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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08B
審判 全部申し立て 産業上利用性  C08B
管理番号 1059487
異議申立番号 異議2001-72638  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-09-25 
確定日 2002-03-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3150266号「環状構造を有するグルカンおよびその製造方法」の請求項1ないし21に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3150266号の請求項1ないし21に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3150266号に係る発明についての出願は、平成7年3月31日(優先権主張1994年4月1日、1994年11月24日、及び1995年3月13日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成13年1月19日にその特許の設定登録がなされ、その後、佐藤賢改より特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年2月12日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正請求
1.訂正の内容
(1)請求項1、請求項2,請求項5及び請求項6の「14〜5000個」を「17〜5000個」と訂正する。
(2)請求項1の「(iii)α-1,4-グルコシド結合のみで構成される環状構造のみを有するグリカン」を「(iii)α-1,4-グルコシド結合のみで構成される環状構造のみを有するグルカン」と訂正する。
(3)請求項9の「少なくとも14個」(2ヶ所)を「少なくとも17個」と訂正する。
(4)請求項17の「少なくとも一つのグルカンまたはグルカンの誘導体」を「少なくとも一つの、環状構造のみを有するグルカンまたはグルカンの誘導体」と訂正する。
(5)請求項19の「少なくとも一つのグルカンまたはグルカンの誘導体」を「少なくとも一つの、環状構造に加えて非環状構造を有するグルカンまたはグルカンの誘導体」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(1)は、「14〜5000個」を「17〜5000個」に訂正するものであるから特許請求の範囲の減縮に該当し、同(2)は、「グリカン」を「グルカン」に訂正するものであるから誤記の訂正に該当し、同(3)は、「少なくとも14個」を「少なくとも17個」に訂正するものであるから特許請求の範囲の減縮に該当し、同(4)は、「少なくとも一つのグルカンまたはグルカンの誘導体」を「少なくとも一つの、環状構造のみを有するグルカンまたはグルカンの誘導体」に訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、同(5)は、「少なくとも一つのグルカンまたはグルカンの誘導体」を「少なくとも一つの、環状構造に加えて非環状構造を有するグルカンまたはグルカンの誘導体」に訂正するものであるから特許請求の範囲の減縮に該当する。
また、この訂正は新規事項に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法120条の4,2項及び同条3項で準用する126条2項及び3項の規定に適合するので、請求のとおり当該訂正を認める。

III.特許異議申立
1.特許異議申立書の理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証乃至甲第9号証を提出し、(1)訂正前の本件請求項1乃至請求項8に係る発明は、「産業上利用することができる発明」に該当しないので、特許法29条1項柱書きに違反する、(2)同請求項1乃至請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから同条1項3号の規定に該当する、(3)同請求項1乃至請求項21に係る発明は、甲第1号証乃至甲第9号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同条2項の規定に違反する、(4)請求項14乃至請求項21に係る発明は、当業者が容易に実施することができるように記載されていない、或いは、特許を受けようとする発明が明確でないから、同法36条4項の規定に違反、或いは同条6項2号の規定に違反する、と主張している。

甲第1号証:特開平6-62883号公報
甲第2号証:二國監修「澱粉科学ハンドブック」(昭52年7月20日朝倉書店発行)
甲第3号証:中村ら編「澱粉・関連糖質酵素実験法」(1989年10月25日学会出版センター発行)
甲第4号証:NATURE Vol.183(1959.1.3)46頁
甲第5号証:特開昭61-185196号公報
甲第6号証:特開平1-199575号公報
甲第7号証:特開昭61-92592号公報
甲第8号証:特開昭61-70996号公報
甲第9号証:特開平3-83549号公報
2.判断
A.異議理由(1)について
特許異議申立人の異議理由(1)の真意が定かではないが、要するに特許異議申立人の独自の見解に基づくもので採用の限りでない。
B.異議理由(2)について
訂正された請求項1乃至請求項6に係る発明(以下、「本件発明1乃至6」という。)の内、本件発明1は、「17〜5000個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンであって、該グルカンが、
(i)α-1,4-グルコシド結合のみで構成される環状構造に加えて非環状構造を有するグルカン、
(ii)α-1,4-グルコシド結合と少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合とで構成される環状構造に加えて非環状構造を有するグルカン、
(iii)α-1,4-グルコシド結合のみで構成される環状構造のみを有するグルカン、および
(iv)α-1,4-グルコシド結合と少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合とで構成される環状構造のみを有するグルカン、からなる群より選択される、グルカン。」である。
甲第1号証は、「内分岐大環状サイクロデキストリンを含む大環状サイクロデキストリン混合物の製造方法」に係り、「α-CD、β-CDおよびγ-CDを複合体形成沈殿により除去し、次いで逆相カラムにより、内分岐大環状CDを含む大環状CD混合物を製造する方法に関する。」(2頁1欄25〜28行)、「これらのCDの他に、同族に属する9個のグルコース環以上のδ-、ε-、ζ-、η-CDなどの大環状CDやCD環にグルコース、マルトースなどの枝がついた分岐CDが知られている。」(2頁1欄36〜39行)、「そこで、本発明者らはαからγ-CDには内分岐CDは存在せず環に歪みがかかる大環状CDにその存在の可能性を予想し、さらにプルラナーゼを用いず、グルコアミラーゼのみを用いた大環状CDの調製を試み、グルコアミラーゼの作用を受けず、枝切り酵素の作用によりグルコース9個以上のα-1,4グルカンを産生することを確認し、内分岐大環状CDの存在を明確にして本発明を完成したのである。」(2頁2欄4〜11行)、「δ-CD(Dピーク)以上の大環状CDは、水で溶出されるので、分離はきわめて簡単、明瞭であった。」(3頁3欄2〜4行)、「環内にα-1、6結合が2個以上ある大環状内複分岐CDは未だ発見されていないが、その存在も予想できる。」(3頁3欄41〜43行)、「以上の結果から、環に大きな歪みがかかる大環状CDにα-1,6結合を持つ内分岐CDが存在し、環に歪みがかからないか、小さな歪みがかかるα〜δ-CDが存在しないことが判明した。」(3頁4欄7〜10行)、「・・・δ以上の大環状CDを70%以上に含むCD混合物を大環状CD標品Iとして得た。」(3頁4欄26〜28行)、「実施例2で得た大環状CD標品IIにプルラナーゼを作用させてG10〜G13の直鎖糖と大環状CDを含む標品を得た。」(3頁4欄35〜37行)、「本発明の方法では、CD合成酵素により生産されたCD製品からグルコアミラーゼを用いることにより、内分岐大環状CDを含むCD混合物を製造することができる。さらに、酵母を作用させることによりグルコースとマンノースは資化されるので、α-、β-、γ-CDを含む大環状CD混合物が得られる。用途によってはこの状態でも商品化できるが、大環状CD含有量を高めた製品を生産するには、ODSカラムを用いる。すなわち、水溶出によりε環状以上のCDが得られるので、これを濃縮して製品化すればよい。」(3頁4欄41〜50行)、「大環状CDの利用法としては、クロロフィル、ステロイド、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、その他の分子量の大きい疎水性物質の包接、普通環CDでは包接の難しい不快臭の包接などがあり、さらに溶解性にも優れているので、可溶化にも利用できる。その他、普通環CD、分岐CDと同様に、医薬、化粧品、化学工業等への用途も考えられる。」(4頁5欄4〜10行)、及び「さらに、内分岐CDを含まないε-、η-、θ-CDにマルトースを過剰に加え、CD合成酵素に作用させれば、そのcoupling作用によりG12〜G15、G22〜G28などの、これまで単品として得られていなかったメガロ糖の調製も可能となる。」(4頁5欄21〜26行)がぞれぞれ記載され、また、【図面の簡単な説明】の項には、「J」として「κ-CD」のチャートが示されている。
しかるに、特許異議申立人は、「k.本公開公報・図1に示された大環状標品Iの糖組成を示す液クロチャートには、重合度15(α-1,4-グルコシド結合14個)のκ-CD(Jピーク)が示されている。 l.本公開公報・図1,図2の液クロチャートには、前記Jピーク以降にもピークが示され、α-1,4-グルコシド結合14個以上を備える大環状CDが標品に含まれていることが示されている。」(特許異議申立書10頁下2行〜11頁4行)と甲第1号証に記載された事項を認定した上で、「まず、甲第1号証には、α-1,4-グルコシド結合を14個以上を備える大環状グルカン(サイクロデキストリン)及びα-1,4-グルコシド結合を14個以上を備えるとともに、α-1,6-グルコシド結合による分岐構造を備える環状グルカン(サイクロデキストリン)が開示されていることは、上記した甲第1号証の記載事項から明らかであって、少なくとも当該甲第1号証に記載されているに等しい事項から当業者が把握できるものであると明言できる。従って、本件請求項1〜6に記載された発明と甲第1号証に記載された発明は、ともに同一構造のグルカンを示しているものと言えるから、本件請求項1〜6に記載された発明は、新規性を具備しない」(同11頁6〜15行)と主張している。(甲第1号証に記載の事項の認定に関し、特許権者は特許異議意見書で争っているが、ひとまず措くことにする。)
特許異議申立人の主張にそって甲第1号証をみると、α-CDは重合度が6、β-CDは重合度が7、及びγ-CDは重合度が8であるから、κ-CDは重合度が15ということになる。しかし、本件発明1は、環状構造が「17〜5000個のα-1,4-グルコシド結合により構成」されるものであり、しかも、甲第1号証には、「J:κ-CD」以上のピークについて具体的に認識し開示したところはないのであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
訂正後の請求項2乃至請求項6に係る発明(以下、「本件発明2乃至6」という。)は、本件発明1を引用したものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではない。

C.異議理由(3)について
甲第2号証には、「そのほか、さらに高重合度(〜12)までのサイクロデキストリンが分離されているが、重合度10以上のものは環状分子に側鎖が結合したものと考えられている。」(67頁12〜15行)との記載、並びに「D酵素」及び「サイクロデキストリン形成酵素」に関する記載があり、甲第3号証には、「ホスホリラーゼは、G-1-Pより直鎖のα-1,4-グルカンを合成するが、この際、枝つくり酵素を共存させると非還元性末端の数が増え、ホスホリラーゼによるα-1、4-グルカン合成速度が促進される。」(119頁8〜10行)が、甲第4号証には、D酵素を利用するアミロースの合成に関することが記載され、甲第5号証には、「CGTaseは、α-1,4-グルカンから転移反応によりCDを生成するいわゆるサイクリゼイションの外に、CDの環を開裂すると同時に他の糖を結合するカプリング反応や直鎖オリゴ糖間の転移反応であるデスプロポーション反応の触媒となる特異な性質がある。したがって澱粉からCDを効率よく多量に生成するためには、この複雑な作用機構をうまく制御してやる必要がある。」(2頁左上欄下から5行〜右上欄3行)、「以上説明したごとく弱塩基性アニオン交換樹脂にCDTaseを吸着させた固定化酵素をカラムに充填し、液化澱粉液を所定の流速で通すことにより、CDを効率的、連続的また短時間で製造することができる。さらに、固定化酵素を使用することにより、バッチ法のように酵素が1回きりの使い捨てでないため、酵素の消費量が大幅に節減でき経済的メリットは非常に大きい。」(3頁右上欄下5行〜左下欄3行)が記載され、甲第6号証には、サイクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼにより、α-CD、β-CD及びγ-CDが製造されたことが、甲第7号証には、CDと澱粉の混合物に枝切り酵素とβ-アミラーゼを作用させて、α-CD、β-CD及びγ-CDにグルコースが1つ結合した分岐CD、並びに、α-CD、β-CD及びγ-CDにグルコースが2つ結合した分岐CDが得られたことが、甲第8号証には、マルトシル-α-サイクロデキストリンの製造方法が、甲第9号証には、サイクロデキストリン含有加工澱粉及びその利用方法が、それぞれ記載されている。
