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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正する C03C
審判 訂正 1項2号公然実施 訂正する C03C
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C03C
管理番号 1058813
審判番号 訂正2000-39124  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1988-07-20 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2000-10-23 
確定日 2002-03-15 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第1627765号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1627765号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 I.手続きの経緯
1.本件訂正審判請求に至る経緯
特許出願:昭和63年1月11日(優先日1987年1月12日米国)
特許権設定登録(特許第1627765号):平成3年11月28日
無効審判請求(平成5年審判第4291号):平成5年3月5日
無効審判審決(全部無効):平成8年5月15日
高裁出訴(平成8年東京高裁(行ケ)第220号):平成8年10月1日
訂正審判請求(平成8年訂正審判第16778号):平成8年10月2日
訂正審判審決(訂正認容):平成9年7月30日
訂正審判審決確定:平成9年9月22日
高裁判決言渡(無効審判審決取消):平成11年6月29日
平成8年訂正審判第16778号の確定された訂正内容に対する審尋(無効審判請求人):平成11年12月3日
回答書:平成12年2月15日
回答書に対する審尋(被請求人):平成12年4月7日
回答書:平成12年10月23日
訂正審判請求(訂正2000-39124号):平成12年10月23日
2.本件訂正請求後の経緯(無効審判事件との関係)
訂正審判に対する審尋(無効審判請求人):平成13年4月17日
回答書:平成13年6月26日
上申書(無効審判請求人):平成13年7月9日
上申書(無効審判被請求人):平成13年11月27日
上申書(無効審判被請求人):平成14年1月15日
上申書(無効審判請求人):平成14年1月16日
II.請求の要旨
本件審判請求の要旨は、特許第1627765号の特許明細書を特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正を目的として、訂正審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち次の訂正事項a乃至訂正事項cのとおり訂正することを求めるものである。
(1)訂正事項a:請求項5を特許請求の範囲の減縮と誤記の訂正を目的として、
「5.アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物を1.2:1〜3.0:1の範囲の重量比で有し、そして密度が0.08〜0.8の範囲であり、ガラス重量の少なくとも90%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のCaO、3〜8%のNa2Oおよび2〜6%のB2O3から成り、さらに、0.125〜1.5%のSO3を含むガラスのマイクロバブル。」と訂正する。
(2)訂正事項b:請求項7を特許請求の範囲の減縮と誤記の訂正を目的として、
「7.アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物を2.0:1〜3.0:1の範囲の重量比で有し、ガラスの重量の少なくとも90%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のRO、3〜8%のR2O、および2〜6%のB2O3から成り、さらに、0.125〜1.5%のSO3を含むガラスのマイクロバブルであって、前記Rが所定の原子価を有する少なくとも1種の金属であるマイクロバブル。」と訂正する。
(3)訂正事項c:請求項8を特許請求の範囲の減縮と誤記の訂正を目的として、
「8.前記ガラスの重量の少なくとも97%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のRO、3〜8%のR2O、および2〜6%のB2O3から成り、さらに0.125〜1.5%のSO3を含み、前記Rが所定の原子価を有する少なくとも1種の金属である特許請求の範囲第7項記載のマイクロバブル。」と訂正する。
III.当審の判断
1.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否について
(1)訂正事項aについて
この訂正は、平成9年7月30日付け訂正審決で確定した請求項5の「アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物を1.2:1〜3.0:1の範囲の重量比で有し、そして密度が0.08〜0.8の範囲であり、ガラス重量の少なくとも90%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のCaO、3〜8%のNa2O、2〜6%のB2O3および0.125〜1.5%のSO3から成るガラスのマイクロバブル」について、その「2〜6%のB2O3および0.125〜1.5%のSO3から成るガラスのマイクロバブル」を「および2〜6%のB2O3から成り、さらに、0.125〜1.5%のSO3を含むガラスのマイクロバブル」と訂正するものである。
そこで、この訂正の内容について検討すると、この訂正は、請求項5についての第1回目の訂正、いわゆる「・・・および2〜6%のB2O3から成るガラスのマイクロバブル」に「0.125〜1.5%のSO3」を含む内容とする「2〜6%のB2O3および0.125〜1.5%のSO3から成るガラスのマイクロバブル」の訂正が本件特許時の請求項5の範囲を拡張するために、その記載振りの誤りを本件特許時の請求項5の記載振りに戻して是正する趣旨のものである。
