• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A47J
審判 一部申し立て 2項進歩性  A47J
管理番号 1059492
異議申立番号 異議2001-70794  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-03-12 
確定日 2002-03-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3085521号「ポンプ注液式電気貯湯容器」の請求項1、2、5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3085521号の請求項1、3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3085521号の請求項1、請求項2及び請求項5に係る発明についての出願は、平成8年6月11日に特許出願され、平成12年7月7日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、特許異議申立人 四宮 唯泰より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年10月4日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否の判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、次のとおりである。
・訂正事項a
願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の【請求項1】の「容器本体内に配設された内容器と、該内容器の底部に配設された電気ヒータと、前記内容器の底部から前記容器本体上部における外部へ至る液体注出通路と、該液体注出通路の途中に配設した注液用の電動ポンプとを備えたポンプ注液式電気貯湯容器であって、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底部に前記液体注出通路を設け、該液体注出通路の入口には、異物の流入を許容しない程度の液体流通部を有する異物流入防止カバーを嵌挿するとともに、前記異物流入防止カバーにおける最低液体流入部位を、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底面より高い位置に位置させたことを特徴とするポンプ注液式電気貯湯容器。」を「容器本体内に配設された内容器と、該内容器の底部に配設された電気ヒータと、前記内容器の底部から前記容器本体上部における外部へ至る液体注出通路と、該液体注出通路の途中に配設した注液用の電動ポンプとを備えたポンプ注液式電気貯湯容器であって、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底部に前記液体注出通路を設け、該液体注出通路の入口には、前記電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さい網目のステンレスメッシュからなる液体流通部を有する異物流入防止カバーを嵌挿するとともに、前記異物流入防止カバーにおける最低液体流入部位を、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底面より高い位置に位置させたことを特徴とするポンプ注液式電気貯湯容器。」と訂正する。
・訂正事項b
特許明細書の特許請求の範囲の【請求項2】、【請求項4】を削除し、【請求項3】を【請求項2】に、【請求項5】を【請求項3】に訂正し、項番を繰り上げる。
・訂正事項c
(c-1)特許明細書の段落【0007】における「異物の流入を許容しない程度の」を「前記電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さい網目のステンレスメッシュからなる」と訂正する。
(c-2)特許明細書の段落【0008】に「本願発明…得られる。」とあるのを削除する。
(c-3)特許明細書の段落【0009】における「また、」を「本願発明の基本構成において、」と訂正する。
(c-4)特許明細書の段落【0010】に「また、…好ましい。」とあるのを削除する。
(c-5)特許明細書の段落【0012】に「幾つかの」とあるのを削除する。
(c-6)特許明細書の段落【0044】に「第2の実施の形態…示されている。」とあるのを削除する。
(c-7)特許明細書の段落【0045】に「この場合、…解消できる。」とあるのを削除する。
(c-8)特許明細書の段落【0046】に「なお、…なくなる。」とあるのを削除する。
(c-9)特許明細書の段落【0047】に「その他の…省略する。」とあるのを削除する。
(c-10)特許明細書の段落【0048】における「異物の流入を許容しない程度の」を「前記電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さい網目のステンレスメッシュからなる」と訂正する。
(c-11)特許明細書の段落【0050】の「また、…得られる。」とあるのを削除する。
(c-12)特許明細書の段落【0052】の「また、…低コストとなる。」とあるのを削除する。
