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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1059040
審判番号 不服2001-1687  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-01-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-08 
確定日 2002-05-23 
事件の表示 平成10年特許願第185787号「光回路」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 1月21日出願公開、特開2000- 19569]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯及び本願発明
本願は、平成10年7月1日の出願であって、その発明は、特許請求の範囲の請求項1〜7に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、本願発明1という。)は下記のとおりのものである。
「【請求項1】 m個(mは正の整数)の1入力n出力光スイッチ(nは正の整数)の出力ポートとn個のm入力1出力光スイッチの入力ポートとをm1番目(m1は正の整数)の1入力n出力の光スイッチの出力ポートのn1番目(n1は正の整数)の出力ポートとn1番目のm入力1出力の光スイッチのm1番目の入力ポートとを接続した形態をもって分岐?選択型ネットワークをなすマトリクス光スイッチ回路において、前記1入力n出力光スイッチ及び前記m入力1出力光スイッチが電界印加によって屈折率が変化する電気光学特性を持つ材料からなる光回路であって、前記1入力n出力の光スイッチの出力ポートと前記m入力1出力の光スイッチの入力ポートとの間に夫々設けられかつ透過率を可変自在なゲート部材を有することを特徴とする光回路。」
2.刊行物に記載の発明
これに対して、原査定の拒絶理由において引用された引用文献1(特開昭59-140790号公報)には以下の事項が記載されている。
「複数個の1入力n出力(nは2以上の自然数)の光スイッチと複数個のm入力1出力(mは2以上の自然数)の光スイッチとを備え、前記1入力n出力の光スイッチの各出力端子をそれぞれ異なるm入力1出力の光スイッチの入力端子に光布線を介して接続した光スイッチマトリクスに於いて、前記光布線を介して接続された前記1入力n出力の光スイッチの各出力端子と前記m入力1出力の光スイッチの各入力端子との間それぞれに1入力1出力の光スイッチを設けたことを特徴とする光スイッチマトリクス」(1頁左下欄「2.特許請求の範囲」)
「第1図は従来の3入力3出力の光スイッチマトリクスを例示した構成図であり、1a〜1cは入力端子、2a〜2cは1入力3出力の光スイッチ、3a-1〜3a-3、3b-1〜3b-3、3c-1〜3c-3は光ファイバ、光導波路等から成る光布線、4a〜4cは3入力1出力の光スイッチである。
今、入力端子1bより光スイッチ2b、光布線3b-1、光スイッチ4aを介して出力端子5aに至る光のバスAと入力端子1cより光スイッチ2c、光布線3c-3、光スイッチ4cを介して出力端子5cに至る光のバスBとが同時に存在するとすると、バスAを介して伝達される光の一部は光スイッチ2bに於いて光布線3b-3に漏洩し、光スイッチ4cに於いて出力端子5cに漏洩する。また、バスBを介して伝送される光の一部は光スイッチ2cに於いて光布線3c-1に漏洩し、光スイッチ4aに於いて出力端子5aに漏洩する。また、光の漏洩は、これ以外にも光布線間で生じるが、光スイッチに於ける漏洩が支配的なものである。」(1頁右下欄17行〜2頁左上欄15行)
「第2図は本発明の一実施例の構成図であり、3入力3出力の光スイッチマトリクスを示している。同図に於いて、6a-1〜6a-3、6b-1〜6b-3、6c-1〜6c-3は1入力1出力の光スイッチ、7a-1〜7a-3、7b-1〜7b-3、7c-1〜7c-3、8a-1〜8a-3、8b-1〜8b-3、8c-1〜8c-3は光布線であり、他の第1図と同一符号は同一の部分を表わしている。尚、1入力1出力の光スイッチ6a-1〜6a-3、6b-1〜6b-3、6c-1〜6c-3は光のバス上のもののみがオン状態となるように制御され、他のものはオフ状態となるように制御されるものである。
今、例えば入力端子1bから光スイッチ2b、光布線7b-1、光スイッチ6b-1、光布線8b-2、光スイッチ4aを介して出力端子5aに至る光のバスDと入力端子1eから光スイッチ2c、光布線7c-3、光スイッチ6c-3、光布線8c-3、光スイッチ4cを介して出力端子5cに至る光のバスEとが同時に存在しているとする。バスDを介して伝達される光の一部は光スイッチ2bに於いて光布線7b-3に漏洩し、光スイッチ8b-3に加えられるが、1入力1出力の光スイッチ6a-1〜6a-3、6b-1〜6b-3、6c-1〜6c-3は前述したように、光のバス上のもののみがオン状態に制御され、他のものはオフ状態に制御されるものであり、光スイッチ6b-3はオフ状態であるので、光布線7b-3に漏洩した光は光スイッチ6b-3に於いて、大きく減衰されることになる。即ち、光布線7b-3に漏洩した光は光スイッチ6b-3により大きく減衰され、光スイッチ4cにはほとんど入射されないことになるので、バスEにバスDにより伝達される光が漏洩することがほとんどなくなる。また、バスEより光布線7c-1に漏洩した光は、光スイッチ6c-1により大きく減衰されることになるので、バスDにバスEにより伝達される光が漏洩することはほとんどなくなる。」(2頁右上欄8行〜同頁右下欄4行)