すなわち、請求項5についての第1回目の訂正は、「少なくとも90%を構成するガラス成分」を本件特許時の請求項5の「4成分」からこれに「SO3」を追加して「5成分」としているために、SO3以外の「4成分」が例えば88.5%の場合でも1.5%のSO3を含めば「少なくとも90%」の条件を満足する内容のものであり、これは、本件特許時の請求項5の記載では許容できない上記の例をも包含する内容であるから、本件特許時の請求項5の範囲を拡張するものである。
そのため、上記訂正事項aは、第1回目の訂正の誤りを本件特許時の請求項5の記載振りに戻すことによって是正するものであり、具体的には「・・・2〜6%のB2O3および0.125〜1.5%のSO3から成るガラス」について、少なくとも90%ガラス成分が4成分であることを誤記の訂正を目的として「・・・および2〜6%のB2O3から成り、」と訂正し、加えて4成分以外にさらにSO3を含むことを明確にするために「さらに、0.125〜1.5%のSO3を含むガラス」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正に該当すると云える。
そして、「0.125〜1.5%のSO3を含む」ことについては、本件特許時の明細書(特許公報第5欄第11行乃至第19行)に「一つの形態において、本発明は、重量パーセントで表すとして本質的に少くとも67%のSiO2、8〜15%のRO、3〜8%のR2O、2〜6%のB2O3、および0.125〜1.50%のSO3からなる組成物であって前出の成分が前記ガラスの少くとも約90%(好ましくは94%そしてよりいっそう好ましくは97%)を構成し、ROとR2Oの重量比が1.0〜3.5の範囲である組成物からなるガラスバブルとして特徴づけることができる。」と記載されている。また、ブローイング剤として「SO3」を含有させる理由や含有量さらにはその効果についても、本件特許時の明細書の第2表、第4表、第5表、第8表及び第10表やこれに関する説明において詳細に記載されており、特に第4表及び第10表には、訂正後の請求項5に係る発明の構成要件を満足する具体例も記載されている。
してみると、特許公報第5欄第11行乃至第19行の記載は、本件特許時の請求項1乃至請求項11に係る「ガラスバブル」の発明を包括的に表現したものであり、請求項5とも関係があるものである。また、本件特許時の明細書の特に第4表や第10表には、訂正後の請求項5に係る発明の具体例ともいえるものが記載されているのであるから、特許公報第5欄第11行乃至第19行に記載された包括的な「ガラスバブル」の発明には、請求項5に係る発明に「さらに0.125〜1.5%のSO3」を含む発明がその具体的な発明の一つとして含まれているとするのが相当である。
したがって、請求項5についての上記訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないと云える。
(2)訂正事項bについて
この訂正は、平成9年7月30日付け訂正審決で確定した請求項7の「アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物を2.0:1〜3.0:1の範囲の重量比で有し、ガラスの重量の少なくとも90%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のRO、3〜8%のR2O、2〜6%のB2O3及び0.125〜1.5%SO3から成るガラスのマイクロバブルであって、前記Rが所定の原子価を有する少なくとも1種の金属であるマイクロバブル」について、その「2〜6%のB2O3及び0.125〜1.5%SO3から成るガラスのマイクロバブル」を「および2〜6%のB2O3から成り、さらに、0.125〜1.5%のSO3を含むガラスのマイクロバブル」と訂正するものであるから、上記訂正事項aと同じ趣旨のものであり、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正に該当すると共に、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3)訂正事項cについて
この訂正は、平成9年7月30日付け訂正審決で確定した請求項8の「前記ガラス重量の少なくとも97%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のRO、3〜8%のR2O、2〜6%のB2O3及び0.125〜1.5%SO3から成り、前記Rが所定の原子価を有する少くとも1種の金属である特許請求の範囲第7項記載のマイクロバブル」について、その「2〜6%のB2O3及び0.125〜1.5%SO3から成り、」を「および2〜6%のB2O3から成り、さらに0.125〜1.5%のSO3を含み、」と訂正するものであるから、上記訂正事項aと同じ趣旨のものであり、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正に該当すると共に、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
2.独立特許要件について
本件特許に対する無効審判(平成5年審判第4291号)の請求人(以下、「無効審判請求人」という)は、本件訂正審判の訂正内容に対する回答書及び上申書において、本件訂正発明5及び9について、下記「(2-1)」に示す証拠と公知性を立証する参考資料1乃至3に基づいて、これら訂正発明5及び9は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであると主張しているから、これら証拠について以下検討する。
(1)本件訂正発明
本件訂正後の発明は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項9に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件訂正発明1乃至9」という)。
「(1)アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物重量比が1.2:1〜3.0:1の範囲であり、ガラス重量の少なくとも97%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のCaO、3〜8%のNa2Oおよび2〜6%のB2O3からなるガラスのマイクロバブル。
(2)前記マイクロバブルの密度が0.08から0.8の範囲である特許請求の範囲第1項記載のマイクロバブル。
(3)前記CaO:Na2O比が1.2:1〜3.0:1の範囲である特許請求の範囲第1項記載のマイクロバブル。
