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関連判例 | 平成12年(行ケ)14号審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S |
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管理番号 | 1059385 |
審判番号 | 審判1998-17930 |
総通号数 | 31 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1990-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-11-16 |
確定日 | 2001-06-29 |
事件の表示 | 昭和63年特許願第506238号「ナビゲーション及びトラッキングシステム」拒絶査定に対する審判事件〔(平成1年2月23日国際公開WO89/01637、平成2年12月27日国内公表特許出願公表平2-504673号)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、1988年7月28日(優先権主張1987年8月10日、イギリス国)を国際出願日とする出願であって、その請求項に係る発明は、平成7年7月21日付け、平成9年9月22日付け及び平成10年12月9日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。 「(1)モニターすべき移動対象物の動きの次元数に少なくとも等しい、複数の送信源(A,B,C)により送信される信号を受信するためのナビゲーション及びトラッキングシステムであって、 測定時、第1の受信局(D)は既知の位置にあり、第2の受信局(E)は移動対象物上に位置する、一対の受信局(D,E)と; 一つの受信局から他の受信局ヘリンク信号を送出する手段(F)を備え、そのリンク信号は、一つの受信局にて受信された一つの信号もしくは複数の信号に関する情報を含み、その情報から、受信局で受信された個々の信号間の位相差または時間遅延が決定される、前記手段(F)と; 他の受信局にて、移動対象物の位置変化または位置を決定するために、一つの受信局から受信した情報を、個々の送信機から直接受信された個々の信号に関する情報と比較し、受信した信号間の位相差または時間遅延、それ故、信号の位相差または時間遅延の変化、を決定するための手段(R,S,T,U)と: を備えたことを特徴とするナビゲーション及びトラッキングシステム。」(以下、「本願発明」という。) 2.引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭58-129277号公報(以下、「引用例」という)には、次のことが図面とともに記載されている。 「本発明は双曲線方式電波航行装置に係り、特に複数テレビ局から放送される電波間の位相差等を測定して移動体の位置の線を得る電波航行装置に関する。」(1頁左下欄14〜17行)、 「本発明は、新たに専用送信局を設置することなく、既存のテレビ放送局からのテレビ電波を利用した双曲線方式の電波航行装置を提供するものである。 現在、各テレビ局は極めて周波数の安定な・・・テレビ電波を送信しているので、これらのテレビ局双方の電波を同時に受信して、両電波の相対的な時間差を測定することにより位置の線を求めるもので、原理的には双曲線航法の方式であるが、従来の方式のように同期信号間の絶対時間差が決まっていて、それから予め地図を作製しておくのではなく、固定局であるモニターの測定値に基づき、移動体に設置する受信測定器において、新たに位置の線をその都度作成するものである。」(2頁左上欄12行〜同頁右上欄7行)、 「以下、第2図に示す本発明の実施例につき詳説する。位置が確定している複数のテレビ局として1,2,3の3局が示されている。それぞれの放送電波を1A,2A,3Aとすると、この電波は固定点のモニター局4および移動体5に設置された本発明による測定器6で受信測定される。まず、あらかじめ位置が確定しているモニター局において、放送電波1Aと2Aの電波の同期信号間の時間差を測定器6で測定する。・・・同期信号間の時間差はほぼ一定に保たれるが、時間的経過にともなって変動し、その変動はモニター局4で記録される。移動体5に設置した測定器6によって放送電波1Aと2Aの同期信号間の時間差を測定すると、その測定値の位置の線上に移動体が存在することになる。 さてその位置の線は、位置が既知であるTV局1,2とモニター局4との幾何学的な位置関係および、その時刻におけるモニター局4の測定値から確定的な位置の線となる。例えば移動体がテレビ局1と2を結ぶ基線上にあるときに、モニター局4における放送電波1Aと2Aの同期信号の時間差よりも、移動体で測定した時間差が2.1マイクロ秒大きかったとすると、モニター局4を通る位置の線よりもテレビ局2の方に基線上で(300メートル÷2)×2.1=315メートル寄ったところに移動体5が存在することになる。 このようなテレビ電波1Aと2Aとの間の測定をテレビ局1と3からの放送電波1Aと3Aの間についても行うと、さらにもう一本の位置の線が求められ、ロランなどの双曲線航法の場合のように、二本の位置の線の交点として、その時刻における移動体の位置が決定される。 