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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E02D
管理番号 1058874
審判番号 不服2001-8877  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-06-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-25 
確定日 2002-06-03 
事件の表示 平成 9年特許願第331276号「現場打ち吹付け枠工法」拒絶査定に対する審判事件〔平成11年 6月 2日出願公開、特開平11-148133、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は平成9年11月14日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1及び2」という。)は、平成13年6月22日付け手続補正書により補正された明細書および出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】 法面に網体を敷設し、次いで、この網体表面の格子状の吹付け予定枠に沿って鉄筋を配設し、上端外周が吹付け予定枠の幅方向断面形状とほぼ同じ外形形状を成す一方、下端内周が頂部に鉄筋を上から押さえ付ける保持溝を有する略三角山形状を成す起立面と、この起立面の両側下端に板面前後方向に互いに逆向きに連続して水平に延びる固定片と、起立面の左右対称位置に打ち抜き形成された開口とを備えて成る枠内埋入用のスペーサ部材を、上記保持溝に鉄筋を保持させるとともに固定片によって網体を押さえ付けた状態で吹付け予定枠の長さ方向に間隔をおいて複数個固定し、その後、スペーサ部材の起立面の上端外周に沿ってモルタルあるいはコンクリートを吹き付けることにより、起立面の上記開口と起立面下端内周の下方空間を介してスペーサ部材前後にモルタルあるいはコンクリートが連通した枠を形成する、ことを特徴とする現場打ち吹付け枠工法。
【請求項2】 請求項1記載の現場打ち吹付け枠工法であって、前記枠内埋入用のスペーサ部材が、起立面の下端内周に第一の鉄筋を上から押さえ付けて保持する第一の保持溝を有する一方、起立面の上端外周略中央に上記第二の鉄筋を下から支え保持する第二の保持溝を有し、このスペーサ部材を、網体表面の格子状の吹付け予定枠に沿って配設した第一の鉄筋を第一の保持溝によって保持させ、固定片下面によって網体を押さえ付けるようにして吹付け予定枠の長さ方向に間隔を置いて複数個固定し、第二の鉄筋を、各スペーサ部材の上記第二の保持溝に保持させつつ網体表面の格子状の吹付け予定枠に沿って配設し、その後、スペーサ部材の起立面の上端外周に沿ってモルタルあるいはコンクリートを吹き付けることにより、起立面の上記開口と起立面下端内周の下方空間を介してスペーサ部材前後にモルタルあるいはコンクリートが連通した枠を形成する、ことを特徴とする現場打ち吹付け枠工法。

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である、特開平9-144012号公報(以下、「引用例1」という。)には、特許請求の範囲、段落【0011】〜【0015】、段落【0023】〜【0026】及び図1〜図3、図6、図7の記載からみて、「法面に網状体を敷設し、次いで、この網状体表面に鉄筋を格子状に配置し、上端外周が形成される格子状法枠の幅方向断面形状とほぼ同じ外形形状を成す頂部と両脚部を有する一方、下端内周に鉄筋を上から押さえ付けるくびれを有する保持部材を有し、頂部、両脚部及び保持部材で囲まれた部分が左右対称形の開口となっている枠内埋入用の検測線材を、上記くびれに鉄筋を保持させた状態で形成される格子状法枠の長さ方向に間隔をおいて複数個固定し、その後、検測線材にしたがってモルタルあるいはコンクリートを吹き付けることにより、上記開口と下端内周の下方空間を介して検測線材前後にモルタルあるいはコンクリートが連通した枠を形成する現場打ち法枠工法。」の発明が記載されているものと認める。
同じく、特開昭58-106019号公報(以下、「引用例2」という。)には、特許請求の範囲、第2頁右上欄第7行〜左下欄第2行、第2頁左下欄第3行〜右下欄第5行、第3頁左下欄第5〜15行及び第1〜3図、第6図の記載からみて、「法面に鉄筋が配された金網を布設し、挿入切欠部を有する板状の支持片と、この支持片の下端に板面前後方向に互いに逆向きに連続して水平に延びる脚片とを備えて成る枠内埋入用の固定具を、上記挿入切欠部に鉄筋を保持させた状態で構築される法枠の長さ方向に間隔をおいて複数個固定し、その後、固定具に沿ってモルタルあるいはコンクリートを吹き付けることにより法枠を構築する方法。」の発明が記載されているものと認める。
同じく、特開平7-317077号公報(以下、「引用例3」という。)には、特許請求の範囲、【0020】〜【0025】及び図1〜図5の記載からみて、「法面に網状体を敷設し、次いで、この網状体に法枠用コイルを展延させ、コイル展延時に鉄筋を法枠用コイル上に浮設させ、格子状に法枠用コイルを設置し、法枠用コイルの上からモルタルあるいはコンクリートを吹付けて格子枠体を形成する格子枠体の施工方法。」の発明が記載されているものと認める。

