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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01Q
管理番号 1059348
審判番号 不服2000-4134  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-11-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-03-23 
確定日 2002-06-25 
事件の表示 平成 9年特許願第117296号「携帯無線機のアンテナ構造」拒絶査定に対する審判事件〔平成10年11月17日出願公開、特開平10-308616、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成9年5月7日の出願であって、請求項1ないし4に係る発明は、平成12年4月18日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるものと認める。
「【請求項1】 携帯無線機の筐体に設けられ、棒状のストレート部を有する伸張収納可能なホイップアンテナと、該ホイップアンテナの先端部に設けられたヘリカルアンテナ給電部と、該ヘリカルアンテナ給電部に接続されたヘリカルアンテナとを備えた携帯無線機のアンテナ構造において、前記ヘリカルアンテナは、その電気長が1/2波長とされ、前記ホイップアンテナと前記ヘリカルアンテナ給電部とが絶縁体を介して容量結合され、かつその結合量は伸張時の前記ヘリカルアンテナと前記ホイップアンテナを合わせた全体の電気長が1/2波長になるように調整されていることを特徴とする携帯無線機のアンテナ構造。
【請求項2】 前記容量結合は、前記ストレート部の前記ヘリカルアンテナ給電部への挿入量により調整されることを特徴とする請求項1記載の携帯無線機のアンテナ構造。
【請求項3】 前記容量結合は、前記絶縁体の誘電率により調整されることを特徴とする請求項1記載の携帯無線機のアンテナ構造。
【請求項4】 前記ストレート部は、棒状の上部ストレート部と、収納時に該上部ストレート部を収納し伸張時に該上部ストレート部と同軸的に接続する下部ストレート部とからなることを特徴とする請求項1、2または3記載の携帯無線機のアンテナ構造。」

第2 引用例記載の発明
1.これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開平8-316724号公報(以下、「引用例1」という。)には、図1ないし図4の記載とともに「ヘリカルアンテナ部1は、図2に示すように、金属板としての銅板24と、銅板24に対向する面が銅板24と平行である金属材スリーブ26と、銅板24と金属材スリーブ26の間に挿入された第1絶縁手段としての絶縁体25と、一定間隔で巻かれ1/4波長になるよう構成されたコイル型の輻射素子としてのコイル22と、第3絶縁手段である絶縁体23と、カバー21とを備えている。コイル22は一端が銅板24に接続されており、コイル22は絶縁体23を介してコイルの間隔が一定間隔に絶縁保持され、さらに、カバー21で蓋われる構造である。」(4頁左欄32行ないし42行)、「ホイップアンテナ部3の構造は、図3に示すように、1/4波長になるよう構成されたアンテナ素子31と、内部が貫通され絶縁体で形成された第2絶縁手段であるチューブ32と、導電性を有するストッパー33とを備えている。アンテナ素子31は、材質に高弾性を有するニッケル?チタニュム合金を使用し、チューブ32の内部に挿入され貫通し、アンテナ素子31の一端はストッパー33に接続されている。チューブ32の一端には、金属材スリーブ26が固定され、他端には、固定用メタル2の抜けを防止しするストッパー33が固定される。ただし、ヘリカルアンテナ部1側に位置するアンテナ素子31他端は、チューブ32を介して金属材スリーブ26に重なる位置まで延設されている。」(4頁左欄43行ないし右欄5行)、「本発明による誘導結合を利用した伸縮可能型アンテナの1つの特徴はアンテナ素子31と金属材スリーブ26の間に絶縁体のチューブ32が挿され、金属材スリーブ26と銅板24の間には絶縁体25が挿入されていて、アンテナの引出時に、アンテナ素子31と金属材スリーブ26、そして金属材スリーブ26と銅板24の間が容量性誘導結合されることである。」