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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B09B
管理番号 1059456
異議申立番号 異議2001-71059  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-06-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-05 
確定日 2002-03-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3097639号「厨芥処理機」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3097639号の訂正後の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3097639号は、平成5年9月22日に出願した特願平5-236201号の一部を平成9年12月12日に新たな特許出願としたものであって、平成12年8月11日にその特許の設定登録がなされ、その後、古川康彦から特許異議の申立てがあり、取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年9月7日に訂正請求(後日取下げ)がなされた後、再度の取消理由が通知されたとろ、その指定期間内である平成14年1月29日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否について
(1)訂正の内容
本件訂正請求書における訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書及び図面のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、
訂正事項a-1:特許請求の範囲の請求項1の「この厨芥ごみを加熱する加熱手段と」を「前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられ、前記厨芥ごみを加熱するヒータと」と訂正する。
訂正事項a-2:特許請求の範囲の請求項1の「上方から熱せられた空気を」を「の上方に設けられると共に前記ヒータで熱せられた空気を前記厨芥ごみ収納容器内で攪拌しながら」と訂正する。
訂正事項b:特許請求の範囲の請求項1の「前記ごみ収納容器内」を「前記厨芥ごみ収納容器内」と訂正する。
訂正事項c:特許請求の範囲の請求項1の「構成した厨芥処理機。」を「構成し、前記ヒータおよび前記攪拌ファンからなる加熱手段は、前記厨芥ごみを加熱し,この加熱により前記厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有する厨芥処理機。」と訂正する。
訂正事項d:特許請求の範囲の請求項2を削除する。
訂正事項e-1:特許請求の範囲の「【請求項3】」を「【請求項2】」と訂正する。
訂正事項e-2:特許請求の範囲の請求項3の「凝縮手段」を「凝縮部」と訂正する。
訂正事項e-3:特許請求の範囲の請求項3の「請求項1または2記載の」を「請求項1記載の」と訂正する。
訂正事項f-1:特許請求の範囲の「【請求項4】」を「【請求項3】」と訂正する。
訂正事項f-2:特許請求の範囲の請求項4の「凝縮手段」を「凝縮部」と訂正する。
訂正事項f-3:特許請求の範囲の請求項4の「請求項3または4記載の」を「請求項2記載の」と訂正する。
訂正事項g:明細書の段落【0006】の「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、厨芥ごみを収納する厨芥ごみ収納容器と、この厨芥ごみを加熱する加熱手段と、厨芥ごみ収納容器と外気を連通させた排気通路と、前記厨芥ごみ収納容器内に配され厨芥ごみを攪拌する攪拌手段と、前記厨芥ごみ収納容器上方から熱せられた空気を前記厨芥ごみに吹きつける攪拌ファンを備え、前記攪拌手段を、前記厨芥ごみ収納容器の内壁に設けた突出部と、前記ごみ収納容器内を回転する回転刃で構成したものである。この構成により、攪拌手段で厨芥ごみが攪拌され乾燥むらを防止し、さらに攪拌ファンで熱風を厨芥ごみの表面に当てることで、加熱並びに蒸気の発散が促進され、厨芥ごみの乾燥効率を大幅に高めることができるものである。また、突出部と回転刃とで乾燥が進行して固くなった厨芥ごみが粉砕され、乾燥が一層促進される。」を「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、厨芥ごみを収納する厨芥ごみ収納容器と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられ、前記厨芥ごみを加熱するヒータと、厨芥ごみ収納容器と外気を連通させた排気通路と、前記厨芥ごみ収納容器内に配され厨芥ごみを攪拌する攪拌手段と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられると共に前記ヒータで熱せられた空気を前記厨芥ごみ収納容器内で攪拌しながら前記厨芥ごみに吹きつける攪拌ファンを備え、前記攪拌手段を、前記厨芥ごみ収納容器の内壁に設けた突出部と、前記厨芥ごみ収納容器内を回転する回転刃で構成し、前記ヒータおよび前記攪拌ファンからなる加熱手段は、前記厨芥ごみを加熱し,この加熱により前記厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有するものである。この構成により、攪拌手段で厨芥ごみが攪拌され乾燥むらを防止し、攪拌ファンで熱風を厨芥ごみの表面に当てると共に、厨芥ごみから蒸発した蒸気が加熱手段によりさらに熱を得て過熱蒸気となり、この過熱蒸気が、厨芥ごみの表面に当たることで、加熱並びに蒸気の発散が促進され、厨芥ごみの乾燥効率を大幅に高めることができるものである。また、突出部と回転刃とで乾燥が進行して固くなった厨芥ごみが粉砕され、乾燥が一層促進される。」と訂正する。