3.対比・判断
引用文献1に記載の「複数個の1入力n出力(nは2以上の自然数)の光スイッチ」、「複数個のm入力1出力(mは2以上の自然数)の光スイッチ」、「1入力n出力の光スイッチの各出力端子をそれぞれ異なるm入力1出力の光スイッチの入力端子に接続した光スイッチマトリクス」、「1入力n出力の光スイッチの各出力端子とm入力1出力の光スイッチの各入力端子との間それぞれに1入力1出力の光スイッチを設けたこと」、「光スイッチマトリクス」は、それぞれ本願発明1の「m個(mは正の整数)の1入力n出力光スイッチ(nは正の整数)」、「n個のm入力1出力光スイッチ」、「m1番目(m1は正の整数)の1入力n出力の光スイッチの出力ポートのn1番目(n1は正の整数)の出力ポートとn1番目のm入力1出力の光スイッチのm1番目の入力ポートとを接続したマトリクス光スイッチ回路」、「1入力n出力の光スイッチの出力ポートとm入力1出力の光スイッチの入力ポートとの間に夫々設けられたゲート部材」、「光回路」とに相当する。
そして、引用文献1に記載の「1入力n出力の光スイッチの各出力端子とm入力1出力の光スイッチの各入力端子との間それぞれに1入力1出力の光スイッチを設けた光スイッチマトリクス」は、本願発明1の「マトリクス光スイッチ回路」と同様に分岐?選択型ネットワークを構成していることは明らかである。
そこで、本願発明1と引用文献1に記載の発明とを対比すると、両者は、「m個(mは正の整数)の1入力n出力光スイッチ(nは正の整数)の出力ポートとn個のm入力1出力光スイッチの入力ポートとをm1番目(m1は正の整数)の1入力n出力の光スイッチの出力ポートのn1番目(n1は正の整数)の出力ポートとn1番目のm入力1出力の光スイッチのm1番目の入力ポートとを接続した形態をもって分岐?選択型ネットワークをなすマトリクス光スイッチ回路において、前記1入力n出力の光スイッチの出力ポートと前記m入力1出力の光スイッチの入力ポートとの間に夫々設けられたゲート部材を有することを特徴とする光回路」であって、チャネル間のクロストーク(バスDにバスEにより伝達される光が漏洩すること、及び、バスEにバスDにより伝達される光が漏洩すること)を防止するという点で一致し、以下の2点(以下、相違点1及び2という。)で相違している。
相違点1:本願発明1の「1入力n出力光スイッチ」及び「m入力1出力光スイッチ」は電界印加によって屈折率が変化する電気光学特性を持つ材料からなるのに対して、引用文献1に記載の発明の「複数個の1入力n出力(nは2以上の自然数)の光スイッチ」及び「複数個のm入力1出力(mは2以上の自然数)の光スイッチ」の材料は記載されていないという点。
相違点2:本願発明1の「ゲート」は「透過率を可変自在な部材」から成るのに対して、引用文献1に記載の「1入力1出力の光スイッチ」の部材については記載されていないという点。
そこで、上記相違点1及び2について検討する。
相違点1について
引用文献1に記載の発明の「1入力n出力光スイッチ」及び「m入力1出力光スイッチ」を電界印加によって屈折率が変化する電気光学特性を持つ材料から構成することは周知(応用物理学会光学懇話会編「光集積回路-基礎と応用-」朝倉書店発行1988年4月10日158頁〜178頁”8.光マトリックススイッチおよび変調器”参照)である。
したがって、相違点1は格別の相違ではない。
相違点2について
引用文献1に記載の発明の「1入力1出力の光スイッチ」が「透過率の可変自在な部材」で構成されることは、その動作機能からして明らかである。
したがって、相違点2は格別の相違ではない。
なお、引用文献1に記載の発明の「1入力1出力の光スイッチ」を「マッハツェンダ型光スイッチ」、「方向性結合器型光スイッチ」若しくは「デジタル型光スイッチ」のいずれかで構成することは周知(応用物理学会光学懇話会編「光集積回路-基礎と応用-」朝倉書店発行1988年4月10日158頁〜178頁”8.光マトリックススイッチおよび変調器”参照)である。
4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用文献1に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-03-22 
結審通知日 2002-03-26 
審決日 2002-04-08 
出願番号 特願平10-185787
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 宙子三橋 健二▲高▼ 芳徳  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 東森 秀朋
町田 光信
発明の名称 光回路  
代理人 京本 直樹  
代理人 河合 信明  
代理人 福田 修一  

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