(c-13)特許明細書の段落【図面の簡単な説明】の「【図6】・・・他の例を示す平面図である。」とあるのを削除する。
(c-14)特許明細書の段落【符号の説明】の「78は・・・閉塞部、」とあるのを削除する。
(c-15)願書に添付された図面の【図6】、【図7】、【図8】および【図9】を削除する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
・訂正事項aについて
上記訂正事項aに関連する記載として、特許明細書の発明の詳細な説明には、「しかも、液体流通部77を構成するステンレスメッシュとして、電動ポンプ41におけるインペラ64の外周とポンプ室50の内壁との隙間Sより小さい網目のものを採用しているため、液体流通部77を通過する大きさの異物は、電動ポンプ41におけるインペラ64の外周とポンプ室50の内壁との隙間Sより小さいものに限られることとなり、インペラ64とポンプ室50の内壁との間にかみ込まれることはない。」(段落【0040】)こと、が記載されている。
したがって、訂正事項aは、特許明細書に記載された事項の範囲内において、異物流入防止カバーを限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
・訂正事項bについて
上記訂正事項bは、特許請求の範囲の請求項2、請求項4を削除し、請求項3を請求項2、請求項5を請求項3に、項番を繰り上げたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、且つ、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当する。
・訂正事項cについて
上記訂正事項cは、上記訂正事項a及び訂正事項bに伴って、特許明細書の整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正明細書の請求項2の独立特許要件について
訂正明細書の請求項2は、訂正明細書の請求項1を引用して、該請求項1の構成の異物流入防止カバーをさらに、「前記液体注出通路の入口開口に嵌挿される耐熱ゴム製の挿入部と、該嵌挿部の上端開口を覆う液体流通部とにより構成したこと」に限定したものを発明の構成要件とするものであるから、下記3.において検討したように、訂正明細書の請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しないから、訂正明細書の請求項2に係る発明についても特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(1)本件発明
上記したように訂正請求に係る訂正が認められるから、本件特許第3085521号の請求項1及び請求項3に係る発明(以下「請求項1」に係る発明を「本件発明1」、「請求項3」に係る発明を「本件発明3」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】容器本体内に配設された内容器と、該内容器の底部に配設された電気ヒータと、前記内容器の底部から前記容器本体上部における外部へ至る液体注出通路と、該液体注出通路の途中に配設した注液用の電動ポンプとを備えたポンプ注液式電気貯湯容器であって、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底部に前記液体注出通路を設け、該液体注出通路の入口には、前記電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さい網目のステンレスメッシュからなる液体流通部を有する異物流入防止カバーを嵌挿するとともに、前記異物流入防止カバーにおける最低液体流入部位を、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底面より高い位置に位置させたことを特徴とするポンプ注液式電気貯湯容器。
【請求項3】前記液体注出通路には、前記内容器内の液体が最低水位となったことを検知する水位検知手段を付設するとともに、前記異物流入防止カバーにおける最低液体流入部位を、前記水位検知手段により検知される最低水位と同一もしくは稍下位に位置させたことを特徴とする前記請求項1および請求項2のいずれか一項記載のポンプ注液式電気貯湯容器。」

(2)特許異議申立ての概要
特許異議申立人 四宮 唯泰は、甲第1号証(特開平7-163466号公報)、甲第2号証(特開昭62-68426号公報)、甲第3号証(特開平8-89420号公報)、甲第4号証(特開平2-279115号公報)、甲第5号証(特開平7-95924号公報)を提出して、特許明細書の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、また、特許明細書の請求項1、請求項2及び請求項5に係る発明は、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許を取り消すべき旨の主張をしている。

(3)甲号各証に記載された発明