訂正事項h:明細書の段落【0007】の「【発明の実施の形態】本発明の請求項1記載の発明は、厨芥ごみを収納する厨芥ごみ収納容器と、この厨芥ごみを加熱する加熱手段と、厨芥ごみ収納容器と外気を連通させた排気通路と、前記厨芥ごみ収納容器内に配され厨芥ごみを攪拌する攪拌手段と、前記厨芥ごみ収納容器上方から熱せられた空気を前記厨芥ごみに吹きつける攪拌ファンを備え、前記攪拌手段を、前記厨芥ごみ収納容器の内壁に設けた突出部と、前記ごみ収納容器内を回転する回転刃で構成したものである。この構成により、攪拌手段で厨芥ごみが攪拌され乾燥むらを防止し、さらに攪拌ファンで熱風を厨芥ごみの表面に当てることで、加熱並びに蒸気の発散が促進され、厨芥ごみの乾燥効率を大幅に高めることができるものである。また、突出部と回転刃とで乾燥が進行して固くなった厨芥ごみが粉砕され、乾燥が一層促進される。」を「【発明の実施の形態】本発明の請求項1記載の発明は、厨芥ごみを収納する厨芥ごみ収納容器と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられ、前記厨芥ごみを加熱するヒータと、厨芥ごみ収納容器と外気を連通させた排気通路と、前記厨芥ごみ収納容器内に配され厨芥ごみを攪拌する攪拌手段と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられると共に前記ヒータで熱せられた空気を前記厨芥ごみ収納容器内で攪拌しながら前記厨芥ごみに吹きつける攪拌ファンを備え、前記攪拌手段を、前記厨芥ごみ収納容器の内壁に設けた突出部と、前記厨芥ごみ収納容器内を回転する回転刃で構成し、前記ヒータおよび前記攪拌ファンからなる加熱手段は、前記厨芥ごみを加熱し,この加熱により前記厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有するものである。この構成により、攪拌手段で厨芥ごみが攪拌され乾燥むらを防止し、攪拌ファンで熱風を厨芥ごみの表面に当てると共に、厨芥ごみから蒸発した蒸気は加熱手段によりさらに熱を得て過熱蒸気となり、この過熱蒸気が厨芥ごみの表面に当たることで、加熱並びに蒸気の発散が促進され、厨芥ごみの乾燥効率を大幅に高めることができるものである。また、突出部と回転刃とで乾燥が進行して固くなった厨芥ごみが粉砕され、乾燥が一層促進される。」と訂正する。
訂正事項i:明細書の段落【0008】の「本発明の請求項2記載の発明は、加熱手段をヒーターで形成したもので、」を「また、加熱手段をヒーターで形成しているので、」と訂正する。
訂正事項j:明細書の段落【0033】の「本発明の請求項2記載の発明によれば、加熱手段をヒーターで形成したもので、」を「また、加熱手段をヒーターで形成しているので、」と訂正する。
訂正事項k:明細書の段落【0009】及び【0034】の「請求項3記載の」を「請求項2記載の」と訂正する。
訂正事項l:明細書の段落【0010】及び【0035】の「請求項4記載の」を「請求項3記載の」と訂正する。
訂正事項m:明細書の段落【0009】、【0010】、【0019】、【0020】、【0022】、【0030】、【0031】、【0034】、【0035】及び【符号の説明】の欄の「凝縮手段」を「凝縮部」と訂正する。
訂正事項n:【図2】に記載の「凝縮手段」を「凝縮部」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a-1は、明細書の段落【0013】の記載に基いて、「加熱手段」を「ヒータ」と特定すると共にヒータの設けられている位置を「上方に」と特定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項a-2は、明細書の段落【0013】の記載に基いて、攪拌ファンが設けられている位置を「上方に設けられる」と特定すると共に熱せられた空気の吹きつけ態様を「ヒータで熱せられた空気を厨芥ごみ収納容器内で攪拌しながら」と特定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項bは、前記されていない「ごみ収納容器」を前記されている「厨芥ごみ収納容器」に用語を統一したものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項cは、明細書の段落【0015】の記載に基いて、「前記ヒータおよび前記攪拌ファンからなる加熱手段は、前記厨芥ごみを加熱し,この加熱により前記厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有する」という限定を付加し、厨芥処理機の作動態様を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項dは、請求項の削除であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項e-1、e-3、f-1、k、lは、請求項を削除する訂正事項dの訂正に伴うものであり、明細書の記載を整合させるために請求項の番号の繰り上げ又は引用する請求項を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項e-2、f-2、m、nは、不明瞭であった「凝縮手段」を特定の手段を意味しない凝縮領域としての「凝縮部」と明確にしたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。そして、「凝縮部」という用語は用いられていなかったが、「凝縮手段」により本来表現しようとしていることは明細書の段落【0019】の記載及び【図2】の引出し線の指示位置から特定の手段を意味しない凝縮領域としての凝縮部であることは明らかであり、さらに、凝縮部とすることにより特別の意味を追加するものでもないから、本件特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項f-3は、請求項4において請求項4を引用したことにより不明瞭であった請求項4の引用を削除すると共に請求項を削除する訂正事項dの訂正に伴い引用する請求項3の項番号を繰り上げたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項g〜hは、訂正事項a-1〜cの訂正に伴うものであり、訂正された請求項1の記載と明細書の記載とを整合させるためにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
上記訂正事項i〜jは、請求項2を削除し、その構成を請求項1に付加した訂正事項a-1、a-2、c、dの訂正に伴うものであり、訂正された請求項1の記載と明細書の記載とを整合させるためにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
