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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07C |
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管理番号 | 1059140 |
審判番号 | 審判1999-17593 |
総通号数 | 31 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-09-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-10-28 |
確定日 | 2002-05-10 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 59372号「エナミン類の製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 9月21日出願公開、特開平11-255714]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明 本願は、平成10年3月11日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年3月23日付け手続補正書、及び平成13年9月20付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、「本願発明」という。) 「少なくとも一つ以上のN-H結合を有し、かつこの窒素原子は置換基として水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、又はアリール基により置換されているアミン類と末端アセチレン類とを、ルテニウム錯体の存在下に反応させることを特徴とするエナミン類の製造方法。」 2.引用例記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前の平成7年7月18日に頒布されたことが明らかな特開平7-179404号公報(以下、「引用例」という。)には、「 一般式I: 〔式中、R1及びR2は無関係に水素原子、C1〜C20-アルキル基、C5〜C8-シクロアルキル基、C7〜C18-アラルキル基、C6〜C18-アリール基又はC1〜C20-アシル基を表わし、この場合、基R1及びR2のいずれか一方は水素原子以外でなければならず、又は基R1-NR2は飽和、不飽和もしくは芳香族複素環式5員環ないし7員環の構成部分を表わし、この環は付加的に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選択された2個までのさらに別のヘテロ原子又は2個までのケト官能基を含有していてもよく、かつ付加的にベンゼン環に縮合していてもよい〕で示されるN-ビニル化合物を、一般式II: で示されるNH化合物をアセチレンと50℃〜250℃の範囲内の温度及び1〜30バールの範囲内の圧力で、触媒として作用する白金族金属の化合物の存在下で反応させることによって製造する方法において、アセチレンを反応器中で不活性ガスを用いて容量比6:1〜0.5:1で希釈し、かつアセチレンを該アセチレンが消費される割合で圧入することを特徴とする、N?ビニル化合物の製法。」【特許請求の範囲の請求項1】、「適当な触媒は、0〜8価の白金族金属の化合物、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金の化合物である。有利な白金族金属は、パラジウム、オスミウム及び特にルテニウムである。パラジウム(III)化合物、オスミウム(III)化合物及びルテニウム(III)化合物、例えばPdCl2、OsCl3、Ru(III)アセチルアセトネート及び特にRuCl3は、特に有利である。必要に応じて、他の原子価状態の白金族金属、例えば0価のルテニウムカルボニル、例えばRu3(CO)12を使用することは可能である。」【0014】、「転化すべき適当なNH化合物IIは、例えば次の通りである: - 開鎖脂肪族第一級もしくは、有利に、第二級アミン、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン又はジ-n-ブチルアミン - シクロアルキル置換アミン、例えばシクロヘキシルアミン - アリール置換アミン及びアラルキル置換アミン、例えばアニリン、n-メチルアニリン、o-、m-もしくはp-トルイジン、α-もしくはβ-ナフチルアミン、並びにベンジルアミン - 開鎖カルボン酸アミド、例えばホルムアミド、N-メチルホルムアミド、アセトアミド又はプロピオンアミド - ラクタム、例えば2-ピロリドン、δ-ブチロラクタム又はε-カプロラクタム - 開鎖もしくは有利に環状のジカルボン酸イミド、例えばスクシニミド、マレイン酸イミド又はフタルイミド - 置換もしくは部分的に未置換の複素環式窒素化合物、例えばピロリジン、2-もしくは3-ピロリン、ピペリジン、モルホリン、インドリン又はイソインドリン - 芳香族窒素複素環式化合物、例えばイミダゾール、ピロール、ピラゾール、1,2,3-もしくは1,2,4-トリアゾール、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール又は1H-アゼピン。」【0026】、「特に有利な、転化すべきNH化合物IIは、2-ピロリドン、イミダゾール及びε-カプロラクタムである。」【0028】が記載され、さらに、表1には、NH化合物として、2-ピロリドン、イミダゾール、スクシニミドを使用した例が示されている。 3.対比・判断 引用例に記載の一般式Iの化合物は、エナミン類の化合物であり、NH化合物IIは一つ以上のN-H結合を有することが明らかである。そして、引用例にはNH化合物IIとして、開鎖脂肪族アミン、シクロアルキル置換アミン、アリール置換アミン及びアラルキル置換アミン、開鎖カルボンアミド、ラクタム、開鎖もしくは環状のジカルボン酸イミド、置換もしくは部分的に未置換の複素環式窒素化合物、芳香族窒素複素環式化合物を使用できる旨、中でも2-ピロリドン、イミダゾール及びε-カプロラクタムが良い旨記載され、さらに2-ピロリドン、イミダゾール及びスクシニミドを用いた実施例が例示されていることから、NH化合物IIとして、2-ピロリドン、イミダゾール、ε-カプロラクタム及びスクシニミドが特に好適であると共に、上記の開鎖脂肪族アミン、シクロアルキル置換アミン、アリール置換アミン及びアラルキル置換アミンも、反応性の強弱の差があるとしても、これら2-ピロリドン、イミダゾール、ε-カプロラクタム及びスクシニミドと同様に、アセチレンと反応するという性質を有することは、当業者が認識できる事項である。 さらに引用例には、白金属の触媒として、ルテニウムの化合物、例えばルテニウム(III)アセチルアセテートや0価のルテニウムカルボニルを使用すること、特に実施例においてもルテニウム(III)アセチルアセテートを使用した例が示されているように、反応をルテニウム錯体の存在下で行うことも記載されている。 そこで、本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、両者は一つ以上のN-H結合を有し、かつこの窒素原子は水素原子、C1〜C20-アルキル基、C5〜C8-シクロアルキル基、C7〜C18-アラルキル基、C6〜C18-アリール基により置換されているアミンとアセチレン化合物とを、ルテニウム錯体の存在下に反応させることを特徴とするエナミン類の製造方法で軌を一にするものの、本願発明はアセチレン化合物が末端アセチレンであるのに対し、引用例では置換基を有しないアセチレンそのものである点で相違する。 この点について、例えば化学の教科書レベルの本には、カルボン酸に特有の化学的性質、2重結合に特有の化学的性質、アルコール等に特有の化学的性質とが説明されているように、2重結合、カルボキシル基、水酸基等の官能基等を有する化合物は、反応速度は異なるとしても、その官能基等が共通する化合物間において、官能基等に由来する共通した反応性を有することは当業者であれば当然に認識することである。そのような認識と、引用例のアセチレンが各種アミンと反応する旨の記載を併せてみると、アセチレンの片方の水素原子が他の置換基により置換されている、つまり分子の末端にアセチレン基がある場合でも、反応速度には違いがあるかもしれないが、アミンとの反応が進むことは当業者であれば十分に理解できることである。 そうすると、引用例に記載の発明において、アセチレンに代えて末端アセチレン化合物を反応させようとすることは当業者が容易に想到し得ることであり、それによりエナミン類を効率的に製造できるという効果は特に顕著なものとは認められない。 4.まとめ したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-02-21 |
結審通知日 | 2002-03-05 |
審決日 | 2002-03-20 |
出願番号 | 特願平10-59372 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C07C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大久保 元浩 |
特許庁審判長 |
板橋 一隆 |
特許庁審判官 |
鈴木 紀子 山田 泰之 |
発明の名称 | エナミン類の製造方法 |