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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01C
管理番号 1058262
異議申立番号 異議2001-71489  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-05-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-05-21 
確定日 2002-04-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第3110677号「チップ抵抗器」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3110677号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由
1.手続の経緯
本件特許第3110677号の発明は、昭和62年10月22日に出願した特願昭62-267839号を分割し、平成6年7月11日に新たな特許出願(特願平6-158706号)としたものをさらに分割し、平成8年5月20日に出願(特願平8-124971号)したものであって、平成12年9月14日にその発明について特許権の設定登録(発明の数1)がなされた後、その特許について特許異議申立人高橋一幸、及びローム株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年2月12日に特許異議意見書が提出されたものである。

2.本件発明
本件特許第3110677号の発明の要旨は、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである(以下、「本件発明」という。)。

「絶縁性セラミック基板の基板表面の両端部に一対の電極が形成され、前記一対の電極に接続されるように前記基板表面上に抵抗体が印刷形成され、前記抵抗体を覆うようにガラスコートが施されているチップ抵抗器であって、
前記ガラスコートの上に全体的にレジンコートが施されており、
前記一対の電極はメタルグレーズ系の第1電極からなり、
前記絶縁性セラミック基板の基板裏面の両端部には前記第1電極と対向するように形成されたメタルグレーズ系の一対の第2電極が更に設けられ、
前記絶縁性セラミック基板の端面を覆い且つ前記第1電極と前記第2電極とを接続するように塗布された導電ペーストが硬化して形成された一対の第3電極が設けられ、
前記第1電極,前記第2電極及び前記第3電極を覆うようにメッキ層が形成されており、
前記第3電極はその両端部がそれぞれ前記第1電極及び第2電極の表面上に一部重畳するように形成されており、
前記第3電極は、実装用の回路基板上に配置された状態で前記回路基板と前記第2電極との間に隙間が形成されるように前記第2電極の表面上に一部重畳しており、
前記第3電極の形成に用いられる前記導電性ペーストとしてエポキシフェノール系樹脂にAgを混入したAg-レジン系の導電性ペーストが用いられていることを特徴とするチップ抵抗器。」

3.申立ての理由の概要
特許異議申立人高橋一幸は、証拠として、甲第1号証(実願昭56-4597号(実開昭57-119501号)のマイクロフィルム)、甲第2号証(特開昭61-245501号公報)、甲第3号証(実願昭58-80044号(実開昭59-185801号)のマイクロフィルム)、甲第4号証(特開昭61-268001号公報)、甲第5号証(特開昭62-86801号公報)、甲第6号証(特開昭58-87704号公報)、甲第7号証(特開昭61-240602号公報)、甲第8号証(「化学大辞典1」共立出版 1960年 p.968-969)、甲第9号証(「図解プラスチック用語辞典」 日刊工業新聞社 1981年 p.68)、及び、甲第10号証(「MES’87 第2回マイクロエレクトロニクスシンポジウム論文集」p.21-24)を提出し、本件発明は甲第1号証乃至甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明の特許は取り消されるべきものである旨、主張する。
また、特許異議申立人ローム株式会社は、証拠として、甲第1号証(特開昭62-86801号公報)、甲第2号証(実願昭56-4597号(実開昭57-119501号)のマイクロフィルム)、甲第3号証(特開昭61-268001号公報)、甲第4号証(特開昭57-184202号公報)、甲第5号証(特開昭58-219702号公報)、甲第6号証の1(特開昭54-132758号公報)、甲第6号証の2(特開昭58-101号公報)、甲第6号証の3(特開昭60-27104号公報)、及び、甲第7号証(特開昭60-22303号公報)を提出し、本件発明は甲第1号証乃至甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明の特許は取り消されるべきものである旨、主張する。

4.本件発明と取消しの理由で引用した刊行物に記載された発明との対比・ 判断
〔4-1〕取消しの理由で引用した刊行物に記載された発明
当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物1〜5には、それぞれ、次の発明が記載乃至開示されている。