また、上記訂正事項a-1〜nは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.本件発明
本件訂正後の請求項1ないし3に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】厨芥ごみを収納する厨芥ごみ収納容器と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられ、前記厨芥ごみを加熱するヒータと、厨芥ごみ収納容器と外気を連通させた排気通路と、前記厨芥ごみ収納容器内に配され厨芥ごみを攪拌する攪拌手段と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられると共に前記ヒータで熱せられた空気を前記厨芥ごみ収納容器内で攪拌しながら前記厨芥ごみに吹きつける攪拌ファンを備え、前記攪拌手段を、前記厨芥ごみ収納容器の内壁に設けた突出部と、前記厨芥ごみ収納容器内を回転する回転刃で構成し、前記ヒータおよび前記攪拌ファンからなる加熱手段は、前記厨芥ごみを加熱し,この加熱により前記厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有する厨芥処理機。
【請求項2】排気通路中に厨芥ごみの加熱時に発生する水蒸気を凝縮する凝縮部を設けた請求項1記載の厨芥処理機。
【請求項3】厨芥ごみ収納容器を内部に装着する外容器を備え、前記外容器と厨芥ごみ収納容器との間に凝縮部を設けた請求項2記載の厨芥処理機。」
4.申立て理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として甲第1ないし4号証を提出し、請求項1に係る発明は甲第1、2号証または甲第2、4号証に記載された発明に基いて、請求項2に係る発明は甲第1、2号証に記載された発明に基いて、請求項3〜4に係る発明は甲第1〜3号証に記載された発明に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。
5.甲各号証の記載内容
甲第1号証(特開平5-96271号公報)には以下の事項が記載されている。
(a)「【実施例】以下本発明の第一の手段の実施例について図1を参照しながら説明する。11は使用者が厨芥を投入する厨芥乾燥室で、内底部に投入された厨芥を撹拌する撹拌手段12を、また側面には乾燥後の厨芥を排出する排出口14を、また熱風が吹き出される吹き出し口15と、外気を吸気する吸気□16とを有している。厨芥乾燥室11の下部には、回転軸17・カップリング18を介して前記撹拌手段12を回転駆動するモー夕13が設置されている。なお前記排出口14には、レバー19で開閉される排出弁14aが設置されている。20は脱臭装置で、耐熱性の容器21内に触媒22とヒータ23を備えている。…(中略)…24は循環空気を凝縮する凝縮装置で、熱交換器26・冷却ファン27を備えている。25は循環空気を供給する送風装置である。28は熱交換器26の底部に設け凝縮水を機外に排出するドレンホースである。前記吸気口16・送風装置25・凝縮装置24・脱臭装置20・吹き出し口15間は、各々循環経路29a・29b・29cで連結され閉ループを構成している。」(段落【0018】)
(b)「また本実施例では脱臭装置20の前後に、厨芥の酸化に必要な空気を機外から取り入れる空気取入れ口30と、厨芥の酸化空気を機外に排気する排気口31を設けている。32は厨芥乾燥室11の蓋、33は本体外カバーである。」(段落【0019】)
(c)「厨芥から発生した水蒸気は、凝縮装置24を構成する熱交換器26によって冷却されて凝縮し、凝縮水はドレンホース28より機外に排出される。」(段落【0020】)
(d)「本実施例では、厨芥乾燥室11内にスイングハンマー34aとミル34bより成る粉砕手段34を、また排出口14には専用のごみ容器35を設けている。」(段落【0023】)
(e)【図2】には本発明の第二の手段の実施例における厨芥処理機の断面図が記載され、乾燥室11の底部内壁にミル34bを突出状に設けることが図示されている。
甲第2号証(特開平5-138144号公報)には以下の事項が記載されている。
(f)「本発明は、含水率の大きい生ごみ等の廃棄物を乾燥処理或は発酵処理して、粉粒体化する廃棄物処理装置に関する。」(第1欄第16〜18行)
(g)「【0012】収容槽1及び熱風通路4の周囲は断熱材を入れた断熱壁によって包囲され、収容槽1内の上部には、その正面側から加熱器6が挿入されるように設置される。加熱器6の加熱源としてはガス等の燃焼バーナが使用されるが、電気ヒータを使用することもできる。【0013】さらに、図3、図4の断面図に示す如く、その加熱器6の加熱領域を包囲するように、多数の孔を有する遠赤外線放射多孔板7が設けられる。…(中略)…【0014】収容槽1の背面側には、熱風通路4と収容槽内上部の遠赤外線放射多孔板7内部を連通するようにダクト5が接続され.さらに、その背面上部にブロワ8が接続配置される。【0015】即ち、ブロワ8の吐出側が収容槽内上部に設けた孔9に接続され、ブロワ8の吸気側はダクト10を介して前述の熱風通路4の他端に連通接続される。収容槽内上部における孔9の側部には、下側に向けた細長い吹出し口を持つ熱風吹出ノズル11が水平に取付けられる。この熱風吹出ノズル11の表面にも、加熱時に遠赤外線を放射するセラミックコーティングが施される。【0016】したがって、ブロワ8の運転により、収容槽上部の空気は吸引されて遠赤外線放射多孔板7内に流入し、加熱器6によって加熱された熱気は、ダクト5を通して熱風通路4に入り、収容槽底部を加熱した後,ダクト10を通してブロワ8の入り、孔9を通して熱風吹出ノズル11から収容槽1内に吹出される。一方、排気ダクト12が正面側の収容槽1上部に接続される。」(第2欄第39行〜第3欄第17行)
(h)「加熱器6の運転により、収容槽1上部の遠赤外線放射多孔板7の内側に発生した熱気は、ダクト5を介して熱風通路4に導かれ、さらにダクト10を通してブロワ8に戻り、収容槽上部の熱気吹出ノズル11から熱気が槽内に吹出され、熱気は装置内を循環される。同時に排気ダクト12から排気が行われる。」(第4欄第6〜11行)
甲第3号証(特開平5-24601号公報)には以下の事項が記載されている。
