシャ台との接当干渉を回避するといった処置を不要にでき、これにより、曲げ加工の後に対象パイプにおける管端の不必要部分を切り捨てるといった後処理作業の必要頻度を大巾に低減できて、全体としてのパイプ加工能率を向上でき、又、パイプ材の浪費も少なくして経済性の面でも有利にし得る」という明細書記載の格別の作用効果を奏し所期の目的を達成できるものである。
よって、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証刊行物ないし甲第4号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
また、本件請求項2に係る発明は、少なくとも、本件請求項1に係る発明についての検討において記載したところの相違点と同じ点において甲第1号証刊行物に記載された発明と相違する。
したがって、本件請求項2に係る発明は、本件請求項1に係る発明と同様の理由により、甲第1号証刊行物ないし甲第4号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
【4】 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1及び請求項2に係る特許を取り消すことができない。
また、他に 本件請求項1及び請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-03-26 
出願番号 特願平4-265239
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B21D)
最終処分 維持  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 鈴木 孝幸
桐本 勲
登録日 2001-03-23 
登録番号 特許第3171696号(P3171696)
権利者 千代田工業株式会社
発明の名称 パイプ曲げ加工方法、及び、その方法の実施に用いるパイプベンダー  
代理人 北村 修一郎  

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