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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04G
管理番号 1059330
審判番号 不服2001-6619  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-25 
確定日 2002-06-06 
事件の表示 平成 4年特許願第146565号「プラスチック製モデュール型枠用せき板を使用した型枠の組立方法及びプラスチック製モデュール型枠用せき板」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 3月29日出願公開、特開平 6- 88421]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成4年5月12日の出願であって、その請求項1、2に係る発明は、平成12年1月31日付け、平成13年4月25日付け、平成13年7月23日付け及び平成14年2月15日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】平板片面の幅方向に所定のピッチで長手方向にのみ延設された複数枚のリブと、両側に形成されたリブには一対でセパレータ貫通孔が形成されるように長手方向に複数個形成された半円形の凹部とを備え、バージン材を適宜の割合で混入したリサイクル可能なガラス繊維補強ポリプロピレン系から軽量構造にモデュール化して一体成型されたプラスチック製モデュール型枠用せき板を併設し、少なくとも片方の型枠は、横バタを介して前記セパレータ貫通孔にセパレータを挿通し、フォームタイで締結したことを特徴とするプラスチック製モデュール型枠用せき板を使用した型枠の使用方法。
【請求項2】平板片面の幅方向に所定のピッチで長手方向にのみ延設された複数枚のリブと、両側に形成されたリブには、一対でセパレータ貫通孔が形成されるように長手方向に複数個形成された半円形の凹部とを備え、全体がバージン材を適宜の割合で混入したリサイクル可能なガラス繊維補強ポリプロピレン系から軽量構造にモデュール化して一体成型されたことを特徴とするプラスチック製モデュール型枠用せき板。」

2 引用刊行物の記載
これに対して、当審における、平成13年12月18日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本願出願前に頒布された実公昭46-23085号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に「片側に平板状の面板1を有しこれに格子状構造物4を一体的に形成せしめ且つその周辺部に一定間隔に連結用半円孔7を設けてなる2個の半截状プラスチック型枠aおよびbを・・・接合せしめて構成したコンクリート用プラスチック型枠。」(実用新案登録請求の範囲)が記載され、「第2図において、aおよびbは本型枠を構成するそれぞれの半截状プラスチック型枠を示すものであり、・・・格子状構造物を示す。」(2欄10〜14行)、「半截状型枠aおよびbは・・・射出成型等によって容易にこれらを構成し得るものである。」(2欄15〜18行)、「本型枠はその内部格子構造のために軽量と共にまたその強度を著しく高め得るものである。」(2欄38行〜3欄1行)、「また該半円孔2は本型枠相互の連結用のものであって、適宜の連結金具を用いることによって容易に本型枠相互を連結してコンクリート用型枠装置を構成せしめ得るものである。」(3欄3〜6行)、「該連結は本型枠AおよびBのそれぞれの半円孔2の合致による円孔に挿入された連結金物のボルト5へのナット8の締付けと、・・・よって行なわれる。」(3欄9〜13行)と記載されている。第2図には、前記「本型枠」の格子状構造物が、幅方向と長手方向の仕切板及びこれらに平行な周辺部3(立ち上がり部)を有することが示されている。
以上の記載及び図面の記載によれば、引用例1には、2枚の平板状の面板1の相対する格子状構造物4を接合させて1つの板体にしたプラスチック製のコンクリート用型枠において、面板上の格子状構造物は幅方向と長手方向の仕切り板により形成されており、該面板上のこれら仕切り板にそれぞれ平行な周辺部3(立ち上がり部)には型枠相互の連結用の半円孔2が設けられており、半円孔は型枠が連結されるとき他方枠体の半円孔と合致し、連結金具が挿入される円孔となるものである、コンクリート用型枠装置を構成せしめ得る軽量構造のコンクリート用プラスチック型枠が記載されていると認められる。
同じく本願出願前に頒布された特開昭56-52263号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に「矩形平板の外周縁に沿って周縁板を立設し、同周縁板に所要間隔にて凹部を設け、連設される金属製型枠の周縁板の対応部位に、同様に凹部を設け、両対応周縁板を接合することによって両凹部間にセパ取付孔を形成した・・・補強鋼管等取付構造を有する金属製型枠。」(特許請求の範囲)が記載され、「まず型枠の・・・連設される型枠の対応周縁板(1b)(1b)を強固に接合し、凹部(2)にてセパ取付孔(3)を形成する。同孔に丸セパ(8)を取付け、その後補強用鋼管(7)を丸セパ上に載置し、コッター(9)を丸セパに設けた透孔に打込むことによって取付を完了する。」(2頁左上欄8〜14行)と記載されている。以上の記載からみて、引用例2には、型枠の周縁板に形成したセパ取付孔に丸セパ(8)(連結金具)が挿通され、丸セパ上に補強用鋼管(7)が取り付けられ、型枠は相互に連設されたものである型枠構造と、その組立て方が記載されていると認められる。
同じく本願出願前に頒布された特開平3-21769号公報(以下「引用例3」という。)には、リサイクル樹脂を含む熱可塑性樹脂から建築用エレメント(例、建築企業用の型枠要素のプレート、コンクリート型枠用のプレート等)(特許請求の範囲1〜4、7頁左上欄11〜13行、8頁左上欄9〜10行参照。)を製造することが記載されている。
同じく本願出願前に頒布された実願昭63-142746号(実開平2-64652号)のマイクロフィルム(以下「引用例4」という。)には、図面と共に、型枠の開孔部にパイプ材の「ばた」15を介してセパレータ1を挿通し締付座金でこれを固定することが記載されている(実用新案登録請求の範囲、5頁、第3図等参照。)。
同じく本願出願前に頒布された実願昭54-83483号(実開昭56-1951号)のマイクロフィルム(以下「引用例5」という。)には、図面と共に、片方の型枠の開孔部に「端太材」5を介してセパレータ8を挿通し型枠固定部材により固定し、他方の型枠では開孔部を貫通したセパレータ8を当て金2により固定することが記載されている(実用新案登録請求の範囲、5〜6頁、第1図参照。)。
同じく本願出願前に頒布された実願昭60-131053号(実開昭62-40142号)のマイクロフィルム(以下「引用例6」という。)及び特開平2-8459公報(以下「引用例7」という。)には、ガラス繊維マットを含有する熱可塑性樹脂(例、ポリプロピレン)がコンクリート型枠用材であることが記載されている。
同じく本願出願前に頒布された特開昭49-107070号公報(以下「引用例8」という。)には、ポリオレフィン系(例、ポリプロピレン系)廃棄物からポリオレフィンを精製高分子として再生することが記載され、具体的な処理対象例として建材などのプラスチック廃棄物が挙げられている(特許請求の範囲、2頁右下欄16〜3頁左上欄1行参照。)。

