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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) E04F
管理番号 1059063
審判番号 審判1997-20420  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1984-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-11-28 
確定日 2002-05-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第2119087号発明「混合材の塗布方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2119087号発明の特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2119087号発明は、その出願が昭和58年5月11日であって、平成8年12月6日に設定の登録があり、平成9年12月1日に無効審判の請求があり、平成12年5月12日付けで参加人提出の証拠提出書副本を送付したところ、平成12年7月17日に答弁書及び訂正請求書が提出され(該訂正請求書は平成13年3月12日に取下げられている。)、平成12年8月31日付けで無効理由通知書を送付したところ、平成12年11月20日に意見書及び訂正請求書が提出され、平成13年3月16日付けで訂正拒絶理由通知書を通知したところ、平成13年5月30日に意見書が提出された。

2.訂正拒絶理由の概要
本件特許発明は、本件特許出願前に国内において頒布された刊行物である「建築用吹付材ガイドブック1978」、日本建築吹付材工業会、昭和53年5月発行、第40及び41頁(平成10年(行ケ)第192号事件の甲第19号証に相当)(以下、「引用例1」といい、そこに記載された発明を「引用例発明1」という。)、「塗装と塗料’73新年特別号」、株式会社塗料出版社、昭和48年1月5日発行、「ラフトン多彩用ガンの説明及びその写真の記載の頁」(同事件の甲第8号証に相当)(以下、「引用例2」といい、そこに記載された発明を「引用例発明2」という。)、「ラフトン内部用シリーズNo.1」、鈴鹿塗料株式会社、昭和51年1月発行、「ラフトンふぶき、ラフトンさざなみの標準塗装仕様の説明及びその写真の頁」(同事件の甲第9号証に相当)(以下、「引用例3」といい、そこに記載された発明を「引用例発明3」という。)、特開昭57-127474号公報(以下、「引用例4」といい、そこに記載された発明を「引用例発明4」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、平成12年11月20日付けの訂正は、特許法134条第5項の規定によって準用する同法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正を認めない。

3.訂正請求書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明の要旨
平成12年11月20日に提出の訂正請求書において、特許権者が訂正しようとしている発明(以下、「訂正発明」という。)は、該訂正請求書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「骨材として、3〜12メッシュの範囲の粒子と12〜20メッシュの範囲の粒子と20〜50メッシュの範囲の粒子をそれぞれ含む適度に粉砕した自然石を、アクリルエマルジョンからなる合成樹脂と、増粘剤と、pH調整剤と、消泡剤と、造膜助剤中に混入してなる混合材の異なる色のもの3種類を1機のスプレーガン内の別個の3個のタンクにそれぞれ用意し、該3種類の混合材を3個の吹き付け口を有する3頭式スプレーガンの前記3個の吹き付け口から同時に吹き付け、吹き付け単位を別個とし、比較的大きな同一色部分をランダムに塗布することにより、それぞれの色の粉砕石粒子の集合体を形成し自然石様の非混合多色状に塗布し、その後、表面をグラインダーで研磨することを特徴とする外壁用混合材の塗布方法」