上記甲第1号証には、強制浄水型の電気貯湯容器に関して、図面とともに、「図1に示す本発明の一実施例について説明する。本実施例は湯沸かし可能でかつ電動ポンプによって内容液を注出する電気ポットの場合を示している。図に示すように、ヒータ1が底部側周面に当てがわれた内容器2を外装ケース3内に収容して器体4を構成している。」(段落【0016】)こと、「前記器体4の外装ケース3と内容器4との間に、内容器2内の内容液を前記内容液注出のための電動ポンプ15と、注出管路12の一部を共用して、内容器2の底部から一旦送り出した後、内容器2の上部の満水水位60よりも上に放出して戻す循環管路62と、この循環管路62の内容器2からの内容液の導入口81に接続されて循環管路62に導入される内容液が通過するようにした浄水部64とを備えている。浄水部64には活性炭やセラミック等の浄水材64aを収容した浄水部64が設けられている。」(段落【0029】)こと、「さらに浄水部64は抽出管路12の導入口81との接続口64fをこの導入口81に上方から嵌め合わせて簡易に着脱できるように装着され、交換や逆洗浄に便利なようにしてある。」(段落【0034】)こと、が記載されている。
また、図面の図1には、内容液の導入口81、電動ポンプ15、注出管路12が示され、さらに、ヒータ1面より高い位置に、浄水材64が位置し、その浄水材64を収納した容器の周壁にスリットが設けられていることが窺える。
上記甲第2号証には、電気湯沸し器に関して、図面とともに、「容器101内の湯をポンプ操作により抽出する際にも水位の量を常に注意していないと、水位面がバンド型の発熱体102の上端面より下がり、その結果、空炊きを起こして器体を早期に劣化させるという問題があった。」(第1頁下段右欄第17行〜第2頁上段左欄第2行)こと、「図において、1は中央部を略D型状に突出させた容器底面で、外周フランジ部1aを水密的に溶接等の手段で固着することにより金属製の容器2を形成している。また容器底面1の略D型状に突出させた伝熱面1bの裏面には、高電力の第1の電熱線と低電力の第2の電熱線とを一体巻きにし、かつ上、下を絶縁板で挟着された発熱体3が背面板4により密着保持されている。」(第2頁上段右欄第14行〜同下段左欄第1行)こと、「10は前記温度検知面1cのすぐ上方に位置して適宜の手段により容器2の側壁と水密的に取付けられた連通管で、この連通管10は容器2の外側に設けた抽出管11の下端に接続パッキング12により接続されている。また抽出管11の上端は器体外部に連通している。そしてまた連通管10の内径上端部イ面は伝熱面1bのロ面より上方に位置するように設定されている。」(第2頁下段左欄第11行〜同第18行)こと、「連通管10の内径上端部イ面は伝熱面1bのロ面より上方に位置しているため、イ面で抽出は停止されることになり、その結果、伝熱面1bは常に水没したままとなる、空炊きを起こして器体を早期に劣化させるというおそれもない。」(第3頁上段左欄第5行〜同第10行)こと、が記載されている。
上記甲第3号証には、液体容器の排出口に嵌着されるゴミ捕集装置に関して、図面とともに、「図7は従来のポットにおけるゴミ捕集装置を示すものである。即ちこのポットのゴミ捕集装置は、内容器1の排出口2に上端開放の凹形状のゴミ捕集網3を着脱自在に差込んだものである。このゴミ捕集網3は、内容器1の液がポンプ4により吐出口5から排出される際に、その液に混ったゴミ等を捕集する。」(段落【0002】)こと、「図1に示した第1実施例のゴミ捕集装置は、容器10の底壁11に設けられた排出口12に取付けられるものである。そのゴミ捕集網13は凸形状(或いはキャップ形状)の網14の下端周縁を縁金15により挟着してかしめたものである。縁金15の下半部はスカート状に拡がっている。」(段落【0015】、【0016】)こと、が記載されている。
上記甲第4号証には、電気湯沸し器に関して、図面とともに、「出湯路の一端が容器底部に単に開口していたため、異物あるいは誤って茶葉などを投入した場合にこの開口より侵入して出湯路に詰まり、出湯量が低下してしまったり、湯がでなくなったりする課題があった。」(第1頁下段右欄第5行〜同第10行)こと、「フィルター体9は下方開口状のキャップ状であって、巾0.6〜1mm、長さ5〜10mmのスリット状濾過孔10をその周壁に多数有し、また下端に突起11を形成することにより、同下端と容器1の内底面との間にも前記スリット状濾過孔10と同様の濾過間隔12が設定されている。」(第2頁上段右欄第9行〜同第14行)こと、「フィルター体19は、バネ13のU字状部をパイプ6内に挿入してその内壁面に曲げ部15を弾接することによって容器1の底面に固定される。上記構成において、容器1内に異物、茶葉などが投入されてもフィルター体19によって濾過され、出湯路5には湯水のみが流動する。」(第2頁下段右欄第2行〜同第7行)こと、が記載されている。