刊行物1(特開昭61-240602号公報、異議申立人高橋一幸の甲第7号証)
絶縁セラミック基板1の基板表面の両端部に一対の電極5a、5aが形成され、前記一対の電極5a、5aに接続されるように前記基板表面上に抵抗体2が形成され、前記抵抗体を覆うように保護塗料膜15が施されているチップ抵抗器であって、
前記絶縁セラミック基板1の基板裏面の両端部には前記一対の電極5a、5aと対向するように形成された一対の電極5c、5cが更に設けられ、
前記絶縁セラミック基板1の端面を覆い且つ前記一対の電極5a、5aと一対の電極5c、5cとを接続するように塗布された導電性ペイント膜10、10が設けられ、
前記一対の電極5a、5a、前記一対の電極5c、5c及び前記導電性ペイント膜10、10を覆うように金属キャップ11が被せられ、
前記導電性ペイント膜10、10はその両端部がそれぞれ前記一対の電極5a、5a及び一対の電極5c、5cの表面上に一部重畳するように形成されており、
前記導電性ペイント膜10、10は、実装用の回路基板13上に配置された状態で前記回路基板13と前記一対の電極5c、5cとの間に隙間が形成されるように前記一対の電極5c、5cの表面上に一部重畳しているチップ抵抗器。(特に、第1図(c)を参照。)
ここで、上記導電性ペイント膜10がクッション作用をして、耐衝撃性が改善されることも記載されている(第2頁右下欄を参照。)。
また、導電性ペイント膜10、10の形成後金属キャップ11を被せる代わりに、Ni-Cu電極膜をスパッタや蒸着によって形成してもよいことも記載されている(第2頁左下欄を参照。)。

刊行物2(特開昭61-245501号公報、異議申立人高橋一幸の甲第2号証)
セラミック基板1上に抵抗膜2が印刷形成され、前記抵抗膜2を覆うようにガラス膜3が施され、前記ガラス膜3の上に全体的に樹脂モールド4が施された高電圧抵抗器。

刊行物3(特開昭61-268001号公報、異議申立人高橋一幸の甲第4号証、 異議申立人ローム株式会社の甲第3号証)
チップ基体1の表面の両端部に一対の第1電極2、2が形成され、前記一対の第1電極2、2に接続されるように前記基体1の表面上に抵抗皮膜3が印刷形成されたチップ抵抗器であって、
前記抵抗皮膜3がエポキシ樹脂系の耐熱性合成樹脂を塗布した保護膜4で被覆され、
前記一対の第1電極2、2はメタルグレーズよりなり、
前記チップ基体1の端面を覆い且つ前記第1電極2、2に接続するように塗布されたエポキシ樹脂系の導電性合成樹脂塗料よりなる一対の第2電極5、5が設けられ、
前記第1電極2、2、前記第2電極5、5を覆うようにメッキ層よりなる第3電極6、6が形成されているチップ抵抗器。

刊行物4(実願昭58-80044号(実開昭59-185801号)のマイクロフィルム 、異議申立人高橋一幸の甲第3号証)
絶縁基板3の基板表面の両端部に一対の薄膜電極1が形成され、前記一対の薄膜電極1に接続されるように前記基板表面上に薄膜抵抗2が形成されたチップ抵抗器であって、
前記薄膜抵抗2の薄膜電極1が形成されていない部分にレジン系のオーバコート5が施され、
前記絶縁基板3の端面を覆い、その両端部がそれぞれ前記薄膜電極1の表面上に一部重畳するように形成された銀レジン系ペーストの一対の側面電極4が設けられ、
前記薄膜電極1及び側面電極4を覆うようにメッキ電極層6が形成されているチップ抵抗器。

刊行物5(特開昭58-87704号公報、異議申立人高橋一幸の甲第6号証)
導電粉にAgを用いこれをフェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と共に溶剤に混練したAgペイントを使用した抵抗器の電極。