しかし、上記甲各号証に記載されているサイクロデキストリンのうち、高重合度のものでも精々12であって、本件発明1に係る、「17〜5000個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカン」について開示されているところはない。
そして、甲第1号証に該グルカンに関し記載のないことは、上記「A」で検討したとおりであり、また、甲第1号証乃至甲第9号証に記載された事項を組み合わせても、本件発明1のような構成からなる「グルカン」が導き出されることはない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証乃至甲第9号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
本件発明2乃至6は、本件発明1を引用したものであり、訂正後の請求項7乃至請求項21に係る発明(以下、「本件発明7乃至21」という。)のうち、本件発明7及び本件発明8は、本件発明1に係る「グルカン」が有するアルコール性水酸基が誘導体化された「グルカンの誘導体」に係り、本件発明9乃至本件発明13は、本件発明1に係る「グルカン」または本件発明7に係る「グルカンの誘導体」の製造方法に係り、本件発明14乃至本件発明21は、本件発明1に係る「グルカン」、或いは本件発明7に係る「グルカンの誘導体」を有効成分とする用途発明に係るものであるから、本件発明2乃至本件発明21は、本件発明1についての判断と同様の理由により、甲第1号証乃至甲第9号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
D.異議理由(4)について
特許異議申立人は、本件発明14乃至本件発明21には、作用効果の不明な部分が内在している、と主張している。
しかし、上記訂正請求により、作用効果の不明な部分については訂正され、また、乙第2号証に係る「実験成績証明書」により、環状物質が接着性を有することが確認できるので、最早、本件発明14乃至本件発明21には、作用効果の不明な部分が内在しているとはいえない。
したがって、本件発明14乃至本件発明21は、当業者が容易に実施することができるように記載されていない、或いは、特許を受けようとする発明が明確でないから、同法36条4項の規定、或いは、同条6項2号の規定に違反するするとはいえない。
3.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1乃至本件発明21についての特許を取り消すことはできない。
また他に本件発明1乃至本件発明21についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
環状構造を有するグルカンおよびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 17〜5000個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンであって、該グルカンが、
(i)α-1,4-グルコシド結合のみで構成される環状構造に加えて非環状構造を有するグルカン、
(ii)α-1,4-グルコシド結合と少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合とで構成される環状構造に加えて非環状構造を有するグルカン、
(iii)α-1,4-グルコシド結合のみで構成される環状構造のみを有するグルカン、および
(iv)α-1,4-グルコシド結合と少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合とで構成される環状構造のみを有するグルカン、
からなる群より選択される、グルカン。
【請求項2】 17〜5000個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造のみを有する、請求項1に記載のグルカン。
【請求項3】 17〜1000個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有する、請求項1に記載のグルカン。
【請求項4】 17〜1000個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造のみを有する、請求項1に記載のグルカン。
【請求項5】 17〜5000個のα-1,4-グルコシド結合と少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合とにより構成される環状構造を分子内に1つ有する、請求項1に記載のグルカン。
【請求項6】 17〜5000個のα-1,4-グルコシド結合と少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合とにより構成される環状構造のみを有する、請求項1に記載のグルカン。
【請求項7】 請求項1に記載のグルカンの誘導体であって、該グルカンが有するアルコール性水酸基のうちの少なくとも1つが誘導体化されている、グルカンの誘導体。
【請求項8】 前記誘導体化が、エーテル化、エステル化、架橋化、およびグラフト化からなる群から選択される誘導体化である、請求項7に記載のグルカンの誘導体。
【請求項9】 直鎖のα-1,4-グルカンまたはこれらを含む糖類と、少なくとも17個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンを生成し得る酵素であるD酵素とを反応させる工程を包含する、
少なくとも17個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンまたはその誘導体の製造方法。
【請求項10】 前記工程が、ホスホリラーゼおよびグルコース-1-リン酸の存在下で行われる、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】 前記工程が、α-1,6-グルコシド結合を切断する酵素の存在下で行われる、請求項9または請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】 前記直鎖のα-1,4-グルカンまたはこれらを含む糖類が、マルトオリゴ糖、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、澱粉、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、可溶性澱粉、デキストリン、澱粉枝きり物、澱粉部分加水分解物、ホスホリラーゼによる酵素合成澱粉、およびこれらの誘導体からなる群から選択される、少なくとも1つの直鎖のα-1,4-グルカンまたはこれを含む糖類である、請求項9から請求項11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】 固定化された酵素を用いる請求項9から請求項12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】 請求項1から請求項6に記載のグルカン、および請求項7および請求項8に記載のグルカンの誘導体からなる群から選択される、少なくとも一つのグルカンまたはグルカンの誘導体を含有する、飲食用組成物。
【請求項15】 請求項1から請求項6に記載のグルカン、および請求項7および請求項8に記載のグルカンの誘導体からなる群から選択される、少なくとも一つのグルカンまたはグルカンの誘導体を含有する、輸液。
【請求項16】 請求項1から請求項6に記載のグルカン、および請求項7および請求項8に記載のグルカンの誘導体からなる群から選択される、少なくとも一つのグルカンまたはグルカンの誘導体を含有する、接着用組成物。
【請求項17】 請求項1から請求項6に記載のグルカン、および請求項7および請求項8に記載のグルカンの誘導体からなる群から選択される、少なくとも一つの、環状構造のみを有するグルカンまたはグルカンの誘導体、および、それらに包接される化合物を含有する、包接物。
【請求項18】 請求項1から請求項6に記載のグルカン、および請求項7および請求項8に記載のグルカンの誘導体からなる群から選択される、少なくとも一つのグルカンまたはグルカンの誘導体を含有する、澱粉。
【請求項19】 請求項1から請求項6に記載のグルカン、および請求項7および請求項8に記載のグルカンの誘導体からなる群から選択される、少なくとも一つの、環状構造に加えて非環状構造を有するグルカンまたはグルカンの誘導体を含有する、澱粉の老化防止剤。
【請求項20】 請求項1から請求項6に記載のグルカン、および請求項7および請求項8に記載のグルカンの誘導体からなる群から選択される、少なくとも一つのグルカンまたはグルカンの誘導体を含有する、食品添加用組成物。
【請求項21】 請求項1から請求項6に記載のグルカン、および請求項7および請求項8に記載のグルカンの誘導体からなる群から選択される、少なくとも一つのグルカンまたはグルカンの誘導体、および、それらに吸着される化合物を含有する、吸着物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、澱粉加工工業における原料、飲食用組成物、食品添加用組成物、輸液、接着用組成物、包接物または吸着物、澱粉の老化防止剤、あるいは生物崩壊性プラスチック用の澱粉の代替物質として有用な、グルカン、その誘導体、およびそれらの製造方法に関する。更に詳しくは、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカン、その誘導体、およびそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、澱粉は、マルトース、水飴類、またはサイクロデキストリンなどの製造のための原料、飲食用組成物、食品添加用組成物、あるいは生物崩壊性プラスチック用素材として用いられている高分子物質である。
【0003】
しかし、既存の澱粉には、上記用途に使用するに際して、水に対する低溶解度、老化性、および高い粘性を有するという問題がある。澱粉は、一般的に水に対する溶解度が低い。従って、澱粉を水に溶解するためには、加熱処理、または、有機溶媒、酸、あるいはアルカリなどにより処理を行うことが必要である。
【0004】
溶解した澱粉もしくは糊化した澱粉は、迅速に老化し、不溶性の沈澱を形成する。澱粉の老化は、澱粉溶液の粘弾性、澱粉の接着性などの物性を変化させる、あるいは、澱粉質を含有する食品においては、保水性、保形性、冷凍耐性、または消化性を低下させるなどの問題を引き起こしている。
【0005】
さらに、糊化した澱粉は、高い粘性を有する。これは、澱粉中のアミロペクチンが、房状構造が多数連なった非常に長い分子であることに起因する。糊化した澱粉は高い粘性を有するため、澱粉を原料として、マルトースあるいはサイクロデキストリンなどを製造する場合に、取り扱いが困難であるという問題がある。例えば、一定濃度以上の糊化した澱粉をパイプを用いて輸送する場合には、パイプが詰まることがある。
【0006】
このように、既存の澱粉が有する上記性質(溶解性の低さ、老化性、および高粘度)は、食品およびその他の産業において、澱粉の利用を制限するものであった。
【0007】
そこで、酵素処理、化学処理、物理的処理を行って澱粉を低分子化させることにより、溶解性および耐老化性を向上させる研究が行われ、ある程度は、老化を防止し得るようになった。しかし、過剰な分子量低下を抑えることは困難であり、本来高分子である澱粉の持つ固有の性質を失うという問題が生じた。さらに、これらの方法では、澱粉の還元力が増加する。従って、タンパク質やアミノ酸など混合して加熱した際に、これらの物質との反応により、澱粉が着色してしまうため、その用途は制限されていた。
【0008】
上記酵素処理の一つとして、いわゆるD酵素(ディスプロポーショネーティングエンザイム(EC 2.4.1.25))またはアミロマルターゼ(EC 2.4.1.25)を用いる方法が知られている。このD酵素は最初、馬鈴薯から発見されたが、種々の植物、および大腸菌などの微生物に存在することが知られている。この酵素は、植物由来の場合には、D酵素と呼ばれ、バクテリア由来の場合にはアミロマルターゼと呼ばれる。
【0009】