(4頁右欄12行ないし19行)、「図5において、アンテナを引き出した時の前記給電点は、実際には給電点51であるが、1/4波長のコイル22と1/4波長のアンテナ素子31の間の容量性誘導結合によって、等価的に1/2波長のダイポールアンテナとして動作するようになり、コイル22とアンテナ素子31の連結部に給電点52(破線)があることと等価となる。」(4頁右欄30行ないし36行)、「一方、本発明による誘導結合を利用した伸縮可能型アンテナの他の特徴はアンテナの挿入時に、金属材スリーブ26と銅板24が容量性誘導結合されてヘリカルアンテナ部1が動作することである。」(4頁右欄37行ないし40行)、「以上のような構成とすることにより、ヘリカルアンテナ部1のコイル22及びホイップアンテナ部3のアンテナ素子31の長さが、1/4波長になるように構成し、コイル22とアンテナ素子31との間を、絶縁体、金属材スリーブ26及びチューブ32を介して容量性誘導結合させることにより、1/2波長のダイポールアンテナと等価的に動作させるため、アンテナの性能が向上する。」(5頁左欄4行ないし11行)、「以上説明したように、アンテナ引き出し時には、ヘリカルアンテナ部とホイップアンテナ部間が容量性誘導結合されるため、アンテナの有効長が長くなり、ヘリカルアンテナ部及びホイップアンテナ部の輻射効率を向上することができる。 また、アンテナ挿入時には、金属材スリーブとコイル型の輻射素子の容量性誘導結合により、アンテナはヘリカルアンテナ部の一端に容量器を接続することと等価に動作するため、ヘリカルアンテナ部の帯域幅をより広くすることが可能である。」(5頁左欄32行ないし40行)、
「その上、アンテナ引き出し時に、1/4波長になるように構成された、ヘリカルアンテナ部及びホイップアンテナ部が容量性誘導結合され、1/2波長のダイポールアンテナと等価に動作するため、ヘリカルアンテナ部及びホイップアンテナ部の性能を一層向上することができる。また、アンテナ挿入時に、アンテナ素子が電話機本体に短絡してλ/4バランを形成することにより、ヘリカルアンテナ部の動作をより安定させることができる。」(5頁右欄9行ないし17行)の記載がある。
これらの記載によれば、引用例1には、「一端に金属材スリーブ(26)が形成され、該金属材スリーブ(26)とコイル型の輻射素子(22)を容量性誘導結合させる第1絶縁手段(25)を有するヘリカルアンテナ部(1)と、前記金属材スリーブ(26)とアンテナ素子(31)を容量性誘導結合させる第2絶縁手段(32)を有し、一端に前記金属材スリーブ(26)が固定され、他端に前記アンテナ素子(31)と接続する導電性を有したストッパー(33)が固定されたホイップアンテナ部(3)と、携帯電話機本体に固定され、前記ホイップアンテナ部(3)を前記携帯電話機本体に対して摺動自由に支持し、アンテナを電話機本体に挿入した状態で前記金属材スリーブ(26)が接触して前記ヘリカルアンテナ部(1)に信号を印加し、アンテナを前記電話機本体から引き出した状態で前記ストッパー(33)が接触して前記ホイップアンテナ部(3)に信号を印加する給電支持手段(2)とを備えて構成し、誘導結合を利用した伸縮可能型アンテナ。」の発明(以下、「引用例1に記載された発明」という。)が記載されているものと認められる。

2.同じく、原査定の拒絶理由に引用された特開平8-204420号公報(以下、「引用例2」という。)には、図1ないし図4の記載とともに「アンテナ300は、筒状のアンテナ部310と、この筒状アンテナ部310にスライド自在に保持された棒状のアンテナ部320と、この棒状アンテナ部320の先端321側に固定されたヘリカル状のアンテナ部330とで構成されている。」(4頁右欄20行ないし24行)、「筒状アンテナ部310は長さがL1 の金属の筒にて形成されており、先端311には穴部が形成されこの穴部に棒状アンテナ部320が挿入されている。また、筒状アンテナ部310の基端312には筒状アンテナ部310の外径より若干大きい外径を有する金属製のストッパ部313が固定されており、基端312内に嵌め込まれたストッパ部313の受部313aには棒状アンテナ部320の基端322が嵌め込まれる凹部が形成されている。また、筒状アンテナ部310の先端311側の内壁には棒状アンテナ部320の基端322側の凸部324を保持するための受部314が突設されている。」(4頁右欄25行ないし36行)の記載がある。