4.刊行物の記載事項
上記引用例1には、「3.合成樹脂エマルション砂壁状吹付材 B類 合成樹脂エマルション砂壁状吹付材B類は、JIS A 6909外装用内装用に区分されているが、現在では、展色材(バインダー)として用いる合成樹脂エマルジョンを外部適性のあるものを選び、内・外共用できるものとしている製品が多いので、ここでは一つに纏めて解説する。概要(中略)骨材に陶磁器細粒、着色けい砂、天然砕石などの加工した無機質骨材を使用するもので、つまり骨材自体に色を持ったものである。このように無機質骨材で着色されている点が、A類(2類A種)と本質的な相違点であり、吹付面はおうとつのある粗面状を呈するが、骨材自体の色やその程度の組み合わせにより、色彩範囲も広く落着いたはだ合い・色調・強固な塗膜が得られる。(中略)特長 ・自然石や陶磁のもつはだ合いに特長がある。特に2〜3色の色の違った多彩感が、ほかの砂壁状吹付材と差がある。・付着性がよく、厚付けも可能で重厚な仕上がりとなる。・自然色に近く、変色、退色が少ない。」ことが記載されている。
したがって、引用例1には、「適度に粉砕した自然石を、合成樹脂中に混入してなる混合材の異なる色のもの3種類を用いて自然色に近い色に塗布する外壁用混合材の塗布方法」が記載されているものと認められる。
次に、上記引用例2には、双胴で2頭式のスプレーガンの写真が掲載され、「“ラフトン多彩用ガン”は、ラフトンふぶき、またはラフトンさざなみを用い、簡単に多彩仕上げができるスプレーガンであります。」、「ラフトン多彩用ガン規格」には、「4.塗料ノズル口径4.0mm×2ケ」と記載され、「特長」の欄には、「ラフトンふぶき、ラフトンさざなみで塗装いたしますと、1回の吹付で変化に富んだ、まったく新しいパターンの多彩仕上げになります。」と記載されている。
また、引用例2の製品に関連する商品パンフレットである引用例3には、ラフトン内部用シリーズ標準塗装仕様として、「ラフトンふぶき(多彩仕上げゆず肌状凹凸模様)」、「ラフトンさざなみ(多彩仕上げさざなみ状模様)」、吹付材として、「ラフトンさざなみ(A色・B色)」、模様付塗装条件として、「ラフトン多彩用ガン(弊社取扱)口径4m/m 吹付圧力 2〜3kg/cm2(吹付1回) 吹付距離40〜60cm」、「ラフトン多彩用ガン(弊社取扱)口径4m/m 吹付圧力 1〜2kg/cm2(吹付1回) 吹付距離40〜60cm」と記載され、引用例2に記載された製品から得られた塗装物の商品サンプルとして、「ラフトンふぶき」「ラフトンさざなみ」には単色2色からランダムに組み合わされ、それぞれの色が均一色でなく非混合多色状の状態で塗布された商品サンプルが記載されている。
そして、引用例4の特許請求の範囲の実施態様項2の「着色骨材は無彩色を含む不透明性の骨材で、且つその粒度分布が、直径約0.05〜0.2mmの骨材:直径約0.2〜0.7mmの骨材(なお、「直径」は「直径約」の誤記と認める。):直径約0.7〜5mmの骨材=1:0.3から1.0:0.1〜0.9(容量比)であることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の複合多彩模様塗装方法」(第1頁左欄第13〜19行)、「骨材の種類としては、(中略)人工軽量骨材、プラスチックスの砕粒などを用いることができ、本質的に着色しているものあるいは顔料を骨材に塗装せしめたものもしくは陶磁器質砕粒のように焼成によって鮮やかな色を有するに至った骨材等があるが、これらは任意に選択して使用できる。係る着色骨材を用いて塗材を調整するに際し、単に1色のみでもその粒度分布を変えることにより本発明効果を露出できる」(第2頁右上欄第16〜同頁左下欄第7行)、「係る着色骨材を配合するに際し重要なことは、骨材に粒度分布を持たせることであり、即ち本発明の実施態様に従えば、骨材の粒度は大別して3種に分類され、直径約0.2〜0.7mmの骨材(以下中骨材という)、直径約0.7〜5mmの骨材(以下大骨材という)、直径約0.05〜0.2mmの骨材(以下小骨材という)に分ける。」(第2頁左下欄第13〜19行)、「本発明の塗材に用いる塗料用合成高分子は、着色骨材の色効果を効率よく発揮せしめるために半透明ないし透明性を有していることが好ましく、係る合成高分子としては(中略)アクリル酸エステル(中略)などの単重合または共重合の樹脂のエマルジョンもしくはラテックスが最も好ましいものとして供される。この他、塗料用添加剤としては、例えば造膜助剤、増粘剤、分散剤、沈殿防止剤、増泡剤、防かび剤等、通常の塗材の製法に従って配合され」(第2頁右下欄第5〜第3頁左上欄第9行)及び「このような配合剤から調整される塗材は比較的粘度を高くし、スプレー塗装(中略)の塗装方法によって任意の被塗体、即ち、コンクリート、モルタル、石綿スレート、木質材などに厚付塗布される。」(第3頁左上欄第13〜18行)の記載からみて、引用例4には、「1色のみの骨材として、5〜0.7mmの範囲の粒子(大骨材)と、0.7〜0.2mmの範囲の粒子(中骨材)と、0.2〜0.05mm(小骨材)の範囲の粒子をそれぞれ含む適度に粉砕した骨材を、アクリルエマルジョンからなる合成樹脂と、増粘剤と、造膜助剤中に混入してなるものを、スプレーガンで塗布する塗装方法」が記載されている。

