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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16F
管理番号 1058867
審判番号 不服2001-1946  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-14 
確定日 2002-05-10 
事件の表示 平成 9年特許願第218355号「免震装置」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 4月14日出願公開、特開平10- 96444]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明の認定
本願は、平成9年7月30日(優先権主張平成8年8月2日)の出願であって、その請求項1乃至10に係る発明は、平成12年3月13日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、同手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1には次のとおり記載されている(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。
なお、本願については、平成13年3月12日付けで手続補正がなされているが、該補正は平成14年2月28付け補正の却下の決定により却下されている。

「【請求項1】 支持体に固設された基部と上方の支持部材との間に互いに回動中心を異にし重力方向軸線に対して角度をなす軸線を有する円筒形の軸と該軸を軸支する軸受けとよりなる軸回動機構と該軸回動機構に回動自在に係着された回動部とで形成された水平振子の複数が該軸を介して順次連設されて多重水平振子が形成され、前記支持部材は最上段の前記回動部の軸回動機構軸線と異なる位置に上下方向軸線を有する支持軸回動機構に回動自在に係着され、前記支持部材上に載置された被免震体は地震動発生により前記基部を支点とする多重水平振子振動により免震可能とされていることを特徴とする免震装置。」

II.引用刊行物及びその記載内容

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭49-110125号公報(以下、「刊行物1」という。)には、傾斜振り子式建築物免震装置に関して、以下の技術的事項が図面とともに記載されている。

ア.「支持体に取付けられた鉛直線に対してわずかに傾斜した軸に、その軸を回転軸として傾斜振り子運動を行う振り子を連結し、その振り子と支持体との中間に複数個のローラーまたは球体を備えた移動体を配装して、振り子に作用する鉛直力が移動体を通して支持体に伝達されるようにした傾斜振り子装置(以下単に傾斜振り子単体と称する)を形成し、その傾斜振り子単体を複数個適当に向きを変えて重合しその上部に公知の自由継手を設け、その重合体底部を基礎または地下建築物の柱もしくは壁体下部に固着し、自由継手頂部を上部建築物の柱または壁体下部に固着した、地震動による水平力の上部建築物への伝播を防止する構成を特徴とする傾斜振り子式建築物免震装置。」(特許請求の範囲第1項)

イ.「(1)は基礎または地下建築物の柱もしくは壁体、(2)、(2)は傾斜振り子単体、(3)、(3)は円柱面座単体、(4)は上部建築物の柱または壁体をそれぞれ示す。傾斜振り子単体(2)、(2)は第3図および第4図の拡大図に示すように、支持盤(5)および制御室(6)からなる支持体、支持体に取付けられた鉛直線に対してわずかに傾斜した軸(7)、(7)を回転軸として傾斜振り子運動を行う振り子(8)、支持体と振り子(8)との中間に配装された移動体(9)などによって構成される。支持盤(5)に固着された制御室(6)は軸(7)を回転可能な状態に支持するとともに、一端を軸(7)に固着され軸(7)とともに回転する回転翼(10)を内蔵する。」(第2頁左上欄第15行〜右上欄第9行)

ウ.「支持盤(5)は下面に水平接合面(23)を備え、上面に水平面に対してわずかに傾斜し、軸(7)に対して直角をなす平面からなるローラー転動面(24)を備える。
移動体(9)は支持盤(5)のローラー転動面(24)上に軸(7)を中心に放射状に並べられた複数本のローラー(25)、(25)を、相互摩擦がなくかつ逸脱せずに軸(7)を中心に転動できるように保持したものである。
振り子(8)は下面に支持盤(5)のローラー転動面(24)に平行な平面からなるローラー転動面(26)を備え、上面に水平接合面(27)を備えたもので、移動体(9)上に載置され、軸(7)に固着される。」(第2頁左下欄第14行〜右下欄第7行)

エ.「第1の傾斜振り子単体(2)上に第2の傾斜振り子単体(2)を第1の(2)に対して120度回転させて重合し、水平接合面(27)に水平接合面(23)を固着し、第2の傾斜振り子単体(2)上に第3の傾斜振り子単体(2)を第2の(2)に対して120度回転させて重合し水平接合面(27)に水平接合面(23)を固着する。」(第3頁左上欄第2〜9行)

オ.「以上によって形成された免震装置は、底部の水平接合面(23)を基礎または地下建築物の柱または壁体(1)に固着し、頂部の水平接合面(34)を上部建築物の柱または壁体(4)下部に固着し設置される。」(第3頁左下欄第17行〜右上欄第1行)

カ.「実施例1における2個の円柱面座単体(3)、(3)のかわりに、第15図および第16図のような球面座単体(3’)1個を使用するものである。球面座単体(3’)は上面に凸球面状の球体転動面(28’)を備え、下面に水平接合面(29’)を備えた凸面体(30’)と、その球体転動面(28’)上に並べられた複数個の球体(38)、(38)を相互摩擦がなくかつ逸脱せずに転動できるように保持した移動体(32’)、およびその移動体(32’)上に載置される、下面に球体転動面(28’)に平行な凹球面状の球体転動面(33’)を備え、上面に水平接合面(34’)を備えた凹面体(35’)によって構成され、その水平接合面(29’)を第3の傾斜振り子単体(2)の水平接合面(27)に固着し、水平接合面(34’)を上部建築物の柱または壁体(4)に固着する。球面座単体(3’)は第3の傾斜振り子単体(2)の前後左右の傾斜および回転に対応し、その凸面体(30’)および移動体(32’)を第16図の1点鎖線で示すように移動させ、かつ凸面体(30’)および移動体(32’)を水平面内に回転させ、傾斜振り子単体(2)、(2)の動きを円滑にする。」(第5頁左上欄第2行〜右上欄第3行)