(4)前記CaO:Na2O比が少なくとも1.9:1である特許請求の範囲第3項記載のマイクロバブル。
(5)アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物を1.2:1〜3.0:1の範囲の重量比で有し、そして密度が0.08〜0.8の範囲であり、ガラス重量の少なくとも90%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のCaO、3〜8%のNa2Oおよび2〜6%のB2O3から成り、さらに、0.125〜1.5%のSO3を含むガラスのマイクロバブル。
(6)前記ガラスが約1.0%までのP2O5および/または1.0%のLi2Oを含有する特許請求の範囲第5項記載のマイクロバブル。
(7)アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物を2.0:1〜3.0:1の範囲の重量比で有し、ガラスの重量の少なくとも90%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のRO、3〜8%のR2O、および2〜6%のB2O3から成り、さらに、0.125〜1.5%のSO3を含むガラスのマイクロバブルであって、前記Rが所定の原子価を有する少なくとも1種の金属であるマイクロバブル。
(8)前記ガラスの重量の少なくとも97%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のRO、3〜8%のR2O、および2〜6%のB2O3から成り、さらに0.125〜1.5%のSO3を含み、前記Rが所定の原子価を有する少なくとも1種の金属である特許請求の範囲第7項記載のマイクロバブル。
(9)ガラス粒子の自由流動集合体であって、少なくともその70重量%が特許請求の範囲第2項、第5項、第7項、または第8項の何れか1項に記載のマイクロバブルであるガラス粒子の自由流動集合体。」
(2)当審の判断
(2-1)証拠とその記載内容
無効審判請求人が提示する証拠と参考資料の記載内容は、次のとおりである。
(証拠)
証拠1:3M社発行のC15/250製品に関する販売資料「スコッチライト グラス バブルズ 軽量高機能フィラー」
3M社製の商品名「C15/250」が記載されており、この商品名のものについては、前記無効審判被請求人(本件請求人)自ら乙第6号証として「C15/250」の定量分析結果を提出し、この定量分析結果を無効審判請求人が引用している。そして、この乙第6号証の証拠によれば、1986年11月5日付けC15/250フロートバブルの定量分析結果は次のとおりである。
「SiO2:75.29、B2O3:3.95、CaO:9.81、Na2O:4.95、K2O:2.46、Li2O:0.90、SO3:1.10、P2O5:1.18」
証拠2:P.C.Souers外著「UCLA-51609 FABRICATION OF THE GLASS MICROBALLOON LASER TARGET」昭和50年8月25日国立国会図書館受入、第1頁乃至第21頁、第48頁
第7頁の「表3」には、3M社製のガラスマイクロバルーンの化学分析結果が記載されている。そして、その中の「B18A P-9151-7」と「B35D P-0097-1」のガラスマイクロバルーンの分析結果は次のとおりである。
(a)B18A P-9151-7:「SiO2 74.1、Ca 6.69、Na 3.18、B 1.2、K 0.5、Mg 0.5、Al 0.3、P 0.2、Zn nd<0.003、Fe 0.2、Cr 0.2、Li 0.1、Mn 0.993」
(b)B35D P-0097-1:「SiO2 76.8、Ca 6.52、Na 5.06、B 0.70、K 0.168、Mg 0.2、Al 0.14、P 0.3、Zn 0.88、Fe 0.041、Cr 0.1、Li 0.066、Mn 0.140」
証拠3:特開昭58-156551号公報
(a)「イオウ、あるいは酸素とイオウの化合物は本発明のガラスバブル中の主要な発ぽう剤として役立ち、しかも上述の範囲内のイオウを用いることにより高密度のガラスバブルを得ることができる。」(第3頁右上欄第13行乃至第16行)
(b)「上記したように、おそらく酸素と結合した(たとえばSO2あるいはSO3)イオウは発ぽう剤として働いてガラス粒を本発明のバブルに膨張させる。ガラス粒の含有物としてある量のイオウ(硫酸塩、亜硫酸塩など)を選択しガラス粒からバブルを形成して必要なだけ膨張させおよびこうして完成バブルの所望の密度あるいは肉厚を得る。・・・本発明のバブルは一般にイオウを約0.005〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%の範囲で含有する。」(第4頁右上欄第12行乃至左下欄第7行)
(参考資料)
証拠1の商品名「C15/250」のガラスバブルが本件出願前国内で公然に販売されている事実を立証する参考資料
参考資料1:「高次複合材料の全容 第2巻新しいフィラー全容」(株)大阪ケミカル・マーケティング・センター発行、昭和60年11月30日、第184頁乃至第187頁、第199頁乃至第205頁
(a)第186頁「表4-44低強度バルーン」の中に3M社の商品名「C15/250」が挙げられている。
(b)わが国で市販されている主なバルーンの品種、物性等を示す「表4-59 グラスバブルズ(住友スリーエム、ガラスバルーン)」(第203頁)の中に、汎用のバブルタイプとして「C15/250」が挙げられている。
参考資料2:「NIKKEI MECHANICAL」1983年10月10日、第60頁乃至第65頁
(a)第60頁の「表1」には、主なガラスバルーンの輸入企業と供給メーカーが記載され、その中に輸入企業として「住友スリーエム」が挙げられている。
(b)第61頁の「表2」には、「住友スリーエムの一般用ガラスバルーンの特性」が記載され、その中に「C15/250」が挙げられている。
参考資料3:特開昭58-125681号公報
「実施例1 ・・・注入後60℃で10分間1000rpmの回転数で撹拌を続け、十分に乳化せしめたのち、ガラスマイクロバルーン(3M社製中空ガラス微粒子、商品名C15/250)1.5重量部と練り合せて爆薬とした。」(第3頁左上欄)
(2-2)対比・判断
(i)本件訂正発明5について
(イ)商品名「C15/250」との同一性について