5.対比判断
そこで、上記訂正発明(前者)と、上記引用例発明1(後者)とを対比検討する。
両者は、適度に粉砕した自然石を、合成樹脂中に混入してなる混合剤の異なる色のもの3種類を塗布することを特徴とする外壁用混合剤の塗布方法である点で一致し、
(1)骨材の粒子の大きさに関して、
前者が3〜12メッシュの範囲の粒子と12〜20メッシュの範囲の粒子と20〜50メッシュの範囲の粒子を含む適度に粉砕した骨材を用いているのに対して、
後者は、用いている骨材の粒子の大きさが不明な点、
(2)塗装成分に関して、
前者がアクリルエマルジョンからなる合成樹脂と、増粘剤と、pH調整剤と、消泡剤と、造膜助剤を用いているのに対して、
後者は、合成樹脂エマルジョンを用いてはいるが、その具体的成分及び他に増粘剤等の添加剤が用いられているのか否かは不明な点、
(3)塗布するスプレーガンに関して、
前者が、混合材の異なる色のもの3種類を1機のスプレーガン内の別個の3個のタンクにそれぞれ用意し、該3種類の混合材を3個の吹き付け口を有する3頭式スプレーガンの前記3個の吹き付け口から同時に吹き付けるのに対して、
後者は、どの様にして吹き付けて塗布するのか不明な点、
(4)塗布状態に関して、
前者は、吹き付け単位を別個とし、比較的大きな同一色部分をランダムに塗布することにより、それぞれの色の粉砕石粒子の集合体を形成し自然石様の非混合多色状に塗布するのに対して、後者は、どの様な状態に吹き付けるのか不明な点、
(5)グラインダーの研磨に関して、
前者が塗布後、表面をグラインダーで研磨しているのに対して、
後者は、研磨しているかどうか不明な点、
で両者は相違している。

相違点(1)について、
壁面を塗布する骨材の粒子の大きさとして、5〜0.7mm(大骨材)の範囲の粒子と、0.7〜0.2mm(中骨材)の範囲の粒子と、0.2〜0.05mmの範囲の粒子(小骨材)をそれぞれ含む適度に粉砕した骨材、即ち、骨材粒子の粒度分布が大、中、小の3種類の大きさを含んだ骨材を用いて、壁面上をスプレーガンで塗布することが引用例4には記載されている。
なお、前者の骨材粒子の大きさは、メッシュ単位で表されているが、mm単位でそれを表記するならば、3〜12メッシュは6.45〜1.40mm、12〜20メッシュは1.40〜0.79mm、20〜50メッシュは0.79〜0.30mmである。
ところで、引用例発明1と引用例発明4とが壁面上に塗布する骨材に関するものである以上、引用例発明1の3種の骨材それぞれの粒度分布として、大、中、小の3種類の大きさを含んだ骨材を用いることは、当業者が容易に推考できたことであり、その骨材を用いる際に、自然石の種類、壁面の用途、模様の表現等を考慮して、大、中、小の3種類の粒子の大きさとして前者の大きさの骨材を用いることは、単なる設計的事項である。

相違点(2)について、
適度に粉砕した骨材の塗装成分として、アクリルエマルジョンからなる合成樹脂と、増粘剤、造膜助剤の添加剤を用いることは、引用例発明4に記載されている。そして、アクリルエマルジョンからなる合成樹脂と、増粘剤、造膜助剤、それ以外の添加剤として、pH調整剤、消泡剤を用いることは、本件特許出願前に周知の技術的事項(例えば、特開昭57-27177号公報参照(同事件の甲第21号証に相当))であるから、引用例発明1の合成樹脂エマルジョンの具体的な成分として、アクリルエマルジョン及び増粘剤等の添加剤を用いることは、当業者が容易に推考できたことである。