D酵素は、マルトオリゴ糖の糖転移反応(不均一化反応)を触媒すると考えられていた。この酵素は、供与体分子の非還元末端から、グルコシル基あるいはマルトシルあるいはマルトオリゴシルユニットを受容体分子の非還元末端に転移する。従って、酵素反応の結果、最初に与えられたマルトオリゴ糖の重合度不均一化がおこる。この不均一化反応は、例えば、可溶性澱粉あるいはアミロース等の高分子量の澱粉を供与体とし、グルコースあるいはマルトオリゴ糖を受容体とした時に起こることが知られている。
【0010】
しかし、このD酵素を用いた研究では、澱粉における上記問題点を解決する糸口すら得られていなかった。
【0011】
他方、上記澱粉の代替物として、D-グルコースからなる環状の多糖類、すなわち環状グルカンを使用することが考えられる。
【0012】
既存の環状構造を有するグルカンとしては、α-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造のみを有するグルカンである、サイクロデキストリン類が知られている。これらサイクロデキストリン類は、澱粉にサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase)を作用させて合成しているが、その重合度は通常6から8である。Kobayashi(1993)Denpun Kagaku: vol.40 103-116は、これ以上の重合度を有するα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造のみを有するグルカンが、CGTaseにより合成されることを報告しているが、最も大きなものでも重合度は13である。
【0013】
さらに、α-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造のみを有する重合度9から13のグルカンの収率は非常に低く、実用性に乏しい。また、CGTaseによる反応では、数十、数百という重合度の、α-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造のみを有するグルカンの合成は不可能であると思われている。
【0014】
このサイクロデキストリン類中の1個または複数個のグルコース残基の6位に糖を結合させることもできるが、結合させる糖の大きさは、通常収率の面からマルトテトラオースまでの大きさである。このようなグルカンは、その特殊な構造のために、唾液や膵液などの消化酵素で、消化されにくいという問題がある。
【0015】
他の酵素、例えばD酵素は、α-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を有するグルカンの合成には用いられていない。
【0016】
酵素による生産以外の方法においても、14以上の重合度、さらには、数十、数百という重合度の、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を有するグルカンの生産についての報告はされていない。すなわち、14以上、さらには数十、数百の重合度を有する、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を有するグルカンはその存在が知られていなかった。
【0017】
従って、高い重合度の少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を有するグルカンがどのような性質を有するかは未知であり、澱粉の代用ができるとは考えられていなかった。
【0018】
そこで、既存の澱粉と比較して、水に対する溶解度が高く、溶解した糊液の粘度が低く、また通常の澱粉に観察される老化が起こらないという優れた性質を有する、澱粉の代替物質が待望されている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決することを目的とするものである。既存の澱粉と比較して、水に対する溶解度が高く、溶解した溶液の粘度が低く、そして通常の澱粉に観察される老化が起こらないという優れた性質を有し、澱粉の老化を防止することができる、澱粉の代替物質として有用な、新規な物質を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、糖の転移反応を触媒する酵素、特にD酵素が、これまで知られていた重合度不均化反応に加えて、新規な反応であるα-1,4-グルカン環状化反応を触媒することを発見し、これを利用して本発明を完成させたものである。更に、本発明者らは前記D酵素が、少なくとも1つのα-1,6-グルコシド結合を含むα-1,4-グルカン環状化反応を触媒することを発見し、これを利用して本発明を完成させたものである。D酵素が、少なくとも14の重合度の、さらには、数十、数百の重合度のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカン(すなわち、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカン)の合成反応を行うことは知られておらず、また、容易に想像できたものでもなく、驚くべき効果である。本発明者らは、新規な化合物である、本発明のグルカンが、水に対する溶解度が非常に高く、その溶液の粘度が低く、そして老化が起こらないという性質を有することを確認し、飲食用組成物、食品添加用組成物、あるいは、生物崩壊性プラスチック用の澱粉の代替物質として有用であることを見いだして本発明を完成した。
【0021】
本発明のグルカンは、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有する。
【0022】
好適な実施態様においては、本発明のグルカンは、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造のみを有する。
【0023】
好適な実施態様においては、本発明のグルカンは、少なくとも17個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有する。
【0024】
好適な実施態様においては、本発明のグルカンは、少なくとも17個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造のみを有する。
【0025】
好適な実施態様においては、本発明のグルカンは、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合と少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合とにより構成される環状構造を分子内に1つ有する。
【0026】
好適な実施態様においては、本発明のグルカンは、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合と少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合とにより構成される環状構造のみを有する。
【0027】
さらに、本発明は、上記グルカンの誘導体を提供する。本発明のグルカン誘導体は、上記のグルカンが有するアルコール性水酸基のうちの少なくとも1つが誘導体化されている。
【0028】
上記誘導体化は、エーテル化、エステル化、架橋化、およびグラフト化からなる群から選択される。このことにより、上記目的が達成される。
【0029】
さらに、本発明は、直鎖のα-1,4-グルカンまたはこれらを含む糖類と、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンを生成し得る酵素とを反応させる工程を包含する、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンまたはその誘導体の製造方法を提供する。
【0030】
好適な実施態様においては、本発明の製造方法は、ホスホリラーゼおよびグルコース-1-リン酸の存在下で行われる。
【0031】
好適な実施態様においては、本発明の製造方法は、α-1,6-グルコシド結合を切断する酵素の存在下で行われる。
【0032】
好適な実施態様においては、本発明の製造方法において用いられる糖類は、マルトオリゴ糖、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、澱粉、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、可溶性澱粉、デキストリン、澱粉枝きり物、澱粉部分加水分解物、ホスホリラーゼによる酵素合成澱粉、およびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの、直鎖のα-1,4-グルカンまたはこれを含む糖類である。
【0033】
好適な実施態様においては、本発明の製造方法に用いられる上記グルカンを生成し得る酵素は、D酵素である。
【0034】
好適な実施態様においては、本発明の製造方法に用いられる上記グルカンを生成し得る酵素は、固定化された酵素である。
【0035】
また、本発明は、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンまたはその誘導体を少なくとも1種含有する、飲食用組成物または食品添加用組成物を提供する。
【0036】
さらに、本発明は、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンまたはその誘導体を少なくとも1種含有する、輸液を提供する。
【0037】
さらに、本発明は、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンまたはその誘導体を少なくとも1種含有する、接着用組成物を提供する。
【0038】
さらに、本発明は、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンまたはその誘導体を少なくとも1種、および、それらに包接または吸着される化合物からなる、包接物または吸着物を提供する。
【0039】
さらに、本発明は、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンまたはそれらの誘導体を、少なくとも1種含有する、澱粉を提供する。
【0040】
また、本発明は、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンまたはそれらの誘導体を、少なくとも1種含有する、澱粉の老化防止剤を提供する。
【0041】
以上の記載の発明により、上記目的が達成される。
【0042】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0043】
本発明のグルカンは、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンであり、具体的には、例えば、図1に模式的に示される種々のグルカンが挙げられる。図1において、水平の直線および曲線は、α-1,4-グルコシド結合でつながったグルカンの鎖を示し、垂直の矢印は、α-1,6-グルコシド結合を示す(以下の模式図における水平の直線および曲線、ならびに垂直の矢印も同様である)。
【0044】
上記のように、本発明のグルカンには、環状構造のみを有するグルカン(以下、本発明の環状グルカンという)と、さらに環状構造に加えて非環状構造を有するグルカンとが含まれる。そしてこの環状構造には、α-1,4-グルコシド結合のみで構成される場合と、α-1,4-グルコシド結合と少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合で構成される場合とがある。少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合を環状構造内部もしくは非環状構造部分に有するグルカンは、アミロペクチンのような分枝構造を有するグルカンを基質とした場合に生じる。
【0045】
環状構造のみを有するグルカンは、環状構造に加えて非環状構造を有するグルカンをα-1,4-グルコシド結合及びα-1,6-グルコシド結合を非還元性末端から切断するグルコアミラーゼ処理して得られる。あるいは直鎖状のα-1,4-グルカンまたは分枝構造を有するグルカンを基質として用いて、直接得られる。
【0046】
本発明のグルカンは、以下の性質を有する。
【0047】
(1)非還元性末端のα-1,4-グルコシド結合およびα-1,6-グルコシド結合を加水分解するエキソ型アミラーゼであるグルコアミラーゼ(東洋紡(株))を作用させると、それ以上分解されない成分(グルコアミラーゼ耐性成分)が残る。その成分は、脱リン酸化酵素(シグマ社)を作用させた後にさらにグルコアミラーゼを作用させても分解されない。
【0048】
(2)上記グルコアミラーゼ耐性成分は、澱粉中のα-1,6-グルコシド結合を加水分解するイソアミラーゼ(株式会社林原生化学研究所)により、分解され、グルコアミラーゼの作用を受けるようになる場合がある。
【0049】
(3)上記グルコアミラーゼ耐性成分は、エンド型アミラーゼであるα-アミラーゼにより分解される。
【0050】
本発明の環状グルカンのうち、α-1,6-グルコシド結合を有せず、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合のみで構成される環状構造のみを有するグルカン(以下、本発明のα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンという)は、以下の性質を有する。