3 対比、判断
(1)請求項1に係る発明について
本願の請求項1に係る発明(前者)と引用例1に記載の発明(後者)を対比すると、後者に記載の面板1が有する長手方向に延びる複数の仕切板、これに平行に配置される面板1の周辺部(立ち上がり部)は明らかに「リブ」と言えるものであり、又「プラスチック型枠」は明らかに「モデュール」であり、射出成型によって製造されるものであるから(引用例1の3欄15〜18行参照。)、モデュール化して成型されたものであると言える。そして、後者においては、各仕切板が一定の間隔で配置されるものであり、周辺部に形成された半円孔は凹部を有することが自明であること、後者の「プラスチック型枠」は明らかに他の部材と共にコンクリートを打込み成形するための仮設の枠組みを構成するものであるから、「せき板」であると解されること(「建築大辞典」昭和59年2月10日 株式会社彰国社発行 262,815頁参照。)から、結局のところ、両者は、平板片面の幅方向に所定のピッチで長手方向に延設された複数枚のリブと、両側に形成されたリブには、一対で貫通孔(連結金具を通す)が形成されるように長手方向に複数個形成された半円形の凹部とを備え、プラスチックから成型され、軽量構造にモデュール化したものである、プラスチック製モデュール型枠用せき板である点で一致し、前者では、型枠用せき板が、平板片面の幅方向に所定のピッチで長手方向にのみ延設された複数枚のリブを備え、一体成型されたものであるのに対し、後者では、プラスチック型枠(せき板)は、面板の長手方向のみでなく幅方向にも所定の間隔でリブを形成した面板2枚を接合させて構成したものである点(相違点1)、前者ではプラスチック製の「せき板」の材料が「バージン材を適宜の割合で混入したリサイクル可能なガラス繊維補強ポリプロピレン系」のものであるのに対し、後者ではどのようなプラスチックか不明である点(相違点2)、前者では、型枠用せき板を併設し、型枠が横バタを介してセパレータ貫通孔にセパレータを挿通しフォームタイで締結されるものである、型枠の組立方法であるのに対し、後者ではそのことが明記されていない点(相違点3)で相違している。
そこで、上記相違点について以下検討する。
相違点1について、
型枠用せき板の強度を高めるために、その面板上に所定の間隔で補強材(リブ)が設けられるが、常に強く補強されたせき板が必要とされると言うものではない。せき板はコンクリートの側圧が小さい場所に設置する場合もあり、このような場合は補強材が減らせることは当然のことである。又、面板の一方向のみに一定の間隔で複数の補強材(リブ)を設けた木製のせき板が、締付手段との組合せで強化されて工事で用いられることも普通に知られていることである(例えば、日本コンクリート会議「コンクリート用型わく」昭和44年12月10日 株式会社技報堂発行 172〜173頁、実開平2-64652号公報、実公昭63-36120号公報参照。)。
そうすると、型枠用せき板においては面板の補強材が少なくても使用可能な場合がある上、面板の補強材を長手方向のみとした木製せき板の構造が従来より普通に知られているのであるから、引用例1に記載の発明において、格子状構造物(面板の長手方向と幅方向にリブを有す。)が形成された面板2枚を接合したプラスチック型枠を、平板(面板)の幅方向に所定のピッチで長手方向のみに複数のリブを設け一体成型されたせき板に置き換えることは当業者が容易に想到し得ることと認められ、それによりもたらされる効果も当業者の予測を越えるものではない。