3M社製の商品名「C15/250」のガラスバブルは、参考資料1乃至3の記載から、本件出願前国内において公然に販売されていたものであると認められる。そして、この「C15/250」のガラスバブルは、被請求人も認めているとおり「SiO2:75.29、B2O3:3.95、CaO:9.81、Na2O:4.95、K2O:2.46、Li2O:0.90、SO3:1.10、P2O5:1.18」という成分含有量からなるものであるから、本件訂正発明5とこの「C15/250」のガラスバブルとを対比すると、この「C15/250」のガラスバブルは、本件訂正発明5の「ガラス重量の少なくとも90%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のCaO、3〜8%のNa2Oおよび2〜6%のB2O3から成り、さらに、0.125〜1.5%のSO3を含む」という要件を満足するが、「アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物」の比が「1.18」であるから、本件訂正発明5の「1.2:1〜3.0:1の範囲の重量比」という要件を満足するものではない。また「C15/250」のガラスバブルは、その密度が明らかではない。
してみると、本件訂正発明5は、3M社製の商品名「C15/250」のガラスバブルとは、少なくとも「アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物を1.2:1〜3.0:1の範囲の重量比」の点で明確に区別することができるから、両者は同一であるとすることはできない。
(ロ)商品名「C15/250」からの容易想到性について
本件訂正発明5と商品名「C15/250」との上記(イ)で指摘した相違点は、本件訂正発明5が動機付け(手掛かり)となって「C15/250」のガラスバブルが分析されこの分析結果と本件訂正発明5とが対比されてはじめて明らかにされた事項と云うべきものである。
そうすると、本件訂正発明5が未だ出願されていない本件出願前の状況では、「C15/250」のガラスバブルの商品が販売されていたとしても、この商品が化学分析されることはなかったであろうし、また化学分析されたとしても「アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物の比率」に着目する手掛かり(本件訂正発明5)がないのであるから、上記相違点を認識することができないばかりか、失透現象の防止のために「アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物の比率」を加減することも、この「C15/250」というガラスバブルの商品だけからでは当業者といえど到底思い着くことではないと云える。
してみると、本件訂正発明5は、この「C15/250」の商品から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(ハ)商品名「C15/250」と証拠2及び証拠3からの容易想到性について
次に、証拠2及び証拠3について検討すると、証拠2にはガラスバブルの分析結果が記載されているが、この分析結果の個々の数値が失透現象の防止と「アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物の比率」との関係を何ら示唆するものではないし、証拠2には「アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物の比率」の技術的な意味や効果について何ら記載又は示唆すらされていないのであるから、このような証拠2から、失透現象を防止するために、商品名「C15/250」のガラスバブルの「アルカリ土類金属酸化物とアルカリ金属酸化物の比率」を加減することなど当業者といえど到底思い着くはずもないと云うべきである。
また、証拠3も「SO3」に関するものであり、失透現象の防止と「アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物の比率」との関係を何ら示唆するものではない。
してみると、本件訂正発明5は、「C15/250」の商品とこれら証拠2及び証拠3を組み合わせても当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(ii)本件訂正発明9について
この発明は、少なくとも請求項5のマイクロバブルであるガラス粒子の「自由流動集合体」であるから、上記(i)と同様の理由により、商品名「C15/250」と同一であるとすることはできないし、また商品名「C15/250」から、さらにこれと証拠2及び証拠3を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。
(iii)以上のとおり、本件訂正発明5及び9は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、他の請求項1乃至4、6乃至8に係る発明も特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
また、他に本件訂正発明1乃至9が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由及び証拠を発見しない。
したがって、本件訂正発明1乃至9は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
IV.むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
マイクロバブル
(57)【特許請求の範囲】
(1) アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物重量比が1.2:1〜3.0:1の範囲であり、ガラス重量の少なくとも97%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のCaO、3〜8%のNa2Oおよび2〜6%のB2O3からなるガラスのマイクロバブル。
(2) 前記マイクロバブルの密度が0.08から0.8の範囲である特許請求の範囲第1項記載のマイクロバブル。
(3) 前記CaO:Na2O比が1.2:1〜3.0:1の範囲である特許請求の範囲第1項記載のマイクロバブル。
(4) 前記CaO:Na2O比が少なくとも1.9:1である特許請求の範囲第3項記載のマイクロバブル。
(5) アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物を1.2:1〜3.0:1の範囲の重量比で有し、そして密度が0.08〜0.8の範囲であり、ガラス重量の少なくとも90%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のCaO、3〜8%のNa2Oおよび2〜6%のB2O3 から成り、さらに、0.125〜1.5%のSO 3 を含むガラスのマイクロバブル。