〔4-2〕対比
本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。刊行物1に記載された発明における「保護塗料膜」は、抵抗体を保護する保護コートである点で本件発明における「ガラスコート」と共通する。刊行物1に記載された発明における「一対の電極5a、5a」及び「一対の電極5c、5c」は、それぞれ基板表面、基板裏面に設けられている点で本件発明における「一対の第1電極」及び「一対の第2電極」に相当する。刊行物1に記載された発明における「導電性ペイント膜10」は、電極5a、5a(第1電極)及び電極5c、5c(第2電極)と一部重畳して両者を接続するように前記基板の端部を覆うように設けられる点で、本件発明における「第3電極」に相当する。さらに、刊行物1に記載された発明における「金属キャップ11」は、一対の電極5a、5a(第1電極)及び一対の電極5c、5c(第2電極)並びに前記導電性ペイント膜10、10(第3電極)を覆う「導電層部」である点で、本件発明における「メッキ層」と共通する。そうすると、本件発明と刊行物1に記載された発明とは、次の点で一致する。
絶縁性セラミック基板の基板表面の両端部に一対の電極が形成され、前記一対の電極に接続されるように前記基板表面上に抵抗体が形成され、前記抵抗体を覆うように保護コートが施されているチップ抵抗器であって、
前記一対の電極は第1電極からなり、
前記絶縁性セラミック基板の基板裏面の両端部には前記第1電極と対向するように形成された一対の第2電極が更に設けられ、
前記絶縁性セラミック基板の端面を覆い且つ前記第1電極と前記第2電極とを接続するように塗布された導電ペーストが硬化して形成された一対の第3電極が設けられ、
前記第1電極,前記第2電極及び前記第3電極を覆うように導電層部が形成されており、
前記第3電極はその両端部がそれぞれ前記第1電極及び第2電極の表面上に一部重畳するように形成されており、
前記第3電極は、実装用の回路基板上に配置された状態で前記回路基板と前記第2電極との間に隙間が形成されるように前記第2電極の表面上に一部重畳している、チップ抵抗器。
そして、次の各点で相違する。
(a) 第1電極、第2電極、及び第3電極を覆う基板端部の導電層部に関し、本件発明においてはメッキ層で形成するのに対し、刊行物1に記載された発明においては金属キャップを被せて形成される点。(以下、「相違点a」という。)
(b) 保護コートに関し、本件発明においては、抵抗体の上にガラスコート、さらにガラスコートの上に全体的にレジンコートが施されているものであるのに対し、刊行物1に記載された発明においては、単に保護塗料膜とあり、その構成、材料については特に示されていない点。(以下、「相違点b」という。)
(c) 第1電極、及び第2電極の材料に関し、本件発明においてはメタルグレーズ系のものより形成するものであるのに対し、刊行物1に記載された発明においては、特に言及されていない点。(以下、「相違点c」という。)
(d) 第3電極の材料に関し、本件発明においては、電極の形成に用いられる導電性ペーストとしてエポキシフェノール系樹脂にAgを混入したAg-レジン系のものであるのに対し、刊行物1に記載された発明においては特に示されていない点。(以下、「相違点d」という。)

〔4-3〕判断
そこで、上記各相違点について検討する。
相違点aに関し、刊行物1には、導電性ペイント膜10、10の形成後金属キャップ11を被せる代わりに、Ni-Cu電極膜をスパッタや蒸着によって形成してもよいことも記載されている(第2頁左下欄を参照。)が、金属キャップに替えてNi-Cu電極膜を形成しようとする際、該電極膜は刊行物1の第1図(c)における金属キャップと同様の形状で形成されるものとは考え難く、むしろ、刊行物1における第1図(b)の状態の導電性ペイント膜10、10を該電極膜で覆うと考える方が技術的にみて妥当であり、この場合、「導電性ペイント(第3電極)は、実装用の回路基板上に配置された状態で前記回路基板と一対の電極5c、5c(第2電極)との間に隙間が形成されるように一対の電極5c、5c(第2電極)の表面上に一部重畳しているチップ抵抗器」を得ることはできないものである。
一方、刊行物3、4には、チップ抵抗器において絶縁性セラミック基板の基板表面の第1電極とこの第1電極に接続され基板端面に形成される側面電極(刊行物3では第2電極5、刊行物4では側面電極4)を覆うようにメッキ層(刊行物3では第3電極6、刊行物4ではメッキ層電極6)を形成することが記載されているが、上記したように刊行物1に記載された発明において導電層部である金属キャップに替えてそのままの形状で電極膜として形成することができない以上、刊行物1に記載された発明において、基板端部の導電層部である金属キャップと同様の形状で刊行物3、4に記載された発明のようにメッキ層として形成することは当業者にとって容易になし得たものとすることはできないというべきである。
なお、刊行物4に記載された発明は、絶縁基板3の端面を覆い、その両端部がそれぞれ前記薄膜電極1(本件発明の「第1電極」に相当。)の表面上に一部重畳するように形成された銀レジン系ペーストの一対の側面電極4(本件発明の「第3電極」に相当。)が設けられるものであるが、本件発明のように絶縁基板表面の一対の薄膜電極(第1電極)に対向して絶縁基板裏面に一対の第2電極が設けられるものではないので、本件発明における「第3電極は、実装用の回路基板上に配置された状態で前記回路基板と一対の第2電極との間に隙間が形成されるように一対の第2電極の表面上に一部重畳している」という構成を開示乃至示唆するものではない。
そうすると、相違点bに関し、刊行物2に、セラミック基板上に形成された抵抗体を覆うようにガラス膜(ガラスコート)を施した上にさらに全体的に樹脂被膜(レジンコート)を施した高電圧抵抗器が記載されており、相違点cに関し、刊行物3に、チップ抵抗器の基板表面に形成された抵抗体に基板表面で接続される第1電極をメタルグレーズ系の導電材料で形成することが記載されており、相違点dに関し、刊行物5に、導電粉にAgを用いこれをフェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と共に溶剤に混練したAgペイントを抵抗器の電極として使用することが記載されているとしても、刊行物1に記載された発明を前提とし、これに刊行物2〜5に記載された発明を適用しても当業者が本件発明を容易に想到できたものとすることはできない。

