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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1059472
異議申立番号 異議2000-73527  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-04-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-09-18 
確定日 2002-03-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3020567号「真空処理方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3020567号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯

本件特許第3020567号は、平成2年8月20日に特許出願され、平成12年1月14日にその請求項1,2に係る発明について特許の設定登録がなされ、その後、高柳馨により特許異議の申立てがなされ、当審より取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年11月16日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否

1.訂正の内容
特許請求の範囲の請求項1中に「真空搬送室と処理室を不活性ガス雰囲気にして」とあるを、「真空搬送室と処理室を1Torr以上の圧力の不活性ガス雰囲気にして」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無および拡張・変更の存否
上記訂正は、請求項1に係る発明の、真空搬送室と処理室間での基板搬送時における真空搬送室と処理室の不活性ガス雰囲気について、その圧力を「1Torr以上」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。
又、上記不活性ガス雰囲気の圧力を「1Torr以上」とすることは、特許明細書の7頁14〜16行(特許公報2頁4欄16〜17行)、8頁14〜17行(特許公報2頁4欄32〜35行)、3頁5欄37〜40行(特許公報15〜19行)に記載されているから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、又、実質上特許請求の範囲を拡張しまたは変更するものではない。

3.むすび
よって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項により準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立てについて

1.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠として下記甲第1〜3号証を提示して、本件請求項1,2に係る発明は、甲第1〜3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張する。

甲第1号証:実願昭59-55454号(実開昭60-174242号)のマイクロフィルム
甲第2号証:特開平1-302817号公報
甲第3号証:特開平63-246829号公報

2.本件発明
訂正後の本件請求項1,2に係る発明(以下、「本件発明1」,「本件発明2」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1,2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】真空中でプラズマを利用して基板に所定の処理を行う処理室と、この処理室との間で真空中で基板を搬送する真空搬送室と、真空搬送室と処理室とを仕切る仕切りバルブとを備える真空処理装置を利用して基板を真空処理する方法において、
真空搬送室と処理室との間で基板を搬送する際に、真空搬送室と処理室を1Torr以上の圧力の不活性ガス雰囲気にして、真空搬送室から処理室に向かって10SCCM以上の流量の不活性ガスを流すことを特徴とする真空処理方法。
【請求項2】真空搬送室と処理室との間で基板を搬送する際に、真空搬送室から処理室に向かって1SLM以上の流量の不活性ガスを流すことを特徴とする請求項1記載の真空処理方法。」

3.甲各号証に記載の事項
〈甲第1号証〉
ア.「エッチングチヤンバとロードロック室をゲートバルブにて隔離している2室構成のリアクティブイオンエッチング装置のロードロック室に、この室内を常にエッチングチヤンバより陽圧にするため、この室内に一定流量の不活性ガスを注入し、前記ゲートバルブを開いて基板を2室間にて搬入や搬出を行う場合に、常時排気されているエッチングチャンバより陽圧なロードロック室から、前記不活性ガスをエッチングチャンバへ流すように自動的に制御する不活性ガス注入制御設備と、排気設備を具備したことを特徴とするリアクティブイオンエッチング装置。」(実用新案登録請求の範囲)
イ.「ウエハをエッチングチャンバ内に移送する場合には、ゲートバルブ9が開かれこれと同時にバルブAが閉じられる。その後直ちに不活性ガス注入口のバルブBを開いて5〜20Pa間の一点の圧力を保つガスが図中の矢印のように流れ、ロードロック室8はエッチングチャンバ1に対し陽圧になっている。この状態ではエッチングチャンバよりチャンバ1内に停滞していたガスが、ロードロック室8内に拡散することはない。」(5頁17行〜6頁6行)
