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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F28F
管理番号 1059220
審判番号 不服2001-3809  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-11-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-13 
確定日 2002-06-19 
事件の表示 平成11年特許願第113230号「パイプ及び熱交換器」拒絶査定に対する審判事件〔平成12年11月 2日出願公開、特開2000-304483、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年4月21日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明(以下、請求項1、2に係る発明をそれぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成12年5月23日付、及び、平成13年4月2日付で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 円筒管の内部に、管軸に沿う方向に帯状の平坦状部分を形成し、上記円筒管は全体にわたって、上記平坦状部分を除いて、螺旋状波形に形成され、該波形の形状は、上記平坦状部分から徐々に深くなり、該平坦状部分と対称部位で一番深くなっていることを特徴とするパイプ。
【請求項2】 円筒管の内部に、管軸に沿う方向に帯状の平坦状部分を形成し、上記円筒管は全体にわたって、上記平坦状部分を除いて、螺旋状波形に形成され、該波形の形状は、上記平坦状部分から徐々に深くなり、該平坦状部分と対称部位で一番深くなっているパイプを、伝熱管として用い、かつ、上記平坦状部分が管底となるように、上記伝熱管を配置したことを特徴とする熱交換器。」

2.引用された刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由に引用された刊行物1(実公昭55-18710号公報)には、
「管壁を管軸方向に対し少くとも2つに区分させた各区分壁面のうちの一部の区分壁面を、該管軸方向の断面が適宜ピッチ長を存する波形襞面2に形成する一方、他部の区分壁面を平滑面3に形成してなる伝熱管1を、凝縮性ガス熱媒体の流通管として、前記波形襞面2を上壁面に、また平滑面3を下壁面になる如く配設したことを特徴とする凝縮用熱交換器。………
本考案は各種熱交換器就中凝縮器用熱交換器の伝熱管として好適であり、流体圧損が少く、かつ熱伝達性能が良好な伝撒管を素材とする熱交換器の構造に関する。」(第1頁左欄19〜31行)、及び、
「なお、第1図に示した管構造のほかに、本考案に係る伝熱管は丸管以外の異形管に形成したものであって、かつ、波形襞面2が外周面の縦半分或いはそれ以下の部分を占める構造であっても勿論差支えないものであり、第2図に示す如き断面三角駒状のもので、その一辺が波形襞面2を成したもの、第3図に示す如き断面小判状のもので、その短径面側の1つを波形襞面2に形成し、その他の部分の平滑面3に形成したもの等各種の変形が考えられ、それ等各変形を有する熱交換管を使用した熱交換器の何れも本考案の範囲に包含されるものである。」(第1頁右欄36行〜第2頁左欄10行)ことが図面とともに記載されている。
上記記載及び図面からみて、刊行物1には、円筒管の内部に、管軸に沿う方向に帯状の平坦状部分を形成し、上記平坦状部分を除いて、波形に形成されているパイプ、及び、該パイプを伝熱管として用い、かつ、上記平坦状部分が管底となるように、伝熱管を配置した熱交換器が記載されているといえる。

同じく、原査定の拒絶理由に引用された刊行物2(実願昭46-112353号(実開昭48-68859号)のマイクロフィルム)には、
「本考案は吸収式冷凍機、特にその吸収器および蒸発器における熱交換装置に係る。」(明細書第1頁14〜15行)、及び、
「本考案においては、平行部1外周面は、複数箇の片テーパ傾斜部分1aに分割され、これらの区分は隣接する段の平行部においてはくいちがうように配置されている。なお、図中2は撒布管を示している。
上記構成の本考案においては、上部の平行部の各区分の最小径部から流下した液滴は、次段の平行部の各区分の中間部分に落下し、その片テーパにより円周方向、軸方向に流れ、第1図中矢符で示すように斜方向の流路をたどり、その区分表面を一様にぬらすことができる。かくして、その液はまた区分の最小径部から次段の平行部に落下し、前記と同様の作用を示す。このように、液は平行部の形成する群を斜方向に過ぎることとなるため、液の平行部における滞留時間は長くなり、前記の区分表面を一様にぬらすことと相まつて、熱交換効率を向上させることができる。………
第4図の実施例は各区分大径端を傾斜させてあり、これにより第1,3図図示の実施例より長い液の滞留時間を得ている。」(明細書第3頁4行〜第4頁7行)ことが図面とともに記載されている。
上記記載及び図面からみて、刊行物2には、円筒管の内部に、管軸に沿う方向に帯状の平坦状部分を形成し、上記円筒管は全体にわたって、上記平坦状部分を除いて、管軸方向に複数の片テーパ傾斜部分が形成され、片テーパ傾斜部と片テーパ傾斜部を接続する段部の形状は、上記平坦状部分から徐々に深くなり、該平坦状部分と対称部位で一番深くなっているパイプ、及び、該パイプを伝熱管として用い、かつ、上記平坦状部分が管底となるように、伝熱管を配置した熱交換器が記載されているといえる。