【0051】
(1)還元性末端、非還元性末端が、いずれも検出できない。
【0052】
(2)非還元性末端のα-1,4-グルコシド結合を加水分解するエキソ型アミラーゼであるβ-アミラーゼ(生化学工業株式会社)およびグルコアミラーゼ(東洋紡(株))では分解されない。
【0053】
(3)澱粉中のα-1,6-グルコシド結合を加水分解するイソアミラーゼ(株式会社林原生化学研究所)とプルラナーゼ(株式会社林原生化学研究所)の併用、もしくはイソアミラーゼとプルラナーゼとβ-アミラーゼの併用でも分解されない。
【0054】
(4)澱粉分子内部のα-1,4-グルコシド結合を加水分解するエンド型アミラーゼであるα-アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社)により完全に分解される。
【0055】
(5)細菌糖化型α-アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社)で加水分解し、HPLCで分析すると、グルコース、マルトース、及び若干量のマルトトリオースのみが得られる。すなわち、α-1,4-グルコシド結合以外の結合は存在しない。
【0056】
本発明の環状グルカンのうち、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合と少なくとも1つのα-1,6-グルコシド結合とにより構成される環状構造のみを有するグルカン(以下、本発明のα-1,6-グルコシド結合を有する環状グルカンという)は、以下の性質を有する。
【0057】
(1)還元性末端、非還元性末端が、いずれも検出できない。
【0058】
(2)非還元性末端のα-1,4-グルコシド結合を加水分解するエキソ型アミラーゼであるβ-アミラーゼ(生化学工業株式会社)およびグルコアミラーゼ(東洋紡(株))では分解されない。
【0059】
(3)澱粉中のα-1,6-グルコシド結合を加水分解するイソアミラーゼ(株式会社林原生化学研究所)により、分解され、グルコアミラーゼの作用を受けるようになる。
【0060】
(4)澱粉中のα-1,4-グルコシド結合を加水分解するエンド型α-アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社製)により、分解され、グルコアミラーゼの作用を受けるようになる。また、同エンド型αーアミラーゼを、α-1,6-グルコシド結合を有する環状グルカンに作用させた場合の最小リミットデキストリンは、イソマルトシルマルトース(IMM)であることが知られている(Yamamoto,T.Handbook of amylase and related enzymes,Pergamon press,p40-45(1988))。上記本発明のα-1,6-グルコシド結合を有する環状グルカンをエンド型αーアミラーゼで処理することによって、IMMが検出される。
【0061】
本発明のグルカンの環状構造を構成するグルコースの数は、少なくとも14であり、好ましくは、14〜約5000個、更に好ましくは、17〜1000個である。α-1,6-グルコシド結合を有する場合、その数は少なくとも1個あればよく、通常1〜500個、好ましくは1〜100個である。
【0062】
前記還元性末端の定量は、Hizukuriら(1981)Carbohydr.Res:94:205-213の改変パークジョンソン法により、非還元性末端の定量はHizukuriら(1978)Carbohydr.Res:63:261-264の迅速スミス分解法により行い得る。
【0063】
前記エキソ型アミラーゼであるβ-アミラーゼおよびグルコアミラーゼ、あるいは、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、あるいは、エンド型アミラーゼであるα-アミラーゼによる分解は、例えば、本発明の少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造のみを有するグルカンを、0.1%(w/v)となるように蒸留水に溶解後、100μlをとり、上記分解酵素をそれぞれ適当量加え、30-45℃で数時間反応させる。この反応物を、DIONEX社の糖分析システム(送液システム:DX300、検出器:PAD-2、カラム:CarboPacPA100)にかけ、分析し得る。溶出は、例えば、流速:1ml/min,NaOH濃度:150mM,酢酸ナトリウム濃度:0分-50mM、2分-50mM、37分-350mM、45分-850mM、47分-850mMの条件で行い、重合度および生じる糖を分析し得る。
【0064】
本発明のグルカンまたはその誘導体からの前記グルコアミラーゼ耐性成分の検出は、次のように行い得る。例えば、本発明のグルカン100mgを5mlの蒸留水に溶解させ、グルコアミラーゼを終濃度10単位/mlとなるように添加し、40℃で一夜反応させる。この反応物を100℃で10分間加熱し、不溶物を遠心分離により除去した後、10倍量のエタノールを添加し、残存する多糖を遠心分離による沈澱として回収する。沈澱をさらに1mlの蒸留水に溶解し、グルコアミラーゼを終濃度50単位/mlとなるように添加し、40℃で1時間反応させ、100℃で10分間加熱し、不溶物を遠心分離により除去する。これに10倍量エタノールを添加し沈澱を得る。本発明のグルカンの原料が一部リン酸基により修飾されている澱粉などの原料の場合は、得られた沈澱を10mM 炭酸緩衝液(pH9.4、10mMのMgCl2および0.3mMのZnCl2を含む)に溶解し、20単位の脱リン酸化酵素(ウシ由来、Sigma製)を添加し、40℃で24時間反応させた後、10倍量エタノールを添加し、沈澱を回収する。再度蒸留水に溶解し、グルコアミラーゼを終濃度50単位/mlとなるように添加し、40℃で1時間反応させ、10倍量のエタノールを添加し、グルコアミラーゼ耐性成分を沈澱として得ることができる。
【0065】
本発明のグルカン中の非環状構造部分、α-1,6-グルコシド結合を有する環状構造部分、およびα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造部分の定量は、以下のように行い得る。試料グルカン10mgを1mlのDMSOに溶解した後、100mMの酢酸ナトリウム緩衝液8mlを用いてすばやく希釈する。この希釈液を900μlずつ4試料採り、それぞれの試料に、100μlの蒸留水、グルコアミラーゼ液、枝切り酵素とグルコアミラーゼとの混合液、およびエンド型α-アミラーゼとグルコアミラーゼとの混合液をそれぞれ加えて、40℃で4時間反応させる。反応終了後、生じたグルコースを、市販のグルコース定量キットを用いて測定することにより、試料グルカン中の非環状構造部分、α-1,6-グルコシド結合を有する環状構造部分、およびα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造部分を計算により求めることができる。詳細は、実施例で説明する。
【0066】
本発明のグルカンの環状構造部分の重合度は、クロマトグラフィーを用いて測定し得る。一般的に、環状多糖は同じ重合度の直鎖多糖とはクロマトグラフィーにおける挙動が異なることが知られており、この性質を用いて、環状であることの証明、及び環状多糖の重合度の決定が行われ得る。例えば、D酵素を用いて反応させて得られた本発明のα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンを上記のDIONEX社の糖分析システムで分離し、シングルピークの画分を取得し得る。得られた画分を、例えば、0.1NのHClで100℃、30分間処理し、この環状構造部分を部分的に加水分解したのち、分解により生じた種々の重合度の直鎖のグルカンをDIONEX社の糖分析システムを用いて分析し、重合度を決定し得る。詳細な分析方法は、実施例で述べる。
【0067】
本発明のグルカンは、直鎖のα-1,4-グルカンまたはこれらを含む糖類と、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンを生成し得る酵素とを反応させて得られる。このような活性を有する酵素であれば、いかなる酵素も使用し得る。本発明においては、D酵素を用いることが好ましい。
【0068】
D酵素は最初、馬鈴薯から発見されたが、種々の植物、および大腸菌などの微生物に存在していることがわかっている。従って、D酵素はその起源は問わず、植物由来の酵素をコードする遺伝子を大腸菌などの宿主をもちいて発現せしめたものであっても使用し得る。ここでは、馬鈴薯および大腸菌からのD酵素の精製方法を例として開示するが、これに限られない。
【0069】
馬鈴薯から、D酵素を精製する方法は、Takahaら、J.Biol.Chem. vol.268, 1391-1396(1993)に記載されている。まず、馬鈴薯塊茎を5mMのメルカプトエタノールを含む適当な緩衝液中でホモジナイズし、遠心分離して、0.45μmのメンブレンを通した後、Q-Sepharoseカラムにかけ、例えば、5mM 2-メルカプトエタノールを含む20mMTris-HCl(pH7.5)(緩衝液A)に150mM NaClを含む緩衝液で洗浄する。D酵素は、450mMのNaClを含む緩衝液Aに溶出する。これを、緩衝液Aに対して透析し、500mM 硫酸アンモニウムを含む溶液をPhenyl Toyopearl 650M(Toso)カラムにロードし、緩衝液A中の硫酸アンモニウム濃度を500mMから0mMに変化させることにより溶出を行い、D酵素活性画分を集め、緩衝液Aに対して透析を行う。透析内液を緩衝液Aで平衡化したPL-SAXカラム(Polymer Laboratory U.K.)にロードし、緩衝液A中のNaCl濃度を150mM-400mMに変化させて溶出し、D酵素活性画分を集める。上記の方法で馬鈴薯からD酵素を精製し得る。酵素活性の測定は、実施例において詳述する。
【0070】
前出のTakahaら、J.Biol.Chem.vol.268,1391-1396(1993)には、馬鈴薯D酵素のcDNA配列(同1394頁、Fig.3)、D酵素の組換プラスミドの作成(同1392頁)、該組換えプラスミドの大腸菌における発現、および組換え大腸菌からのD酵素の精製が開示されており、組換え法で作成されるD酵素も当然に使用され得る。
大腸菌からD酵素を精製する方法は、例えば、まず、D酵素の生産株である大腸菌TG-1株をLB液体培地を用いて37℃で対数増殖期まで培養後、マルトースを終濃度1%(w/v)となるように添加し、さらに37℃で2時間培養する。遠心分離で集めた菌体を、前記緩衝液Aに懸濁して超音波処理、遠心分離を行い、菌体抽出液を得る。次に、例えば、緩衝液Aで平衡化したQ-Sepharose Fast Flow(Pharmacia)カラムにロードし、緩衝液A中のNaCl濃度を0mMから500mMに変化させて溶出を行い、D酵素活性画分を集める。活性画分に、終濃度1Mになるように硫酸アンモニウムを加えて放置し、遠心分離で不溶性の沈澱を除去し、上清を1Mの硫酸アンモニウムを含む緩衝液Aで平衡化したPhenyl Toyopearl 650M(Toso)カラムにロードする。緩衝液A中の硫酸アンモニウム濃度を1Mから0mMに変化させることにより溶出を行い、D酵素活性画分を集める。この画分を、緩衝液Aに対して透析後、透析内液を緩衝液Aで平衡化したResource Qカラム(Pharmacia)にロードし、緩衝液Aの中のNaCl濃度を0mMから500mMに変化させることにより溶出を行い、D酵素を精製する。
【0071】
D酵素は、上記のようにして精製され得るが、澱粉分子内のα-1,4-グルコシド結合に作用するエンド型のアミラーゼ類が検出されなければ、上記いずれの精製段階の粗酵素であっても、本発明のグルカンの合成に使用し得る。
【0072】
また、本発明に用いる酵素は、精製酵素、粗酵素を問わず、固定化されたものでも反応に使用し得、反応の形式は、バッチ式でも連続式でもよい。固定化の方法としては、担体結合法、(たとえば、共有結合法、イオン結合法、あるいは物理的吸着法)、架橋法あるいは包括法(格子型あるいはマイクロカプセル型)が使用され得る。
【0073】
本発明のα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンのみを得たい場合には、アミロース、澱粉枝切り物、ホスホリラーゼによる酵素合成アミロース、マルトオリゴ糖などのα-1,4-グルコシド結合のみからなる直鎖のα-1,4-グルカンに、本発明のグルカンに使用し得る上記酵素、例えばD酵素を作用させて製造し得る。
【0074】
また、アミロペクチン、グリコーゲン、澱粉、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、可溶性澱粉、デキストリン、澱粉加水分解物、ホスホリラーゼによる酵素合成アミロペクチンなどのα-1,6-分岐構造を有する糖類を原料にする場合で、本発明のα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンのみを得たい場合には、本発明のグルカンに使用し得る上記酵素、例えば、D酵素を直接原料に反応させて製造し得る。あるいは、α-1,6-グルコシド結合を切断するが、α-1,4-グルコシド結合を切断しない酵素、例えばイソアミラーゼ、プルラナーゼの存在下または非存在下で、上記糖類を本発明のグルカンに使用し得る上記酵素、例えばD酵素と反応させて製造し得る。