ウ.第2図(上記イに対応する図)
〈甲第2号証〉
エ.「しかる後、ボートエレベータ6を下降させ、ウエハボート8をロードロックチューブ収容管5から引き抜き、ロードロックチューブ4を半導体ウエハ7の外側に被せるようにロードロックチューブ保持筒11上に配置した状態で、かつ、ロードロックチューブ保持筒11から不活性ガス例えば窒素ガスを流量例えば20 l/minでパージしながら、プロセスチューブ3の下方へ搬送する(e)。
そして、ロードロックチューブ保持筒11およびプロセスチューブ3の上部から不活性ガス例えば窒素ガスをパージしながら、ボートエレベータ6を上昇させ、ウエハボート8を予め所定温度に加熱されているプロセスチューブ3内に挿入する(f)。なお、第5図に示すようにロードロックチューブ保持筒11には、排気口11aおよびスリット11bが配設されており、ロードロックチューブ4内にパージされたガスは排気口11aから、ロードロックチューブ4とプロセスチューブ3との間にパージされたガスはスリット11bから排出される。」(3頁左上欄18行〜右上欄17行)
オ.第4,5図(上記ウに対応する図)
〈甲第3号証〉
カ.「現在好ましい態様において、オゾンは2〜3slmの流量で供給され、ヘリウム担体ガス流量は50sccm〜1.5slmの流量であり、室圧力は40〜120トルであり、ウェーハ温度は375±20℃であり、それにより3.000オングストローム/分の蒸着速度で高度に共形の非ドープ二酸化ケイ素コーティングを与える。」(22頁左下欄19行〜右下欄5行)
キ.「温度制御ガス整流装置から基板の表面までの距離dは好ましくは約1cmまたはそれ以下の距離がプラズマまたはガス状反応物をガス整流装置26とウェーハ15との間に幽閉する。これは反応効率を高め、反応(蒸着)の速度を増大し、ウェーハ上を除くすべての場所の蒸着を防止する。
本発明の熱CVDプロセスは通常高い蒸着室圧力を用い:少くとも≧10トル、約20〜200トルの好ましい圧力が使用される。この範囲の低部でもTEOSを用いるプロセスに通常使用される全圧より20倍以上大きい。高い圧力は有効反応性種の密度を増し、従って高い蒸着速度を与える。
さらに、高い圧力の使用は有効なパージを可能にする。高いパージ流量は廃ガス、連行微粒子などを、室表面上の好ましくない蒸着なく除去することを可能にする。前記底部パージ流がサセプターウェーハの底部を横切り半径方向に外方へ洗い流す。底部流はウェーハの周辺で下方へ向う上部パージ流により合流される.合流した流れはウェーハの周辺から半径方向に外方へ流れ、蒸着ガスを半径方向に外方へ、次いで非常に高い流量で室の排出装置を通して流れさせる。例えば有用な上部パージガス流量(好ましくは窒素)は1〜10slmであることができ、底部パージガス流量(また窒素)は1〜20slmであることができる。これらの高い圧力、高流量の上部および底部流が好ましくないガスおよび微粒子をすべての場所でウェーハの上部の均一な蒸着ガス分布を乱すことなくパージする。」(23頁左上欄1行〜右上欄4行)

4.対比・判断
先ず、本件発明1について検討する。
本件発明1と甲第1号証に記載のものを対比すると、後者における「基板」に「リアクティブイオンエッチング」を行う「エッチングチャンバ」、「ゲートバルブ」は、それぞれ、前者における「真空中でプラズマを利用して基板に所定の処理を行う処理室」、「仕切バルブ」に相当し、又、後者における「ロードロック室」は、前者における「真空搬送室」とみることが出来、又、後者における「ゲートバルブを開いて基板を2室間にて搬入や搬出を行う場合に、…エッチングチャンバより陽圧なロードロック室から、前記不活性ガスをエッチングチャンバへ流す」ことは、前者における「真空搬送室と処理室との間で基板を搬送する際に、真空搬送室と処理室を…不活性ガス雰囲気にして、真空搬送室から処理室に向かって…不活性ガスを流す」ことに相当する。
又、後者における不活性ガス圧力「5〜20Pa」は、前者と同じくTorrを単位とする値で表せば約0.037〜0.150Torrであり、しかも、「ロードロック室8はエッチングチャンバ1に対し陽圧」(前記III.3.イ参照)というのであるから、その「エッチングチャンバ1」(注.上記の如く、前者の「処理室」に相当。)の圧力は、必ず、上記「20Pa」(約0.150Torr)よりも低い圧力であることになる。
従って、結局、両者は、
“真空中でプラズマを利用して基板に所定の処理を行う処理室と、この処理室との間で真空中で基板を搬送する真空搬送室と、真空搬送室と処理室とを仕切る仕切りバルブとを備える真空処理装置を利用して基板を真空処理する方法において、
真空搬送室と処理室との間で基板を搬送する際に、真空搬送室と処理室を不活性ガス雰囲気にして、真空搬送室から処理室に向かって不活性ガスを流すことを特徴とする真空処理方法。”
である点で一致し、以下の点で相違する。
(i)不活性ガスの圧力につき、本件発明1では、「真空搬送室と処理室」の双方において、その「不活性ガス雰囲気」の圧力が「1Torr以上」であるのに対し、甲第1号証に記載のものでは、そのような圧力ではない点。
(ii)不活性ガスの流量につき、本件発明1では、「10SCCM以上」であるのに対し、甲第1号証には、流量につき何も記載されていない点。

そこで、以下、上記相違点について検討する。
(i)の相違点について:
甲第2号証には、不活性ガス圧力については何も記載されていない。又、甲第3号証には、前記III.3.カ,キにみるように、ガス圧力について種々記載されているが、それらは、その記載内容からみて、反応室へ、(パージ用或いは担体用等のための)不活性ガスのみならず、蒸着処理のためのプロセスガスも供給する状況下でのガス圧であり、本件発明1におけるような、真空搬送室と処理室間の基板搬送時における不活性ガス雰囲気の圧力とはいえない。
従って、甲第2,3号証の記載から、本件発明1の、甲第1号証との上記(i)の相違点に係る技術事項についての示唆を見出すことは出来ない。

(ii)の相違点について:
甲第2号証には、不活性ガスの流量について、前記III.3.エにみるように、「20 l/min」なる記載があり、これは、数値的には、本件発明1の不活性ガス流量「10SCCM以上」の要件を満たす。しかし、この甲第2号証の不活性ガス流量は、「ロードロックチューブ4を…ロードロックチューブ保持筒11上に配置した状態で…プロセスチューブ3の下方へ搬送する(e)」工程(以下、「工程(e)」という。)、即ち、次工程たる「ウエハボート8を…プロセスチューブ3(注.本件発明1における「処理室」に相当するといえる。)内に挿入する(f)」工程(以下、「工程(f)」という。)より前の工程、での不活性ガス流量であるから、これは、本件発明1におけるような、真空搬送室から処理室に向けての不活性ガスの流量ではない。
又、甲第2号証には、上記工程(f)につき、「ロードロックチューブ保持筒11およびプロセスチューブ3の上部から不活性ガス…をパージ」するとの記載もあるが、この工程(f)での不活性ガスは、上記行程(e)の「20 l/min」なる不活性ガス流量がそのまま適用されるのかどうか、記載上判然としない。又、仮に、適用されるとみた場合でも、この場合の不活性ガスは、ロードロックチューブ保持筒11(注.本件発明1における「基板を搬送するためのロボット9」に相当するといえる。)の「排気口11a」および「スリット11b」から排出されるというのであるから、本件発明1とはむしろ逆に、処理室から搬送系に向けて流される不活性ガスであるといえ、従って、この場合の流量も、やはり、本件発明1におけるような、真空搬送室から処理室に向けての不活性ガスの流量であるとはいえない。
又、甲第3号証には、前記III.3.キにみるように、「パージガス(好ましくは窒素)」流量について、「1〜10slm」、「1〜20slm」なる記載があり、これは、数値的には、本件発明1の不活性ガス流量「10SCCM以上」の要件を満たす。しかし、この甲第3号証のパージガス流量は、「ウェーハ上部の均一な蒸着ガス分布を乱すことなくパージする」等とある記載から明らかなように、蒸着ガスによりウェーハ表面を蒸着処理する際に、該蒸着ガスとともに供給するパージガスの流量であると解されるから、本件発明1におけるような、真空搬送室と処理室との間で基板を搬送する際に、真空搬送室から処理室に向けて流す不活性ガスの流量とはいえない。
従って、甲第2,3号証の記載から、本件発明1の、甲第1号証との上記(ii)の相違点に係る技術事項についての示唆を見出すことは出来ない。

そして、本件発明1は、上記(i)及び(ii)の相違点に係る技術事項を含む前記認定のとおりの構成を有することにより、処理室の内壁に付着した反応生成物からの放出ガスによる真空搬送室の汚染を極めて少なくすることができるという明細書記載の効果を奏する。
以上のことからみて、本件発明1は、甲第1〜3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

次に、本件発明2について検討するに、本件発明2は、本件発明1における上記不活性ガス流量をより狭い範囲に限定したものといえるから、上記のように、本件発明1が、甲第1〜3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない以上、本件発明2も、甲第1〜3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1,2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1,2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものとは認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法などの一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
真空処理方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】真空中でプラズマを利用して基板に所定の処理を行う処理室と、この処理室との間で真空中で基板を搬送する真空搬送室と、真空搬送室と処理室とを仕切る仕切りバルブとを備える真空処理装置を利用して基板を真空処理する方法において、
真空搬送室と処理室との間で基板を搬送する際に、真空搬送室と処理室を1Torr以上の圧力の不活性ガス雰囲気にして、真空搬送室から処理室に向かって10SCCM以上の流量の不活性ガスを流すことを特徴とする真空処理方法。
【請求項2】真空搬送室と処理室との間で基板を搬送する際に、真空搬送室から処理室に向かって1SLM以上の流量の不活性ガスを流すことを特徴とする請求項1記載の真空処理方法。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、真空中でプラズマを利用して基板の処理(例えば、ドライエッチング、スパッタリング、CVDなど)を行うための真空処理方法に関し、特に真空搬送室と処理室との間で基板を搬送する際の雰囲気に特徴のある真空処理方法に関する。