相違点(3)について、
骨材の粒子の大きさとして、3〜12メッシュの範囲の粒子と12〜20メッシュの範囲の粒子と20〜50メッシュの範囲の粒子を含む骨材のうち、粒度の大きな骨材、例えば、12メッシュ(1.40mm)の骨材と中間の範囲の骨材、例えば、20メッシュ(0.79mm)の骨材及び粒度の小さな骨材、例えば、50メッシュ(0.30mm)の骨材を含む適宜な粒度分布を有する混合材を、引用例発明2のスプレーガンを用いて塗装することは、該スプレーガンの塗料ノズル口径が4.0mmであることからみて、可能であるものと認める。なお、特許権者は、平成12年11月17日付意見書で「乙第12号証(実験報告書)から明らかなとおり、(中略)ラフトンガンは口径が4mmであり、この中を最大12メッシュ(1.4mm)の骨材が通過する」(第6頁第4〜7行)及び平成13年5月28日付け意見書で「ラフトンガンは口径が4mmであり、この中を最大12メッシュ(1.4mm)の骨材が通過する」(第10頁19及び20行)として、大骨材の粒子の大きさが12メッシュ(1.40mm)であれば塗装が可能であることを認めている。
そうすると、引用例発明1の塗装材である、「適度に粉砕した自然石を、合成樹脂中に混入してなる混合材の異なる色のもの3種類」を、引用例発明2の2頭式のスプレーガン内の別個のタンクにそれぞれ用意するに際して、両者が建築壁面に吹き付ける塗装材とスプレーガンである以上、この異なる色のもの3種の混合材を用いて吹き付けるために、2頭式のスプレーガンに代えて3個の吹き付け口を有する3頭式のスプレーガンを用いることは、当業者が容易に推考できたことと認める。

相違点(4)について、
引用例発明3の塗装物の商品サンプルとして、「ラフトンふぶき」「ラフトンさざなみ」には単色2色からランダムに組み合わされ、それぞれの色が均一色でなく非混合多色状の状態で塗布された商品サンプルの記載からみて、引用例発明1の「適度に粉砕した自然石を、合成樹脂中に混入してなる混合材の異なる色のもの3種類」を上記した4.0mmの口径ノズルを有する3頭式のスプレーガンを用いて塗布した壁面は、均一色でなく非混合多色状に塗布されるものと認められ、また、既述したように、その3種類の骨材を選ぶに際して、自然石の種類、壁面の用途、模様の表現等を考慮して複数種類の混合材から3種類の混合材を選ぶことは単なる設計的事項であり、それを用いて塗布しさえすれば、吹き付け単位を別個とし、比較的大きな同一色部分をランダムに塗布することにより、それぞれの色の粉砕石粒子の集合体を形成し自然石様の非混合多色状に塗布することは、当業者であれば容易に推考できたことである。

相違点(5)について、
骨材で塗装した外壁の表面をグラインダーで研磨することは、本件特許出願前に周知の技術事項(例えば、特開昭49-74248号、公報特開昭57-27177号公報参照)であるから、引用例発明1の塗布方法で塗布された外壁にその周知の技術手段を採用することは、当業者が容易に推考できたことである。
そして、訂正発明によってもたらされる効果も、引用例発明1ないし4から予測できる範囲内のものであって、格別のものとはいえない。

なお、特許権者は、平成13年5月30日に提出の意見書において、相違点3の判断に対して、引用例1と引用例2とを組合わせる動機付け等がないこと、そして、相違点4の判断に対して、引用例1と引用例3とを組合わせる動機付け等がないこと、更に、特許権者が提出した平成12年11月16日付け実験報告書(乙第12号証)に基づいて、前者の効果は、引用例1〜3を組合わせても実現できないこと(意見書第10頁第12頁ないし同第11頁第12行目)、これらのことを理由に、容易性の判断の誤りを主張している。
しかしながら、上記4.刊行物の記載事項において、「引用例1には、「適度に粉砕した自然石を、合成樹脂中に混入してなる混合材の異なる色のもの3種類を用いて自然色に近い色に塗布する外壁用混合材の塗布方法」が記載されている」と認定したとおり、引用例1に記載された事項を見た当業者は、適度に粉砕した自然石の3種類を用いて外壁を塗布すれば、自然色に近い色に塗装できることが認識されているとの前提で、引用例2を組合わせることの容易性を判断したものであり、引用例1には具体的な塗布方法については記載されていないが、引用例1及び2が建築壁面に吹き付ける塗装剤とスプレーガンである以上、引用例1に記載の塗装材を塗布する方法として、引用例2に記載の2頭式スプレーガンを用いて行なうことに格別の困難性は認められず、そして、塗装する外壁が、例えば、御影石のように色が黒、灰、白の3種類の色であるならば、引用例1に記載の適度に粉砕した自然石のうち、黒、灰、白の3種類を用いて塗布するのは当然のことであるから、当業者が塗装装置として、3頭式スプレーガンを用いることは容易であると判断したものである(相違点(3)の判断)。したがって、特許権者の上記主張は、採用できない。
また、同様に、引用例1に記載された事項を見た当業者は、適度に粉砕した天然石の3種類を用いて外壁を塗布すれば、自然色に近い色に塗装できることが認識されているとの前提で、引用例3を組合わせることの容易性を判断したものであり、引用例3は、引用例2の製品に関連する商品パンフレットであり、その商品パンフレットから単色2色の色が均一色でなく非混合多色状の状態で塗布されていることは明らかであり、また、塗装する外壁の色が3種類であるならば、外壁の色を2種類から3種類に変えることは当然のことであるから、それぞれの色の粉砕石粒子の集合体を形成し自然石様の非混合多色状に塗布することは、容易であると判断したものである(相違点(4)の判断)。したがって、特許権者の上記主張も採用できない。
更に、特許権者は、上記実験報告書(乙第12号証)を根拠に、口径ノズル4mmの2頭ガンであるラフトンガンを用いて、粒子径が12〜18.5メッシュの黄土色と白色の骨材を塗布したサンプル(1)に基づいて、サンプル(2)(御影石調)と対比し「本件訂正発明の構成要件Eの「吹き付け単位を別個とし、比較的大きな同一色部分をランダムに塗布することにより、それぞれの色の粉砕石粒子の集合体を形成し自然石様の非混合多色状に塗布」は、実現できない」と主張している。ところで、サンプル(1)は、骨材の粒子径は12〜18.5メッシュ(1.4〜0.85mm)の黄土色と白色の2色の骨材を用いて塗布したものであり、その吹き付け状態は、吹き付け単位が細かくバラけてしまい、同一色部分は形成されない(実験証明書第5頁)ことを根拠に、2頭ガンであるラフトンガンでは、自然石様の非混合多色状に塗布することはできない旨主張しているが、サンプル(1)は、前者の構成要件である「骨材として、3〜12メッシュの範囲の粒子と12〜20メッシュの範囲の粒子と20〜50メッシュの範囲の粒子をそれぞれ含む適度に粉砕した自然石」を用いていないのであるから、特許権者のこの主張も採用できない。