したがって、本件発明は、取消しの理由で引用した上記刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5.特許異議申立てについて
〔5-1〕異議申立人の提出した甲各号証に記載された発明
(5-1-1)異議申立人高橋一幸の提出した甲各号証に記載された発明

甲第1号証(実願昭56-4597号(実開昭57-119501号)のマイクロフィルム )
絶縁性セラミック基板1の基板表面の両端部に一対の電極2c、2dが形成され、前記一対の電極2c、2dに接続されるように前記基板表面上に抵抗体3が印刷形成され、前記抵抗体3を覆うようにガラス保護膜4が施されているチップ抵抗器であって、
前記一対の電極2c、2dは銀パラジウムよりなり、
前記絶縁性セラミック基板1の基板裏面の両端部には前記電極2c、2dと対向するように形成された銀パラジウムよりなる一対の電極2a、2bがさらに設けられ、
前記絶縁性セラミック基板1の端面を覆い且つ前記一対の電極2c、2dと前記一対の電極2a、2bとを接続するよう塗布された銀パラジウムよりなる一対の電極5a、5bが設けられ、
前記一対の電極2c、2dと前記一対の電極2a、2b及び一対の電極5a、5bを覆うようにニッケルメッキ層6a、6b、ハンダメッキ層7a、7bが形成されているチップ抵抗器。(特に、第2図)

甲第2号証(特開昭61-245501号公報、取消しの理由で引用した刊行物2) 上記〔4-1〕において示した刊行物2の発明が記載されている。

甲第3号証(実願昭58-80044号(実開昭59-185801号)のマイクロフィル ム、取消しの理由で引用した刊行物4)
上記〔4-1〕において示した刊行物4の発明が記載されている。

甲第4号証(特開昭61-268001号公報、取消しの理由で引用した刊行物3)
上記〔4-1〕において示した刊行物3の発明が記載されている。

甲第5号証(特開昭62-86801号公報)
絶縁性セラミック基板1の基板表面の両端部に一対の電極膜2、2が形成され、前記一対の電極膜2、2に接続されるように前記基板表面上に導体パターン(抵抗体)3が印刷形成され、前記導体パターン(抵抗体)3を覆うようにガラス層4が施されているチップ抵抗器であって、
前記一対の電極膜2、2は銀・パラジウム合金を主成分としたものであり、
前記絶縁性セラミック基板1の基板裏面の両端部には前記一対の電極膜2、2と対向するように形成された銀・パラジウム合金を主成分とした一対の裏面電極膜2'、2'がさらに設けられ、

甲第6号証(特開昭58-87704号公報、取消しの理由で引用した刊行物5)
上記〔4-1〕において示した刊行物5の発明が記載されている。

甲第7号証(特開昭61-240602号公報、取消しの理由で引用した刊行物1)
上記〔4-1〕において示した刊行物1の発明が記載されている。

甲第8号証(「化学大辞典1」共立出版 1960年 p.968-969)
エポキシ樹脂の硬化剤としてアミン類、有機酸および酸無水物が一般に用いられ、そのほかフェノール樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂なども用いられること。
エポキシ樹脂をワニスとして使用するには、1) エポキシ樹脂溶液に硬化剤としてアミン類やポリアミドを添加して室温または低温焼き付けにより硬化させる。2) 樹脂溶液にフェノール樹脂またはアミノ樹脂を混ぜたものを高温焼き付けで硬化させる 方法があること。

甲第9号証(「図解プラスチック用語辞典」 日刊工業新聞社 1981年 p.68) 高温焼付エポキシ樹脂塗料とは、フェノール樹脂やアミノ樹脂を橋かけ剤に用いる塗料で、エポキシ-フェノール樹脂塗料とエポキシ-アミノ樹脂塗料があること。

甲第10号証(「MES’87 第2回マイクロエレクトロニクスシンポジウ ム論文集」p.21-24)
ICダイボンドについて、次の記載がある。
・「導電性接着剤(エポキシ樹脂を主体とした銀の配合剤、以後 Ag樹脂ペース トと呼ぶ)を用いる方法は、共晶法に比べ価格の大幅な低減が可能であること、 ハンダ法に比べ耐熱性に優れていることにより、急速に拡大してきた。」(p. 21)
・「代表的なエポキシ樹脂、硬化剤、希釈剤を選択し、硬化物性、ボイド、チ ップの反りなどにどの様な影響が見られるか実験、検討した。これらの組合せ と硬化条件によりAg樹脂ペーストの硬化物性が大きく異なり・・・」(p.21)
・硬化物性について「樹脂に関しては、ビスフェノール系がノボラック系より、 硬化剤に関してはフェノール系がアミド系より接着強度が強く、比抵抗は小さ いという結果が得られた。」(p.22)