[従来の技術]
プラズマを用いた真空処理装置には、ドライエッチング装置、スパッタリング装置、CVD装置など各種の装置が知られているが、以下ではドライエッチング装置を例にとって従来技術を説明する。
半導体デバイスの製造工程において、配線膜のパターニングなどのために、反応性ガスプラズマを利用したドライエッチング装置が広く普及している。特に、仕切りバルブで予備真空室と処理室を仕切った、いわゆるロードロック機構を備えた装置は、基板を交換する際、処理室を大気に曝することがないため、処理室でのエッチング処理に大気中の水分の影響がなく、再現性の良いエッチングが可能である。そのため、このロードロック機構は広く採用されている。さらに、予備真空室と処理室との間に別個の真空搬送室を配置した装置は、より大気の影響を受けにくくなるため、特に水分の影響を強く受けるアルミニウム合金等のエッチング装置として広く普及している。この種の装置では次のような排気系を備えている。すなわち、通常、真空搬送室に高真空排気ポンプを設けて、真空搬送室はもとより、この真空搬送室に仕切りバルブを介して接続されている予備真空室や処理室を、10-4Torr以下の高真空に排気する。その後、予備真空室のみを大気にし、予備真空室に基板を設置し、予備真空室を粗引排気した後、予備真空室と真空搬送室の間の仕切りバルブを開き、予備真空室、真空搬送室、および処理室を高真空に排気した状態で、基板を処理室に搬送する。搬送終了後、真空搬送室と処理室の間の仕切りバルブを閉じ、処理室に塩素系ガス等の活性ガスを導入し、処理室に設けた別の排気系で活性ガスを排気して所定圧力に保ち、処理室内の高周波電極に高周波を印加し、活性ガスプラズマを発生させてエッチングを行う。エッチング終了後、活性ガスを排気し、再び真空搬送室と処理室の間の仕切りバルブを開き、真空搬送室に接続された高真空排気ポンプで高真空に排気しながら、基板の交換を行なう。
上記従来の真空処理装置では、基板の処理回数が多くなると、処理室が塩素系ガス等でしだいに汚染され、処理室壁面等に吸着した塩素系反応生成物によるガス放出が多くなり、基板の搬送中にこの放出ガスが仕切りバルブを介して真空搬送室に拡散し、真空搬送室を汚染してしまう。このため、真空搬送室内にある真空搬送用部品が塩素系反応生成物によって腐蝕し、その結果、基板搬送が途中で中断してしまう事故がしばしば起こることがあった。さらに、腐蝕した部品から多量のごみが発生し、このごみが基板に付着してしまうこともたびたび生じた。そのうえ、アルミニウム合金膜のエッチングにおいては、エッチング処理後にアルミニウム配線パターンに塩素が吸着し、これが大気中の水分に触れることによりアフターコロージョンを生じる恐れもあった。このアフターコロージョンを防止するために、エッチング処理室とは区別されたアフターコロージョン防止用の別の処理室を設けた装置(いわゆるマルチチャンバ装置)もあるが、この場合も、真空搬送室での塩素ガスによる汚染がアフターコロージョン処理室まで拡散するため、装置を長時間使用すると、アフターコロージョンが発生しやすくなる場合があった。
以上、エッチング装置を例にとって従来技術を説明したが、CVD装置やスパッタリング装置においても、処理室壁面に付着した堆積物からのガス放出が真空搬送室に拡散することがあり、真空搬送室を汚染する。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、処理室からのガス放出による真空搬送室の汚染を防ぐことのできる真空処理方法を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
上記目的を達成するために、本発明の真空処理方法は次の特徴を備えている。すなわち、本発明の方法は、真空中でプラズマを利用して基板に所定の処理を行う処理室と、この処理室との間で真空中で基板を搬送する真空搬送室と、真空搬送室と処理室とを仕切る仕切りバルブとを備える真空処理装置を利用して基板を真空処理する方法において、
真空搬送室と処理室との間で基板を搬送する際に、真空搬送室と処理室を不活性ガス雰囲気にすることを特徴としている。その際、真空搬送室と処理室の不活性ガスの圧力を1Torr以上にすることが望ましい。また、真空搬送室から処理室に向かって10SCCM以上、できれば1SLM以上の流量の不活性ガスを流すことが望ましい。このような真空処理方法は、特に、基板上のアルミニウムまたはアルミニウム合金を塩素系ガスでドライエッチング処理するような真空処理装置に効果的である。
[作用]
真空搬送室から処理室に基板を搬送する際に、従来は真空搬送室と処理室を高真空に排気しながら基板搬送を行っているが、本発明の方法では、真空搬送室と処理室を不活性ガス雰囲気として基板搬送を行っている。こうすると、処理室内壁に付着した反応生成物や堆積物からの放出ガスが仕切りバルブを通って真空搬送室に拡散しにくくなる。すなわち、真空搬送室と処理室は所定の圧力の不活性ガスで満たされているため、上記放出ガスは不活性ガスの粒子に衝突して拡散がさまたげられる。この場合、放出ガスの平均自由行程を短くするには、不活性ガスの圧力を高くすればよく、少なくとも1Torr以上にすることが望ましい。また、単に不活性ガスの圧力を所定以上にするだけでなく、10SCCM以上の流量で不活性ガスを流せば、処理室での放出ガスの予想発生量よりも不活性ガスの流量を多くすることができ、その結果、放出ガスの分圧比を小さくできて放出ガスが真空搬送室側に拡散するのをより効果的に防ぐことができる。できれば、放出ガスの予想発生量よりも不活性ガスの流量を格段に多くして放出ガスの分圧比を非常に小さくするのが好ましく、そのためには1SLM以上の流量の不活性ガスを流して放出ガスの予想分圧比を100分の1以下にすることが望ましい。