(i)「図1において廃棄物1を凝縮容器3内の廃棄物収納容器2に投入した後、廃棄物投入口蓋4を閉じ、凝集容器2を処理室6内に納める…(中略)…さらに、凝縮空間を凝縮容器3とすることにより、装置全体としてコンパクト化を図ることができる。」(段落【0007】)
甲第4号証(特開平3-199183号公報)には以下の事項が記載されている。
(j)「有機廃棄物を破砕することにより如何なる有機廃棄物をも原料とすることができ、製品は粉状物で扱い易いものとすることのできる有機肥料または飼料の製造方法及び製造装置を提供することを目的とするものである。」(第2頁左上欄第18行〜右上欄第2行)
(k)「(32)は第1障害部材で、第1・第2処理室(5)(5a)の底部近傍で、第2破砕アーム(30)の回転軌跡に対応する内周面の左右にそれぞれ1対のブロック状物が2組づつ設けてあり、第1・第2処理室(5)(5a)の内周に沿って遠心力により旋回する非処理物が、この第1障害部材(32)に掛った状態で、この被処理物を第2破砕アーム(30)が打撃することによりカッテング破砕するものである。」(第4頁左上欄第5〜13行)
(l)「処理槽本体(3)の外周に沿って槽内温度を80゜〜100℃に加熱して維持できるヒーター(発熱体)(13)が設けてあり、断熱材(12)により覆われて放熱を阻止している。…(中略)…また、吸気口(9)には温風ヒーター(17)を取り付けて、吸気を加温して第1・第2処理室(5)(5a)内に温風を送り込んで、内部温度の低下を招かないようにされている。」(第3頁左上欄第19行〜右上欄第15行)
6.当審の判断
(1)請求項1に係る発明について
甲第1号証には、上記摘示事項(a)〜(e)より「厨芥を投入する厨芥乾燥室と、循環経路に設けられたヒータと、循環経路に設けられた酸化空気を機外に排気する排気口と、厨芥乾燥室内に設けられた攪拌手段と、ヒータで熱せられた熱風を吹き出し口から吹き出す送風装置を備え、攪拌手段は厨芥乾燥室内壁に突出状に設けられたミルと回転するスイングハンマーとで構成した厨芥処理機」が記載されていると云える。
そこで、本件訂正後の請求項1に係る発明(以下「訂正1発明」という)と甲第1号証に記載された発明(以下「甲1発明」という)とを対比すると、甲1発明の「厨芥」は本件訂正1発明の「厨芥ごみ」に、同じく「投入」は「収納」、「厨芥乾燥室」は「厨芥ごみ収納容器」、「突出状に設けられたミル」は「突出部」に、それぞれ相当し、甲1発明の循環経路とそこに設けられた酸化空気を機外に排気する排気口とは排気通路を構成すること、ヒータで熱せられた熱風は厨芥ごみに吹きつけられ厨芥ごみを加熱することは、明らかであるから、両者は「厨芥ごみを収納する厨芥ごみ収納容器と、前記厨芥ごみを加熱するヒータと、厨芥ごみ収納容器と外気を連通させた排気通路と、前記厨芥ごみ収納容器内に配され厨芥ごみを攪拌する攪拌手段と、前記ヒータで熱せられた空気を前記厨芥ごみに吹きつける送風手段を備え、前記攪拌手段を、前記厨芥ごみ収納容器の内壁に設けた突出部と、前記厨芥ごみ収納容器内を回転する回転部材で構成した、厨芥処理機」である点で一致し、以下の点で相違している。
(イ)ヒータが、本件訂正1発明では厨芥ごみ収納容器の上方に設けられているのに対し、甲1発明では循環経路に設けられている点。
(ロ)送風手段が、本件訂正1発明では厨芥ごみ収納容器の上方に設けられ、ヒータで熱せられた空気を厨芥ごみ収納容器内で攪拌しながら厨芥ごみに吹きつける攪拌ファンであるのに対し、甲1発明では循環経路に設けられ、ヒータで熱せられた空気を吹き出し口から厨芥ごみに吹きつける送風装置である点。
(ハ)ヒータと送風手段とからなる加熱手段が、本件訂正1発明は加熱により厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有するのに対し、甲第1号証には加熱手段が加熱により厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有することは記載されていない点。
(ニ)攪拌手段の回転部材を、本件訂正1発明は回転刃で構成しているのに対し、甲1発明はスイングハンマーで構成している点。
次に、上記相違点を検討するに、相違点(イ)〜(ハ)は相互に関連しているから、適宜総合して検討する。
相違点(イ)により、空気を媒体とした間接加熱のみの甲1発明に対し、訂正1発明は間接加熱と共にヒータからの輻射による直接加熱もされることは明らかである。また、相違点(ロ)については、甲1発明の送風装置は循環経路に設けられているため、吹き出し口からの吹きつけによる厨芥ごみ収納容器内の空気のある程度の攪拌作用はあるにしても、訂正1発明の攪拌ファンのようにそれ自体が厨芥ごみ収納容器内の熱せられた空気を積極的に攪拌するものではない。そうすると、訂正1発明は、相違点(イ)〜(ロ)に記載したヒータと攪拌ファンを厨芥ごみ収納容器の上方に設けるという構成により、ヒータにより厨芥ごみ収納容器内の空気を加熱し、熱せられた空気と相違点(ハ)に記載した過熱蒸気とは攪拌ファンにより攪拌されながら吹きつけられるものであり、加熱効率及び加熱の均一性の点において、甲1発明に比較して顕著な作用効果を奏するものと認められる。そして、この構成は、甲第1号証に記載ないし示唆されておらず、また、周知のことでもないから、少なくとも甲第1号証の記載だけから容易に導けるものではない。
そこで、この構成について甲第2ないし4号証の記載を検討する。
甲第2号証には、上記摘示事項(f)〜(h)より 、収容槽(訂正1発明の「厨芥ごみ収納容器」に相当)の上部に熱風吹出ノズル、遠赤外線放射多孔板およびそれに包囲された加熱器(訂正1発明の「ヒータ」に相当)を設け、加熱器で加熱された熱風をブロアにより熱風吹出ノズルから吹きつけると共に遠赤外線放射多孔板からの遠赤外線の放射により、生ごみ(訂正1発明の「厨芥ごみ」に相当)を乾燥処理することが記載されていると云える。この記載から、生ごみから蒸発した蒸気は遠赤外線の放射を受けさらに熱を与えられて過熱蒸気になるものと推察されるが、その過熱蒸気は一部ブロアで吸引され、収容槽底部を加熱した後、熱風吹出ノズルから吹きつけられるものであるから、吹きつけ時には冷却され過熱蒸気としての作用は少ないものと解される。また、加熱器は上部ではあるが遠赤外線放射多孔板に包囲され、攪拌ファンではなく送風手段としてのブロアが循環ダクトに接続されて設けられている。そうすると、甲第2号証には、加熱手段が厨芥ごみを加熱し,この加熱により厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有することは記載されていると云えるが、ヒータと攪拌ファンを厨芥ごみ収納容器の上方に設けるという構成は記載ないし示唆されていない。