相違点2について、
ガラス繊維を含有するポリプロピレンを型枠材料とすることは本願出願前周知(例えば、引用例6,7参照。)であり、又ポリプロピレンがリサイクル可能なプラスチックであることは従来より普通に知られていることである(例えば引用例8参照。)。更に、引用例8には建材のプラスチック廃棄物が再生後利用されること、ポリプロピレンはプラスチック廃棄物の一例であることが記載(1頁左下欄〜右下欄、2頁右下欄16行〜3頁左上欄1行、3頁左下欄13行参照。)されているので、このことも併せ考えると型枠材料のプラスチックとして、リサイクル可能なガラス繊維含有のポリプロピレンを採用することは当業者が容易になし得ることと認められる。
そして、リサイクル樹脂を利用した熱可塑性樹脂製の建築用エレメント(例、コンクリート型枠用のプレート)を製造する際、同時にリサイクル樹脂ではない樹脂(即ち、バージン材)を用いることは引用例3に記載されているように既に公知であるので、型枠材料としてガラス繊維含有のポリプロピレン(熱可塑性樹脂)を用いる場合に、バージン材を混入することは当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

相違点3について、
型枠の組立てに際し、横バタを介して型枠に設けた貫通孔にセパレータを挿通しフォームタイで締結することは、本願出願前周知(例えば、引用例4、同5、森宜制監修「型わく・支保工工事実務マニュアル」昭和55年10月20日 株式会社オーム社発行 20〜21頁参照。)であり、又引用例2には周縁板の凹部に連結金具を挿通するようにした、外周が引用例1のものと類似する型枠(該型枠は本願発明の「型枠用せき板」に相当する。)に対し補強鋼管、締結手段等を取付けて型枠を組立てることが記載されているので、引用例1に記載の発明において型枠(せき板)を併設し、横バタを用い、貫通孔にセパレータを挿通しフォームタイで締結することは当業者が容易に想到し得ることであると認められる。前者では発明を「型枠の組立方法」と表現しているが、この点は自明の事項の単なる付加に過ぎない。

したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用例1〜8に記載の発明及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)請求項2に係る発明について
本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の「型枠の組立方法」において使用する「プラスチック製モデュール型枠用せき板」である。
そこで、本願の請求項2に係る発明(前者)と引用例1に記載の発明(後者)とを対比するが、「プラスチック製モデュール型枠用せき板」の構成に関する対比は上記(1)の検討事項のとおりであるから、両者は、平板片面の幅方向に所定のピッチで長手方向に延設された複数枚のリブと、両側に形成されたリブには一対で貫通孔(連結金具を通す)が形成されるように長手方向に複数個形成された半円形の凹部とを備え、全体がプラスチックから成型され、軽量構造にモデュール化したものである、プラスチック製モデュール型枠用せき板である点で一致し、前者では、型枠用せき板が、平板片面の幅方向に所定のピッチで長手方向にのみ延設された複数枚のリブを備えており、一体成型されたものであるのに対し、後者では、型枠(せき板)は、面板の長手方向のみでなく幅方向にも所定の間隔でリブを形成した面板2枚を接合させて構成したものである点(相違点1)、前者ではプラスチック製の「せき板」の材料が「バージン材を適宜の割合で混入したリサイクル可能なガラス繊維補強ポリプロピレン系」のものであるのに対し、後者ではどのようなプラスチックか不明である点(相違点2)で相違する。
「相違点1」、「相違点2」についての判断は上記(1)に記載したとおりであるので、本願の請求項2に係る発明は、刊行物1、3、6〜8に記載の発明及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1及び2に係る発明は、引用例1〜8に記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-04-09 
結審通知日 2002-04-09 
審決日 2002-04-22 
出願番号 特願平4-146565
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古屋野 浩志  
特許庁審判長 嶋矢 督
特許庁審判官 鈴木 公子
中田 誠
発明の名称 プラスチック製モデュール型枠用せき板を使用した型枠の組立方法及びプラスチック製モデュール型枠用せき板  
代理人 斎藤 栄一  

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