次に、本発明による真空処理方法の作業例を、処理室と真空搬送室と予備真空室と設けた真空処理装置を例にして説明する。
まず、予備真空室または真空搬送室に接続した高真空排気ポンプで、予備真空室と真空搬送室を高真空に排気し、さらに、同一のポンプまたは処理室に接続した他のポンプにより処理室を高真空に排気して、これら各室に吸着していた水分等を充分に除去する。次に、処理室と真空搬送室の間の仕切りバルブ、および、真空搬送室と予備真空室の間の仕切りバルブを閉じ、予備真空室だけを大気に開放し、基板を挿入する。次に、予備真空室を真空に排気し、真空搬送室と予備真空室の間の仕切りバルブを開け、予備真空室を高真空に排気して、基板に付着した水分を除去する。その後、高真空排気バルブを閉じ、真空搬送室に不活性ガスを導入して圧力を1Torr以上とする。この状態で、処理室と真空搬送室の間の仕切りバルブを開き、不活性ガスを10SCCM以上、予備真空室ないしは真空搬送室に導入し、処理室に設けた排気機構でこの不活性ガスを排気しながら、系内の圧力を1Torr以上に保った状態で基板を搬送する。基板を処理室に搬送後、真空搬送室と処理室の間の仕切りバルブを閉じ、処理室を活性ガス排気系で排気するとともに、処理室に活性ガスを導入して基板のエッチング処理を行なう。これと同時に、予備真空室と真空搬送室は、不活性ガスの導入を続けると共に真空搬送室または予備真空室に設けた不活性ガス排気機構によりこの不活性ガスの排気を続け、予備真空室と真空搬送室の圧力を1Torr以上に保ち続ける。エッチング処理の終了後は、処理室で活性ガスの導入を止め、活性ガスを活性ガス排気ポンプで排気した後、真空搬送室に設けた不活性ガス排気バルブを閉じ、真空搬送室と処理室の間の仕切りバルブを開け、予備真空室と真空搬送室と処理室の圧力を1Torr以上として、基板の入れ替えを行う。このとき、全系の圧力が1Torr以上と高いため、活性ガスおよびその反応生成物によって汚れた状態の処理室からの放出ガスは真空搬送室に拡散しにくくなる。気体の拡散係数は圧力に逆比例するため、系内の圧力が高いほど上記放出ガスは真空搬送室に拡散しにくくなる。また、仕切りバルブのコンダクタンスのために真空搬送室の圧力が処理室よりも高くなるため、さらに一層、上記放出ガスが真空搬送室や予備真空室へ拡散しにくくなる。
このように、全系の不活性ガス圧力を1Torr以上にして基板を搬送することにより、真空搬送室や予備真空室が、処理室から放出される反応生成物等のガスにより汚染されることを最小限に抑えることができる。なお、予備真空室を大気に開放したときに予備真空室に持ち込まれる大気中の水分や、基板の表面に吸着して持ち込まれた水分は、予備真空室と真空搬送室を最初に高真空に排気することによって充分除去できるため、その後、水分のない不活性ガスによって真空搬送室と予備真空室の圧力を1Torrに保っても、水分の影響のない、再現性に優れたエッチングが可能となるのは言うまでもない。
[実施例]
第1図は本発明の一実施例を実施するための真空処理装置の構成図である。図において、1は予備真空室、2は真空搬送室、3は処理室であり、各室は仕切りバルブ5、6で仕切られている。予備真空室1は大気との間を仕切りバルブ4で仕切られている。予備真空室1には、基板7を複数枚載せることのできるカセット8が設置されている。真空搬送室2には基板を搬送するためのロボット9が設置されている。処理室3には、基板を載せてエッチング処理するための高周波電極10が設置されている。
予備真空室1には、不活性ガス導入バルブ11が、ガス流量制御のためのマスフローコントローラ12を介して接続されている。また、予備真空室1は粗引バルブ13を介して油回転ポンプ14に接続されている。真空搬送室2には、高真空排気バルブ15を介してターボ分子ポンプ16が接続されている。さらに、真空搬送室2はバリアブルコンダクタンスバルブ17と不活性ガス排気バルブ18を介して、上述の油回転ポンプ14とは別の油回転ポンプ19に接続されている。処理室3にはエッチング処理用の活性ガス導入バルブ20が接続され、さらに、活性ガス排気バルブ21とバリアブルコンダクタンスバルブ22を介して活性ガス排気用のターボ分子ポンプ23が接続されている。処理室3はさらに、バリアブルコンダクタンスバルブ24と不活性ガス排気バルブ25を介して油回転ポンプ19に接続されている。
次に、この真空処理装置で基板上のアルミニウムをエッチングするときの動作を説明する。
まず、仕切りバルブ4と6を閉じ、仕切りバルブ5を開いて、高真空排気バルブ15を介してターボ分子ポンプ16で予備真空室1と真空搬送室2を10-5Torr程度の高真空に排気する。同時に処理室3の側でも、活性ガス排気バルブ21を開いて、ターボ分子ポンプ23により処理室3を同程度の高真空に排気する。次に、仕切りバルブ5を閉じ、ベントバルブ26を開いて、予備真空室1に大気を導入する。予備真空室1が大気圧となってから、仕切りバルブ4を開いてカセット8を取出し、基板7をカセット8に取り付けた後、カセット8を再び予備真空室1に設置する。次に、仕切りバルブ4と高真空排気バルブ15を閉じて、粗引きバルブ13を開き、予備真空室1を0.1Torr台まで粗引排気する。その後、粗引バルブ13を閉じ、高真空排気バルブ15を開いた後、仕切りバルブ5を開き、予備真空室1と真空搬送室2をターボ分子ポンプ16により高真空に排気する。