上記甲第5号証には、電気湯沸かし器に関して、「最近は図5に示すような構造の電気湯沸かし器がある。(3)は略円筒状の容器であり、(4)は下端を電動式のポンプ(5)を介して容器(3)と連通し、上端を逆止弁(6)を介して外方に開口した昇水パイプである。(7)は透明なパイプ状の部材で形成され、容器(3)の下部と上部に両端を連通し、浮き子(8)を上下動自在に収納し、下部に発光素子と受光素子で構成し、発光素子の光を遮光すると作動する水位検知素子(9)を備えて前記浮き子(8)を検知する構成とした水位ゲージである。…(中略)…(14)は前記ポンプ(5)と前記水位検知素子(9)と前記温度検知素子(11)と給湯つまみ(12)と加熱手段(13)とを電気的に制御する制御装置である。」(段落【0003】)こと、「出湯を続けると容器(3)内の水位の低下とともに水位ゲージ(7)内の水位も下がって、やがて浮き子(8)が水位検知素子(9)に接近しその発光を遮光して水位検知素子(9)を作動させる。水位検知素子(9)の信号を前記制御装置(14)が処理し、音やランプ等で知らせるとともに、加熱手段(13)への通電を停止して容器(3)の空だきを防止する。」(段落【0004】)こと、「第3の手段により、電気湯沸かし器の空だきを防止し、安全性が高く誤動作のない電気湯沸かし器を提供することができる。」(段落【0014】、【0020】)こと、「(20)は略円筒状の容器であり底面に流出口(21)が設けてある。(22)は容器(20)底部の流出口(21)に一端を連通し他端を略L字状のシリコンゴム等で形成された…(中略)…(39)は昇水ポンプ(24)内に収納された上下動自在の浮き子であり、昇水パイプ(24)内の水位とともに上下した水位検知装置(27)の凹部(37)を通過すると発光素子(32)から受光素子(32)への光を遮光する。(40)は浮き子(39)の移動を制限するボール止めである。」(段落【0015】)こと、が記載されている。

(4)対比・判断
そこで、本件発明1、本件発明3と上記甲第1乃至5号証に記載された発明とを対比し、検討する。

・本件発明1について
本件発明1と上記甲第1号証に記載された発明とを対比し、検討する。
上記甲第1号証に記載された強制浄水型の電気貯湯容器は、浄水材64aを収容した浄水部64の接続口64fを抽出管路12の導入口81に嵌合し、図1から、浄水部64はヒータ1面より高い位置に取り付けられ、その浄水材64aを収容した容器の周壁にはスリットを有し、図示矢印からこのスリットを通って抽出管路12に内容器2内の内容液が電動ポンプ15により送られることが窺える。
そうしてみると、上記甲第1号証に記載された、「内容器2」、「ヒータ1」、「抽出管路12」、「電動ポンプ15」は、それぞれ、本件発明1の、「内容器」、「電気ヒータ」、「液体注出通路」、「電動ポンプ」に相当し、両者は、
「容器本体内に配設された内容器と、該内容器の底部に配設された電気ヒータと、前記内容器の底部から前記容器本体上部における外部へ至る液体注出通路と、該液体注出通路の途中に配設した注液用の電動ポンプとを備えたポンプ注液式電気貯湯容器であって、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底部に前記液体注出通路を設け、該液体注出通路の入口には、液体流通部を有する部材を嵌挿するとともに、前記部材における最低液体流入部位を、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底面より高い位置に位置させたポンプ注液式電気貯湯容器。」
において一致している。

しかし、液体注出通路の入口に嵌挿する「液体流通部を有する部材」が、本件発明1では、「前記電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さい網目のステンレスメッシュからなる液体流通部を有する異物流入防止カバー」であるのに対して、上記甲第1号証に記載された発明は、「浄水材64aを収容した浄水部64」である点で相違している。
そこで、この相違点を検討する。
上記甲第3号証には、ポンプ4により内容器1の液が吐出口5から排出する際に、その液に混ったゴミ等を捕集するために各種形状のゴミ捕集網を液排出口に嵌着し得るようにした液体容器(ポット)が、また、上記甲第4号証には、電気湯沸し器において、異物あるいは誤って茶葉などを投入した場合に出湯路の詰まりを防ぐため、容器1の底部開口に、スリット状濾過孔によって濾過するフィルター体19が、それぞれ示されている。そして、甲第4号証に示されたスリットの作用効果から、上記甲第1号証の図1に示された浄水部64の容器周壁のスリット、さらには、浄水材64aも、異物の流入防止するものといえるので、液体注出通路の入口に異物流入防止部材を嵌挿することは、周知の技術ということができる。
しかしながら、本件発明1は、「前記電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さい網目のステンレスメッシュからなる」ものを異物流入防止カバーとしたものであって、甲第1号証乃至甲第5号証には、このステンレスメッシュの網目と前記隙間との関係について、何の記載も示唆もされていない。

そして、本件発明1は、この相違点の構成を備えることによって、異物が、「インペラ64とポンプ室50の内壁との間にかみ込まれることはない。」(訂正明細書段落【0038】)こと、「電動ポンプ41内へ異物流入に起因して起こる故障を確実に防止することができる。」(訂正明細書段落【0039】)こと、の効果を奏するものといえる。

したがって、本件発明1は、特許異議申立人が証拠として提出した甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明でも、また、これら甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

・本件発明3について