【0075】
例えば、図2に示すように、還元末端(11)を有するアミロース(12)とD酵素とを反応させて、上記α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン(13)を作成した後、グルコアミラーゼを添加して、非環状グルカンを非還元末端から順次加水分解する。次にエタノールを加えて環状グルカンを沈澱として回収したのち凍結乾燥し、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン(13)を得る。
【0076】
あるいは、還元末端(11)を有するアミロペクチン(14)とα-1,6-グルコシド結合を切断するイソアミラーゼとD酵素とを同時に反応させて、上記α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン(13)を作成した後、グルコアミラーゼを添加して非還元末端から順次加水分解を行う。次にエタノールを加えて環状グルカンを沈澱として回収したのち凍結乾燥し、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン(13)を得る。
【0077】
あるいは、還元末端(11)を有するアミロペクチン(14)にD酵素を反応させることにより、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン(13)と、α-1,4-グルコシド結合のみにより構成される環状構造と非環状構造部分とを有するグルカン(18)と、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合および少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカン(15)とを調製した後、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼを反応させる。さらに、プルラナーゼを反応させ得る。次いで、エタノールを添加して、環状グルカンを沈殿させ、この沈殿を回収した後凍結乾燥することにより、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン(13)を得る。
【0078】
さらに、本発明の少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合と少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカン(以下、本発明のα-1,6-グルコシド結合を有するグルカンという)は、アミロペクチン、グリコーゲン、澱粉、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、可溶性澱粉、デキストリン、澱粉加水分解物、ホスホリラーゼによる酵素合成アミロペクチンなどのα-1,6-分岐構造を有する原料に、本発明のグルカンに使用し得る上記酵素、例えばD酵素を作用させて製造し得る。
【0079】
例えば、図3に示すように、還元末端(11)を有するアミロペクチン(14)にD酵素を反応させて、上記の少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合と少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカン(15)と、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン(13)と、α-1,4-グルコシド結合のみにより構成される環状構造と非環状構造部分とを有するグルカン(18)とを作成した後、ゲル濾過クロマトグラフィーにより、上記の少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合と少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合とにより構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカン(15)を分離し得る。このグルカン(15)に、グルコアミラーゼを添加して非環状構造部分を非還元末端から順次加水分解する。加水分解後に、エタノールを加えて環状グルカンを沈澱として回収したのち凍結乾燥し、少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合を有する環状構造のみで形成されるグルカン(16)を得る。
【0080】
本発明に用いられ得る直鎖のα-1,4-グルカンまたはこれを有する糖類としては、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオースなどのマルトオリゴ糖、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、澱粉、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、可溶性澱粉、デキストリン、澱粉枝きり物、澱粉部分加水分解物、ホスホリラーゼによる酵素合成澱粉、およびこれらの誘導体などが挙げられる。これらは、単独でもよく、あるいは組み合わせても使用し得る。ここで、澱粉枝きり物とは、澱粉にあるα-1,4-グルコシド結合以外の結合を酵素的に全部あるいは一部を切断して得られる物をいう。また、澱粉部分加水分解物とは、澱粉にあるα-1,4-グルコシド結合の一部を酵素的に、もしくは化学的に切断して得られるものをいい、例えば、重合度が100程度以上のアミロペクチン、重合度が20程度以上のアミロースなどが原料として用いられ得る。
【0081】
また、本発明に用いられ得る直鎖のα-1,4-グルカンまたはこれを有する糖類と、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンを生成し得る酵素との反応は、ホスホリラーゼおよびグルコース-1-リン酸の存在下で行い得る。ホスホリラーゼは、グルコース-1-リン酸が過剰に存在する場合には、α-1,4-グルカン鎖の伸張反応を触媒する。このため、上記原料のα-1,4-グルカン鎖が、上記酵素の環状化反応を受けるには充分な長さを有していない場合には、ホスホリラーゼおよびグルコース-1-リン酸を共存させることにより、本発明のグルカンの収量を増加させることが可能である。
【0082】
さらに、原料には、上記澱粉あるいは澱粉の部分分解物の誘導体も用い得る。例えば、上記澱粉のアルコール性の水酸基の少なくとも1つが、エーテル化(カルボキシメチル化、ヒドリキシアルキル化等)、エステル化(リン酸化、アセチル化、硫酸化等)、架橋化またはグラフト化された誘導体なども用いられ得る。さらに、これらの2種以上の混合物も原料として用い得る。
【0083】
上記原料と本発明に使用し得る酵素との反応は、本発明のグルカンが生成するpH、温度などの条件であれば、いずれをも使用し得る。
【0084】
D酵素を例にとれば、反応のpHは、通常、3から10、反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは4から9、さらに好ましくは、6から8である。温度は、約10℃から90℃、反応速度、効率、酵素の安定性などの点から、好ましくは約20℃から60℃、さらに好ましくは、30℃から40℃の範囲である。耐熱性の微生物などから得られる酵素を用いる場合は、50℃から90℃の高温で使用し得る。上記原料の濃度(基質濃度)も、使用する基質の重合度、反応条件を考慮して決定し得る。通常、0.1%から30%程度、反応速度、効率、基質溶液の取り扱い易さなどの点から、好ましくは0.1%から10%、さらに好ましくは溶解度などを考慮すると0.5%から5%である。使用する酵素の量は、反応時間、基質の濃度との関係で、決定され、通常は、約1時間から48時間で反応が終了するように酵素量を選ぶのが好ましく、基質1gあたり、通常50〜10,000単位、好ましくは70〜2,500単位、より好ましくは400〜2,000単位である。
【0085】
本発明のグルカンは、それ自体は公知の手法を適用して分離、精製し得る。例えば、本発明のグルカンは、上記の反応が終了した後、溶媒による沈澱、膜による分離、クロマトグラフィーによる分離などにより、分離、精製され得る。好ましくは、反応液を加熱して、あるいはそのまま精製する。本発明のα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンは、エキソ型のβ-アミラーゼあるいはグルコアミラーゼを添加して、残存する直鎖のα-1,4-グルカンを分解して得られる。澱粉などの分枝多糖を原料として用いた場合には、エキソ型のβ-アミラーゼあるいはグルコアミラーゼと、α-1,6-グルコシド結合を切断する酵素とを併用して、環状α-1,4-グルカンのみが残るように反応させる。その後、溶媒を用いる沈澱、膜分離、クロマト分離などの分離、精製手段が適用され得る。
【0086】
また、本発明のグルカンは、容易に、エーテル化、エステル化、架橋化、およびグラフト化することができ、誘導体とし得、上記目的、用途に使用し得る。誘導体化の方法としては、通常、澱粉の修飾に用いられる方法が用いられ得る(生物化学実験法19,「澱粉・関連糖質実験法」:中村ら、学会出版センター、1986年 273〜303頁)。リン酸化の例としては、本発明のグルカンをジメチルホルムアミド中でオキシ塩化リンと反応させることにより、リン酸化した本発明のグルカンの誘導体を得る。
【0087】
以上のようにして得られた新規な化合物である本発明のグルカンは、既存の澱粉、アミロース、およびアミロペクチンと比べて、水に対する溶解度が大きく改善されており、その水溶液は、既存の澱粉、アミロース、およびアミロペクチンの水溶液において観察される老化が起こらないという優れた性質を有する。また本発明のグルカンは、既存の澱粉の老化を抑制し、もしくは防止する効果を有する。さらに、その水溶液は既存の澱粉などの水溶液に比較して、粘度が低いという優れた性質を有する。さらに、本発明のグルカンは反応性が低いためタンパク質やアミノ酸と混合して加熱したとき、既存の水飴、およびデキストリンと比較して、着色しにくいという優れた性質を有している。また、本発明のグルカンは様々な物質を包接もしくは吸着するという優れた性質を有している。また本発明のグルカンはグルコースがα-1,4-およびα-1,6-グルコシド結合で連結しただけの、通常の澱粉とおなじ基本的構造を持つことから、生体内の酵素により容易にグルコースに分解されることができるため、消化性に優れ、エネルギー変換効率が高い。
【0088】
これらの性質により、本発明のグルカンは、従来澱粉、デキストリンなどが使用できる食品のすべてに使用することが可能であり、ほとんど全ての飲食用組成物または食品添加物用組成物に使用することができる。この飲食用組成物とは、ヒトの食品、動物飼料、ペットフードを総称するものである。すなわち、コーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、ジュース、スポーツドリンクなどの液体および粉末の飲料類、パン、クッキー、クラッカー、ビスケット、ケーキ、ピザ、パイなどのベーカリー類、スパゲッティー、マカロニなどのパスタ類、うどん、そば、ラーメンなどの麺類、キャラメル、ガム、チョコレートなどの菓子類、おかき、ポテトチップス、スナックなどのスナック菓子類、アイスクリーム、シャーベットなどの冷菓類、クリーム、マーガリン、チーズ、粉乳、練乳、乳飲料などの乳製品、ゼリー、プリン、ムース、ヨーグルトなどの洋菓子類、饅頭、ういろ、モチ、おはぎなどの和菓子類、醤油、たれ、麺類のつゆ、ソース、ダシの素、シチューの素、スープの素、複合調味料、カレーの素、マヨネーズ、ドレッシング、ケチャップなどの調味料類、カレー、シチュー、スープ、どんぶりの素などのレトルトもしくは缶詰食品、ハム、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、ピラフ、おにぎりなどの冷蔵食品および冷凍食品、ちくわ、かまぼこなどの水産加工食品、おにぎり、弁当のご飯、寿司めし等の米飯類、その他、餃子の皮、シュウマイの皮にも効果的に利用できる。さらに、消化性の高さを利用して、乳児用ミルク、離乳食、ベビーフード、ペットフード、動物用飼料、スポーツ飲料、スポーツ食品、栄養補助食品などに使用し得る。
【0089】
本発明のグルカンは、輸液に使用することができる。
【0090】
本発明のグルカンは、接着用組成物に使用することができる。本発明のグルカンは、接着性および粘着性を有する。従って、従来、澱粉あるいはデキストリン又はこれらの誘導体が使用される接着分野に利用可能である。接着用組成物には、例えば、製紙、紙加工業における表面サイズ剤、コーティング剤、層間接着剤など、食品工業における結着剤など、繊維、建材工業における糊剤、粘結剤などが含まれる。
【0091】
