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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1058293
異議申立番号 異議2001-70882  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-12-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-03-19 
確定日 2002-04-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第3089708号「半導体装置の製造方法」の請求項1〜3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3089708号の請求項1〜3に係る特許を維持する。 
理由 [1]本件発明
本件特許第3089708号(平成3年6月6日出願、平成12年7月21日設定登録)の請求項1〜3に係る発明(以下、「本件発明1〜3」という。)は、本件特許に係る明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】半導体基板上にBPSG膜を形成する工程と、このBPSG膜を熱処理し流動させて平坦化したのち直ちに前記半導体基板を温水中に浸漬するかまたは飽和水蒸気中にさらすことにより前記BPSG膜中のボロン(B)とリン(P)の濃度を低下させる工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】半導体基板上にBPSG膜を形成したのち熱処理し流動させて平坦化する工程と、このBPSG膜をパターニングしコンタクト孔を形成する工程と、このコンタクト孔が形成されたBPSG膜を有する前記半導体基板を温水中に浸漬するかまたは飽和水蒸気中にさらすことにより前記BPSG膜中のボロン(B)とリン(P)の濃度を低下させる工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】半導体基板上にBPSG膜を形成する工程と、このBPSG膜上にフォトレジスト膜を形成したのちパターニングし開口部を形成する工程と、この開口部が形成されたフォトレジスト膜を有する前記半導体基板を温水中に浸漬するかまたは飽和水蒸気中にさらすことにより開口部内の前記BPSG膜のボロン(B)とリン(P)の濃度を低下させる工程と、前記フォトレジスト膜を除去したのち前記BPSG膜を熱処理し流動させる工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」

[2]特許異議の申立ての概要
異議申立人木村和夫は、次の甲第1、2号証を提出して、本件発明1〜3は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜3についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定に基づいて取り消すべき旨主張している。

甲第1号証:特開平2-181952号公報
甲第2号証:特公平5-39331号公報

[3]提出された証拠の記載事項
(1)甲第1号証
甲第1号証の特開平2-181952号公報には、基体上の無機膜をリフローさせる平坦化方法に関する発明が第1、2図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「リフロー膜としてBPSG膜を用いる場合、アンモニア過水処理・・・等の前処理が・・・行われる。
ところが、このような処理を行うと、BPSG膜がリフローしにくくなることがある。特に、洗浄効果を高めるため、処理液の液温を或る程度上昇させて前処理を行う場合に、この問題が顕著である。
・・・
上記問題が生じる原理は明らかではないが、前処理によりリフロー膜の組成が変化するためと考えられる。例えば、BPSG膜の場合、前処理により、表面層のホウ素及びリンの不純物が処理液中に溶出することにより、表面層の不純物濃度が低下し、これにより融点が上昇して、リフローしなくなるためと推定される。」(2頁左上欄15行〜右上欄末行)
「本実施例におけるこの無機膜形成工程Iでは、第2図(a)に示すように、・・・基体1上に、BPSGを堆積して、不純物含有無機膜(BPSG膜)2とした。・・・この無機膜2を段差を緩和する平坦化用のリフロー膜として用いるのである。
次に本実施例では、・・・コンタクトホールホールを形成するための、レジストパターニング工程IIを行う。・・・第2図(d)に示すように、・・・コンタクトホール4を形成する。その後、レジスト除去工程IIaを行って、残余のレジストを除去し、第2図(e)のようにする。
ここで、レジスト除去工程IIaにおいては、・・・必ずしもレジストを充分に・・・除去されないので、前処理工程IIIとして、洗浄を行う。
本実施例において、洗浄のための前処理としては、アンモニア過水処理・・・等の処理を行うことができ、・・・。例えば、具体的には、60℃のアンモニア過水処理を行った後、常温の塩酸過水処理で、洗浄を行うようにすることができる。・・・
次に、無機膜2の表面除去工程IVを行う。本実施例では、無機膜であるBPSG膜を、・・・僅かにエッチング・・・することにより、該無機膜2の表面層のみを除去する。
・・・
次に、リフロー工程Vを行う。具体的には、拡散炉に入れて加熱することにより無機膜2をリフローさせた。・・・
即ち、上記表面除去工程IVで無機膜2の表面が除去されているので、前処理において、高温にした処理液により洗浄されることにより無機膜2の表面が変質し、リフローしにくくなっていた場合でも、該表面層が除去されたため、それによる問題が生じることなく、無処理のリフローを行うときと同様にして、BPSGのリフロー温度である約900℃でリフローが達成できるのである。」(2頁右下欄末行〜右下欄2行)