(6) 前記ガラスが約1.0%までのP2O5および/または1.0%のLi2Oを含有する特許請求の範囲第5項記載のマイクロバブル。
(7) アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物を2.0:1〜3.0:1の範囲の重量比で有し、ガラスの重量の少なくとも90%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のRO、3〜8%のR2O、および2〜6%のB2O3 から成り、さらに、0.125〜1.5%のSO 3 を含むガラスのマイクロバブルであって、前記Rが所定の原子価を有する少なくとも1種の金属であるマイクロバブル。
(8) 前記ガラスの重量の少なくとも97%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のRO、3〜8%のR2O、および2〜6%のB2O3 から成り、さらに0.125〜1.5%のSO 3 を含み、前記Rが所定の原子価を有する少なくとも1種の金属である特許請求の範囲第7項記載のマイクロバブル。
(9) ガラス粒子の自由流動集合体であって、少なくともその70重量%が特許請求の範囲第2項、第5項、第7項、または第8項の何れか1項に記載のマイクロバブルであるガラス粒子の自由流動集合体。
【発明の詳細な説明】
〔発明の技術分野〕
本発明はガラスマイクロバブルに関し、そして特に新規な組成物を有するバブルに関する。
〔従来技術〕
米国特許第2,978,340号、同第3,030,215号、同3,129,086号および同3,230,064号各明細書が示すように、ガラスマイクロバブルは何年も前より知られている。上記米国特許明細書は全て、同時に起こるガラス形成成分の融解とその融解した塊状物の膨張を伴う製造方法を教示するものである。しかしながら、これらのバブルは非常に水に対する感応性が高く、水性組成物、例えば壁修理用コンパウンドに混合すると壊変することがある。米国特許3,365,315号明細書は非晶質ガラスフリットを「ブローイング」あるいは膨張させることによるガラスバブルの耐水性で不連続の自由流動集合体(フリーフローウィング・マス)の構成を開示している。この特許はほとんど全ての既存のガラスを包含する、非常に広範な可能な成分を開示している。米国特許第4,391,646号明細書もまたフリットからのガラスバブルの構成であって、本質的に60〜90%のSiO2、2〜20%のアルカリ金属酸化物、1〜30%のB2O3、0.005〜0.5%の硫黄(もしSO3として計算すれば0.0125〜1.25%)および他の既存のガラス構成成分からなるガラスバブルの生成を開示している。これらの特許に従って製造したガラスマイクロバブルは広範な工業的利用を達成した。しかし商業的製品がそれから得られるフリットを調製するために用いられる原料の中に炭酸リチウム、炭酸カリウム、およびピロリン酸ソーダのような原料を包含することはコストを増大させる。
日本国特許出願公告昭和49年第37,565号公報6種のガラス組成物を開示し、それらは全てアルカリ金属酸化物に対するアルカリ土類金属酸化物の既存の比率(即ち、1.0あるいはそれ以下)を有する。この公報はまた、過度に高粘度になったり、失透現象を防ぐためには少なくとも10.0%のNa2Oかあるいは13.0%(Na2OプラスK2O)を含まなければならないことを教示している。
欧州特許出願第165,875号明細書は、ガラスバブルを炎で形成する際、特に20ミクロン以下の非常に小さいフィード粒子のために減圧を用いることは硫酸塩のブローイング剤の有効性を増大させることを開示している。しかしながら、全ての例ではアルカリ金属酸化物に対するアルカリ土類金属の比率は既知のものである。
〔発明の要約〕
本発明は耐水性であって、米国特許4,391,646号明細書のマイクロバブルに属する優れた特性を有することができ、そして前記特許明細書に開示された一般的な“ブローイング”法と同一の方法により製造されるマイクロバブルを提供する。しかしながら、その最も簡単かつ最も安価な具体例において、本発明のマイクロバブルはホウケイ酸ガラスから製造され、本質的にSiO2、CaO、Na2O、B2O3およびSO3のブローイング剤からなる化学組成を有する。フリットから得られるマイクロバブルの収率もまた従来技術のものより高い。本発明の顕著な特徴は1.2:1〜3.0:1のアルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物比(RO:R2O)に存し、その比は実質的に1:1を上回り、そして今まで用いられた単一のホウケイ酸ガラス組成物のいかなるものの比率をも上回る。RO:R2O比(ここで用いた「R」とは所定の原子価を有する金属を指し、ROはアルカリ土類金属酸化物、そしてR2Oはアルカリ金属酸化物を指す。)が1:1以上に増大するにつれ、単一のホウケイ酸組成物は伝統的な作業と冷却サイクルの間でますます不安定になり失透現象がおこる。そしてその結果Al2O3のような安定剤をその組成物の中に含有しないかぎり、ガラス組成物は存在し得ない。本発明の実施において、このような不安定な組成物はガラスマイクロバブルの製造のために高度に望ましいこと、フリットの成形のために水冷却による溶融ガラスの急速冷却は、失透現象を防止することが分った。
次のバブル形成の間、前述の米国特許第3,365,315号および同第4,391,646号各明細書で教示されたように、バブルは非常に急速に冷えるのでバブル形成の間におこる、相対的によりいっそう揮発性のアルカリ金属酸化物化合物の損失のためにRO:R2Oがよりいっそう増大するにもかかわらず、前出の失透現象は防がれる。
本発明は0.08g/ccまたはそれ以下から0.8g/ccまでの密度を有するガラスバブルを提供するものであり、より小さい密度の製品は単位体積当り、いっそう経済的である。しかしながら、より高い密度を有するガラスバブルは、安価であり、かつ粉砕に対する高い抵抗力を有する比較的軽量な補強充填剤が望まれる場合に特に有用である。
1つの形態において、本発明は、重量パーセントで表すとして本質的に少なくとも67%のSiO2、8〜15%のRO、3〜8%のR2O、2〜6%のB2O3、および0.125〜1.50%のSO3から成るガラスバブルであって、前出の成分が前記ガラスバブルの少なくとも約90%(好ましくは94%そしてよりいっそう好ましくは97%)を構成し、ROとR2Oの重量比が1.0〜3.5の範囲である組成物からなるガラスバブルとして特徴づけることができる。