本発明のグルカンは様々な物質を包接あるいは吸着する。サイキロデキストリンや既存のアミロースにも包接、吸着能力を有するが、本発明のグルカンは水に対する溶解度がアミロースやサイクロデキストリンに比べて著しく高いため、より広い応用範囲が期待できる。さらにサイクロデキストリンよりも重合度が著しく高いため、サイクロデキストリンとは異なるゲスト特異性を有していると考えられる。物質はアミロースやサイクロデキストリンに包接もしくは吸着されることによりその性質が変化したり、新たな性質を獲得したりできる。例えば、溶解度の向上、揮発性物質の不揮発化、不安定物質の安定化、不快臭のマスキングなどがよく知られている。本発明のグルカンに吸着あるいは包接させる物質としては特に制限なく、たとえばわさび、醤油、お茶、さんしょ、ゆず、香料、調味料、色素などの食品、メントール、リノール酸などの医薬品がある。このようにしてできた包接物または吸着物は食品、医薬品として用いることができる。例えば、上記のような食品、および入浴剤、飲み薬、粉末薬などの医薬品に利用可能である。
【0092】
本発明のグルカンは、糊液の粘度の低さに注目して、生物崩壊性プラスチックの原料や、澱粉からたとえばサイクロデキストリンを製造する際の中間物質など、澱粉加工工業における原料として使用することができる。
【0093】
【実施例】
以下に、本発明のグルカンについて、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
(実施例1:D酵素の調製)
Takahaら、J.Biol.Chem. vol.268, 1391-1396(1993)に記載されている方法でD酵素を精製した。まず、馬鈴薯塊茎を5mMの2-メルカプトエタノールを含む20mMTris-HCl(pH7.5)緩衝液(緩衝液A)中でホモジナイズし、遠心分離して、0.45μmのメンブレンを通した後、Q-Sepharoseカラム(16X100mm ファルマシア)にかけ、150mM NaClを含む緩衝液Aで洗浄した。D酵素は、450mMのNaClを含む緩衝液Aに溶出した。溶出後、緩衝液Aに対して透析し、最終濃度が500mMとなるように硫酸アンモニウムを加えた。この溶液をPhenyl Toyopearl 650M(Toso)カラム(10X100mm)にロードし、緩衝液A中の硫酸アンモニウム濃度を500mMから0mMに変化させることにより溶出を行った。D酵素活性画分を集め、緩衝液Aに対して透析を行い、透析液をAmicon Centricon 30マイクロコンセントレーターを用いて濃縮し、PL-SAX HPLCカラム(Polymer Laboratory U.K.)にかけ、緩衝液A中150-400mMのNaCl直線濃度勾配をかけて溶出し、活性画分を集めて上記Amicon Centricon 30マイクロコンセントレーターで濃縮した。
【0095】
酵素活性の測定は、100mMTris-HCl(pH7.0)、5mM 2-メルカプトエタノール、1%(W/V)マルトトリオース、および酵素を含む100μlの反応混合液を37℃、10分間、反応させ、反応液を沸騰水中で3分間加熱して、反応を停止し、反応により遊離したグルコースをグルコースオキシダーゼを用いる方法(Barhamら(1972)Analyst97:142)により定量した。1分間に1μmolのグルコースを生じる酵素量を1単位とした。
【0096】
(実施例2:本発明のα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの調製)
市販のアミロース(平均分子量30,000)500mgを1N-NaOH 10mlに完全に溶解させた後、1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.5)10ml、蒸留水20ml、1N-塩酸10mlを順に加えアミロース溶液をつくった。このアミロース溶液に馬鈴薯由来D酵素200単位を加えて30℃において24時間反応させた。
【0097】
反応液を遠心分離後、上清を100℃、5分間処理し、再び遠心分離して変性した酵素蛋白質を除いた。上清にβアミラーゼ約100単位およびグルコアミラーゼ100単位を加えて50℃において3時間反応させた後、10倍量のエタノールを加えて、沈澱させた。この沈澱を凍結乾燥し、粉末約400mgを得た。
【0098】
(実施例3:本発明のα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの調製)
市販の可溶性澱粉500mgを1N-NaOH 10mlに完全に溶解させた後、1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.5)10ml、蒸留水20ml、1N-塩酸10mlを順に加え澱粉溶液をつくった。この澱粉溶液に市販のイソアミラーゼ10単位と馬鈴薯由来D酵素200単位とを加えて30℃において24時間反応させた。
【0099】
反応液を遠心分離後、上清を100℃、5分間処理し、再び遠心分離して変性した酵素蛋白質を除いた。上清にβアミラーゼ約100単位およびグルコアミラーゼ100単位を加えて50℃において3時間反応させた後、10倍量のエタノールを加えて、環状アミロースを沈澱させた。この沈澱を凍結乾燥し、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの粉末約150mgを得た。
【0100】
(実施例4:本発明のα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの調製)
市販のアミロース(平均分子量320000)20mgをDMSO1mlに完全に溶解させた後、実施例1で精製したD酵素68単位を含む20mMクエン酸緩衝液(pH.7.0)9mlを添加し、30℃で10分、20分、30分、2時間、6時間、および18時間反応させた。反応液を100℃で10分間加熱した後、遠心分離により変性した酵素タンパク質を除いた。上清1mlに5単位のグルコアミラーゼを添加し40度で4時間反応させ非環状のアミロースを除いた。再び反応液を100℃で10分間加熱したのち、遠心分離により変性した酵素タンパクを除き、その上清250μlに10倍量のエタノールを加えて環状グルカンを沈殿させた。
【0101】
(実施例5:α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンであることの確認)
(1)還元性末端、非還元性末端の定量
実施例2で得られた粉末の還元性末端の定量は、Hizukuriら(1981)Carbohydr.Res:94:205-213のパークジョンソン変法により行った。非還元性末端の定量は、Hizukuriら(1978)Carbohydr.Res:63:261-264の迅速スミス分解法により行った。その結果、還元性末端、非還元性末端は、両者とも検出できなかった。
【0102】
(2)エキソ型酵素およびα-1,6-グルコシド結合分解酵素による消化
実施例2で得られた粉末を、0.1%(w/v)となるように蒸留水に溶解後、本物質水溶液100μlに、以下に示した澱粉分解酵素それぞれ1単位を加え40℃で2時間反応させた。この反応物をDIONEX社の糖分析システム(送液システム:DX300、検出器:PAD-2、カラム:CarboPacPA100)により分析した。溶出は流速:1ml/min,NaOH濃度:150mM,酢酸ナトリウム濃度:0分-50mM、2分-50mM、37分-350mM(Gradient curve No.3)、45分-850mM(Gradient curve No.7)、47分-850mMの条件で行った。その結果を図4に示す。
【0103】
図4に示したように、実施例2で得られた粉末は、澱粉分子の非還元性末端のα-1,4-グルコシド結合を加水分解するエキソ型アミラーゼであるβ-アミラーゼ(生化学工業株式会社)およびグルコアミラーゼ(Toyobo Co.,Ltd.)では分解されなかった。また、澱粉中のα-1,6-グルコシド結合を加水分解するイソアミラーゼ(株式会社林原生化学研究所)とプルラナーゼ(株式会社林原生化学研究所)の併用、もしくはイソアミラーゼとプルラナーゼとβ-アミラーゼとの併用でも分解されなかった。しかしこの粉末は、澱粉分子内部のα-1,4-グルコシド結合を加水分解するエンド型アミラーゼであるα-アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社)により完全に分解された。
【0104】
(3)エンド型酵素による消化
実施例2で得られた粉末を0.1%(W/V)となるように蒸留水に溶解後、この水溶液100μlに、細菌糖化型α-アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社)1単位を加え、40℃で2時間反応させた。この反応物をHPLCで分析したところ、グルコース、マルトース、および若干量のマルトトリオースのみが得られた。このことから、上記実施例2で得られた粉末には、α-1,4-グルコシド結合以外の結合は存在しないことが証明され、得られた粉末が、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンであることがわかった。
【0105】
同様の確認を行った結果、実施例3および4で得られた粉末も、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンであることがわかった。
【0106】
(実施例6:α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの重合度の測定)
一般的に、環状多糖は同じ重合度の直鎖多糖と種々のクロマトグラフィーにおける挙動が異なることが知られている。この性質を用いて、環状であることの証明および環状多糖の重合度の決定を行った。
【0107】
(1)特定の重合度を有するα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの精製 実施例2で得られた物質は種々の重合度のα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの混合物であると考えられるので、上記特定の重合度を有する環状グルカンの精製を行った。
【0108】
図5-1には、実施例2で得られた物質100μgを、DIONEX社の糖分析システム(装置および溶出条件は前記と同じ)により分析した際の溶出パターンを示す。図5-2には、同じ溶出条件における、直鎖α-1,4-グルカンの溶出パターンを示す。
【0109】
この図5-1に示される検出可能な最も早く溶出されたピークをA、それに続くピークをそれぞれB、C、D・・・Lとし、このうちGからLのピークを分取し、精製した。
【0110】
(2)酸加水分解物の分析
分取したGからLのピークをそれぞれ0.1NのHClで100℃、30分間、加水分解した。この条件は部分加水分解の条件である。分解物をDIONEX社の糖分析システム(装置および溶出条件は実施例5と同じ)で分析した。図6に、これらの結果を示す。
【0111】
上記ピークGの画分は、酸による部分加水分解を受け、グルコースおよび重合度2から23の直鎖α-1,4-グルカンに分解された。
【0112】
酸分解前のピークGは、直鎖のα-1,4-グルカンの重合度20の当りに溶出されており、分解物の方が分解前の物より高重合度の位置に溶出されるという現象が見いだされた。この現象はそのほかのHからLのピークにおいても見いだされ、このことは、GからLのピークがα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンであることを示唆していると考えられる。
【0113】
前述の部分加水分解の実験において検出された最も重合度の大きな直鎖のα-1,4-グルカンが、それぞれのピークのα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの重合度をあらわすと考えられる。従って、ピークのG、H、I、J、K、Lの重合度は、順にそれぞれ、23、24、25、26、27および28であることが解った。また、この結果から推定すると、最小の重合度のα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンであるピークAの重合度は、17であると考えられる。
【0114】
他方、より高重合度のα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの重合度は、ゲル濾過クロマトグラフィーにより分析し得る。実施例4において、それぞれの反応時間に得られた、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの粉末を250ulの蒸留水に溶解し、その全量をSuperose6(φ1cm×30cm、ファルマシア製)とSuperose30(φ1cm×30cm、ファルマシア製)を連結したカラムにロードし、150mM酢酸ナトリウム水溶液を用いて溶出させた。
【0115】