予備真空室1と真空搬送室2の圧力が10-4〜10-5Torr台となって基板7に吸着した水分が充分除去された後、高真空排気バルブ15を閉じ、不活性ガス導入バルブ11を開いてマスフローコントローラ12を介し、10SCCM以上、好ましくは、1SLM程度の流量の窒素ガスを導入する。予備真空室1と真空搬送室2の圧力が、窒素ガスでほぼ1Torr以上になったとき、処理室3に接続している活性ガス排気バルブ21を閉じ、仕切りバルブ6を開いて処理室3にも窒素ガスを導入する。続いて、不活性ガス排気バルブ25を開き、バリアブルコンダクタンスバルブ24により、予備真空室1、真空搬送室2、および真空室3の圧力を1Torr以上に保ちながら、予備真空室1に設置された基板7を、真空搬送室2に設置したロボット9により、処理室3に設置された電極10の上に運ぶ。次に、仕切りバルブ6と不活性ガス排気バルブ25を閉じ、活性ガス排気バルブ21を開いてターボ分子ポンプ23により不活性ガスを排気する。その後、処理室3に活性ガス導入バルブ20を介して活性ガス(CCl4ガス、BCl3とCl2の混合ガス、SiCl4とCl2の混合ガスなどの塩素系ガス)を導入し、処理室3の圧力を処理圧力に保ちながら基板上のアルミニウムのエッチングを行う。
一方、予備真空室1と真空搬送室2では、エッチング中は、不活性ガス排気バルブ18を開いて、不活性ガス導入バルブ11から導入された不活性ガスを排気しながら、真空予備室1と真空搬送室2の圧力を1Torr以上に保つ。
エッチング終了後は、まず、活性ガス導入バルブ20を閉じ、処理室3において活性ガスの残留成分を排気する。その後、不活性ガス排気バルブ18を閉じ、同時に仕切りバルブ6と不活性ガス排気バルブ25を開ける。こうして、再び全系を不活性ガスにより1Torr以上の圧力に保ち、処理室3内のエッチング済み基板を、ロボット9によってカセット8に回収するとともに、次にエッチングする基板7を処理室3に運ぶ。
以上の動作を繰り返すことにより、カセット8に収納された全ての基板7をエッチングする。全てのエッチングが終了した後、仕切りバルブ5と6を閉じ、高真空排気バルブ15と活性ガス排気バルブ21を開き、真空搬送室2と処理室3をそれぞれ別々のターボ分子ポンプ16と23で高真空に排気する。同時に、予備真空室1に接続されたベントバルブ26を開き予備真空室1を大気圧にする。次に仕切りバルブ4を開いてカセット8を取出し、未処理基板を収納した別のカセットを予備真空室1に設置する。再び予備真空室1を粗引排気後、仕切りバルブ5を開けて予備真空室1と真空搬送室2を高真空に排気する。その後は、上記動作を繰返し行い、エッチング処理を続ける。
以上説明したように、この実施例の方法においては、基板をまず高真空に排気するため、基板に吸着した水分等は充分に除去可能であり、エッチングの再現性を悪くすることはない。また、基板を処理室に搬送するときには、予備真空室、真空搬送室、処理室の全系の圧力を不活性ガスにより1Torr以上に保ち、しかも、不活性ガスを予備真空室から導入して処理室の側から排気するため、処理室の内壁に付着した反応生成物からの放出ガスが、仕切りバルブ6を通して真空搬送室や予備真空室内に拡散することは極めて少なくなる。
気体の拡散係数は圧力に反比例するために、10-4Torr台の圧力で基板を搬送していた従来方法と比較して、上述の実施例の方法は1万倍以上も処理室からのガス拡散の影響を受けにくくなる。さらに、基板搬送時の不活性ガスの流量を1SLM以上とすることにより、不活性ガスの流量は、アルミニウムのエッチング処理後の処理室からの放出ガス量(条件にもよるが10SCCM程度と見込まれる)のおよそ100倍以上となり、その結果、放出ガスの分圧比が100分の1以下となって、処理室からの放出ガスによる真空搬送室の汚染をさらに少なくすることができる。基板搬送時の不活性ガスの流量は1SLMよりも少なくてもよいが、少なくとも、処理室からの放出ガスの発生量以上にするのが好ましく、このような観点から不活性ガスの流量は10SCCMを下回らないようにすることが好ましい。
真空搬送室内に処理室からの放出ガスが拡散しにくくなる結果、真空搬送室内に設置したロボットや仕切りバルブ等は処理室からの放出ガス(塩素系のガスであって腐蝕性が高い)によって腐蝕されることがほとんど無く、パーティクル(ごみ)の発生の少ない、信頼性の高い基板搬送が可能となった。
第2図は本発明の別の実施例を実施するための真空処理装置の構成図である。上述の第1図の装置と異なるところは主として不活性ガス導入系にある。上述の第1図の装置では不活性ガスは予備真空室に導入するようになっていたが、第2図の装置では真空搬送室と処理室に不活性ガスを別個に供給できるようにしている。なお、第1図の装置と同じ部分には同じ番号を付けてあり、その説明は省略する。
第2図において、不活性ガス導入バルブ11は、マスフローコントローラ12とフィルタ27を介して真空搬送室2に接続されている。また、別の不活性ガス導入バルブ28が、マスフローコントローラ29とフィルタ30を介して処理室3に接続されている。高真空排気ポンプにはクライオポンプ39を用い、高真空排気バルブ15を介して予備真空室1に接続されている。