ガラスマイクロバブルの有用性は密度、強度、水感応性および値段に非常に依存する。一般に、これは、高シリカ含有物は好ましいが、それも限度があることを意味する。なぜなら、最初のガラス調製において、より高いシリカ含有物のガラスのために必要とされたより高い温度とより長い溶融時間は保有可能なブローイング剤の量を減少させ、それによってより好ましい低密度ガラスバブルの形成を妨げるからである。
低密度(例えば1cc当り0.2グラム以下)のマイクロバブルを得るために、最初のガラス溶融操作の間十分なブローイング剤を保有することは困難である。もし少量のリチア(lithia)がガラス組成物中のアルカリ金属酸化物の1つとして含まれるのならばブローイング剤の保有は改善される。しかしながら、このような組成物はソーダが他の物質を含まない単一のアルカリ金属酸化物である時は、より高価である。ブローイング剤の保有はまた、ガラス組成物中に少量のP2O5を含有することにより明確に改善される。もし所望なら、Li2OおよびP2O5の両方を含有させることができる。
低密度を望まないときは、マイクロバブルの物理的および化学的特性を変更するために、あるいはガラス溶融操作を改善するために、ガラス組成において非常に多くの置換をすることが可能である。例えば、ガラスバッチに長石あるいはリチア輝石を含有させることにより少量のアルミナを導入することが可能であり、また、それによりガラス中にNa2O以外の少量のアルカリ金属酸化物をも導入する。炭酸カルシウムよりもドロマイト質石灰石を使用することにより、CaOをMgOの代用にすることが可能である。
酸化ホウ素の量を制限すれば費用を削減するが、経験によれば、フリット組成物は約10%B2O3を含有するとガラス製造と形成の全体にわたる工程が容易になることが分った。
フィード粒子からマイクロバブルへの最大の転化のためには、フリットにおける好ましいRO:R2O比は約1.4であり、そしてその結果はガラスマイクロバブルにおいて約2.0の比率に帰着することが見出された。しかしながら、より低い比率を有するフリットはいっそう溶融しやすく、その一方、より高い比率を有するフリットはバブル形成段階の間にいっそう少ない揮発性損失を示すことが分る。
〔詳細な記述〕
例示であって制限することのない例を通して以下に本発明をいっそう詳しく説明する。全ての部とパーセントは別にことわらないかぎり重量で示す。
〔例1〜8〕
この一連の実施例において、調製したフリット中のCaO:Na2O比はおよそ0.8:1〜2.0:1までの様々な値であり、SiO2(70.0%)およびB2O3(10.0%)の一定の水準は維持される。
全ての例を以下のように調製した。:
SiO2の粒子(シリカ粉末)、Na2O:B2O3(590ミクロンより小さい、90%の無水ホウ砂)、CaCO3(97%が44ミクロンより小)、Na2CO3(ソーダ灰)、およびNa2SO4(60%が74ミクロンより小)を表に記載した量でいっしょに混合することによりガラス形成バッチを調製した。混合は8.7リットルのジャー・ミル中に6000グラムのアルミナ粉砕シリンダーを入れ、3分間撹拌することにより実行した。ガラス形成バッチを急速回復電気加熱炉内で約1290℃(2350゜F)の温度においていわゆる「溶融シリカ」耐火材るつぼの中で3時間溶融した。結果としての溶融ガラスを水中で冷却し、次いで乾燥して一連のフリットを得た。
それぞれ調製したフリットの500グラムを次いで8.7リットルのジャー・ミルの中に6000グラムのアルミナ粉砕シリンダーとともに置き、1時間半の間いっしょに摩砕した。摩砕生産品をスクリーンと空気溶離の使用により分離し、150グラム(±15グラム)のガラスバルブフィード粒子を得たが、その90%は47.5μm(±2.5μm)より小さく、50%は24μm(±1.0μm)より小さく、そして10%は7.0μm(±1.0μm)より小であった。バッチごとの粒径分類はリーズアンドノースラップ粒径アナライザーモデルNo.7991-01(Leeds and Northrup Particle Size Analyzer,Model No.7991-01)を使用して測定した。

例1、3、5、7及び8のためのバブルフィード試料を定量分析してフリットの実際の酸化組成物を所期の計算された組成物と比較した。全ての場合においてAl2O3、MgO、およびFe2O3の重量パーセントの総計は0.42%より少なく、そしてLi2O、ZnOおよびP2O5のそれぞれは0.02%より少なかった。

各バブルフィード試料の30グラムを標準の温度および圧力下で約250リットル/分となるように計算した燃料空気を伴う、大体化学式の割合の天然ガス/空気の炎に通した。空気:ガス比は1分当り10グラムの供給速度に対して最低の総生産物密度が得られるように調節した。その炎で形成した生産物を周囲の温度の空気と混合することにより冷却し、次いで遠心分離機(サイクロン装置)でもって結果のガス流と分離した。
それぞれの場合における結果の、自由流動(フリーフロー)ガラス粒子を含有するガラスバブルは更に、
(1) 既知の質量のものの体積を定量するためのModel 930 Beckman Air Comparison Pycnometerを使用して、総生産物物質の現実の粒子密度の平均値を測定すること。
(2) 遠心分離技術を用いて、1.0g/ccより小さい密度を有するガラスバブルの画分を定量すること。および
(3) このバブル画分の真の粒子密度の平均値を測定すること。
によって特徴づけられる。これらの定量結果を、回収した生産物質の総量に対応する量とともに以下の表に示した。単位はバブルフィードの投入量の百分率で示した。

例1から8までのガラスバブルの全体的な粒径の分布は170、230および400のメッシュスクリーン(U.S.シリーズ)を用いて行なった。結果は、バブルの10〜20%が88μmより大であり、約40%が88μmと62μmの間であり、20〜30%が62μmと37μmの間であり、そして10〜20%が37μmより小であった。
例5のための「沈降物」の粒径分布を同様にリーズアンドノースラップ粒径アナライザー(Leeds and Northrup Particle Size Analyzer)を用いて測定した結果、90%は87.7μmより小であり、50%は39.6μmより小であり、そして10%は14.4μmより小であることが判明した。なぜなら、ビーズと破壊したマイクロバブルバブルの両方が存在するが、粒径分布操作はバブルフィードに対するよりもいく分粗雑だからである。