本件発明3は、本件発明1を引用して、本件発明1の「液体注出通路」の構成について、さらに、「前記液体注出通路には、前記内容器内の液体が最低水位となったことを検知する水位検知手段を付設するとともに、前記異物流入防止カバーにおける最低液体流入部位を、前記水位検知手段により検知される最低水位と同一もしくは稍下位に位置させたこと」を発明の構成要件としたものである。

したがって、本件発明1が甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明でも、また、これら甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件発明3も甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては、本件発明1及び本件発明3についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び本件発明3についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ポンプ注液式電気貯湯容器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 容器本体内に配設された内容器と、該内容器の底部に配設された電気ヒータと、前記内容器の底部から前記容器本体上部における外部へ至る液体注出通路と、該液体注出通路の途中に配設した注液用の電動ポンプとを備えたポンプ注液式電気貯湯容器であって、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底部に前記液体注出通路を設け、該液体注出通路の入口には、前記電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さい網目のステンレスメッシュからなる液体流通部を有する異物流入防止カバーを嵌挿するとともに、前記異物流入防止カバーにおける最低液体流入部位を、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底面より高い位置に位置させたことを特徴とするポンプ注液式電気貯湯容器。
【請求項2】 前記異物流入防止カバーを、前記液体注出通路の入口開口に嵌挿される耐熱ゴム製の嵌挿部と、該嵌挿部の上端開口を覆う液体流通部とにより構成したことを特徴とする前記請求項1記載のポンプ注液式電気貯湯容器。
【請求項3】 前記液体注出通路には、前記内容器内の液体が最低水位となったことを検知する水位検知手段を付設するとともに、前記異物流入防止カバーにおける最低液体流入部位を、前記水位検知手段により検知される最低水位と同一もしくは稍下位に位置させたことを特徴とする前記請求項1および請求項2のいずれか一項記載のポンプ注液式電気貯湯容器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、ポンプ注液式電気貯湯容器に関し、さらに詳しくは液体注出用の電動ポンプヘの異物流入防止機能を付設したポンプ注液式電気貯湯容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ポンプ注液式電気貯湯容器においては、液体貯湯用の内容器内の液体を、該内容器底部に接続された液体注出通路を介して外部へ注出するために前記液体注出通路の途中に電動ポンプが配設されている。
【0003】
ところで、前記内容器内には、通常液体のみが貯湯されるが、時にはお茶の葉等の異物が混入する場合がある。このような異物が混入した状態で、注液用の電動ポンプを作動させると、該異物が液体注出通路の入口から流入してしまい、電動ポンプ内に入り込んで故障を引き起こすおそれがある。
【0004】
そこで、前記液体注出通路の入口に、金網等を取り付けて上記した異物の流入を防止するようにしたものが既に提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記したように、液体注出通路の入口に金網を取り付ける構造とした場合、液体注出通路入口が内容器底面に開口しているため、内容器内の液体がなくなるまで液体注出が行えることとなり、空焚き状態となるおそれがある。
【0006】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、異物の電動ポンプヘの流入を効果的に防止するとともに、内容器内が空焚き状態とならないようにすることを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明の基本構成では、上記課題を解決するための手段として、容器本体内に配設された内容器と、該内容器の底部に配設された電気ヒータと、前記内容器の底部から前記容器本体上部における外部へ至る液体注出通路と、該液体注出通路の途中に配設した注液用の電動ポンプとを備えたポンプ注液式電気貯湯容器において、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底部に前記液体注出通路を設け、該液体注出通路の入口には、前記電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さい網目のステンレスメッシュからなる液体流通部を有する異物流入防止カバーを嵌挿するとともに、前記異物流入防止カバーにおける最低液体流入部位を、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底面より高い位置に位置させて、液体注出通路の入口開口からの異物流入を防止し且つ液体流通部を通過する異物の大きさが、電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さいものに限られるようにするとともに、空焚きをも確実に防止するようにしている。