その結果、図7に示したように、D酵素の反応時間が10分のサンプルでは、生成されたα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの平均分子量は約70,000であった。D酵素の反応時間が長くなるにつれ、生成されているα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの分子量は低下している。しかし、反応時間6時間以降は、平均分子量が約15000から変化しておらず、これ以上の低分子化は起こらなかった。なお、環状グルカンの分子量は、酵素合成アミロースをスタンダードとして用いて算出した値である。
【0116】
このように、D酵素により生成されるα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの重合度は、基質として用いるアミロースの重合度、D酵素量、反応時間により、17から数百の範囲で任意にコントロールが可能であることがわかった。
【0117】
(実施例7:本発明のグルカンの調製)
市販のワキシーコーンスターチ40mgを2mlのDMSO(ジメチルスルフォキシド)に懸濁した後、実施例1で精製したD酵素680単位を含む20mMクエン酸緩衝液(pH7.0)18mlを添加し、30℃で40時間反応させた。
【0118】
反応液を100℃で10分間加熱した後、遠心分離により変性した酵素タンパクを除去した。上清に10倍量のエタノールを添加し、グルカンを沈澱させた。次いで、得られた沈殿を凍結乾燥し、本発明のグルカンの粉末約40mgを得た。この粉末は、本発明のα-1,4-グルコシド結合のみを有するグルカンと、本発明のα-1,6-グルコシド結合を有するグルカンと、本発明のα-1,4-グルコシド結合のみで構成された環状構造と非環状構造部分とを有するグルカンとの混合物であった。
【0119】
(実施例8:本発明の少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合を環状構造部分または非環状構造部分に有するグルカンの調製)
実施例7で得た沈澱をゲル濾過クロマトグラフィーで分画した。沈澱を250μlの蒸留水に溶解し、Superose6(φ1cm×30cm、ファルマシア製)とSuperdex30(φ1cm×30cm、ファルマシア製)を連結したカラムにその全量をロードした。次いで、150mM酢酸ナトリウム水溶液を用いて溶出を行った。図8に示すように、ボイドボリュームに溶出されていたアミロペクチンはD酵素の反応により低分子化され、平均分子量が約30000であるピーク1および平均分子量が約3000であるピークIIの2種類の成分が生成した。このうち分子量約3000であるピークIIは、主としてα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンであった。一方、平均分子量が約30000であるピークIは、α-1,6-グルコシド結合を有するグルカンであった。ピークIの画分を分取し、これに10倍量のエタノールを加えてα-1,6-グルコシド結合を有するグルカンを沈澱させた。沈澱は遠心分離して回収後、凍結乾燥した。このようにしてα-1,6-グルコシド結合を有するグルカン20mgを得た。なお、環状グルカンの分子量は、酵素合成アミロースをスタンダードとして用いて算出した値である。
【0120】
(実施例9:本発明のα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの調製)
5mMのアデノシンモノフォストフェートを含む100mMクエン酸緩衝液(pH7.0)10mlにマルトヘキサオース20mgおよびグルコース1リン酸200mgを溶解させ、さらに、実施例1で調製したD酵素20単位とホスホリラーゼa(Sigma)1mgとを加えて30℃で2時間反応させた。
【0121】
反応液を遠心分離後、上清を100℃で5分間処理し、再び遠心分離して変性した酵素タンパク質を除いた。上清にグルコアミラーゼ50単位を加えて、直鎖状のアミロースをグルコースまで分解した後、10倍量のエタノールを加えて、環状アミロースを沈殿させた。この沈殿には、約30mgのα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンが含まれていた。さらに、ゲル濾過クロマトグラフィーを行うことにより、この沈殿中に存在するグルコース1リン酸を除去した。
【0122】
(実施例10:実施例8の物質が少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合を有する環状構造部分を含むことの確認)
グルコアミラーゼは、澱粉などのグルカンの非還元末端から順次α-1,4-グルコシド結合を加水分解する酵素である。速度は遅いが、非還元末端からα-1,6-グルコシド結合を加水分解し得ることが知られている。図9に示したように、環状構造を有しないアミロースおよびアミロペクチンは、グルコアミラーゼにより完全にグルコース(17)にまで分解される。しかし、分子内に環状構造を有するグルカン(15)および(13)は、その非環状構造部分のみがグルコアミラーゼにより分解され、環状構造のみがグルコアミラーゼにより分解され、環状構造部分は、グルコアミラーゼでは分解を受けない物質(以下、グルコアミラーゼ耐性成分という)として残る。さらに、このグルコアミラーゼ耐性成分は、澱粉枝切り酵素に対する感受性によって、α-1,6-グルコシド結合を有する環状グルカン(16)とα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン(13)とに分類することができる。即ち、枝切り酵素およびグルコアミラーゼの併用によって分解されないグルコアミラーゼ耐性成分は、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン(13)であると考えられる。一方、枝切り酵素およびグルコアミラーゼの併用によって分解されるグルコアミラーゼ耐性成分は、α-1,6-グルコシド結合を有する環状グルカン(16)であると考えられる。しかし、枝切り酵素およびグルコアミラーゼの併用によって分解されない、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン(13)は、エンド型α-アミラーゼとグルコアミラーゼを併用することにより完全にグルコースまで分解され得る。これらの性質を利用することにより、試料グルカンの中の非環状構造部分、α-1,6-グルコシド結合を有する環状構造部分、およびα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造部分を定量することが可能となる。
【0123】
この方法を用いて、実施例8で得られたグルカンおよびアミロペクチンの環状構造の定量を行った。表1に、この方法を用いて、実施例8で得られたグルカンおよびアミロペクチンの環状構造の定量を行った結果を示す。
【0124】
【表1】

【0125】
実施例8で得られた物質10mgまたはアミロペクチン10mgを、1mlのDMSOに溶解した後、100mMの酢酸ナトリウム緩衝液8mlを用いて、すばやく希釈した。この希釈液を900μlずつ4本のチューブに分注した。次いで、それぞれのチューブに(1)蒸留水、(2)グルコアミラーゼ液、(3)枝切り酵素とグルコアミラーゼの混合液、および(4)エンド型α-アミラーゼとグルコアミラーゼの混合液をそれぞれ100μl加えて40℃、4時間反応させた。反応終了後、生成したグルコースを市販のグルコース定量キットを用いて測定した。そして、試料グルカン中の非環状構造部分、α-1,6-グルコシド結合を有する環状構造部分およびα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造部分を、それぞれ以下の計算式により求めた。
【0126】
【数1】

【0127】
ここで、c、x、y、およびzはそれぞれ、(1)、(2)、(3)、および(4)の反応液から生じたグルコース量である。この結果から、実施例8で得られた物質は、少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合を含む環状構造を有するグルカンを含んでいることがわかった。
【0128】
(実施例11:実施例8の物質の環状構造部分の重合度の測定)
実施例8で得た物質10mgを1mlのDMSOに溶解させた後、1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)1ml、蒸留水8ml、および200単位のグルコアミラーゼを添加し、40℃で1時間反応させた。100℃で10分間加熱した後、変性した酵素を遠心分離によって除去した。上清に10倍のエタノールを添加して多糖を沈澱させた後、沈殿を乾燥した。得られた多糖を1mlの蒸留水に溶解させた。この溶液に50単位のグルコアミラーゼを添加し、40℃で1時間反応させた。反応液を100℃で10分間加熱した後、変性した酵素を遠心分離により除去した。上清に10倍量のエタノールを添加し、生じた沈澱を乾燥させて、グルコアミラーゼ耐性成分(環状構造部分)の粉末1.1mgを得た。
【0129】
上記のようにして得られたグルコアミラーゼ耐性成分を、0.4%(w/v)になるように蒸留水に溶解した後、Dionex社の糖分析システム(送液システム:DX300、検出器:PAD-2、カラム:CarboPacPA100)を用いて分析した。溶出は、流速:1ml/min、NaOH濃度:150mM、酢酸ナトリウム濃度:0分‐50mM、2分‐50mM、37分‐350mM(Gradient curve No.3)、45分‐850mM(Gradient curve No.7)、47分‐850mMの条件で行った。
【0130】
重合度を比較するためのマーカーとして、直鎖のα-1,4-グルカン、および、実施例2で得られたα-1,4-グルコシド結合のみを有するグルカンも同じ条件で分析した。
【0131】
図10に示したように、得られたグルコアミラーゼ耐性成分では、直鎖のα-1,4-グルカンおよびα-1,4-グルコシド結合のみを有するグルカンにおいて得られたようにきれいな分離パターンが得られなかった。これは、このグルコアミラーゼ耐性成分が様々な個数のα-1,6-グルコシド結合を含んでいることを示唆している。しかし、最も小さいと考えられるピーク(矢印)が、直鎖のα-1,4-グルカンの重合度15の位置に対応すること、および実施例6で示したように、環状構造を有するグルカンは同じ重合度の直鎖状グルカンよりも速く溶出されることを考えると、最も小さいと考えられる、少なくとも1つのα-1,6結合を有する環状構造部分の重合度は、少なくとも15であると考えられた。
【0132】
(実施例12:本発明のグルカンの溶解性)
実施例2および実施例8で得られたグルカン、ならびに、比較品であるアミロース、ワキシーコーンスターチ、および可溶性澱粉(和光純薬)を、それぞれ10%(w/v)となるように蒸留水に懸濁し、vortexミキサーにて激しく撹拌した後、遠心分離し、0℃、30℃、60℃、100℃で上清に溶解した糖濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0133】
【表2】

【0134】
従来の澱粉にくらべ、実施例のグルカンはいずれも顕著に溶解性が高いことが示された。
【0135】
(実施例13:本発明のグルカンの老化性試験)
実施例2および実施例8で得られたグルカン、ならびに、比較品であるアミロース、ワキシーコーンスターチ、および可溶性澱粉(和光純薬)を、それぞれ200mgをスクリューバイアルに入れ、水10mlを加えた後、煮沸して溶解した。それぞれ4検体を4℃に放置し、0時間後、3時間後、6時間後、および20時間後に、それぞれのサンプル1mlを遠心管に移して遠心分離を行い、上清に溶解している糖濃度を測定した。結果を表3に示す。
【0136】
【表3】

【0137】
従来の澱粉にくらべ、実施例のグルカンはいずれも顕著に老化性が低いことが示された。
【0138】
(実施例14:本発明のグルカンによる、澱粉の老化抑制効果)
完全に加熱湖化した4%(W/V)可溶性澱粉水溶液を4℃に保存すると、可溶性澱粉は速やかに老化し、湖液は白濁する。この系を用いて本願発明のグルカンの、澱粉老化抑制効果について検討した。実施例8で得られたグルカンをそれぞれ終濃度で、0%(W/V)、2%(W/V)、および4%(W/V)となるように、4%(W/V)の可溶性澱粉水溶液に添加し、これを4℃に保存した。一定時間おきにサンプリングを行い、660nmの吸光度で、白濁度を測定した。結果を、図11に示す。
【0139】
実施例6のグルカンは、澱粉の老化抑制効果を有することが示された。
【0140】
(実施例15:本発明のグルカンの粘性)
実施例8で得られたグルカン、比較として従来のワキシーコーンスターチ、可溶性澱粉(和光純薬製)、およびパインデックス(Pinedex)#1(松谷化学株式会社製)を、それぞれ1.6gとり、バイアルに入れ、蒸留水8mlを加えて分散させた後、ジメチルスルフォキシド72mlを加え、室温で十分に攪拌することにより各グルカンを完全に溶解した。それぞれの粘度を、Digital ViscometerDVL-B(TOKYO KEIKI 製、ローター:No.1、回転数:60rpm、10秒間測定)により測定した。
【0141】
対照として、蒸留水8mlにジメチルスルフォキシド72mlを加えた溶液(90%DMSO溶液)についても測定した。なお、ここで用いたパインデックス#1は、上記可溶性澱粉よりも強くα-アミラーゼで加水分解した澱粉である。結果を表4に示す。