例1、3、5、7および8に対し、全生産物から分離したガラスバブルの試料を定量分析して、それらの主な酸化組成物を決定した。例5に対して、遠心分離によりガラスバブルから分離した物質(「沈降物」)を同様に分析した。主な酸化組成物の結果を以下の表に示す。1つのケースを除いて、Al2O3、MgO、Fe2O3、Li2O、K2O、P2O5、およびZnOの総重量パーセントは0.62より小であり、例5の「沈降物」に対する総量は0.92%より小であった。

例1から8までの結果はフィード中のCaO:Na2O比が、形成の間のガラスバブル生産物の画分に及ぼす強い影響を示している。溶融の間のフリット中に保持されるブローイング剤(SO3%として表される)の量もまたこの比率に影響される。ガラスバブルの最大収率のための、フィード中の好ましいCaO:Na2O比はおよそ1.4であると思われ、その値はガラスバブルにおいて約2.0の比率を与える。経験によれば総生産物中のガラスバブルの収率はフィード中のブローイング剤の量によっては影響されないがバブルの密度はブローイング剤水準により直接的に支配されることが分った。
全ての生成物質を遠心分離技術により「浮遊物」と「沈降物」に分離したところ、沈降物の密度は理論的なガラスの密度、即ち2.3g/ccに非常に近いことが判明し、沈降物は破壊したバブルと固体ビーズからなっていた。
広範な密度の生産物が得られ、ガラス形成バッチにおいて異なった量の硫酸塩を含有することにより何れも最大収率の浮遊物(例4および5参照)を有していた。
(例9〜14参照)
〔例 9〜14〕
この一連の例で唯一の変数はバッチ組成物中の硫酸塩の量である。これらの例の目的は(1)与えられたガラス組成物から生成しうる生産物の密度(非常に高い画分のガラスバブルを伴う)の範囲の広さを例示すること。そして(2)総生産物中の画分がガラス中の硫黄水準に左右されるかどうかを決定することである。
この一連の例のバッチ組成物は例4のものと同じであるが、硫酸ナトリウムの重量および対応する炭酸ナトリウムの重量は除く。これらは全体のナトリウム酸化物含有量を一定に保つように調製した。これらの重量を、結果のバブルフィード試料において測定した硫酸の量(SO3として表す)とともに以下の表に示した。硫黄の値は1500℃に加熱したときにフィード試料から発生するSO2を測定するヨウ素滴定により定量した。
ガラス形成バッチは600グラムのSiO2、123.9グラムのNa2O:B2O3172.9グラムのCaCO3、および以下の表に示した様に変化させた量のNa2CO3およびNa2SO4を混合することにより調製した。

バッチを例1〜8と同様に溶融し、水中で冷却し、次いで乾燥して一連のフリットを得た。それらのフリットを次に例1〜8と同様に摩砕し、分類し、粒径分布を測定したところ、全体の90%が47.5μm(±3.6μm)より小であり、50%が24.8μm(±1.8μm)より小であり、10%が7.4μm(±1.6μm)より小である粒径分布を有するガラスフィード粒子150グラム(±12グラム)が得られた。
各バブルフィード試料の30グラムを次いで例1〜8と同様の天然ガス/空気の炎に通した。結果のガラス粒子の自由流動集合体を次いで回収し例1〜8と同様に特徴付けした結果を以下の表に示す。

この結果は、例1〜8に占められた全生産物密度の範囲を越えており、硫黄水準は全生産物質中のバブル画分に影響を及ぼさないことを示している。実際、例4の場合の様なガラス組成物中で得られたバブルのパーセンテージにおいていかなる明確な減少も起る前にSO3水準を0.60%まで減少させることができる。
例12、13および14において、バブルのパーセンテージは着実に減少すると思われ、0.20%のSO3水準に対し71.4%まで低下する。これは明らかに、全生産物質がもはや2つの異なる画分、即ち1ccあたり1.0g以下の密度分布を有する「浮遊物」、および1cc当り2.3gの密度を有する「沈降物」に分離したことに基づいている。なぜなら、1.0より大きい密度を有する物質はビーズとともにバブルを含んでおり、「沈降物」は1cc当り1.0と2.3グラムの間の密度を有するからである。例14において、「沈降物」密度は1.78g/ccで測定した。遠心分離操作のための1.0より大きい密度を有する液体を用いることにより、バブル画分を増大させることができる。例3、4、5、9、10、11、12、および13の各例の総生産物におけるバブルの割合は81%を上回り、85.9%の高さにまで及ぶことが注目される。後の数字は明らかに81%より高く以前に本出願人の譲受人によって開示されたガラス組成物であって同一条件下で得られたもののうち最高の収率である。
前述の例で記載したタイプの単一の組成物は安価でそしてそれは直ちに本発明の好ましい具体例を示している。しかしながらもし、(1)アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物重量比が1.0以上のままであり、(2)ガラス形成バッチが約1300℃以下の温度で溶融することができて、その結果十分な量の硫黄ブローイング剤が保たれ、そして(3)少なくとも約10%のB2O3含有量がフリット組成中で維持されるならば、これらのガラス形成化合物の多くを置換させて、81%か又はそれ以上のバブル収率を得ながら、本発明の実用性を更に改良することが可能であることが見出された。以下の例は組成物の置換を例示する。
〔例 15〜24〕
例15、16および17において少量(1.0%未満)のLi2OおよびP2O5はガラスフリット組成物中に含有される。これらの酸化物は、一個一個でも、組合せでも、これらを用いないで調製できるガラスバブルよりもより低密度のガラスバブルを調製する際に有用であることが分っている。例15において、Na2Oを0.5%Li2Oに置き換え、例16ではSiO2を0.5%P2O5に置き換えた。
例15では、ガラスのアルカリ金属酸化物組成は0.5%のLi2Oおよび7.9%Na2Oを含み、RO:R2O比は1.3になるが、Li2Oは大きさが420μmより小さい工業的純度の炭酸リチウムより誘導された。例16では0.5%のP2O5(90%が840μmより小さい粒状無水ピロリン酸四ナトリウムから誘導された。)で幾分かのSiO2を置換した。例17では、Li2O(0.5%)とP2O5(0.4%)の両方がフリット組成に含有される。