上記摘記記載イ.に関し、軸(7)は、第3図及び第4図の記載を参酌するに円筒形の軸ということができ、また、制御室(6)はその軸(7)を軸支する部材といえる。したがって、これらをまとめて、円筒形の軸(7)と該軸(7)を軸支する部材とよりなる軸回動機構、ということができる。
また、上記摘記記載カ.に関し、球面座単体(3’)の水平接合面(34’)は、凸面体(30’)に対して、水平面内で相対的に回転可能とされていることから、当該水平接合面(34’)は上下方向軸線を有する支持軸回動機構に回動自在に係着されている、ということができる。

したがって、これらの技術的事項並びに発明の詳細な説明及び図面の記載からみて、上記刊行物1には、以下のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

【引用発明】 基礎に固着された第1の傾斜振り子単体(2)の支持盤5と上方の球面座単体(3’)の水平接合面(34’)との間に互いに回動中心を異にし重力方向軸線に対して角度をなす軸線を有する円筒形の軸(7)と該軸(7)を軸支する部材とよりなる軸回動機構と該軸回動機構に回動自在に係着された振り子(8)とで形成された傾斜振り子単体(2)の複数が順次連設されて多重の傾斜振り子が形成され、前記球面座単体(3’)の水平接合面(34’)は最上段の前記振り子(8)の軸回動機構軸線と異なる位置に上下方向軸線を有する支持軸回動機構に回動自在に係着され、前記球面座単体(3’)の水平接合面(34’)上に載置された建築物は地震動発生により前記第1の傾斜振り子単体(2)の支持盤5を支点とする多重の傾斜振り子振動により免震可能とされている免震装置。

III.対比・判断

本願発明と上記引用発明とを比較すると、それぞれの有する機能に照らして、引用発明の「基礎」は本願発明の「支持体」に相当し、以下同様に、「固着」は「固設」に、「第1の傾斜振り子単体(2)の支持盤5」は「基部」に、「球面座単体(3’)の水平接合面(34’)」は「支持部材」に、「軸(7)」は「軸」に、「振り子(8)」は「回動部」に、「建築物」は「被免震体」に、それぞれ相当する。
また、本願発明における「水平振子」及び「多重水平振子」は、重力方向軸線に対して角度をなす軸に軸支されているのであるから、実際は引用発明と同じく傾斜しているものである。したがって、引用発明の「傾斜振り子単体(2)」は本願発明の「水平振子」に、「多重の傾斜振り子」は「多重水平振子」に、それぞれ相当するといえる。
従って、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
支持体に固設された基部と上方の支持部材との間に互いに回動中心を異にし重力方向軸線に対して角度をなす軸線を有する円筒形の軸と該軸を軸支する部材とよりなる軸回動機構と該軸回動機構に回動自在に係着された回動部とで形成された水平振子の複数が順次連設されて多重水平振子が形成され、前記支持部材は最上段の前記回動部の軸回動機構軸線と異なる位置に上下方向軸線を有する支持軸回動機構に回動自在に係着され、前記支持部材上に載置された被免震体は地震動発生により前記基部を支点とする多重水平振子振動により免震可能とされている免震装置。

(相違点1)
本願発明が、円筒形の軸を軸受けにより軸支しているのに対し、引用発明は、円筒形の軸をどのようにして軸支しているのか明らかでない点。
(相違点2)
本願発明においては、水平振子の複数が該軸を介して順次連設されて多重水平振子を形成すると限定されるのに対し、引用発明においては、このような限定がなされていない点。

そこで上記各相違点につき検討する。

1.相違点1について
円筒形の軸を軸支するために軸受を用いることは、例示するまでもなく周知の技術的事項である。そして、引用発明のような傾斜振り子の軸をこのように軸受けによって軸支して構成することも、例えば特開昭61-256038号公報(特に、第1図に示された軸受6を参照。)に示されるように、周知の技術的事項である。
そして、引用発明に上記周知の軸受による軸支手段を適用して、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る程度のものに過ぎない。

2.相違点2について
引用発明についての実施例の記載を参酌するに、上側の水平振子(傾斜振り子単体2)の下面の水平接合面(23)と下側の水平振子の上面の水平接合面(27)を重ねることによって、複数の水平振子が連接されている。そして、該水平接合面(23)は軸(7)を介してさらに上の別の水平接合面に連接されており、同様に、該水平接合面(27)は別の軸(7)を介してさらに下の別の水平接合面に連接されている。
すなわち、引用発明における各水平振子(傾斜振り子単体2)は、(i)水平接合面(23)と水平接合面(27)との構造的な積み重ね、(ii)軸(7)を介する機構的な連接、を交互に介して連接されているものと認められる。
してみれば、引用発明も、機構的にみれば、軸を介して順次連設されているといえるから、実質的に本願発明と同じく「水平振子の複数が該軸を介して順次連設されて」いるといい得る。
よって、相違点2は実質的な差異とは認められない。

なお、仮に、本願発明が本願の図1(a)乃至(c)に示されるような実施例に限定して解釈できるとしても、複数の傾斜振子を順次連設するに際し、各振子をそれらの軸のみにより支持することにより連設することは、当業者がもっとも普通に採用する構成であることに鑑みれば、複数の傾斜振り子を連設した引用発明から、限定解釈した本願発明の構成を想到することも、当業者であれば格別困難ではないものと認められる。

3.対比・判断のむすび
よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

IV.むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そして、前記のとおり、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、本願の請求項2乃至10に係る発明について審究するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-02-28 
結審通知日 2002-03-05 
審決日 2002-03-19 
出願番号 特願平9-218355
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 直欣  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 常盤 務
長屋 陽二郎
発明の名称 免震装置  
代理人 飯田 房雄  
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