(2)甲第2号証
甲第2号証の特公平5-39331号公報には、コンタクト孔の形成後の熱処理による層間絶縁膜(例えばBPSG膜)からコンタクト孔内への不純物のドーピングを防止するための半導体装置の製造方法に関する発明が、第1図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「半導体基板の全面にシリコン酸化膜を形成し、このシリコン酸化膜上に不純物を高濃度に含有するシリカガラス膜を堆積形成する。続いて、第1の熱処理を行なうとともに上記シリカガラス膜上に第1の絶縁膜を形成し、・・・第1の絶縁膜、シリカガラス膜及びシリコン酸化膜に電極取出し用のコンタクト孔を開孔する。次に、全面に第2の絶縁膜を堆積形成し、異方性エッチングを行なってこの第2の絶縁膜を除去することにより上記コンタクト孔の側壁に露出された上記シリカガラス膜の表面を第2の絶縁膜で被覆する。そして、第2の熱処理を行うようにしている。」(2頁右欄13〜26行)
「不純物が高濃度に含有されたシリカガラス膜をこの膜の下面に形成したシリコン酸化膜、上面に形成した第1の絶縁膜、及びコンタクト孔の側壁部に残存させた第2の絶縁膜で覆った状態で熱処理(第2の熱処理)するので、上記シリカガラス膜中に含有された不純物がコンタクト孔内の拡散層に導入されることがなく、不純物の導入によるコンタクト特性の変動を防止できる。」(2頁右欄28〜36行)
「このような製造方法によれば、コンタクト孔24の形成後に800℃以上の高い温度で熱処理を行っても、BPSG膜22はCVD・SiO221、第1の絶縁膜23、及び第2の絶縁膜25で覆われているので、このBPSG膜22からコンタクト孔24内の拡散層20中に不純物が導入されるのを防止できる。従って、コンタクト孔24内の拡散層20に不純物が導入されることによるコンタクト抵抗の上昇を防止して安定なコントラクト特性が得られる。」(3頁右欄7〜16行)

[4]対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された洗浄のための前処理工程は、アンモニア過水処理等を行い、そのとき液温を上昇(60℃)させて処理することが行われ、しかも、甲第1号証には、この前処理により、BPSG膜の表面層のホウ素及びリンの不純物が処理液中に溶出し、表面層の不純物濃度が低下して、融点が上昇し、リフローしにくくなることが記載されていることからみて、本件発明1の「半導体基板を温水中に浸漬するかまたは飽和水蒸気中にさらすこと(以下、「温水中に浸漬する等」という。)によりBPSG膜中のボロン(B)とリン(P)の濃度を低下させる工程」に対応するものである。
しかしながら、本件発明1は、半導体基板上のBPSG膜を熱処理し流動させて平坦化したのち直ちに半導体基板を温水中に浸漬する等によりBPSG膜中のボロン(B)とリン(P)の濃度を低下させるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、前処理工程の次に、基体上のBPSG膜の表面をエッチングすることにより、洗浄によるBPSG膜の表面の変質(これは、次工程のリフローをしにくくする。)を除去する表面除去工程を行い、次にBPSG膜を加熱してリフローするリフロー工程を行うものである。
すなわち、甲第1号証に記載された方法は、本件発明1の、BPSG膜を熱処理し流動させて平坦化したのち直ちに半導体基板を温水中に浸漬する等の工程とは逆に、前処理工程の後にエッチングを行い、次にリフロー工程を行うものであって、しかも、この順序を前提としていることからみて、リフロー工程の後に直ちに前処理工程を行うとすると、その前提が崩れることになるから、甲第1号証に記載された方法を、リフロー工程の後に直ちに前処理工程を行う方法に変更することは容易に想到することができない。
また、甲第2号証に記載された方法は、BPSG膜を形成し、つづいて第1の熱処理を行なった後、第1の絶縁膜を形成し、次に、コンタクト孔を開孔しているものの、この第1の熱処理(実施例では、800℃以上)は、本件発明1の温水中に浸漬する等の工程とは著しく相違するものであるから、本件発明1のように、BPSG膜を熱処理し流動させて平坦化したのち直ちに半導体基板を温水中に浸漬する等の工程を行うことは容易に想到することができない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成に、さらに熱処理し流動させて平坦化したBPSG膜をパターニングしコンタクト孔を形成する工程を追加したものであるが、熱処理し流動させて平坦化する工程の後に、BPSG膜を有する半導体基板を温水中に浸漬する等によりBPSG膜中のボロン(B)とリン(P)の濃度を低下させる工程を含む点では、本件発明1の工程と同じであるから、甲第2号証に記載されているように、BPSG膜からコンタクト孔内の不純物層へBPSG膜の不純物がドープされることが周知の事項であるにしても、上記「(1)本件発明1について」において説示したとおり、甲第1号証に記載された方法を、リフロー工程の後に前処理工程を行う方法に変更することは容易に想到することができない。
また、本件発明2の、熱処理し流動させて平坦化したBSG膜をパターニングしコンタクト孔を形成する上記工程は、甲第2号証に記載された上記方法と類似するものの、この方法における第1の熱処理は、上記「(1)本件発明1について」において説示したとおり、本件発明2の温水中に浸漬する等の工程とは著しく相違するものであるから、本件発明2のように、BPSG膜を熱処理し流動させて平坦化したのちコンタクト孔を形成し、次に半導体基板を温水中に浸漬する等の工程を行うことは容易に想到することができない。

