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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B24B
管理番号 1059323
審判番号 不服2000-6757  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-03-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-08 
確定日 2002-06-06 
事件の表示 平成10年特許願第244124号「化学機械研磨用スラリーの再生装置及び再生方法」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 3月 7日出願公開、特開2000- 71172]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年8月28日の出願であって、その請求項1ないし8に係る発明は、平成14年3月7日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「 化学機械研磨装置に使用されるスラリーを再生するためのCMP用スラリーの再生装置であって、
研磨による使用済みのスラリーを回収するスラリー回収手段と、
スラリーを回収又は供給する第1及び第2のタンクと、
前記スラリー回収手段で回収された回収スラリーを前記第1又は第2のタンクへ選択して誘導する回収スラリー誘導手段と、
新液スラリーを前記第1又は第2のタンクへ選択して誘導する新液スラリー誘導手段と、
前記第1又は第2のタンクにおける前記回収スラリーと前記新液スラリーとを調合して均一濃度の再生スラリーを生成する再生スラリー生成手段と、
前記再生スラリー生成手段で生成された再生スラリーを前記化学機械研磨装置に誘導する再生スラリー誘導手段とを有し、
前記回収スラリー誘導手段及び新液スラリー誘導手段により、前記回収スラリー及び新液スラリーを誘導するタンクと、前記再生スラリーを前記化学機械研磨装置に誘導するタンクとを前記第1又は第2のタンクより択一的に選択可能とする
ことを特徴とするCMP用スラリーの再生装置。」
2.引用刊行物
これに対して、当審における平成13年12月26日付けで通知した拒絶の理由に引用した特公昭58-30112号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
a「この発明は、脆い材料(半導体、あるいはガラス、セラミックス等)を研摩剤を用いて加工するために使用する処理装置に関し、具体的には、研摩剤含有懸濁液を調製し、研摩及び仕上げ旋盤(機)の工具の作動域にこの懸濁液を供給する研摩材含有懸濁液の調製供給機に係るものである。」(第3欄第2〜7行)
b「図示した機械は、原料成分から懸濁液を調製する調製ユニット1を備え、このユニットは排出口2を介して分配ユニット3と連通している。分配ユニット3は、研摩あるいは仕上げ機6からなる工具の作動区域に上記懸濁液を供給する・・・。研摩機6は懸濁排液を集めるための貯溜槽7と連通し、貯溜槽7は排出口8を介して上記懸濁排液の浄化ユニット9と通じている。懸濁排液の浄化ユニット9は、今度は上記調製ユニット1の注入口10と連通している。調製ユニット1は、懸濁液調製用貯溜槽11と、調製済み懸濁液の貯溜槽12を備えている。槽11と12はパイプ13を介して連通している。・・・。前記槽11は蓋16を備えた密閉容器であり、ミキサ17を内部に止着してある。・・・。更に、ミキサ17の蓋16には、原料(水、研摩剤、化学的活性物質、例えば、酸、アルカリ)を槽11に供給するための供給口22を設けてある。懸濁液の液質監視装置のピックアップ23が槽11の壁に埋込まれている。・・・槽11の底部には、槽からパイプ13への懸濁液流を制御(制止)するための締切弁24を設けてある。槽11内の懸濁液量は表示装置26に電気的に接続した液面ピックアップ25により測定される。」(第5欄第22行〜第6欄第13行)
c「槽12は、出来上った懸濁液の貯溜を目的とし、・・・。槽12の底部には、この槽の排出口2を制御する締切弁29が設けてある。」(第6欄第14〜17行)
d「貯溜槽12と分配ユニット3は、パイプ37と38を介して互いに連通しており、閉回路を形成している。パイプ37内に送りポンプ39を設けてある。懸濁排液を集めるために枝パイプ40を介して研摩機6を槽7に接続してある。懸濁液を浄化するために槽7を排出口8からパイプ41により浄化ユニット9に接続してある。洗浄ユニット9の槽44と懸濁液の調製ユニット1の槽11は送りポンプ50を介装したパイプ49により連続してある。」(第7欄第15〜32行)
e「調製し、完全に混合した懸濁液は、弁24を開けると、パイプ13を通って遠心分離機14に送られ、・・・浄化した懸濁液は槽12に流れ込み、ここで貯えられる。槽12が特定液面に保たれたとき(表示装置26にピックアップ30の信号を表示するとき)、送りポンプ39により弁29を開放して懸濁液を分配ユニット3へ送る。」(第8欄第1〜13行)
f「研摩機6の操作中、懸濁液は調整弁36を通って枝パイプ5から研摩域に流入する。使用後、懸濁液はパイプ40を通って懸濁液排液貯溜用槽7に流れ、ここから排出口8とパイプ41を通って濾過器42に入る。・・・。濾過器42から懸濁液は遠心分離機43に入る。・・・。遠心分離機43において、研磨操作からの機械的排出物を懸濁液から分離し、浄化した懸濁液を槽44に入れる。この槽44に、ピックアップ48により検出して懸濁液を特定液面にして貯溜する。・・・。懸濁液が特定の水位に一旦達すると、締切弁47が開き、懸濁液をパイプ49を通して送りポンプ50により懸濁液調節ユニット1の槽11へ送る。懸濁液は研摩工程において変化するため、即ち液内の研摩剤の量が減少するため、被研摩物品への化学的浸蝕の結果、溶液のpHが減少する。従って原料成分をある量だけ懸濁液調製ユニット1内の懸濁液に加えて各成分含有量を特定水準に保つ。完全に懸濁液を混合してから、再使用の目的で槽12に送るため使用済みの懸濁液を研摩工程に数回使用できる。」(第9欄第13行〜第10欄第7行)