この装置の基本的な動作は第1図の装置とほぼ同様である。その動作を説明すると、まず、仕切りバルブ4と6を閉じ、仕切りバルブ5を開き、予備真空室1と真空搬送室2をクライオポンプ39で高真空に排気する。同時に、処理室3をターボ分子ポンプ23で同様に高真空に排気する。次に、仕切りバルブ5と高真空排気バルブ15を閉じ、予備真空室1を大気とし、基板7を交換する。次に予備真空室1を粗引排気後、高真空排気バルブ15と仕切りバルブ5を開き、予備真空室1と真空搬送室2を高真空に排気し、基板7に吸着した水分等を充分に除去する。次に、高真空排気バルブ15を閉じ、不活性ガス導入バルブ11を開いて、真空搬送室2に窒素ガスを1SLM程度の流量で導入し、不活性ガス排気バルブ18を開いて真空搬送室2と予備真空室1の圧力を1Torr以上に保つ。同時に、処理室3に接続された不活性ガス導入バルブ28も開いて処理室3にも窒素ガスを導入する。処理室3の圧力が真空搬送室2の圧力よりわずかに低くなったとき、不活性ガス導入バルブ28を閉じて仕切りバルブ6を開き、つづいて不活性ガス排気バルブ18を閉じて不活性ガス排気バルブ25を開く。こうして、全系を1Torr以上に保ちながら、予備真空室1にある基板7を、処理室3に設置された電極10上に運び、エッチング処理する。
この実施例では、不活性ガス導入バルブを処理室にも接続して、真空搬送室と処理室の間の仕切りバルブを開く前にあらかじめ処理室の圧力を真空搬送室の圧力よりやや低目にしておくことができる。これにより、仕切りバルブを開けた時、不活性ガスが処理室に勢いよく流れ込むことがなくなり、したがってパーティクルを巻き上げるようなことが極力抑えられる。
前述の第1図の実施例では真空搬送室に高真空排気ポンプを接続したが、本実施例のように高真空排気ポンプを予備真空室に接続しても、その効果は特に変わらない。
第3図は、本発明のさらに別の実施例を実施するための真空処理装置の構成図である。この装置が第1図の装置と大きく異なるところは、処理室が複数個あるマルチチャンバエッチング装置となっている点である。なお、第1図の装置と同じ部分には同じ符号を付けて説明は省略する。
第3図において、真空搬送室2には処理室3のほかに別の処理室すなわちアフターコロージョン処理室3aが接続されていて、仕切りバルブ6aで仕切られている。本実施例では、処理室3で基板をエッチング処理した後に、アフターコロージョン処理室3aで、ダウンストリームアッシャにより、エッチング後のアルミパターン上のフォトレジストを剥離できるようになっている。
アフターコロージョン処理室3aでレジスト剥離をするための処理圧力は1Torr程度と高いため、このアフターコロージョン処理室3aでの処理ガスの排気は、バルアブルコンダクタンスバルブ34と排気バルブ35を介して、油回転ポンプ36だけで行なっている。このため、エッチング処理室3の方には不活性ガス排気バルブ25を接続しあっても、アフターコロージョン処理室3aには不活性ガス排気バルブは特に接続していない。
真空搬送室2には、内部カセット38を設け、さらに、不活性ガス導入バルブ32をマスフローコントローラ31とフィルタ33の間に配置して真空搬送室2に接続している。
次に、この装置の動作を説明する。まず、仕切りバルブ4と6を閉じ、仕切りバルブ5と6aは開いておき、予備真空室1と真空搬送室2とアフターコロージョン処理室3aはクライオポンプ16で高真空に排気し、処理室3はターボ分子ポンプ23で高真空に排気する。次に、仕切りバルブ5を閉じ、予備真空室1を大気とし、カセット8を取出して基板7を予備真空室1に設置する。予備真空室1を粗引排気後、高真空に排気し、さらに仕切りバルブ5を開き、予備真空室1と真空搬送室2とアフターコロージョン処理室3aを高真空に排気しながら基板7に吸着した水分を充分除去する。同時に、予備真空室1内の基板7を真空搬送室2内の内部カセット38に運び始める。次に、高真空排気バルブ15を閉じ、不活性ガス導入バルブ11を開いて、予備真空室1と真空搬送室2とアフターコロージョン処理室3aに窒素ガスを導入し、各室の圧力を1Torr以上に保つように、この窒素ガスを不活性ガス排気バルブ18で排気する。次に、処理室3に接続している活性ガス排気バルブ21を閉じ、仕切りバルブ6を開いて、全系の圧力を1Torr以上に保つように不活性ガス排気バルブ25で窒素ガスを排気しながら、内部カセット38内の基板7を、処理室3に設置された電極10上に運ぶ。次に、仕切りバルブ6を閉じ、処理室3に活性ガスを流して基板をエッチング処理する。同時に、カセット8内の、まだ内部カセット38に運んでいない基板7を、内部カセット38にできるだけ運ぶ。エッチング処理が終了後、再び全系を1Torr以上に保ちながら、エッチング処理した基板をアフターコロージョン処理室3a内の基板設置台37に運び、仕切りバルブ6aを閉じる。アフターコロージョン処理室3aにバルブ40を介して酸素ガスを導入し、レジストを剥離する。同時に、処理室3には次の基板7を内部カセット38から搬送してエッチング処理をする。二つの処理室3、3aで処理をしている間に、カセット8に収納した全ての基板7を内部カセット38に運ぶ。
カセット8が空になったとき、仕切りバルブ5を閉じ、同時に不活性ガス導入バルブ32を開き、真空搬送室2内に窒素ガスを導入し続けながら、予備真空室1だけ大気とし、次に処理する基板を収納した別のカセットを再び予備真空室1に設置する。次に、予備真空室1を粗引排気し、引き続き、クライオポンプ39により10-5Torr程度の高真空とし、基板に吸着した水分等を充分除去する。その後、不活性ガス導入バルブ11を開き、予備真空室1に窒素ガスを導入し、予備真空室1の圧力を1Torr以上とし、仕切りバルブ5を開いて不活性ガス導入バルブ32を閉じる。この間、内部カセット38に収納した基板7は、次々にエッチングを続け、内部カセット38に再び収納する。仕切りバルブ5が開いたあとは、カセット8のこれからエッチングする基板と、内部カセット38に収納された既にエッチングされた基板との交換を、エッチング中や、基板を各処理室に搬送する合間に行う。このようにして、連続して基板のエッチングを続ける。