6.本件訂正についての結論
以上検討したとおり、上記訂正発明は、上記引用例発明1ないし4及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当し、その特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正は、特許法第134条第5項の規定により準用する特許法第126条第3項の規定に違反し、認容することができない。

7.無効理由の検討
7-1.本件特許発明の要旨
本件訂正は認められないものであるから、本件特許発明の要旨は、特許された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本件特許発明」という。)と認める。
「適度に粉砕した自然石を、合成樹脂中に混入してなる混合材の異なる色のもの複数種を1機のスプレーガン内の別個のタンクにそれぞれ用意し、該複数種の混合剤を複数の吹き付け口を有する多頭式スプレーガンの別個の吹き付け口から同時に吹き付けることによって、非混合多色状に塗布することを特徴とする混合材の塗布方法」

7-2.無効理由の概要
本件特許発明は、本件特許出願前に国内において頒布された刊行物である「建築用吹付材ガイドブック1978」、日本建築吹付材工業会、昭和53年5月発行、第40及び41頁(平成10年(行ケ)第192号事件の甲第19号証に相当)(以下、「引用例1」といい、そこに記載された発明を「引用例発明1」という。)、「塗装と塗料’73新年特別号」、株式会社塗料出版社、昭和48年1月5日発行、「ラフトン多彩用ガンの説明及びその写真の記載の頁」(同事件の甲第8号証に相当)(以下、「引用例2」といい、そこに記載された発明を「引用例発明2」という。)、「ラフトン内部用シリーズNo.1」、鈴鹿塗料株式会社、昭和51年1月発行、「ラフトンふぶき、ラフトンさざなみの標準塗装仕様の説明及びその写真の頁」(同事件の甲第9号証に相当)(以下、「引用例3」といい、そこに記載された発明を「引用例発明3」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるので同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