これらの記載によれば引用例2には、「アンテナ部が、棒状アンテナ部と、収納時に棒状アンテナ部を収納し伸張時に該棒状アンテナ部と同軸的に接続する筒状アンテナ部とからなる携帯無線機のアンテナ構造。」の発明(以下、「引用例2に記載された発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.また、原査定の拒絶査定のときに周知例として示された特開平7-235820号公報(以下、「引用例3」という。)には、図1ないし図6の記載とともに、「しかしながら、図5および図6に示すアンテナにおいては、・・・また、このアンテナを伸長した時は1/2波長のアンテナとなり、収納した時は1/4波長のアンテナとなるため、そのアンテナインピーダンスが伸長時と収納時とで大きく異なるようになる。従って、アンテナとアンテナに給電する給電部とを、伸長時と収納時とにおいて整合させることが困難であるという問題点もある。」(3頁右欄9行ないし21行)、「なお、上記絶縁部5を設ける理由を説明すると、図1に示すアンテナにおいては上述のように、ホイップアンテナ部6とヘリカルアンテナ部2とを各々独立してアンテナとして使用するようにしている。このため、ヘリカルアンテナ部2の給電部であるスリーブ4と、ホイップアンテナ部6内のアンテナ導体8との間に静電容量が発生すると、ヘリカルアンテナ部2とホイップアンテナ部6とが電気的に結合して、それぞれのアンテナの動作に悪影響を及ぼすようになる。これを防止するためには、ヘリカルアンテナ部2とホイップアンテナ部6のアンテナ導体8との間に、静電容量の発生しない十分な距離を必要とするため、絶縁部5が設けられているのである。」(4頁右欄47行ないし5頁左欄9行)、「なお、ホイップアンテナ部、及びヘリカルアンテナ部の電気長を使用する信号の波長の約1/4波長とすると、インピーダンスを低くできるため給電を容易に行うことができる。また、ホイップアンテナ部、及びヘリカルアンテナ部の電気長を使用する信号の波長の約1/2波長とすると、オペレータの影響を受けにくいアンテナとでき、携帯電話機等には好適なアンテナとすることができる。」(6頁左欄34行ないし41行)の記載がある。
これらの記載によれば、引用例3には、「携帯電話機の筐体に設けられ、棒状のアンテナ導体を有する伸張収納可能なホイップアンテナ部と、該ホイップアンテナ部の先端部に設けられたスリーブと、該スリーブに接続されたヘリカルアンテナとを備えた携帯電話機のアンテナ構造において、前記ホイップアンテナ部と前記スリーブとの間に絶縁体が設けられ、前記ホイップアンテナ部、及びヘリカルアンテナ部は、その電気長が1/4波長または1/2波長とされる携帯電話機のアンテナ構造。」の発明(以下、「引用例3に記載された発明」という。)が記載されているものと認められる。

第3 当審の判断
1.本願の請求項1に係る発明について
本願の請求項1に係る発明と引用例1ないし3に記載された発明とを比較すると、引用例1ないし3に記載された記載の発明のいずれにも、本願の請求項1に係る発明の「ホイップアンテナとヘリカルアンテナ給電部とが絶縁体を介して容量結合され、かつその結合量は伸張時の前記ヘリカルアンテナと前記ホイップアンテナを合わせた全体の電気長が1/2波長になるように調整されていること」の構成がない点で相違する。
そして、この相違点が周知・慣用技術であるともいえないことから、本願の請求項1に係る発明は、引用例1ないし3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2.本願の請求項2ないし4に係る発明について
本願の請求項2ないし4に係る発明は、請求項1に係る発明を引用する形式で記載された発明であって、請求項1に係る発明を更に限定したものであるから、請求項1に係る発明と同様の理由により、引用例1ないし3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5.むすび
したがって、本願の請求項1ないし4に係る発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
他に拒絶すべき理由を発見することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-06-12 
出願番号 特願平9-117296
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 羽鳥 賢一赤穂 隆雄  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 山本 春樹
西脇 博志
発明の名称 携帯無線機のアンテナ構造  
代理人 河合 信明  
代理人 福田 修一  
代理人 京本 直樹  

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