この実施例では、処理室3で発生した塩素系の放出ガスが真空搬送室2やアフターコロージョン処理室3aに侵入することがない。もし、アフターコロージョン処理室3aが塩素系ガスで汚染されていると、レジストを剥離したときにアルミニウム表面に塩素が付着して、アフターコロージョンが発生する恐れがあるが、この実施例ではアフターコロージョン処理室3aが塩素系ガスに汚染されないので、アフタコロージョンが完全に防止できる。
以上説明したように、上述の各実施例の方法によれば、基板を大気からエッチング装置に持ち込む際に、最初に、基板を持ち込んだ予備真空室を高真空に排気できる。さらには、基板を処理室に搬送する際に、絶えず新しい不活性ガスを予備真空室や真空搬送室から処理室に向かって流し、かつ系内の圧力を1Torr以上に保っている。このため、真空搬送室や予備真空室が、活性ガスの反応生成物で汚染された処理室からのガス放出によって汚染されることはない。
エッチング装置がアフターコロージョン処理室を備えている場合は、塩素系のガスに影響されずに完全なアフターコロージョン処理が実施できる。これにより、いままで不可能であった、再現性に極めて優れたアフターコロージョン処理が可能となる。
本発明は上述の実施例に限定されずに各種の変更が可能である。例えば、上述の各実施例では、高真空排気にはターボ分子ポンプやクライオポンプを用いたが、油拡散ポンプなどの他の高真空排気ポンプを用いてもよい。また、不活性ガスの制御にはマスフローコントローラを用いているが、ニードルバルブなどの他の流量制御装置を用いて流量を制御してもよい。また、不活性ガスとして窒素ガスを用いたが、アルゴンなどの他の不活性ガスであってもよい。また、圧力制御手段として、バリアブルコンダクタンスバルブを使わずに、不活性ガスの流量を調節することによって圧力を1Torr以上に保ってもよい。上述の各実施例では不活性ガスの圧力を1Torr以上に保ったが、この圧力は、500Torrであっても700Torrであってもよい。さらに、不活性ガスの流量は1SLMである必要はなく、10SCCM以上の任意の値でよい。また、基板を搬送する機構はロボットに限定されることはない。
本発明は真空搬送室と予備真空室とが区別されていないような装置にも適用可能である。
以上の各実施例では真空処理方法としてドライエッチングの例を挙げたが、本発明はスパッタリングやプラズマCVDなどの他の真空処理方法にも適用できる。
[発明の効果]
本発明の方法では、真空搬送室と処理室を不活性ガス雰囲気にして基板搬送を行うことにより、処理室内壁に付着した反応生成物や堆積物からの放出ガスが仕切りバルブを通って真空搬送室に拡散しにくくなる。このとき、不活性ガスの圧力を1Torr以上にすれば、放出ガスの平均自由行程を十分に短くできて、放出ガスの拡散をより抑えることができる。さらに、不活性ガスの流量を10SCCM以上にすれば、処理室での放出ガスの予想発生量よりも不活性ガスの流量を多くすることができ、その結果、放出ガスの分圧比を小さくできて放出ガスが真空搬送室側に拡散するのをより効果的に防ぐことができる。さらに、1SLM以上の流量の不活性ガスを流せば放出ガスの予想分圧比を100分の1以下にできてより効果的である。
このようにして、処理室での放出ガスが真空搬送室に拡散しないようにすることにより、真空搬送機構の腐蝕を防いで搬送トラブルを回避し、また腐蝕部品からのパーティクルの発生を防ぐことができる。
また、本発明の方法をアルミニウムのドライエッチング処理に適用する場合、エッチング処理室以外にアフターコロージョン処理室を備えたマルチチャンバ方式の装置では、アフターコロージョン処理室に塩素系放出ガスが拡散しなくなり、アフターコロージョンの効果的な抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を実施するための真空処理装置の構成図、
第2図は本発明の別の実施例を実施するための真空処理装置の構成図、
第3図は、本発明のさらに別の実施例を実施するための真空処理装置の構成図である。
1……予備真空室
2……真空搬送室
3……処理室
7……基板
11……不活性ガス導入バルブ
18、25……不活性ガス排気バルブ
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第3020567号発明の明細書を、特許請求の範囲の減縮を目的として、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正する。
すなわち、特許請求の範囲の請求項1中に「真空搬送室と処理室を不活性ガス雰囲気にして」とあるを、特許請求の範囲の減縮を目的として、「真空搬送室と処理室を1Torr以上の圧力の不活性ガス雰囲気にして」に訂正する。
異議決定日 2002-02-27 
出願番号 特願平2-217031
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山中 真田中 永一  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 伊藤 明
雨宮 弘治
登録日 2000-01-14 
登録番号 特許第3020567号(P3020567)
権利者 アネルバ株式会社
発明の名称 真空処理方法  
代理人 鈴木 利之  
代理人 鈴木 利之  

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