(3)本件発明3について
本件発明3と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件発明3は、フォトレジスト膜を有する半導体基板を温水中に浸漬する等の工程を行い、その後、このフォトレジスト膜を除去したのち露出したBPSG膜を熱処理し流動させる工程により、BPSG膜を流動させても開口部だけは流動しないようにして、コンタクト穴内の側面のクビレや凹凸が発生しないようにしたものである。
一方、甲第1号証に記載された方法は、基体上にBPSG膜を形成し、パターニングしてコンタクトホールを形成し、その後、前処理工程を行い、次に、加熱によりリフローさせる点では本件発明3と類似するものであるが、甲第1号証に記載された方法は、レジスト除去工程によりBPSG膜上のレジストを充分に除去し、さらにエッチング工程によりBPSG膜の変質した表面層を除去することにより、無処理のリフローと同様の温度で、BPSG膜の表面層を容易にリフローするものであって、甲第1号証に記載された方法では、本件発明3のように、熱処理よりBPSG膜を流動させても開口部だけは流動しないようにすることは容易に想到することができない。
また、甲第2号証には、コンタクト孔の側壁部のみに第2の絶縁膜を残存させることにより、コンタクト孔内への不純物の導入によるコンタクト抵抗の上昇を防止することが記載されているものの、コンタクト孔の側壁部のみに第2の絶縁膜を残存させるだけではなく、BPSG膜の上面にも第1の絶縁膜が形成されているから、甲第2号証に記載された方法では、本件発明3のように、フォトレジスト膜を除去してBPSG膜を露出させた状態で熱処理することにより、BPSG膜を流動させても開口部だけは流動しないようにすることは容易に想到することができない。

そして本件発明1〜3は、BPSG膜表面やコンタクト孔側面のボロンとリンの濃度を低下させることにより、自己拡散によるコンタクト抵抗の増大や、コンタクト孔側面の凸凹によるアルミニウム配線の段切れや腐食を防止するという、特許明細書に記載の顕著な効果を奏するものである。

したがって、本件発明1〜3は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。

[5]むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜3についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1〜3についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願についてなされたものとは認めない。
よって、平成6年法律第116号附則第14条の規定に基づく平成7年政令第205号第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-03-15 
出願番号 特願平3-134523
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 池渕 立  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 大橋 賢一
雨宮 弘治
登録日 2000-07-21 
登録番号 特許第3089708号(P3089708)
権利者 日本電気株式会社
発明の名称 半導体装置の製造方法  

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