このように、本発明によれば、直接波の電波伝搬を利用するので、伝搬理論がそのまゝ適用できる。また、移動体5では記憶計算器8により計算のプログラムが用意でき、固定点のモニター局4の測定値が点線7で示す通信線で伝搬されるか、あるいはあとで知らされると正確な移動体5の位置が較正され決定される。」(2頁右上欄18行〜同頁右下欄19行) 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用例に記載された発明とを比較すると、引用例の「テレビ局1,2,3」「モニター局4」「移動体5」「通信線7」「航行装置」がそれぞれ本願発明の「複数の送信源(A,B,C)」「第1の受信局(D)」「第2の受信局(E)」「リンク信号を送出する手段(F)」「ナビゲーションシステム」に相当することは明らかである。また引用例に、「移動体5に設置した測定器6によって放送電波1Aと2Aの同期信号間の時間差を測定する」「モニター局4における放送電波1Aと2Aの同期信号の時間差よりも、移動体で測定した時間差が2.1マイクロ秒大きかったとすると、・・・315メートル寄ったところに移動体5が存在することになる。」「直接波の電波伝搬を利用するので、伝搬理論がそのまゝ適用できる。また、移動体5では記憶計算器8により計算のプログラムが用意でき、固定点のモニター局4の測定値が点線7で示す通信線で伝搬される・・・と正確な移動体5の位置が較正され決定される。」と記載されているのは上記のとおりであるから、該引用例のものは、「固定点のモニター局4の測定値が点線7で示す通信線で伝搬され」「記憶計算器8により」「正確な移動体5の位置が較正され決定される」ものであって、これはすなわち「他の受信局にて、移動対象物の位置変化または位置を決定するために、一つの受信局から受信した情報」を示すものである。さらに、「『移動体5に設置した測定器6』によって受信された『放送電波1Aと2A』」、「『モニター局4における放送電波1Aと2Aの同期信号の時間差』及び『移動体で測定した時間差』」、「記憶計算器8」はそれぞれ本願発明の「個々の送信機から直接受信された個々の信号に関する情報」、「受信した信号間の位相差または時間遅延」、「決定するための手段(R,S,T,U)」に相当するから、結局引用例のものは、本願発明の「他の受信局にて、移動対象物の位置変化または位置を決定するために、一つの受信局から受信した情報を、個々の送信機から直接受信された個々の信号に関する情報と比較し、受信した信号間の位相差または時間遅延、それ故、信号の位相差または時間遅延の変化、を決定するための手段」をも有するものである。したがって両者は、「モニターすべき移動対象物の動きの次元数に少なくとも等しい、複数の送信源(A,B,C)により送信される信号を受信するためのナビゲーションシステムであって、測定時、第1の受信局(D)は既知の位置にあり、第2の受信局(E)は移動対象物上に位置する、一対の受信局(D,E)と;一つの受信局から他の受信局ヘリンク信号を送出する手段(F)を備え、そのリンク信号は、一つの受信局にて受信された一つの信号もしくは複数の信号に関する情報を含み、その情報から、受信局で受信された個々の信号間の位相差または時間遅延が決定される、前記手段(F)と;他の受信局にて、移動対象物の位置変化または位置を決定するために、一つの受信局から受信した情報を、個々の送信機から直接受信された個々の信号に関する情報と比較し、受信した信号間の位相差または時間遅延、それ故、信号の位相差または時間遅延の変化、を決定するための手段(R,S,T,U)と:を備えたナビゲーションシステム」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 本願発明のものは、ナビゲーション及びトラッキングシステムであるのに対し、引用例のものは、ナビゲーションシステムであって、トラッキングシステムについては記載されていない点。 上記相違点について検討すると、移動局の位置計算を固定局で行うことは周知(必要であれば、特開昭61-108982号公報参照)のことにすぎず、これはすなわちトラッキングシステムを示すものであるから、相違点の技術的事項とすることは当業者が周知技術を勘案して任意に設計し得る事項である。 そして、本願発明が奏する作用効果は引用例に記載された発明及び周知技術から予測しうる程度のものである。 4.むすび したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-07-14 |
結審通知日 | 1999-07-30 |
審決日 | 1999-08-17 |
出願番号 | 特願昭63-506238 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01S)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山下 雅人 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
渡邊 聡 森 雅之 |
発明の名称 | ナビゲーション及びトラッキングシステム |
代理人 | 青山 葆 |
代理人 | 河宮 治 |