【0008】
本願発明の基本構成において、前記異物流入防止カバーを、前記液体注出通路の入口開口に嵌挿される耐熱ゴム製の嵌挿部と、該嵌挿部の上端開口を覆う液体流通部とにより構成した場合、異物流入防止カバーの液体注出通路入口開口への着脱が容易となるとともに、残水を捨てる際にも異物流入防止カバーが外れることがなくなる点で好ましい。
【0009】
また、前記液体注出通路に、前記内容器内の液体が最低水位となったことを検知する水位検知手段を付設するとともに、前記液体流通部における最低液体流入部位を、前記水位検知手段により検知される最低水位と同一もしくは稍下位に位置させた場合、水位検知手段が故障した場合にも、確実に空焚き防止ができる点で好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の好適な実施の形態について詳述する。
【0011】
第1の実施の形態
図1ないし図5には、本願発明の第1の実施の形態にかかるポンプ注液式電気貯湯容器が示されている。
【0012】
このポンプ注液式電気貯湯容器は、図1および図2に示すように、金属製の外ケース2の上部に合成樹脂製の肩部材3を設け且つ該外ケース2内にステンレス製の内容器4を配設してなる容器本体1と、該容器本体1の上部を覆蓋する蓋体5と、前記内容器4を加熱するための電気ヒータ6と、一連の液体注出通路7とを備えて構成されている。
【0013】
前記内容器4は、有底円筒状を呈しており、その上端に形成されたフランジ部4aを前記肩部材3の内周縁部3aに懸架することにより前記外ケース2内に支持されている。
【0014】
前記外ケース2の下端には、合成樹脂製の底部材8が当接されており、該底部材8と前記内容器4とは、図示しない連結金具を介して連結されている。このことにより、外ケース2、内容器4および底部材8が相互に一体化されることとなっている。
【0015】
前記底部材8の下部開口8aは底蓋9により閉塞されており、該底蓋9の下面外周部には回転座体10が回転可能に支持されている。このことにより、容器本体1を定置したとき回転座体10上で容器本体1が軽く回転させられることとなっている。
【0016】
前記内容器4の底部下面には、電気ヒータ6が当接されており、該電気ヒータ6の下方には、遮熱板11が前記内容器4の底部に対して固定された状態で取り付けられている。そして、前記電気ヒータ6は、前記遮熱板11との間に介設されたバネ板12によって内容器4の底部に圧接された状態で保持されている。この電気ヒータ6は、湯沸かし用と保温用とを兼用しており、沸騰センサー19(図4参照)により沸騰状態が検知された時点で湯沸かし用から保温用へ切り換えられることとなっている。
【0017】
前記電気ヒータ6の中央には貫通穴13が形成されており、該貫通穴13内には、内容器4の温度を検出する温度センサー14が遮熱壁15により隔絶して配置されている。該温度センサー14は、内容器4の温度を検出し、後述する回路基板17による保温制御用の温度情報として電気信号を出力する。
【0018】
また、前記底部材8には、回路収容ボックス16が下向きに開口して一体形成されており、該回路収容ボックス16内には前記した回路基板17が収容されている。そして、前記回路収容ボックス16の下端開口はカバー18により覆蓋されている。このことにより、上方からの漏水あるいは下方からの浸水に対する防水ができるのである。
【0019】
前記回路基板17には、マイクロコンピュータを構成する各種素子が内蔵されており、前記肩部材3の前方に突出する暗部3bの上面に設けられた操作パネル部20からの出力信号、前記温度センサー14および沸騰センサー19等の各種検出信号を受けて、沸騰・保温の動作制御を行うとともに、その動作表示やタイマー設定による表示制御等を行うこととなっている。符号21は前記操作パネル部20に設けられた各種スイッチの動作に基づいて前記制御基板17へON・OFF信号を出力するスイッチ回路基板である。
【0020】
前記蓋体5は、前記肩部材3の後部に一体形成された一部開放型の軸受22に対してヒンジピン23を介して開閉自在且つ着脱自在に枢支されている。つまり、蓋体5は、ヒンジピン23を支点として開閉されるとともに、所定開度においてヒンジピン23を軸受22から離脱させることにより取り外し可能となっているのである。一方、前記蓋体5の自由端側には、該蓋体5の閉塞状態を保持するためのロック装置24が設けられている。
【0021】
前記蓋体5は、共に合成樹脂の一体成形品からなり且つ外周縁部において互いに溶着結合された上板5aと下板5bとを備えており、前記下板5bの下面には、前記内容器4の上部開口を蓋体5の閉止時に覆蓋する金属製の内蓋25が下方から被嵌され、ビス26によって取り付けられている。該内蓋25の外周縁には、蓋体5の閉止時に前記内容器4のフランジ部4aに当接されて気密状態を保持するためのシールパッキン27が設けられている。
【0022】