【0142】
【表4】

【0143】
従来の澱粉に比べ、実施例の糊液の粘性が顕著に低いことが示された。
【0144】
(実施例16:本発明のグルカンの反応性)
実施例2および実施例8で得られたグルカン、比較として可溶性澱粉(和光純薬製)、およびパインデックス(Pinedex)#1(松谷化学株式会社製)それぞれ20mgを、蒸留水1mlに溶解させ、還元力をジニトロサリチル酸法(福井作蔵著、生物化学実験法1 還元等の定量法、学会出版センター)により、グルコースを標準として調べた。その結果を表5に示す。
【0145】
【表5】

【0146】
従来の澱粉に比べ、反応性が顕著に低いことが示された。
【0147】
(実施例17:本発明のグルカンのリン酸化)
実施例2および実施例8で得られたグルカンを8mgを、ジメチルホルムアミド1ml中に懸濁し、オキシ塩化リン46mgとを反応させた。この反応液にアセトン9mlを加えて、リン酸化したグルカン8mgをそれぞれ得た。
【0148】
(実施例18:本発明のグルカンの包接性1)
8-アニリノ-1-ナフタレンスルホン酸(ANS)は水溶液中では非常に弱い蛍光しか示さないが、サイクロデキストリンの空洞内に包接されることにより強い蛍光を示すことが知られている。本発明のグルカンが、ANSを包接して、その蛍光を増大させるかどうかを確認するために、実施例2で得られたα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン、α-サイクロデキストリン、プルラン、およびデキストランのそれぞれ20mgを、100mMリン酸緩衝液1mlに溶解した。次いで400μMのANS水溶液を添加し、よく撹拌した後、蛍光分光光度計を用いて蛍光スペクトルを測定した。図12に示すように、包接性のないプルランおよびデキストランの存在下、ANSの蛍光強度は増大しなかった。包接性を有するα-サイクロデキストリンの存在下、ANSの蛍光強度が増大した。実施例2で得られたグルカンの存在下、ANSの蛍光強度はα-サイクロデキストリン以上に増大し、本発明のグルカンがANSを包接する性質を有していることが示された。
【0149】
(実施例19:本発明のグルカンの包接性2)
実施例2で得られたα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン、市販のアミロース、および可溶性澱粉をそれぞれ2%となるように蒸留水に溶解した。次いで、1/10量の高級アルコール(1-オクタノールなど)および高級脂肪酸(オレイン酸など)を加え、激しく撹拌し、その時の様子を目視により以下のように評価した。結果を表6に示す。表6において、○は多量の沈殿が形成された場合、△は少量の沈殿が形成された場合、×は沈殿が形成されなかった場合を示す。
【0150】
【表6】

【0151】
表6に示したように、実施例2で得られたα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンは大量の白色沈澱を生じた。このことから、本発明のグルカンが包接能力を有することがわかった。
【0152】
(実施例20:本発明のグルカンを含むスポーツドリンク)
本発明のグルカンを用いたスポーツドリンクを、表7の割合で配合した。
【0153】
【表7】
食塩 0.3
ビタミンC 0.02
ビタミンB1ソ-ダ 0.02
塩化マグネシウム 0.2
乳酸カルシウム 0.2
クエン酸 2.0
クエン酸ソ-ダ 1.5
ブドウ糖 50
水 1000
実施例2の環状グルカン 100
【0154】
得られたスポーツドリンクは消化性に優れ、エネルギー変換効率の高い飲料であった。
【0155】
(実施例21:本発明のグルカンとリノール酸との包接複合体)
実施例2で得られたα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン100部に水900部を加え、撹拌し溶解させた。この溶液にリノール酸100部を添加し、よく撹拌した。撹拌後、生成した白色沈澱画分を凍結乾燥し、本発明のグルカンとリノール酸とを含む包接複合体の粉末を得た。
【0156】
(実施例22:本発明のグルカンとメントールとの包接複合体)
実施例2で得られたα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン100部に水900部を加え、撹拌し溶解させた。この溶液を加温し、あらかじめ溶解したメントール100部を加え、よく撹拌した。撹拌後、生成した白色沈澱画分を凍結乾燥し、グルカンとメントールとを含む包接複合体の粉末を得た。
【0157】
(実施例23:本発明のグルカンを含む接着性組成物)
実施例8の少なくとも1つのα-1,6-グルコシド結合を有するグルカン40部に水60部を加え、加熱溶解させた。この溶液は、良好な接着性を示した。
【0158】
(実施例24:本発明のα-1、4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの調製)
蒸留水で洗浄した酵素固定化用担体キトパールBCW-3503(富士紡績(株))1gと、20mMのトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を含む精製D酵素液130単位(5ml)を室温で2時間、ゆるやかに攪拌しながらインキュベートし、D酵素を担体に吸着させた。反応液をろ過してろ液のD酵素活性を測定したところ、D酵素活性はほとんど検出されなかった。従って、大部分のD酵素は、担体に結合したものと考えられた。このD酵素結合担体に、0.5%(W/V)酵素合成アミロース(AS-30)溶液10mlを加え、pH7の条件下、30℃、24時間反応させた。反応液を遠心分離して、上清を100℃、5分間処理し、再び遠心分離した。上清にグルコアミラーゼ10単位を加えて、50℃、3時間反応させた後、10倍量のエタノールを加えて、環状グルカンを沈澱させた。この沈澱を凍結乾燥し、30mgの粉末状のグルカンを得た。実施例5と同様の方法で、α-1、4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンが得られたことが確認された。
【0159】
【発明の効果】
以上のようにして得られた新規な化合物である本発明のグルカンおよびその誘導体は、既存の澱粉、アミロース、およびアミロペクチンと比べて、水に対する溶解度が大きく改善されており、その水溶液は、既存の澱粉、アミロース、およびアミロペクチンの水溶液において観察される老化が起こらないという優れた性質を有する。更に、本発明のグルカンは、澱粉の老化防止剤としても作用する。またその水溶液は既存の澱粉などの水溶液に比較して、粘度が低いという優れた性質を有する。さらに、本発明のグルカンおよびその誘導体は反応性が低いため、タンパク質やアミノ酸と混合して加熱したとき、既存の水飴、およびデキストリンと比較して、着色しにくいという優れた性質を有している。また、本発明のグルカンおよびその誘導体は様々な物質を包接もしくは吸着するという優れた性質を有している。また本発明のグルカンおよびその誘導体は、グルコースがα-1,4-グルコシド結合およびα-1,6-グルコシド結合で連結しただけの、通常の澱粉と同じ基本的構造を持つことから、生体内の酵素により容易にグルコースに分解されることができるため、消化性に優れ、エネルギー変換効率が高い。
【0160】
本発明のグルカンおよびその誘導体の製造方法は、原料である澱粉、澱粉の部分分解物、これらの誘導体、あるいはこれらの混合物と、少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカンを生成し得る酵素とを反応させる工程を包含すればよく、非常に容易に、本発明のグルカンおよびその誘導体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のグルカンの模式図である。
【図2】
アミロースまたはアミロペクチンにD酵素を作用させ、α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンを得る一連の過程を示す模式図である。
【図3】
アミロペクチンにD酵素を反応させ、少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合を持つ環状構造のみで形成されるグルカンを得る一連の過程を示す模式図である。
【図4】
本発明のα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンを種々の糖分解酵素で消化したときの溶出パターンである。
【図5】
5-1は、実施例2で得られたα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの溶出パターンであり、5-2は、直鎖のα-1,4-グルカンの溶出パターンである。各ピーク状の数字は、重合度を示す。
【図6】
各ピークG-Lの部分加水分解および非分解物の溶出パターンである。各ピーク状の数字は、重合度を示す。
【図7】
実施例4で得られたα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンのゲル濾過による溶出パターンである。
【図8】
D酵素を作用させる前、および、作用させた後のワキシーコーンスターチのゲル濾過による溶出パターンである。
【図9】
実施例8で得られたグルカン中の非環状構造部分、少なくとも1つのα-1,6-グルコシド結合を有する環状構造部分、およびα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状構造部分を定量する過程を示す模式図である。
【図10】
実施例8で得られた少なくとも1つのα-1,6-グルコシド結合を有するグルカンの環状構造部分、直鎖のα-1,4-グルカン、および実施例2で得られたα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカンの溶出パターンである。各ピーク状の数字は、重合度を示す。
【図11】
実施例8で得られたα-1,6-グルコシド結合を有するグルカンによる、澱粉の老化抑制効果を示す図である。
【図12】
実施例2で得られたα-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン(実線)、α-サイクロデキストリン(破線)、プルラン(1点破線)、デキストリン(2点破線)が存在する条件下、およびコントロール(点線)条件下におけるANSの蛍光スペクトルである。横軸は、波長(nm)であり、縦軸は、スペクトル強度である。
【符号の説明】
11 還元末端
12 アミロース
13 α-1,4-グルコシド結合のみを有する環状グルカン
14 アミロペクチン
15 少なくとも14個のα-1,4-グルコシド結合と少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合により構成される環状構造を分子内に1つ有するグルカン
16 少なくとも1個のα-1,6-グルコシド結合により構成される環状構造のみで形成されるグルカン
17 グルコース
18 α-1,4-グルコシド結合のみにより構成される環状構造と非環状構造部分とを有するグルカン
 
訂正の要旨 (訂正の要旨)
(1)請求項1、請求項2,請求項5及び請求項6の「14〜5000個」を、特許請求の範囲の減縮を目的として「17〜5000個」と訂正する。
(2)請求項1の「(iii)α-1,4-グルコシド結合のみで構成される環状構造のみを有するグリカン」を、誤記の訂正を目的として「(iii)α-1,4-グルコシド結合のみで構成される環状構造のみを有するグルカン」と訂正する。
(3)請求項9の「少なくとも14個」(2ヶ所)を、特許請求の範囲の減縮を目的として「少なくとも17個」と訂正する。
(4)請求項17の「少なくとも一つのグルカンまたはグルカンの誘導体」を、特許請求の範囲の減縮を目的として「少なくとも一つの、環状構造のみを有するグルカンまたはグルカンの誘導体」と訂正する。
(5)請求項19の「少なくとも一つのグルカンまたはグルカンの誘導体」を、特許請求の範囲の減縮を目的として「少なくとも一つの、環状構造に加えて非環状構造を有するグルカンまたはグルカンの誘導体」と訂正する。
異議決定日 2002-03-04 
出願番号 特願平7-76946
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C08B)
P 1 651・ 537- YA (C08B)
P 1 651・ 121- YA (C08B)
P 1 651・ 14- YA (C08B)
P 1 651・ 536- YA (C08B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 谷口 博深草 亜子木村 順子  
特許庁審判長 徳廣 正道
特許庁審判官 大久保 元浩
田中 久直
登録日 2001-01-19 
登録番号 特許第3150266号(P3150266)
権利者 江崎グリコ株式会社
発明の名称 環状構造を有するグルカンおよびその製造方法  
代理人 山本 秀策  
代理人 渡邊 薫  
代理人 山本 秀策  
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