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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01C
管理番号 1058241
異議申立番号 異議2001-72941  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-10-23 
確定日 2002-04-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第3159963号「チップ抵抗器」の特許請求の範囲の第1項に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3159963号の特許請求の範囲記載の第1項に係る特許を維持する。 
理由 (1)手続きの経緯
本件特許第3159963号の特許請求の範囲の第1項に係る発明についての特許は、昭和62年10月22日に出願した特願昭62-267839号の一部を分割した特願平6-158706号の一部を更に分割した特願平8-124971号の一部を、更に平成10年12月28日に分割して新たな特許出願としたものであって、平成13年2月16日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議の申立てがなされたものである。
(2)本件発明の要旨
本件発明の要旨は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の第1項に記載された次のとおりのものであると認める。
「絶縁性セラミック基板の基板表面の両端部に一対の電極が形成され、前記一対の電極に接続されるように前記基板表面上に抵抗体が印刷形成され、前記抵抗体を覆うようにガラスコートが施されているチップ抵抗器であって、
前記絶縁性セラミック基板は、セラミック板の両面に縦横に設けられたスリットに沿って切断されて形成されたものからなり、
前記一対の電極はメタルグレーズ系の第1電極からなり、
前記絶縁性セラミック基板の基板裏面の両端部には前記第1電極と対向するように形成されたメタルグレーズ系の一対の第2電極が更に設けられ、
前記絶縁性セラミック基板の端面を覆い且つ前記第1電極と前記第2電極とを接続するように導電ペーストにより形成された一対の第3電極が設けられ、
前記第1電極,前記第2電極及び前記第3電極を覆うようにメッキ層が形成されており、
前記第3電極はその両端部がそれぞれ前記第1電極及び第2電極の表面上に一部重畳するように形成されており、
前記第3電極は、実装用の回路基板上に配置された状態で前記回路基板と前記第2電極との間に溶融半田が入り込む隙間が形成されるように前記第2電極の表面上に一部重畳しており、
前記第3電極はフェノール系樹脂にAgを混入したAg-レジン系の導電性ペーストにより形成されていることを特徴とするチップ抵抗器。(以下「本件発明」という)」
(3)特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人高橋一幸は、証拠として甲第1乃至第7号証を提出し、本件発明は、甲第1乃至第7号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して、特許を受けることができないものであると主張している。
(4)甲各号証記載の発明
甲第1号証として提出された、実願昭56-4597号(実開昭57-119501号)のマイクロフィルムには、チップ抵抗が第1乃至4図とともに開示されている。そしてその実用新案登録請求の範囲の(1)には、「(1)基板上に印刷抵抗体を設け、かっこの基板の抵抗体配置面側に上記基板とほぼ同じ大きさの保護板を固定して、基板と保護板とで抵抗体を挾んだ積層構造になし、この積層構造体の両端に上記抵抗体のリ-ド電極を形成したチップ抵抗。」と記載され、同3頁5行〜4頁9行には、「まず従来のチップ抵抗の構造は第1図,第2図に示すように、・・・(中略)・・・そして、その組立てはまずアルミナ基板1上に、バインダーとしてガラスフリットを使用した銀パラジウム系導電ペーストで内部電極2a〜2dを印刷形成し約800℃の温度で焼成する。次に、抵抗体材料のメタルグレーズペーストをスクリーン印刷で塗布し約800℃の温度で焼成して抵抗体3を形成する。その上にガラスを塗布し、保護膜4を焼成する。最後に、基板1の端面に銀パラジウムを塗布焼成して電極4aを形成し、内部電極2a〜2dと端面電極4a,4b上に順次ニッケルメッキ,ハンダメッキをしてリード電極を形成する。」と記載されている。
甲第2号証として提出された、実願昭59-82477号(実開昭60-194301号)のマイクロフィルムには、チップ抵抗基板等の基板の中間体が図面とともに開示されている。そしてその実用新案登録請求の範囲には、「複数個の基板が区画されるように溝を形成して成る基板の中間体において、前記中間体の一面にV字型溝を、該V字型溝に対向する他面にU字型溝を形成したことを特徴とする基板の中間体。」と記載されている。