以上の記載事項a〜fを本願発明に照らして整理すると、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「 研摩機に使用される研摩材含有懸濁液を再生するためのCMP用研摩材含有懸濁液の調製供給機であって、
研摩による使用済みの懸濁液を回収する懸濁液排液貯溜用槽7と、
懸濁液を回収及び供給する、懸濁液調製用貯溜槽11と、該槽11の底部に設けられた締切弁24を介してパイプ13により接続された調製済み懸濁液の貯溜槽12とを備えた懸濁液調製ユニット1と、
前記懸濁液排液貯溜用槽7で回収された懸濁液を前記懸濁液調製ユニット1へ誘導する、貯溜槽7の排出口8と浄化ユニット9を接続するパイプ41、及び前記浄化ユニット9の槽44の底部に備えられた締切弁47と前記調製ユニット1の槽11の注入口10を接続する送りポンプ50を介装したパイプ49と、
原料(水、研磨剤、化学的活性物質、例えば、酸、アルカリ)を前記懸濁液調製用貯溜槽11へ供給するための供給口22と、
前記懸濁液調製用貯溜槽11における前記回収懸濁液と前記原料とを混合して均一濃度の再生懸濁液を生成するミキサ17と、
前記ミキサ17で生成された再生懸濁液を前記研摩機に誘導する、前記貯溜槽12の底部に設けられた排出口2を制御する締切弁29と前記研摩機に前記調整製み懸濁液を供給する分配ユニット3とを接続し、ポンプ39が設けられたパイプ37とを有するCMP用研磨材含有懸濁液の調製供給機。」
3.本願発明と刊行物1記載の発明との対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の「調製供給機」、「研摩剤含有懸濁液」、「懸濁液排液貯溜用槽7」、「貯溜槽7の排出口8と浄化ユニット9を接続するパイプ41、前記浄化ユニット9の槽44の底部に備えられた締切弁47と前記調製ユニット1の槽11の注入口10を接続する送りポンプ50を介装したパイプ49」、「原料(水、研摩剤、化学的活性物質、例えば、酸、アルカリ)を前記懸濁液調製用貯溜槽11へ供給するための供給口22と」、「ミキサ17」、及び「前記貯溜槽12の底部に設けられた排出口2を制御する締切弁29と前記研磨機に前記調製済み懸濁液を供給する分配ユニット3とを接続し、ポンプ39が設けられたパイプ37」は、それぞれ本願発明の「再生装置」、「スラリー」、「回収手段」、「回収スラリー誘導手段」、「新液スラリー誘導手段」、「再生スラリー生成手段」、及び「再生スラリー誘導手段」に相当し、また、刊行物1記載の「調整ユニット1の懸濁液調整用貯溜槽11」は、本願発明の「第1又は第2のタンク」対応する。そして、刊行物1記載の研磨剤含有懸濁液はCMP用であって、「研磨機」は「化学機械研磨装置」といえるので、両者は、
化学機械研磨装置に使用されるスラリーを再生するためのCMP用スラリーの再生装置であって、
研磨による使用済みのスラリーを回収するスラリー回収手段と、
スラリーを回収又は供給するタンクと、
前記スラリー回収手段で回収された回収スラリーを前記タンクへ誘導する回収スラリー誘導手段と、
新液スラリーを前記タンクへ誘導する新液スラリー誘導手段と、
前記タンクにおける前記回収スラリーと前記新液スラリーとを調合して均一濃度の再生スラリーを生成する再生スラリー生成手段と、
前記再生スラリー生成手段で生成された再生スラリーを前記化学機械研磨装置に誘導する再生スラリー誘導手段とを有するCMP用スラリーの再生装置である点で一致し、
本願発明においては、スラリーを回収又は供給する第1及び第2のタンクを有し、前記回収スラリー誘導手段及び新液スラリー誘導手段により、前記回収スラリー及び新液スラリーを誘導するタンクと、前記再生スラリーを前記化学機械研磨装置に誘導するタンクとを前記第1又は第2のタンクより択一的に選択可能とするのに対して、
刊行物1記載の発明においては、懸濁液貯溜槽11(タンク)で再生処理した再生スラリーを貯留槽12に貯留しておき、貯留槽12から再生スラリーを研磨機に送るものである点で相違している。
4.当審の判断
上記相違点について検討すると、刊行物1記載の発明においては、上記2の記載事項c、e、fを参照すると、懸濁液調整用貯溜槽11におけるCMP用スラリーの再生処理は、調整済み懸濁液の貯溜槽12からの連続的な再生スラりーの供給とは独立してバッチで処理されていることは明かであり、また、同じ装置を複数設けて、そのうちの1つの装置を準備状態とし、他の装置を使用状態として、それらを択一的に選択可能とすることにより連続的に使用して効率を上げることは、例えば、実願平1-60040号(実開平2-150150号)のマイクロフィルムに示されているように周知技術であるので、刊行物1記載の発明における懸濁液調整ユニット1の調整済み懸濁液の貯溜槽12の設置に換えて、懸濁液調整用貯溜槽11を複数設け、これら複数の貯溜槽のうち一方を回収スラリー及び新液スラリーを誘導するものとし、他方を再生スラリーを化学機械研磨装置に誘導するものに選択的に使用可能とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、本願発明の奏する効果も刊行物1記載の発明及び上記周知技術から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものでない。
5.むすび
したがって、本願発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、請求項2ないし8に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-04-01 
結審通知日 2002-04-02 
審決日 2002-04-15 
出願番号 特願平10-244124
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B24B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石原 正博小椋 正幸  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 三原 彰英
鈴木 孝幸
発明の名称 化学機械研磨用スラリーの再生装置及び再生方法  
代理人 河合 信明  
代理人 福田 修一  
代理人 京本 直樹  

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