(5-1-2)異議申立人ローム株式会社の提出した甲各号証に記載された発明
甲第1号証(特開昭62-86801号公報、異議申立人高橋一幸の甲第5号証)
上記(5-1-1)において示した甲第5号証の発明が記載されている。

甲第2号証(実願昭56-4597号(実開昭57-119501号)のマイクロフィルム 、異議申立人高橋一幸の甲第1号証)
上記(5-1-1)において示した甲第1号証の発明が記載されている。

甲第3号証(特開昭61-268001号公報、異議申立人高橋一幸の甲第4号証 、取消しの理由で引用した刊行物3)
上記〔4-1〕において示した刊行物3の発明が記載されている。

甲第4号証(特開昭57-184202号公報)
基板5の表面及び裏面の両端部にそれぞれ一対の電極6が形成され、前記一対の電極6に接続されるように前記基板5の表面及び裏面上にそれぞれ正の温度係数を有する抵抗体10、及び負の温度係数を有する抵抗体11が形成され、前記抵抗体10、11を覆うようにガラスコート9が施されているチップ抵抗器であって、
前記基板5の端面を覆い且つ前記基板表面及び裏面の一対の電極6をそれぞれ接続する導電性の樹脂4、4'が設けられ、
前記導電性の樹脂4、4'は、その両端部がそれぞれ前記一対の電極6の表面上に一部重畳するように形成されており、
前記導電性の樹脂4、4'は実装用の回路基板1上に配置された状態で前記回路基板1と基板5裏面の前記一対の電極6との間に隙間が形成されるように前記一対の電極6の表面上に一部重畳しているチップ抵抗器。(特に、第3図)

甲第5号証(特開昭58-219702号公報)
セラミック基板1の基板表面の両端部に一対の電極2が形成され、前記一対の電極2に接続されるように前記基板1表面上に抵抗体3が印刷形成されたチップ抵抗器であって、
前記セラミック基板1の端面を覆い且つ前記一対の電極2に接続するように塗布された一対の端部電極2'が設けられ、
前記端部電極2'は、その端部が前記一対の電極2の表面上に一部重畳するように形成されており、
前記端部電極2'は、実装用の印刷配線板4上に配置された状態で前記印刷配線板4と前記一対の電極2との間に隙間が形成されるように一部重畳しているチップ抵抗器。(特に、第3図)

甲第6号証の1(特開昭54-132758号公報)
甲第6号証の2(特開昭58- 101号公報)
甲第6号証の3(特開昭60- 27104号公報)
絶縁基板の表面の両端に一対の電極が形成され、前記一対の電極に接続されるように前記基板の表面上に抵抗体が印刷形成されているチップ抵抗器において、前記抵抗体を覆うガラスコートを形成し、その後、該ガラスコートの上から前記抵抗体をレーザトリミングし、トリミング跡を保護膜で覆うこと。

甲第7号証(特開昭60-22303号公報)
絶縁基板の表面の両端に一対の電極が形成され、前記一対の電極に接続されるように前記基板の表面上に抵抗体が印刷形成されているチップ抵抗器において、前記基板の端面に導電ペーストを塗布することにより側面電極を形成すること。

〔5-2〕対比・判断
(5-2-1)本件発明と異議申立人高橋一幸の提出した甲各号証に記載された発 明との対比・判断
本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比する。甲第1号証に記載された発明における、「一対の電極2c、2d」、「一対の電極2a、2b」、及び「一対の電極5a、5b」は、それぞれ、本件発明における「第1電極」、「第2電極」、及び「第3電極」に相当する。また、甲第1号証に記載された発明における、「ガラス保護膜」、「ニッケルメッキ層6a、6b、ハンダメッキ層7a、7b」は、それぞれ、本件発明における「ガラスコート」、「メッキ層」のことである。そうすると、本件発明と甲第1号証に記載された発明とは、次の点で一致する。
絶縁性セラミック基板の基板表面の両端部に一対の電極が形成され、前記一対の電極に接続されるように前記基板表面上に抵抗体が印刷形成され、前記抵抗体を覆うようにガラスコートが施されているチップ抵抗器であって、
前記一対の電極は第1電極からなり、
前記絶縁性セラミック基板の基板裏面の両端部には前記第1電極と対向するように形成された一対の第2電極が更に設けられ、
前記絶縁性セラミック基板の端面を覆い且つ前記第1電極と前記第2電極とを接続するように形成された一対の第3電極が設けられ、
前記第1電極,前記第2電極及び前記第3電極を覆うようにメッキ層が形成されているチップ抵抗器。
そして、次の各点で相違する。
(a) 本件発明は、ガラスコートの上に全体的にレジンコートが施されるものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明においてはガラスコートの上には何らコーティングが施されるものではない点。(以下、「相違点a」という。)
(b) 第1電極及び第2電極の材料に関し、本件発明においてはメタルグレーズ系のものを用いるのに対し、甲第1号証に記載された発明においては銀パラジウムを用いるものである点。(以下、「相違点b」という。)
(c) 第3電極の形成に関し、本件発明においては塗布された導電ペーストを硬化して形成するものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明においては銀パラジウムで形成するものである点。(以下、「相違点c」という。)
(d) 第3電極に関し、本件発明においては第3電極はその両端部がそれぞれ前記第1電極及び第2電極の表面上に一部重畳するように形成され、実装用の回路基板上に配置された状態で前記回路基板と前記第2電極との間に隙間が形成されるように前記第2電極の表面上に一部重畳しているものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明においては、このことについて何ら示されていない点。(以下、「相違点d」という。)
(e) 第3電極の材料に関し、本件発明においては導電性ペーストとしてエポキシフェノール系樹脂にAgを混入したAg-レジン系の導電性ペーストが用いられるものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明においてはこのことについて何ら示されていない点。(以下、「相違点e」という。)