前記蓋体下板5bと前記内蓋25との間には、下板5bと内蓋25とに挟持された通路構成部材28により内容器4内において発生する蒸気を外部へ排出する蒸気排出通路29が形成されている。該蒸気排出通路29は、前記通路構成部材28と前記内蓋25との間に形成される第1通路29aと、前記通路構成部材28と前記下板5bとの間に形成される第2通路29bと、前記下板5bと上板5aとの間に形成され且つ前記第2通路29bと連通部30を介して連通する第3通路29cとからなっており、前記第1通路29aは、前記内蓋25に形成された入口開口31を介して内容器4内に連通され、前記第1通路29aと第2通路29bとは、前記通路構成部材28の中央部に形成された通孔32を介して連通され、前記第3通路29cは、蓋体5の後部上面に形成された出口開口33を介して外部へ連通されている。
【0023】
また、前記通路構成部材28と内蓋25との間には、前記通孔32の口縁部から垂設され且つ蒸気流通穴34を有する円筒壁35に囲まれた弁室36が形成されており、該弁室36内には、電気貯湯容器の転倒時において自重および流出液体の流動圧により前記通孔32を閉塞する転倒止水弁37が設けられている。
【0024】
なお、前記蒸気排出通路29における第1および第2通路29a,29bは、比較的大きな水平方向の広がりを有しており、このことにより、電気貯湯容器の転倒時において転倒止水弁37の作動前に内容器4内の湯が蒸気排出通路29内に流入したとしても、前記第1通路29aあるいは第2通路29bに一時的に貯溜され、出口開口33から外部へ流出する迄にある程度の時間がかかることとなっている。従って、湯の外部への流出が起きる前に電気貯湯容器を慌てることなく起こせばよいこととなる。
【0025】
ところで、前記液体注出通路7は、その入口開口39を前記電気ヒータ6の面上に位置させて、前記内容器4の底部から該内容器4の前方を通り、前記肩部材3における暗部3b内に形成された注出ガイド38に臨む一連の通路として形成されている。符号39は液体注出通路7の入口開口、40は注出口である
前記液体注出通路7における内容器4の底部下方に位置する部分には、内容器4内の液体を汲み上げるための電動ポンプ41(後に詳述)が介設されている。また、前記液体注出通路7の途中(即ち、注出口40の直ぐ手前)には、転倒止水弁42が設けられており、電気貯湯容器の転倒時に自重あるいは流出液体の流動圧を受けて転倒止水弁42が閉作動し、液体注出通路7を介しての外部への液体流出が防止されることとなっている。
【0026】
さらに、前記液体注出通路7の途中(即ち、内容器4の前方に位置する部分)は透明な液量表示管43とされており、該液量表示管43に流入している液体の水位が外ケース2の前面に設けられた液量表示窓44を通して外部から見えるようになっている。
【0027】
そして、前記液量表示管43の周りには、該液量表示管43を透過した光りを反射することにより液量表示管43内の水位を明瞭にするための反射板45が配設されており、該反射板45には、前記液量表示管43内の水位が最低水位(即ち、内容器4内の水位が最低水位)となっていることを検知する水位検知手段46が付設されている。該水位検知手段46は、例えば光センサー等からなっており、最低水位検知信号を前記した回路基板17に入力し、該回路基板17からの信号出力によりユーザに対して最低水位検知警告を表示ランプ47により表示するものである(図4参照)。図5において、符号48はDC変換器、49は沸騰ブザーである。
【0028】
次に、前記電動ポンプ41の構造について、図4を参照して詳述する。
【0029】
この電動ポンプ41は、吸入口50aおよび吐出口50bを有するポンプ室50を構成するロータハウジング51と、前記ポンプ室50に対して合成樹脂製(例えば、ポリサルフォン製)の隔壁板52を介して区画されたモータ室53を構成するモータハウジング54とを備えており、該モータハウジング54の反ポンプ室側には、駆動源となるモータ55が取り付けられている。該モータ55の回転軸55aは、前記モータ室53に向かって突出せしめられている。符号56はシール用のOリングである。
【0030】
前記モータ回転軸55aには、前記モータ室53内に位置して円環状の駆動側磁石57を有する回転体58が共回り可能に枢支されている。該回転体58は、前記駆動側磁石57を吸着させる駆動側バックプレート59と共に合成樹脂(例えば、ポリプロピレン)の一体成形品からなる駆動側カバー部材60で被覆せしめて構成されている。
【0031】
そして、本実施例の場合、前記駆動側バックプレート59は、磁性体(例えば、ステンレス鋼)からなっており、その中心部には、前記モータ回転軸55aが圧入固定される軸受穴61が形成されている。つまり、モータ回転軸55aを前記軸受穴61へ圧入することにより両者が共回り可能に結合されることとなっているのである。このことにより、モータ回転軸55aとの結合強度を確保しつつ構造の簡略化を図ることが可能となっている。なお、前記モータ回転軸55aは、前記軸受穴61とともに前記駆動側カバー部材60の中心穴にも圧入固定されている。
【0032】
