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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B62D |
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管理番号 | 1059339 |
審判番号 | 不服2000-13255 |
総通号数 | 31 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-07-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-08-23 |
確定日 | 2002-06-28 |
事件の表示 | 平成10年特許願第377614号「電動パワーステアリング装置」〔平成12年7月18日出願公開(特開2000-198457号)、請求項の数(2)〕拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年12月28日の出願であって、その発明は、平成12年1月20日付及び平成12年9月22日付の各手続補正書により補正された明細書における、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 ステアリング系に補助操舵力を付加する電動機と、ステアリング系の操舵トルクを検出する操舵トルクセンサと、前記電動機に流れる電動機電流を検出して電動機電流信号を出力する電動機電流検出手段と、少なくとも前記操舵トルクセンサからの操舵トルク信号に基づいて目標電流信号を設定する目標電流設定手段、目標電流信号と電動機電流信号の偏差を演算する偏差演算手段、この偏差演算手段からの偏差信号に基づいて電動機制御信号を出力する駆動制御手段を有する制御手段と、電動機制御信号により前記電動機を駆動する電動機駆動手段と、を備えた電動パワーステアリング装置において、 前記制御手段は、 車載電源の電源電圧信号を検出する電源電圧検出手段と、 電源電圧信号を基準値と比較し、電源電圧信号の電圧値が一定時間連続して第一基準値以下の時には目標電流信号を時間とともに減少させ、電動機の電流を時間とともに減少させることにより補助操舵力を徐々に減少させるが、第一基準値より小さい第二基準値以下の時には電動機の電流を徐々に減少中でも直ちに目標電流信号を0にすることにより、電動機の電流を直ちに0にするフェードアウト制御手段と、 を備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。 【請求項2】 前記フェードアウト制御手段は、電源電圧信号が第一基準値以下の時には目標電流信号を時間とともに減少させるとともに、第二基準値以下の時には目標電流信号を0に制限する係数を発生する係数発生手段と、電源電圧信号と基準値との比較結果に基づいて目標電流信号と前記係数発生手段からの係数で減少または制限した目標電流信号を切り替える切替手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。」 2.原査定の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、特開平8-127355号公報(以下、引用文献1という)及び実願昭63-110538号(実開平2-30748号)のマイクロフィルム(以下、引用文献2という)を引用して、引用文献1には、「車載電源の電圧が第一の所定値以下となった時には、昇圧電圧(目標電流信号に対応)は時間とともに所定の傾斜にて減少させ、更に、車両電源の電圧が第二の所定値以下となった時に、昇圧電圧を所定の傾斜にて低下させる」という技術が示唆されており、所定の電圧低下形態として、引用文献2の従来技術の欄に記載されているように「電源電圧低下時に電動機への給電を停止する」ことは、安全性を考慮して、当業者が技術的に何等格別の困難性を有することなくなし得る事項であるから、本願の請求項1、2に係る発明は、引用文献1、2に記載され発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.当審の見解 (1)上記引用文献1には、「発明が解決しようとする課題」に関して、次のように記載されている。 「車載バッテリ1のバッテリ電圧は、負荷の大きさによって変動する。このバッテリ電圧の変動の影響をモータ7-1が受けてしまい、結果としてハンドル操舵時のアシスト力が変動してしまう。すなわち、バッテリ電圧は12Vと低く、この低いバッテリ電圧をモータ7-1へ直に印加するものとしているため、少しの電圧変動でモータ7-1の発生トルクが大きく変動し、ハンドル操舵時のアシスト力の制御が精度良く行われないという問題が生じていた。」(【0006】) 「本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、モータの小型化,使用配線の細線化を図って、システム全体としてのコストを低減することのできる、またバッテリ電圧の変動の影響を受け難いものとして精度良くアシスト力の制御を行うことのできる車両用パワーステアリングシステムを提供することにある。」(【0008】) また、引用文献1には、上記の記載に加えて、「この所定の傾斜での昇圧電圧Vout の低下により、昇圧電圧Vout は、最後にはバッテリ電圧Vinとなる」という記載(【0031】)がある。そして、「最後にはバッテリ電圧Vinとなる」との記載は、【0035】、【0038】においても繰り返されている。 (2)上記の摘示から明らかなように、引用文献1記載の発明は、モータの小型化や、システム全体としてのコストの低減を図ると共に、「アシスト力が変動」することを回避しようとするものであって、本願各発明の目的とされる「電装品等の他のシステム」の停止の回避や、「エンジンの停止」の回避については全く言及がないし、また、そのような目的と明らかに関連するような示唆があるともいえない。 もっとも、引用文献1においても「昇圧電圧Vout の低下により」、「アシスト力を徐々に違和感なく低下させ」(【0031】)としているところから、本願請求項1の発明でいう「電源電圧信号の電圧値が一定時間連続して第一基準値以下の時には目標電流信号を時間とともに減少させ、電動機の電流を時間とともに減少させることにより補助操舵力を徐々に減少させる」「フェードアウト手段」の開示はあるといえるが、あくまでも、「最後にはバッテリ電圧Vinとなる」ようにするにとどまる。 一方、引用文献2には、「バッテリ電圧が設定電圧VL以下になると電動機22への給電を停止し」(第18頁第19行〜第15行)という記載がある。しかし、この引用文献2記載の発明は、(バッテリ電圧が設定電圧VL以下となっている)時間を表す計数値gが、「所定値g0を超えているか否かを判断」して、所定値g0以下であれば電動機への給電電流を漸減させ、所定値を超えていれば給電電流を停止するというものである。(第12頁第13行〜第13頁第9行参照) (3)つまり、引用文献2には、本願請求項1の発明でいう「第二基準値」に相当するものの言及がなく、したがって、本願請求項1の発明における、「第一基準値より小さい第二基準値以下の時には電動機の電流を徐々に減少中でも直ちに目標電流信号を0にする」という構成要件の開示は、上記いずれの引用文献にもないことになる。 しかも、引用文献1記載の発明は、上述のとおり、「最後にはバッテリ電圧Vinとなる」ようにして、「アシスト力が変動」することを回避しようとするものであるから、引用文献1記載の発明において、引用文献2に開示された「バッテリ電圧が設定電圧VL以下になると電動機22への給電を停止」する構成を採用することも想定しがたい。 また、本願請求項2の発明は、本願請求項1の発明を引用して、これを更に限定したものであるから、請求項2の発明の構成についても、本願請求項1の発明と同様の理由により、当業者が容易に想到することができないことは明らかである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1、2に係る発明は、引用文献1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認めることができないから、本願については、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2002-06-10 |
出願番号 | 特願平10-377614 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B62D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 西本 浩司 |
特許庁審判長 |
神崎 潔 |
特許庁審判官 |
尾崎 和寛 ぬで島 慎二 |
発明の名称 | 電動パワーステアリング装置 |
代理人 | 下田 容一郎 |