そこで、上記相違点について検討する。
相違点dに関して、甲第7号証(特開昭61-240602号公報、取消しの理由で引用した刊行物1)には、上記〔4-1〕において示した刊行物1の発明が記載されている。上記〔4-3〕において示したように、甲第7号証には、導電性ペイント膜10、10の形成後金属キャップ11を被せる代わりに、Ni-Cu電極膜をスパッタや蒸着によって形成してもよいことも記載されている(第2頁左下欄を参照。)が、金属キャップに替えてNi-Cu電極膜を形成しようとする際、該電極膜は甲第7号証の第1図(c)における金属キャップと同様の形状で形成されるものとは考え難く、むしろ、甲第7号証における第1図(b)の状態の導電性ペイント膜10、10を該電極膜で覆うと考える方が技術的にみて妥当であり、この場合、「導電性ペイント(第3電極)は、実装用の回路基板上に配置された状態で前記回路基板と一対の電極5c、5c(第2電極)との間に隙間が形成されるように一対の電極5c、5c(第2電極)の表面上に一部重畳しているチップ抵抗器」を得ることはできないものである。
なお、甲第3、4号証(取消しの理由で引用した刊行物4、3)には、チップ抵抗器において絶縁性セラミック基板の基板表面の第1電極とこの第1電極に接続され基板端面に形成される側面電極(甲第3号証では側面電極4、甲第4号証では第2電極5)を覆うようにメッキ層(甲第3号証ではメッキ層電極6、甲第4号証では第3電極6)を形成することが記載されているが、本件発明のように絶縁基板表面の一対の第1電極に対向して絶縁基板裏面に一対の第2電極が設けられるものではないので、本件発明における「第3電極は、実装用の回路基板上に配置された状態で前記回路基板と一対の第2電極との間に隙間が形成されるように一対の第2電極の表面上に一部重畳している」という構成を開示乃至示唆するものではない。
そうすると、相違点aに関し、甲第2号証(取消しの理由で引用した刊行物2)に、セラミック基板上に印刷形成された抵抗膜を覆うようにガラス膜が施され前記ガラス膜の上に全体的に樹脂モールドが施された高電圧抵抗器が記載され、相違点bに関し、甲第4号証(取消しの理由で引用した刊行物3)に、一対の第1電極2、2をメタルグレーズより形成したチップ抵抗器が記載され、相違点cに関し、甲第3、4号証(取消しの理由で引用した刊行物4、3)にセラミック基板の端面に導電性ペーストを塗布硬化して側面電極を形成したチップ抵抗器が記載されているものの、甲第1号証に記載された発明を前提とし、これに甲第2〜5号証に記載された発明を適用しても、相違点dに関する本件発明における「第3電極は、実装用の回路基板上に配置された状態で前記回路基板と一対の第2電極との間に隙間が形成されるように一対の第2電極の表面上に一部重畳している」という構成を導くことはできない。
また、相違点eに関し、甲第6号証(取消しの理由で引用した刊行物5)には導電粉にAgを用いこれをフェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と共に溶剤に混練したAgペイントを使用したものを抵抗器の電極に使用することが記載されているが、これはフェノール樹脂、エポキシ樹脂をそれぞれ単独で用いる導電ペイントであると解されるので、本件発明における「エポキシフェノール系樹脂」とは異なることは明らかであり、このペイントをチップ抵抗器の側面に形成される第3電極に用いることを示唆するものでもない。甲第8号証にエポキシ樹脂の硬化剤としてフェノール樹脂を用いること、及びエポキシ樹脂ワニスとしてエポキシ樹脂溶液にフェノール樹脂を混ぜたものを用いることが、甲第9号証にエポキシ-フェノール樹脂塗料が、それぞれ記載されているが、これらはいずれも樹脂一般に関する記述に過ぎず、チップ抵抗器の側面に形成される第3電極に用いることを示していない。甲第10号証には導電性接着剤に用いるエポキシ樹脂の硬化剤としてフェノール系のものを用いることが記載されているが、チップ抵抗器の側面に形成される第3電極に用いることを示していない。したがって、甲第1号証に記載された発明に甲第6、8〜10号証に記載された発明を適用しても、相違点eに関する本件発明における「第3電極の形成に用いられる前記導電性ペーストとしてエポキシフェノール系樹脂にAgを混入したAg-レジン系の導電性ペーストが用いられている」という構成を導くことはできない。