3.本願発明1に関して
本願発明1と引用例1記載の発明を対比すると、引用例1記載の発明の「網状体」、「くびれ」、「検測線材」、「形成される格子状法枠」及び「現場打ち法枠工法」は、それぞれ、本願発明1の「網体」、「保持溝」、「スペーサ部材」、「吹付け予定枠」及び「現場打ち吹付け枠工法」に相当し、引用例1記載の発明の、頂部、両脚部及び保持部材は「面」を形成することから、本願発明の「起立面」に相当し、引用例1記載の発明において、格子状に配置された鉄筋は、本願発明1と同様に吹付け予定枠に沿って配設されたものである。したがって、両者は、「法面に網体を敷設し、次いで、この網体表面の格子状の吹付け予定枠に沿って鉄筋を配設し、上端外周が吹付け予定枠の幅方向断面形状とほぼ同じ外形形状を成す一方、下端内周が鉄筋を上から押さえ付ける保持溝を有する起立面と、起立面に左右対称の開口を備えて成る枠内埋入用のスペーサ部材を、上記保持溝に鉄筋を保持させた状態で吹付け予定枠の長さ方向に間隔をおいて複数個固定し、その後、スペーサ部材の起立面の上端外周に沿ってモルタルあるいはコンクリートを吹き付けることにより、起立面の上記開口と起立面下端内周の下方空間を介してスペーサ部材前後にモルタルあるいはコンクリートが連通した枠を形成する現場打ち吹付け枠工法の点で一致し、以下の点で相違する。

(1)スペーサ材の下端内周が、本願発明1では、頂部に保持溝を有する略三角山形状であるのに対し、引用例1記載の発明では、中央部にくびれを有する保持部材で下端内周を構成し、直線状である点。
(2)スペーサ材に、本願発明1では、起立面の両側下端に板面前後方向に互いに逆向きに連続して水平に延びる固定片を備えているのに対し、引用例1記載の発明では、そのような構成を有していない点。
(3)本願発明1では、起立面の左右対称位置に打ち抜き形成された開口を備えているに対し、引用例1記載の発明では、起立面に左右対称の開口は備えているが、打ち抜き形成ではなく、針金により形成されている点。
(4)本願発明1では、固定片によって網体を押さえ付けた状態で、スペーサ材を固定しているのに対し、引用例1記載の発明では、そのような構成を有していない点。

相違点(4)について検討すると、引用例2には、支持片(本願発明1の「起立面」に相当する。)の下端に板面前後方向に互いに逆向きに連続して水平に延びる脚片(本願発明1の「固定片」に相当する。)が記載されているが、この固定具は、支持片に設けられた挿入切欠部に、金網(本願発明1の「網体」に相当する。)に配された鉄筋を保持させるものであるから、引用例2には、固定片によって網体を押さえ付けることについて記載されているとは云えないし、示唆もされておらず、また自明の事項でもない。
また、引用例3には、網状体(本願発明1の「網体」に相当する。)に法枠用コイル(本願発明1の「スペーサ材」に相当する。)を設置することが記載されているが、この法枠用コイルには、本願発明1の「固定片」に相当する部材を有していないので、引用例3にも、固定片によって網体を押さえ付けることについて記載されているとは云えないし、示唆もされておらず、また自明の事項でもない。

したがって、本願発明1は、引用例1、2及び3記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.本願発明2に関して
本願発明2は、本願発明1を更に限定したものであるから、上記本願発明1についての判断と同様の理由により、上記引用例1、2及び3記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、原査定の拒絶の理由によっては、本願発明1及び2を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-03-13 
出願番号 特願平9-331276
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E02D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菊岡 智代深田 高義池谷 香次郎  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 蔵野 いづみ
鈴木 公子
発明の名称 現場打ち吹付け枠工法  
代理人 植田 茂樹  

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