甲第3号証には、上記摘示事項(i)より 、凝縮容器(訂正後の請求項3に係る発明の「外容器」に相当)と廃棄物収納容器(訂正後の請求項3に係る発明の「厨芥ごみ収納容器」に相当)との間に凝縮空間(訂正後の請求項3に係る発明の「凝縮部」に相当)を設けることは記載されていると云えるが、ヒータと攪拌ファンを厨芥ごみ収納容器の上方に設けるという構成は記載ないし示唆されていない。
甲第4号証には、上記摘示事項(j)〜(l)より 、吸気口及び処理槽本体の外周に沿ってヒーターを設けること並びに攪拌粉砕手段が記載されていると云えるが、ヒータと攪拌ファンを厨芥ごみ収納容器の上方に設けるという構成は記載ないし示唆されていない。
上記のとおり、少なくとも相違点(イ)〜(ロ)に記載したヒータと攪拌ファンを厨芥ごみ収納容器の上方に設ける点が甲第1ないし4号証の記載から容易に導けるものではないから、相違点(ニ)について検討するまでもなく、訂正1発明が甲第1ないし4号証に記載された発明に基いて容易に想到し得るものとすることができない。
(2)請求項2〜3に係る発明について
訂正後の請求項2に係る発明は訂正1発明を引用し、訂正後の請求項3に係る発明は訂正1発明を引用した訂正後の請求項2に係る発明を引用し、更に限定を付加したものであるから、訂正1発明が甲第1ないし4号証に記載された発明に基いて容易に想到し得るものとすることができない以上、訂正後の請求項2〜3に係る発明も、同じ理由により、甲第1ないし4号証に記載された発明に基いて容易に想到し得るものとすることができない。
7.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、訂正後の本件請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本件請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
厨芥処理機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 厨芥ごみを収納する厨芥ごみ収納容器と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられ、前記厨芥ごみを加熱するヒータと、厨芥ごみ収納容器と外気を連通させた排気通路と、前記厨芥ごみ収納容器内に配され厨芥ごみを攪拌する攪拌手段と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられると共に前記ヒータで熱せられた空気を前記厨芥ごみ収納容器内で攪拌しながら前記厨芥ごみに吹きつける攪拌ファンを備え、前記攪拌手段を、前記厨芥ごみ収納容器の内壁に設けた突出部と、前記厨芥ごみ収納容器内を回転する回転刃で構成し、前記ヒータおよび前記攪拌ファンからなる加熱手段は、前記厨芥ごみを加熱し,この加熱により前記厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有する厨芥処理機。
【請求項2】 排気通路中に厨芥ごみの加熱時に発生する水蒸気を凝縮する凝縮部を設けた請求項1記載の厨芥処理機。
【請求項3】 厨芥ごみ収納容器を内部に装着する外容器を備え、前記外容器と厨芥ごみ収納容器との間に凝縮部を設けた請求項2記載の厨芥処理機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、台所等で発生する残菜、残飯、生ごみ等の厨芥を処理する厨芥処理機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の生ごみ処理機としては、生ごみを粉砕して下水へ流すディスポーザーや生ごみを粉砕、脱水して回収する生ごみ脱水機がある。ディスポーザーは、下水処理施設のない地域では河川を汚し、環境汚染の原因になる。一方、生ごみ脱水機は、脱水した生ごみを回収するので直接には環境汚染の原因にはならないが、回収した生ごみは放置しておくと腐敗しやすく悪臭を発生する。そのために脱水回収した生ごみを低温で保管したり、頻繁に公共のごみ収集場所へ出して、処理しなければならないなど環境汚染の原因になったり、生ごみ処理機で処理した後の処理に手間がかかるという問題を有していた。
【0003】
この問題を解決するため生ごみを粉砕焼却することにより、元の体積、重量を低減するとともに腐敗を防ぎ、後処理に手間の掛からない生ごみ処理機が考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この粉砕焼却タイプの生ごみ処理機は、大電力を消費すると同時に高価なものであった。
【0005】
本発明は、厨芥処理機を安価に構成して提供することを目的とする。
また、排水処理のしやすい構成を提供することも目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、厨芥ごみを収納する厨芥ごみ収納容器と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられ、前記厨芥ごみを加熱するヒータと、厨芥ごみ収納容器と外気を連通させた排気通路と、前記厨芥ごみ収納容器内に配され厨芥ごみを攪拌する攪拌手段と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられると共に前記ヒータで熱せられた空気を前記厨芥ごみ収納容器内で攪拌しながら前記厨芥ごみに吹きつける攪拌ファンを備え、前記攪拌手段を、前記厨芥ごみ収納容器の内壁に設けた突出部と、前記厨芥ごみ収納容器内を回転する回転刃で構成し、前記ヒータおよび前記攪拌ファンからなる加熱手段は、前記厨芥ごみを加熱し,この加熱により前記厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有するものである。この構成により、攪拌手段で厨芥ごみが攪拌され乾燥むらを防止し、攪拌ファンで熱風を厨芥ごみの表面に当てると共に、厨芥ごみから蒸発した蒸気が加熱手段によりさらに熱を得て過熱蒸気となり、この過熱蒸気が、厨芥ごみの表面に当たることで、加熱並びに蒸気の発散が促進され、厨芥ごみの乾燥効率を大幅に高めることができるものである。