したがって、本件発明は、異議申立人高橋一幸の提出した甲第1〜10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(5-2-2)本件発明と異議申立人ローム株式会社の提出した甲各号証との対比 ・判断
本件発明と甲第2号証(異議申立人高橋一幸の甲第1号証)に記載された発明とを対比する。上記(5-2-1)で示したように、甲第2号証に記載された発明における「一対の電極2c、2d」、「一対の電極2a、2b」、及び「一対の電極5a、5b」は、それぞれ、本件発明における「第1電極」、「第2電極」、及び「第3電極」に相当する。また、甲第2号証に記載された発明における、「ガラス保護膜」、「ニッケルメッキ層6a、6b、ハンダメッキ層7a、7b」は、それぞれ、本件発明における「ガラスコート」、「メッキ層」のことである。
そうすると、本件発明と甲第1、2号証に記載された発明とは、次の点で一致する。
絶縁性セラミック基板の基板表面の両端部に一対の電極が形成され、前記一対の電極に接続されるように前記基板表面上に抵抗体が印刷形成され、前記抵抗体を覆うようにガラスコートが施されているチップ抵抗器であって、
前記一対の電極は第1電極からなり、
前記絶縁性セラミック基板の基板裏面の両端部には前記第1電極と対向するように形成された一対の第2電極が更に設けられ、
前記絶縁性セラミック基板の端面を覆い且つ前記第1電極と前記第2電極とを接続するように形成された一対の第3電極が設けられ、
前記第1電極,前記第2電極及び前記第3電極を覆うようにメッキ層が形成されているチップ抵抗器。
そして、次の各点で相違する。
(a) 本件発明は、ガラスコートの上に全体的にレジンコートが施されるものであるのに対し、甲第1、2号証に記載された発明においてはガラスコートの上のコーティングについて示されていない点。(以下、「相違点a」という。)
(b) 第1電極及び第2電極の材料に関し、本件発明においてはメタルグレーズ系のものを用いるのに対し、甲第1、2号証に記載された発明においては銀パラジウム合金を用いるものである点。(以下、「相違点b」という。)
(c) 第3電極の形成に関し、本件発明においては塗布された導電ペーストを硬化して形成するものであるのに対し、甲第1、2号証に記載された発明においては特に示されていない点。(以下、「相違点c」という。)
(d) 第3電極に関し、本件発明においては第3電極はその両端部がそれぞれ前記第1電極及び第2電極の表面上に一部重畳するように形成され、実装用の回路基板上に配置された状態で前記回路基板と前記第2電極との間に隙間が形成されるように前記第2電極の表面上に一部重畳しているものであるのに対し、甲第1、2号証に記載された発明においては、このことについて何ら示されていない点。(以下、「相違点d」という。)
(e) 第3電極の材料に関し、本件発明においては導電性ペーストとしてエポキシフェノール系樹脂にAgを混入したAg-レジン系の導電性ペーストが用いられるものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明においてはこのことについて何ら示されていない点。(以下、「相違点e」という。)