例18および19では、アルカリ土類金属酸化物はマグネシアおよびバリアをそれぞれ含有する。例18では、ドロマイト石灰石(97%が44μmより大きくない)を用いたが、CaOの約40%をMgOで置き換えることが可能である。例19ではCaOの約18%をBaOで置き換えたが、粉末状の分析用純度のBaCO3をバッチ中で用いた。それぞれの例中でRO:R2O比は1:3である。
例20では、CaCO3の一部をホタル石(85%が44μmより大きくない。)に置き換えたが、約1.0%のCaF2をガラスフリットに導入して行った。RO:R2O比は1.4である。
例21および22では、ガラス組成のシリカの一部を約3%のアルミナで置き換え、他の点では例4と同様にした。例21では長石がAl2O3といくらかのK2Oを供給するが、後者はNa2Oに対する置換物である。長石は当然に68%のSiO2、19.0%のAl2O3、1.60%のCaO、4.0%のK2O、および7.0%のNa2Oを含有すると考えられるが、その90%が44μmより大きくないように粉砕した。例22では、化学的純度のリチア輝石がアルミナをいくらかのリチアおよびポタシアとともに供給するが、これはナトリウムに対する置換物である。リチア輝石は当然に64.0%のSiO2、25.0%のAl2O3、6.0%のLi2O、2.3%のFe2O3、1.2%のK2O、および0.6%のNa2Oを含有するものと思われるが、その92%が74μmより大きくならないように粉砕した。
例23では5%のPbO(粉末状分析用純度の鉛丹)をガラス組成物中に導入し、2.5%のSiO2および2.5%の(CaO+Na2O、比率は1.3:1.0)を置き換えた。
例24では、1.5%のZnO(98.8%がZnOであり、99.99%が44μmより小さい)をバッチ中に導入し、等しい重量のCaOを置き換えた。
前出の(および他の)置換物質の利点は技術上周知であり、そしてガラス溶融作業の改良、ガラス品質の改良、およびガラス特性の改良あるいは改質について広く議論されてきた。
例15から24は全て例1から14で用いたのと同じ手順により調製した。ミル摩砕物をスクリーンと空気溶離法(エアーエルトリエーション)の使用により分別した結果、142グラム(±17.6グラム)のガラスバブルフィード粒子を得たが、その90%は50.1±3.5μmより小さく、50%は25.0±1.4μmより小であり、そして10%は7.7±1.5μmより小であった。
SO3として表される硫黄の量は各ガラスバブルフィード試料に対し、ヨウ素滴定により定量され、フィード試料を1500℃まで加熱したときに発生するSO2を測定することにより行う。
計算されたフリット組成を測定したSO2含有量とともに第8表に示したがこれらは各量の標準化のための計算で用いた。


各バブルフィード試料の30グラムを前出の例と同様の天然ガス/空気の炎に通し、結果として生ずるガラスバブル含有自由流動集合体の生成物を回収した。その生成物を前出の例と同様に特徴付けした。これらの分析結果を、バブルフィード投入量のパーセンテージとして回収された全生成物質の対応する画分とともに第9表に示した。
例16および21に対して、全生成物質から分離したガラスバブルの試料を定量的に分析してそれらの酸化組成物を定量した。主な酸化物成分の結果を示す。どの場合においても、0.02%以下のLi2Oおよび0.02%のZnOしか存在しなかった。例16についてはAl2O3、Fe2O3およびMgOの総和が0.65%以下であった。例21については、0.02%以下のP2O5があり、Fe2O3とMgOの総和が0.24%であった。


 
訂正の要旨 訂正の要旨
本件訂正の要旨は、本件特許第1627765号発明の特許明細書を平成12年10月23日付け訂正審判請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的として、次の訂正事項a乃至訂正事項cのとおりに訂正するものである。
(1)訂正事項a:請求項5を特許請求の範囲の減縮と誤記の訂正を目的として、
「5.アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物を1.2:1〜3.0:1の範囲の重量比で有し、そして密度が0.08〜0.8の範囲であり、ガラス重量の少なくとも90%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のCaO、3〜8%のNa2Oおよび2〜6%のB2O3から成り、さらに、0.125〜1.5%のSO3を含むガラスのマイクロバブル」と訂正する。
(2)訂正事項b:請求項7を特許請求の範囲の減縮と誤記の訂正を目的として、
「7.アルカリ土類金属酸化物:アルカリ金属酸化物を2.0:1〜3.0:1の範囲の重量比で有し、ガラスの重量の少なくとも90%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のRO、3〜8%のR2O、および2〜6%のB2O3から成り、さらに、0.125〜1.5%のSO3を含むガラスのマイクロバブルであって、前記Rが所定の原子価を有する少なくとも1種の金属であるマイクロバブル」と訂正する。
(3)訂正事項c:請求項8を特許請求の範囲の減縮と誤記の訂正を目的として、
「8.前記ガラスの重量の少なくとも97%が本質的に70〜80%のSiO2、8〜15%のRO、3〜8%のR2O、および2〜6%のB2O3から成り、さらに0.125〜1.5%のSO3を含み、前記Rが所定の原子価を有する少なくとも1種の金属である特許請求の範囲第7項記載のマイクロバブル」と訂正する。
審理終結日 2002-02-19 
結審通知日 2002-02-22 
審決日 2002-03-05 
出願番号 特願昭63-3656
審決分類 P 1 41・ 121- Y (C03C)
P 1 41・ 856- Y (C03C)
P 1 41・ 112- Y (C03C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 足立 法也  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 唐戸 光雄
石井 良夫
多喜 鉄雄
野田 直人
登録日 1991-11-28 
登録番号 特許第1627765号(P1627765)
発明の名称 マイクロバブル  
代理人 片山 英二  
代理人 小林 純子  
代理人 小池 誠  
代理人 小林 純子  
代理人 小池 誠  
代理人 片山 英二  

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