また、突出部と回転刃とで乾燥が進行して固くなった厨芥ごみが粉砕され、乾燥が一層促進される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1記載の発明は、厨芥ごみを収納する厨芥ごみ収納容器と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられ、前記厨芥ごみを加熱するヒータと、厨芥ごみ収納容器と外気を連通させた排気通路と、前記厨芥ごみ収納容器内に配され厨芥ごみを攪拌する攪拌手段と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられると共に前記ヒータで熱せられた空気を前記厨芥ごみ収納容器内で攪拌しながら前記厨芥ごみに吹きつける攪拌ファンを備え、前記攪拌手段を、前記厨芥ごみ収納容器の内壁に設けた突出部と、前記厨芥ごみ収納容器内を回転する回転刃で構成し、前記ヒータおよび前記攪拌ファンからなる加熱手段は、前記厨芥ごみを加熱し,この加熱により前記厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有するものである。この構成により、攪拌手段で厨芥ごみが攪拌され乾燥むらを防止し、攪拌ファンで熱風を厨芥ごみの表面に当てると共に、厨芥ごみから蒸発した蒸気は加熱手段によりさらに熱を得て過熱蒸気となり、この過熱蒸気が厨芥ごみの表面に当たることで、加熱並びに蒸気の発散が促進され、厨芥ごみの乾燥効率を大幅に高めることができるものである。また、突出部と回転刃とで乾燥が進行して固くなった厨芥ごみが粉砕され、乾燥が一層促進される。
【0008】
また、加熱手段をヒーターで形成しているので、マグネトロンのような高価でかつ耐久性の低い加熱手段と異なり、安価で高耐久の加熱手段を形成できるものである。
【0009】
本発明の請求項2記載の発明は、排気通路中に厨芥ごみの加熱時に発生する水蒸気を凝縮する凝縮部を設けることにより、空気中に放出される水蒸気の量を軽減し、厨芥処理機の屋内での使用を可能にすることができるものである。
【0010】
本発明の請求項3記載の発明は、厨芥ごみ収納容器を内部に装着する外容器を備え、前記外容器と厨芥ごみ収納容器との間に凝縮部を設けるようにしたので、別途凝縮部を設ける事なく、厨芥ごみ収納容器の周囲を凝縮用のスペースとして活用でき、本体の小型化が出来るものである。
【0011】
【実施例】
(実施例1)
以下、本発明の第1の実施例について、図1を参照しながら説明する。
【0012】
図1において、1は厨芥ごみ収納容器で、この厨芥ごみ収納容器1内には厨芥ごみを粉砕、攪拌する手段として固定刃2、回転刃3を設けている。固定刃2は厨芥ごみ収納容器1の内壁に突出するように設けられ、回転刃3は厨芥ごみ収納容器1の底面から突き出した回転軸4に固定されている。この回転軸4は駆動モータ5、減速装置6を介した駆動軸7と係合されている。
【0013】
厨芥ごみ収納容器1の上方には、厨芥ごみを加熱する手段としてのヒータ8と、前記ヒータ8により熱せられた空気を攪拌しながら厨芥ごみの表面に吹きつけるための攪拌ファン9が設けられている。
【0014】
10は攪拌ファン9を回転駆動するためのファンモータである。また、厨芥ごみ収納容器1の外周側には外容器11が配され、前記外容器11の下部には凝縮水流出パイプ14を介して凝縮水容器16が接続されている。蓋19は外容器11の上部開口部11aを覆うようにかつパッキン21を介し係止手段20により外容器11の上部に固定されて密閉状態になるようにしている。
【0015】
以上のように構成された厨芥処理機について、その動作を説明する。
厨芥ごみ収納容器1に投入された厨芥ごみは、加熱手段としてのヒータ8と攪拌ファン9で厨芥ごみの表面上部を加熱する。熱を得て厨芥ごみから水分が蒸発し、この蒸気はさらに熱を得て過熱蒸気となる。回転刃3の駆動と固定刃4とによる粉砕、攪拌が行われると、水分が減少した厨芥ごみの表面上部がまだ多量の水分を含んだ内部と混ざって吸水し、以降順次表面上部と内部とが混ざりあわされ、加熱手段による加熱に加えて前記過熱蒸気とで厨芥ごみの乾燥が効率よく進行する。
【0016】
厨芥ごみから発生した臭気成分を含んだ水蒸気は、外容器11の上部が蓋19およびパッキン21で密閉されているため、内圧によって水蒸気が外容器11と厨芥ごみ収納容器1の間に流れ込み、外側表面が外気に曝されている外容器11の内壁に接触して冷却され凝縮する。そして凝縮された液は凝縮水流出パイプ14を通り凝縮水容器16に溜まる。
【0017】
以上のように、厨芥ごみの乾燥は効率よく行われると共に、凝縮水は凝縮水容器16を取り外して捨てるだけで良く使い勝手の良い厨芥処理機を提供できるものである。
【0018】
(実施例2)
次に第2の実施例を図2を用いて説明する。なお、上記実施例と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0019】
図2において、厨芥ごみ収納容器1の外周側には外容器11を備え、外容器11と厨芥ごみ収納容器1との間に水蒸気を凝縮させる凝縮部12を構成し、外容器11は送風ファン13によって冷却されるようにしている。
【0020】
凝縮部12の下部には凝縮水流出パイプ14と連通した排気管15を設けている。さらに排気パイプ15の下流側には、出口を開放させた触媒反応器17を接続している。なお、18は厨芥処理機本体、19は蓋である。
【0021】
蓋19は、ヒンジ20を介して厨芥芥処理機本体18に開閉自在に取着され、閉成時はパッキン21を挟み込み、ラッチ22で蓋19と厨芥処理機本体18が固定されて密閉状態になるようにしている。23はラッチ22の開錠ボタンである。
【0022】
以上のように構成された厨芥処理機について、その動作を説明する。厨芥ごみから発生した臭気成分を含んだ水蒸気は、厨芥処理機本体18の上部が蓋19およびパッキン21で密閉されているため、内圧によって出口を開放させた触媒反応器17側へ向かい、まず凝縮部12へ流入し、外容器11に接触して冷却されて凝縮し、凝縮部12に接続した凝縮水流出パイプ14により排出され凝縮水容器16に溜まる。
【0023】
一方、凝縮しきれなかった臭気成分を含む水蒸気は排気パイプ15から触媒反応器17へ導かれ臭気成分は浄化される。粉砕、乾燥された厨芥ごみは、厨芥ごみ収納容器1に残るが、嵩が減っており、また、乾燥して水分活性が低下しているので、そのまま厨芥ごみ収納容器1内に入れていても、腐敗したりカビが発生することはない。したがって厨芥ごみ収納容器1が一杯になるまで、乾燥した生ごみの上に、次々生ごみを入れて乾燥処理することができる。