甲第3号証として提出された、実願昭60-69632号(実開昭61-186209号)のマイクロフィルムには、抵抗器用の基板が図面とともに開示されている。そしてその実用新案登録請求の範囲には、「(1)周辺が方形に形成され且つその1角が切除された抵抗器用の基板であって、両面に格子状のスリットを、それぞれ対応するように形成したことを特徴とする抵抗器用の基板。」と記載されており、同1頁15行〜19行には、「一般に、チップ抵抗器を製造するための基板として周辺が方形に形成されたセラミック基板が用いられており、通常該セラミック基板の片面には格子状のスリットが形成されると共に、当該セラミック基板の一角がテーパ状に切除される。」と記載されている。
甲第4号証として提出された、実願昭58-80044号(実開昭59-185801号)のマイクロフィルムには、チップ抵抗が図面とともに開示されている。そしてその実用新案登録請求の範囲には、「略矩形の絶縁基板と、該絶縁基板の一面上に形成された薄膜抵抗並びに薄膜抵抗両端の薄膜電極と、上記薄膜電極に接続され且つ絶縁基板の側面部を覆う印刷・焼成された銀レジン系の側面電極と、該側面電極に施こされたメッキ電極とを備えたことを特徴とするチップ抵抗。」と記載されている。
甲第5号証として提出された、特開昭61-268001号公報の2頁左下欄5行〜17行には、「以上のようにして、チップ基体1の上面両端部に第1電極2,2が形成され、この第1電極2,2間の基体1上に抵抗皮膜3が形成され、この抵抗皮膜3の両端が第1電極2,2の一部に重ね合され、この抵抗皮膜3が合成樹脂保護膜4で被覆され、チップ基体1の両端面から第1電極2,2にかけて導電性合成樹脂塗料よりなる第2電極55が形成されたチップ抵抗器9が得られる。また、第8図に示すようにチップ状に分割された分割片の導電性合成樹脂塗料よりなる第2電極5上にさらにニッケル、スズまたはハンダの何れかまたは組合せた電気メッキを施して第3電極6を形成することもできる。」と記載されている。
甲第6号証として提出された、特開昭58-87704号公報の1頁左下欄13行〜18行には、「従来、この種の導電性ペイントには、導電粉としてAu,Ag,Pdなどの貴金属粉が用いられてきた。一般的には導電粉にAgを用い、これをフェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化型樹脂と共に、エチルカルビトールなどのような溶剤に混練したAgペイントが用いられ、」と記載されている。
甲第7号証として提出された、特開昭61-240602号公報の2頁右下欄15行〜16行には、「導電性ペイントがクッション作用をして、耐衝撃性が改善される。」と記載されている。
(5)対比・判断
本件発明と甲第1乃至7号証記載の発明とを対比すると、甲第1乃至7号証には、本件発明の必須の構成要件である、チップ抵抗器における「絶縁性セラミック基板は、セラミック板の両面に縦横に設けられたスリットに沿って切断されて形成されたものからな」るものであってそのチップ抵抗器の第3電極が「実装用の回路基板上に配置された状態で前記回路基板と前記第2電極との間に溶融半田が入り込む隙間が形成されるように前記第2電極の表面上に一部重畳して」いる点について記載も示唆もされていない。
そして本件発明では、上記の構成を採用することにより、「絶縁性セラミック基板は端縁部にスリットの一部を構成する傾斜部を備えているため、ほぼ直角になるような角部が端縁部に形成されることはなく、第3の電極を形成するための導電性ペーストが基板の角部で薄くなって電極部における抵抗値が大きくなるのを防止できる。
また本発明によれば、第3電極は、実装用の回路基板上に配置された状態で回路基板と第2電極との間に溶融半田が入り込む隙間が形成されるように第2電極の表面上に一部重畳しているため、この隙間にも溶融半田が回り込み、チップ抵抗器が小さくても充分な固着力が得られる。」という明細書記載(段落0022参照)の作用効果を奏するものである。
よって、本件発明が甲第1乃至第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(6)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-03-28 
出願番号 特願平10-372666
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 下野 和行今井 義男平塚 義三北村 明弘井上 信一  
特許庁審判長 内野 春喜
特許庁審判官 松本 邦夫
池渕 立
登録日 2001-02-16 
登録番号 特許第3159963号(P3159963)
権利者 北陸電気工業株式会社
発明の名称 チップ抵抗器  
代理人 飯田 凡雄  
代理人 西浦 嗣晴  

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