そこで、上記相違点について検討する。
相違点dに関し、甲第4号証には、基板端面に形成される導電性の樹脂4、4'(本件発明の「一対の第3電極」に相当。)は、その両端部がそれぞれ基板表面の一対の電極6(本件発明の「一対の第1電極」に相当。)、及び基板裏面の一対の電極6の表面上に一部重畳するように形成されており、実装用の回路基板1上に配置された状態で前記回路基板1と基板5裏面の前記一対の電極6との間に隙間が形成されるように基板裏面の一対の電極6の表面上に一部重畳しているチップ抵抗器が記載されているが、このチップ抵抗器は基板の裏面にも負の温度係数を有する抵抗体が形成されるものであり、各電極は基板表裏面にそれぞれ形成された正及び負の温度係数を有する抵抗体10、11に接続されるもので、基板裏面の一対の電極6は本件発明の「一対の第2電極」に相当するとはいえないものであり(むしろ、「第1の電極」という方が適切である)、甲第1号証に記載された発明とは対象が異なるものである。甲第5号証には、端部電極2'(本件発明の「一対の第3電極」に相当。)は、その端部が基板表面の一対の電極2(本件発明の「一対の第1電極」に相当。)の表面上に一部重畳するように形成されており、実装用の印刷配線板4(本件発明の「回路基板」に相当。)上に配置された状態で前記印刷配線板4と前記一対の電極2(一対の第1電極)との間に隙間が形成されるように一部重畳しているチップ抵抗器が記載されているが、このチップ抵抗器は基板裏面の一対の電極(一対の第2電極)を備えるものではなく、抵抗体3が形成される基板表面側を回路基板に向けて実装する点で甲第1号証に記載された発明とは異なるものである。甲第3号証には、基体の端面を覆い基体表面の一対の第1電極に接続するように一対の第2電極(本件発明の「第3電極」に相当。)を設け、第2電極が第1電極に一部重畳しているようにも見えるが、基体表面の一対の第1電極に対向するように基体裏面に一対の電極(一対の第2電極)を設けるものではない。甲第6号証の3、及び甲第7号証に記載された発明は、基板両端面に側面電極(第3電極)を形成する場合、基板表面の一対の第1電極に一部重畳するように形成されるとしても、基板表面の一対の第1電極に対向するように基体裏面に一対の電極(一対の第2電極)を設けるものではない。
したがって、甲第1、2号証に記載された発明に甲第3、4、5、6の3、及び7号証に記載された発明を適用しても、相違点dに係る本件発明における「第3電極はその両端部がそれぞれ前記第1電極及び第2電極の表面上に一部重畳するように形成され、実装用の回路基板上に配置された状態で前記回路基板と前記第2電極との間に隙間が形成されるように前記第2電極の表面上に一部重畳している」という構成を導き出すことはできない。
また、相違点eに関し、甲第3号証には、基体の端面を覆い基体表面の一対の第1電極に接続するようにエポキシ樹脂系導電塗料を塗布して一対の第2電極(本件発明の「第3電極」に相当。)を形成することが記載されているが、このエポキシ樹脂系導電塗料は本件発明における「エポキシフェノール系樹脂」とは異なることは明らかであり、基体表面の一対の第1電極に対向するように基体裏面に一対の電極(一対の第2電極)を設けるものではない。したがって、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証に記載された発明を適用しても、相違点eに関する本件発明における「第3電極の形成に用いられる導電性ペーストとしてエポキシフェノール系樹脂にAgを混入したAg-レジン系の導電性ペーストが用いられている」という構成を導くことはできない。
そうすると、相違点aに関し、甲第3号証に、抵抗体にトリミングを行った後該抵抗体をエポキシ樹脂系の耐熱性合成樹脂塗料による保護膜で覆うことが記載され、甲第6号証の1〜3に、チップ抵抗器の抵抗体にトリミングを行った後該抵抗体を保護膜で覆うことが記載され、相違点bに関し、甲第3号証(取消しの理由で引用した刊行物3)に、一対の第1電極2、2をメタルグレーズより形成したチップ抵抗器が記載され、相違点cに関し、甲第3号証(取消しの理由で引用した刊行物3)にセラミック基板の端面に導電性ペーストを塗布硬化して第2電極(本件発明の「第3電極」に相当)を形成したチップ抵抗器が記載されているものの、甲第1、2号証に記載された発明を前提とし、これに甲第3〜7号証に記載された発明を適用しても、相違点dに関する本件発明における「第3電極は、実装用の回路基板上に配置された状態で前記回路基板と一対の第2電極との間に隙間が形成されるように一対の第2電極の表面上に一部重畳している」という構成、及び、相違点eに関する本件発明における「第3電極の形成に用いられる導電性ペーストとしてエポキシフェノール系樹脂にAgを混入したAg-レジン系の導電性ペーストが用いられている」という構成を導くことはできない。

したがって、本件発明は、異議申立人ローム株式会社の提出した甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

〔5-3〕むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-04-01 
出願番号 特願平8-124971
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 下野 和行今井 義男平塚 義三北村 明弘井上 信一  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 治田 義孝
吉村 宅衛
登録日 2000-09-14 
登録番号 特許第3110677号(P3110677)
権利者 北陸電気工業株式会社
発明の名称 チップ抵抗器  
代理人 石井 暁夫  
代理人 西 博幸  
代理人 東野 正  
代理人 西浦 ▲嗣▼晴  
代理人 飯田 凡雄  

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