【0024】
そして、厨芥ごみ収納容器1に残った乾燥済み厨芥ごみと凝縮水容器16に溜まった凝縮水を定期的に回収、処理する。
【0025】
なお、外容器11内と厨芥ごみを加熱する加熱手段部とはパッキン21により密閉構造とし、かつ外容器11内で生成された凝縮水を収納する凝縮水容器16とは密閉接続とすることで、処理時に発生する臭気成分は触媒反応器17を通してのみ外気に開放することになり、厨芥ごみから発生する臭気成分を未処理のまま外部に洩らすことなく、触媒反応器17で脱臭して排出することができ、このため快適に厨芥ごみを乾燥処理できるものとなる。
【0026】
また、図3に示すように、外容器11内にて生成された凝縮水を凝縮水容器16に収納する代わりに、排水トラップ31を通して下水管等に直接廃棄するようにパイプ32を設けると、凝縮水容器16を都度取り外して、凝縮水をいちいち廃棄することが不要となり、さらに凝縮水容器16を廃止することでより安価で、また使い易い厨芥処理機を提供することもできる。
【0027】
さらに、厨芥ごみ収納容器1を合成樹脂等の熱伝導の少ない断熱部材で形成することで厨芥ごみ収納容器1の断熱効果が増し、加熱と凝縮時の加熱効果および凝縮効果をより向上させることができ、また安価に構成することができる。
【0028】
また、厨芥ごみ収納容器1の断熱効果をより一層あげる方法として、図4に示すようにその厨芥ごみ収納容器1の壁を、空気層25を有する二重の壁で構成した断熱部材26で形成しても良い。これだと単に空気層の二重壁の収納容器としているため安価に構成することができる。
【0029】
(実施例3)
次に第3の実施例を図5を用いて説明する。なお、上記実施例と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0030】
図5に示すように、厨芥ごみ収納容器1を、外容器11と厨芥ごみ収納容器1の間に配置した保持容器27で保持するようにしたもので、厨芥ごみ収納容器1と凝縮部12との間の断熱効果が増し、前記同様加熱と凝縮効果を向上させ、しかも安価に構成することができる。
【0031】
なお、保持容器27を、合成樹脂等の熱伝導の少ない断熱部材28で構成したり、図6に示すように空気層29を有する二重の壁で構成した断熱部材30とすることで、厨芥ごみ収納容器1と凝縮部12との間の断熱効果がより一層向上し、加熱と凝縮効果をさらに一層向上させ、しかも安価に構成することができる。
【0032】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の請求項1記載の発明によれば、厨芥ごみ収納容器内に配した攪拌手段により厨芥ごみを攪拌することで、厨芥ごみの乾燥むらを防止し、さらに攪拌ファンで加熱手段による熱風を厨芥ごみの表面に当てることで、加熱並びに蒸気の発散が促進され、厨芥ごみの乾燥効率を大幅に高めることができるものである。また、突出部と回転刃とで乾燥が進行して固くなった厨芥ごみが粉砕され、乾燥が一層促進される。
【0033】
また、加熱手段をヒーターで形成しているので、マグネトロンのような高価でかつ耐久性の低い加熱手段と異なり、安価で高耐久の加熱手段を形成できるものである。
【0034】
本発明の請求項2記載の発明によれば、排気通路中に厨芥ごみの加熱時に発生する水蒸気を凝縮する凝縮部を設けることにより、空気中に放出される水蒸気の量を軽減し、厨芥処理機の屋内での使用を可能にすることができるものである。
【0035】
本発明の請求項3記載の発明によれば、厨芥ごみ収納容器を内部に装着する外容器を備え、前記外容器と厨芥ごみ収納容器との間に凝縮部を設けるようにしたので、別途凝縮部を設ける事なく、厨芥ごみ収納容器の周囲を凝縮用のスペースとして活用でき、本体の小型化が出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1の実施例を示す厨芥処理機の断面図
【図2】
本発明の第2の実施例を示す厨芥処理機の断面図
【図3】
他の実施例を示す厨芥処理機の断面図
【図4】
他の実施例を示す厨芥処理機の断面図
【図5】
第3の実施例を示す厨芥処理機の断面図
【図6】
他の実施例を示す厨芥処理機の断面図
【符号の説明】
1 厨芥ごみ収納容器
2 固定刃
3 回転刃(攪拌手段)
8 ヒータ(加熱手段)
9 攪拌ファン
11 外容器
12 凝縮部
15 排気パイプ
【図面】

 
訂正の要旨 特許第3097639号の明細書及び図面を、
特許請求の範囲の減縮を目的として、
訂正事項a-1:特許請求の範囲の請求項1の「この厨芥ごみを加熱する加熱手段と」を「前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられ、前記厨芥ごみを加熱するヒータと」と訂正する。
訂正事項a-2:特許請求の範囲の請求項1の「上方から熱せられた空気を」を「の上方に設けられると共に前記ヒータで熱せられた空気を前記厨芥ごみ収納容器内で攪拌しながら」と訂正する。
訂正事項c:特許請求の範囲の請求項1の「構成した厨芥処理機。」を「構成し、前記ヒータおよび前記攪拌ファンからなる加熱手段は、前記厨芥ごみを加熱し,この加熱により前記厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有する厨芥処理機。」と訂正する。
訂正事項d:特許請求の範囲の請求項2を削除する。
明りょうでない記載の釈明を目的として、
訂正事項b:特許請求の範囲の請求項1の「前記ごみ収納容器内」を「前記厨芥ごみ収納容器内」と訂正する。
訂正事項e-1:特許請求の範囲の「【請求項3】」を「【請求項2】」と訂正する。
訂正事項e-2:特許請求の範囲の請求項3の「凝縮手段」を「凝縮部」と訂正する。
訂正事項e-3:特許請求の範囲の請求項3の「請求項1または2記載の」を「請求項1記載の」と訂正する。
訂正事項f-1:特許請求の範囲の「【請求項4】」を「【請求項3】」と訂正する。
訂正事項f-2:特許請求の範囲の請求項4の「凝縮手段」を「凝縮部」と訂正する。
訂正事項f-3:特許請求の範囲の請求項4の「請求項3または4記載の」を「請求項2記載の」と訂正する。