同じく、原査定の拒絶理由に引用された刊行物3(実願昭60-51269号(実開昭61-170803号)のマイクロフィルム)には、
「本考案の要旨とする煙管(8)の構成は、第4〜8図に示しており、円管材(10)に対し、天地の曲面部(13)(14)は、少くとも底曲面部(14)のみは長さ方向全体に亘って一切の加工を施こさないで、左右側面に於いて、水平方向から中心部へ向かって押圧を加えて横押込変形部(15)を形成する。該各横押込変形部(15)・・・を適宜の配列に組合せて、伝熱面の拡大機能を全うする。」(明細書第4頁7〜14行)、及び、
「本考案は上記の如く、円管材(10)の底曲面部(14)には長さ方向全体に亘って一切の加工を施こさないで、左右側面に於いて、水平方向から中心部に向かって押圧し、横押込変形部(15)を形成し、該変形部を左右に対峙形成したり或いは交互形成した煙管構造としているので、清掃具で落下せしめた剥離物は底面に上下方向の凹凸が一斉排除されて均一面に成ることから、完全排出が可能となる機能上の大きな効果が得られる………」(明細書第5頁15行〜第6頁7行)ことが図面とともに記載されている。
即ち、刊行物3には、清掃具で落下せしめた剥離物の完全排出を可能とすべく、円筒管の内部に、管軸に沿う方向に帯状の平坦状部分を形成し、上記円筒管は全体にわたって、上記平坦状部分を除いて、横押込変形部が形成されたパイプ、及び、該パイプを煙管として用い、かつ、上記平坦状部分が管底となるように、煙管を配置した炉筒煙管式ボイラーが記載されている。

3.対比・判断
そこで、上記刊行物1〜3に記載の発明と、本願発明1及び2とを対比すると刊行物1〜3には、本願発明1及び2の構成要件である「上記円筒管は全体にわたって、上記平坦状部分を除いて、螺旋状波形に形成され、該波形の形状は、上記平坦状部分から徐々に深くなり、該平坦状部分と対称部位で一番深くなっている」については記載されておらず、また、示唆もされていない。
刊行物2には、段部が平坦状部分から徐々に深くなり、該平坦状部分と対称部位で一番深くなっている形状が開示されているが、該段部は片テーパ傾斜部と片テーパ傾斜部を接続する部分であって、螺旋状波形を前提とするものではない。
そして、パイプに上記段部を加工する場合と螺旋状波形を加工する場合とは、加工方法がかなり異なると認められることを勘案すると、本願発明1、2では螺旋状波形の加工を前提として、平坦状部分から徐々に深くなり該平坦状部分と対称部位で一番深くなるという形状を、連続生産により容易に、かつ、コストを抑えて制作できるという刊行物1〜3に記載された各発明には期待できない格別の効果を奏するものと認められる。

4.以上のとおりであるので、本願発明1、2は、上記刊行物1〜3に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-05-22 
出願番号 特願平11-113230
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F28F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 千壽 哲郎尾家 英樹小野 孝朗  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 原 慧
井上 茂夫
発明の名称 パイプ及び熱交換器  
代理人 中谷 武嗣  
代理人 中谷 武嗣  

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