7-3.刊行物の記載事項
これに対して、上記引用例1には、「3.合成樹脂エマルション砂壁状吹付材 B類 合成樹脂エマルション砂壁状吹付材B類は、JIS A 6909外装用内装用に区分されているが、現在では、展色材(バインダー)として用いる合成樹脂エマルジョンを外部適性のあるものを選び、内・外共用できるものとしている製品が多いので、ここでは一つに纏めて解説する。概要(中略)骨材に陶磁器細粒、着色けい砂、天然砕石などの加工した無機質骨材を使用するもので、つまり骨材自体に色を持ったものである。(中略)特長 ・自然石や陶磁のもつはだ合いに特長がある。特に2〜3色の色の違った多彩感が、ほかの砂壁状吹付材と差がある。・付着性がよく、厚付けも可能で重厚な仕上がりとなる。・自然色に近く、変色、退色が少ない。」ことが記載されている。
したがって、引用例1には、「適度に粉砕した自然石を、合成樹脂中に混入してなる混合材の異なる色のもの複数種を用いて自然色に近く塗布する外壁用混合材の塗布方法」が記載されているものと認められる。
次に、上記引用例2には、双胴で2頭式のスプレーガンの写真が掲載され、「“ラフトン多彩用ガン”は、ラフトンふぶき、またはラフトンさざなみを用い、簡単に多彩仕上げができるスプレーガンであります。」、「ラフトン多彩用ガン規格」には、「4.塗料ノズル口径4.0mm×2ケ」と記載され、「特長」の欄には、「ラフトンふぶき、ラフトンさざなみで塗装いたしますと、1回の吹付で変化に富んだ、まったく新しいパターンの多彩仕上げになります。」と記載されている。
また、引用例2の製品に関連する商品パンフレットである引用例3には、ラフトン内部用シリーズ標準塗装仕様として、「ラフトンふぶき(多彩仕上げゆず肌状凹凸模様)」、「ラフトンさざなみ(多彩仕上げさざなみ状模様)」、吹付材として、「ラフトンさざなみ(A色・B色)」、模様付塗装条件として、「ラフトン多彩用ガン(弊社取扱)口径4m/m 吹付圧力 2〜3kg/cm2(吹付1回) 吹付距離40〜60cm」、「ラフトン多彩用ガン(弊社取扱)口径4m/m 吹付圧力 1〜2kg/cm2(吹付1回) 吹付距離40〜60cm」と記載され、引用例2から記載された製品から得られた塗装物の商品サンプルとして、「ラフトンふぶき」「ラフトンさざなみ」には単色2色からランダムに組み合わされ、それぞれの色が均一色でなく非混合多色状の状態で塗布された商品サンプルが記載されている。

7-4.対比判断
そこで、上記本件特許発明(前者)と、上記引用例発明1(後者)とを対比検討する。
両者は、適度に粉砕した自然石を、合成樹脂中に混入してなる混合剤の異なる色のもの複数種類を塗布することを特徴とする外壁用混合剤の塗布方法である点で一致し、
混合剤の異なる色のもの複数種類を塗布する方法として、
前者が、「1機のスプレーガン内の別個のタンクにそれぞれ用意し、該複数種の混合剤を複数の吹き付け口を有する多頭式スプレーガンの別個の吹き付け口から同時に吹き付けることによって、非混合多色状に塗布」するのに対して、
後者は、どの様に塗布するのか不明な点、
で相違している。

上記相違点について、
引用例発明2の塗料ノズルの口径が4.0mmであることからみて、かなり粒度の大きな材料も塗装可能であるものと認められる。
そうすると、引用例発明1の塗装材である、「適度に粉砕した自然石を、合成樹脂中に混入してなる混合材の異なる色のもの複種類を」、引用例発明2の2頭式のスプレーガン内の別個のタンクにそれぞれ用意し、この2種の混合材を用いて吹き付けることは、両者が建築壁面に吹き付ける塗装材とスプレーガンである以上、当業者にとって格別の困難性なく推考できたものと認める。
そして、引用例発明3の塗装物の商品サンプルとして、「ラフトンふぶき」「ラフトンさざなみ」には単色2色からランダムに組み合わされ、それぞれの色が均一色でなく非混合多色状の状態で塗布された商品サンプルの記載からみて、引用例発明1の「適度に粉砕した自然石を、合成樹脂中に混入してなる混合材の異なる色のもの複種類を」、引用例発明2の口径が4.0mmの塗料ノズルから塗布すれば、その壁面は、均一色でなく非混合多色状に塗布されるものと認められる。
よって、前者は、上記引用例発明1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

8.むすび
したがって、本件特許発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるので同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきてある。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-03-01 
結審通知日 2002-03-06 
審決日 2002-03-26 
出願番号 特願昭58-83098
審決分類 P 1 112・ 121- ZB (E04F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 下村 周三  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 鈴木 公子
田中 弘満
登録日 1996-12-06 
登録番号 特許第2119087号(P2119087)
発明の名称 混合材の塗布方法  
代理人 小林 良平  
代理人 乕丘 圭司  
代理人 小林 良平  
代理人 池内 寛幸  
代理人 白波瀬 文夫  
代理人 足立 勉  
代理人 小林 良平  
代理人 小林 良平  
代理人 小林 良平  
代理人 佐藤 公博  
代理人 山上 和則  
代理人 鎌田 耕一  
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