訂正事項g:明細書の段落【0006】の「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、厨芥ごみを収納する厨芥ごみ収納容器と、この厨芥ごみを加熱する加熱手段と、厨芥ごみ収納容器と外気を連通させた排気通路と、前記厨芥ごみ収納容器内に配され厨芥ごみを攪拌する攪拌手段と、前記厨芥ごみ収納容器上方から熱せられた空気を前記厨芥ごみに吹きつける攪拌ファンを備え、前記攪拌手段を、前記厨芥ごみ収納容器の内壁に設けた突出部と、前記ごみ収納容器内を回転する回転刃で構成したものである。この構成により、攪拌手段で厨芥ごみが攪拌され乾燥むらを防止し、さらに攪拌ファンで熱風を厨芥ごみの表面に当てることで、加熱並びに蒸気の発散が促進され、厨芥ごみの乾燥効率を大幅に高めることができるものである。また、突出部と回転刃とで乾燥が進行して固くなった厨芥ごみが粉砕され、乾燥が一層促進される。」を「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、厨芥ごみを収納する厨芥ごみ収納容器と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられ、前記厨芥ごみを加熱するヒータと、厨芥ごみ収納容器と外気を連通させた排気通路と、前記厨芥ごみ収納容器内に配され厨芥ごみを攪拌する攪拌手段と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられると共に前記ヒータで熱せられた空気を前記厨芥ごみ収納容器内で攪拌しながら前記厨芥ごみに吹きつける攪拌ファンを備え、前記攪拌手段を、前記厨芥ごみ収納容器の内壁に設けた突出部と、前記厨芥ごみ収納容器内を回転する回転刃で構成し、前記ヒータおよび前記攪拌ファンからなる加熱手段は、前記厨芥ごみを加熱し,この加熱により前記厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有するものである。この構成により、攪拌手段で厨芥ごみが攪拌され乾燥むらを防止し、攪拌ファンで熱風を厨芥ごみの表面に当てると共に、厨芥ごみから蒸発した蒸気が加熱手段によりさらに熱を得て過熱蒸気となり、この過熱蒸気が、厨芥ごみの表面に当たることで、加熱並びに蒸気の発散が促進され、厨芥ごみの乾燥効率を大幅に高めることができるものである。また、突出部と回転刃とで乾燥が進行して固くなった厨芥ごみが粉砕され、乾燥が一層促進される。」と訂正する。
訂正事項h:明細書の段落【0007】の「【発明の実施の形態】本発明の請求項1記載の発明は、厨芥ごみを収納する厨芥ごみ収納容器と、この厨芥ごみを加熱する加熱手段と、厨芥ごみ収納容器と外気を連通させた排気通路と、前記厨芥ごみ収納容器内に配され厨芥ごみを攪拌する攪拌手段と、前記厨芥ごみ収納容器上方から熱せられた空気を前記厨芥ごみに吹きつける攪拌ファンを備え、前記攪拌手段を、前記厨芥ごみ収納容器の内壁に設けた突出部と、前記ごみ収納容器内を回転する回転刃で構成したものである。この構成により、攪拌手段で厨芥ごみが攪拌され乾燥むらを防止し、さらに攪拌ファンで熱風を厨芥ごみの表面に当てることで、加熱並びに蒸気の発散が促進され、厨芥ごみの乾燥効率を大幅に高めることができるものである。また、突出部と回転刃とで乾燥が進行して固くなった厨芥ごみが粉砕され、乾燥が一層促進される。」を「【発明の実施の形態】本発明の請求項1記載の発明は、厨芥ごみを収納する厨芥ごみ収納容器と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられ、前記厨芥ごみを加熱するヒータと、厨芥ごみ収納容器と外気を連通させた排気通路と、前記厨芥ごみ収納容器内に配され厨芥ごみを攪拌する攪拌手段と、前記厨芥ごみ収納容器の上方に設けられると共に前記ヒータで熱せられた空気を前記厨芥ごみ収納容器内で攪拌しながら前記厨芥ごみに吹きつける攪拌ファンを備え、前記攪拌手段を、前記厨芥ごみ収納容器の内壁に設けた突出部と、前記厨芥ごみ収納容器内を回転する回転刃で構成し、前記ヒータおよび前記攪拌ファンからなる加熱手段は、前記厨芥ごみを加熱し,この加熱により前記厨芥ごみから蒸発した蒸気にさらに熱を与えて過熱蒸気とする機能を有するものである。この構成により、攪拌手段で厨芥ごみが攪拌され乾燥むらを防止し、攪拌ファンで熱風を厨芥ごみの表面に当てると共に、厨芥ごみから蒸発した蒸気は加熱手段によりさらに熱を得て過熱蒸気となり、この過熱蒸気が厨芥ごみの表面に当たることで、加熱並びに蒸気の発散が促進され、厨芥ごみの乾燥効率を大幅に高めることができるものである。また、突出部と回転刃とで乾燥が進行して固くなった厨芥ごみが粉砕され、乾燥が一層促進される。」と訂正する。
訂正事項i:明細書の段落【0008】の「本発明の請求項2記載の発明は、加熱手段をヒーターで形成したもので、」を「また、加熱手段をヒーターで形成しているので、」と訂正する。
訂正事項j:明細書の段落【0033】の「本発明の請求項2記載の発明によれば、加熱手段をヒーターで形成したもので、」を「また、加熱手段をヒーターで形成しているので、」と訂正する。
訂正事項k:明細書の段落【0009】及び【0034】の「請求項3記載の」を「請求項2記載の」と訂正する。
訂正事項l:明細書の段落【0010】及び【0035】の「請求項4記載の」を「請求項3記載の」と訂正する。
訂正事項m:明細書の段落【0009】、【0010】、【0019】、【0020】、【0022】、【0030】、【0031】、【0034】、【0035】及び【符号の説明】の欄の「凝縮手段」を「凝縮部」と訂正する。
訂正事項n:【図2】に記載の「凝縮手段」を「凝縮部」と訂正する。
異議決定日 2002-02-15 
出願番号 特願平9-342446
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B09B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中野 孝一  
特許庁審判長 吉田 敏明
特許庁審判官 唐戸 光雄
西村 和美
登録日 2000-08-11 
登録番号 特許第3097639号(P3097639)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 厨芥処理機  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  

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