一方、前記ポンプ室50内には、前記隔壁板52の中心部に形成された凹部62に嵌合立設された回転中心軸63に対して回転自在に枢支されたインペラ64が配設されている。該インペラ64は、前記回転中心軸63が遊嵌される軸受穴65aを有する軸受部65と、該軸受部65に放射状に一体形成された羽根66とからなっており、前記駆動側磁石57との間で吸引力を作用させ合う従動側磁石67は、該従動側磁石67を吸着させる磁性体(例えば、ステンレス鋼)からなる従動側バックプレート68と共に前記インペラ64と一体成形された合成樹脂製(例えば、ポリプロピレン製)の従動側カバー部材69によって被覆せしめられている。なお、前記インペラ64の外周と前記ポンプ室50の内壁との間には、インペラ64の円滑な回転を確保するために所定の隙間Sが介在されている。
【0033】
また、前記インペラ64は、前記回転中心軸63先端と前記軸受穴65aの底部との点接触部を回転中心として回転自在とされており、所謂皿回し状態での回転が得られることとなっている。従って、インペラ64においては、回転中心軸63と軸受穴65aとの遊嵌により回転中心の位置決めが得られところから、安定した回転が得られる。符号70はインペラ64の回転中心軸63からの逸脱を防止する支持具であり、内容液の流通が可能な十字状の支持部70aを有している。
【0034】
さらに、前記ロータハウジング51とモータハウジング54とは、両者の合わせ部において突設されたフランジ部51a,54aを樹脂製ハトメ72で連結することにより結合されている。符号73はゴム等の緩衝材からなる押さえ具、74は中心穴から放射状に切り込みが形成された金属製のプッシュナットである。
【0035】
上記のように構成された電動ポンプは次のように作用する。
【0036】
モータ55の駆動により駆動側磁石57を有する回転体58が回転されると、駆動側磁石57との間で吸引力を作用させ合う従動側磁石67を有するインペラ64が回転中心軸63と軸受穴65aの底部との接触点を回転中心として回転せしめられることとなり、吸入口50aから吸い込まれた液体が吐出口50bから吐出され、液体注出通路7を介して外部へ注出される。
【0037】
しかして、前記液体注出通路7の入口開口39には、図2および図3に示すように、該入口開口39に着脱自在に嵌挿される嵌挿部76と、該嵌挿部76の上端開口を覆うように支持された略紡錘形状の液体流通部77とからなる異物流入防止カバー75が設けられている。本実施の形態においては、前記嵌挿部76は、フッ素ゴム等の耐熱ゴムからなり、前記液体流通部77は、ステンレスメッシュからなっている。なお、該ステンレスメッシュとしては、前記電動ポンプ41におけるインペラ64の外周とポンプ室50の内壁との隙間Sより小さい網目のものが採用されている。そして、前記異物流入防止カバー75における最低液体流入部位(換言すれば、嵌挿部76の上端)は、前記電気ヒータ6の面上に位置される内容器4の底面より高く、前記水位検知手段46により検知される最低水位L′と同一もしくは稍下位に位置せしめられている。
【0038】
上記のように構成したことにより、液体流通部77を構成するステンレスメッシュによりお茶の葉等の異物の液体注出通路7内への流入が確実に防止できる。しかも、液体流通部77を構成するステンレスメッシュとして、電動ポンプ41におけるインペラ64の外周とポンプ室50の内壁との隙間Sより小さい網目のものを採用しているため、液体流通部77を通過する大きさの異物は、電動ポンプ41におけるインペラ64の外周とポンプ室50の内壁との隙間Sより小さいものに限られることとなり、インペラ64とポンプ室50の内壁との間にかみ込まれることはない。
【0039】
また、異物流入防止カバー45における最低液体流入部位(即ち、嵌挿部76の上端)を内容器4の底部(換言すれば、電気ヒータ6の面上に位置される内容器4の底面)より高い位置としているため、内容器4の底部に落下した異物は、嵌挿部76にせき止められることとなり、液体注出通路7へ吸い込まれることがなくなる。従って、電動ポンプ41内への異物流入に起因して起こる故障を確実に防止することができる。しかも、液体流通部77は略紡錘形状とされているため、液体流通部77に引っ掛かった異物が下方へ落下し易くなり、液体流通部77が目詰まり状態となりにくく、電動ポンプ41への吸込液体量不足が起きにくい。
【0040】
さらに、嵌挿部76の液体注出通路入口開口39への着脱が容易となるとともに、残水を捨てる際にも異物流入防止カバー75が外れることがなくなり、使い勝手が極めて良好となる。
【0041】
さらにまた、異物流入防止カバー45における最低液体流入部位(即ち、嵌挿部76の上端)は、前記内容器4の底面(換言すれば、電気ヒータ6の上面)より高い最低水位Lを確保できる位置であって水位検知手段46により検知される最低水位L′と同一もしくは稍下位に位置せしめられているため、水位検知手段39が故障した場合にも、嵌挿部76の高さだけは内容器4内(即ち、電気ヒータ6の上面より上方)に液体が残ることとなり、空焚き防止が確実になる。
【0042】
【発明の効果】
本願発明によれば、電気ヒータの面上に位置される内容器の底部に液体注出通路を設け、液体注出通路の入口に、電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さい網目のステンレスメッシュからなる液体流通部を有する異物流入防止カバーを嵌挿するとともに、前記異物流入防止カバーにおける最低液体流入部位を、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底面より高い位置に位置させて、液体中に浮遊し、あるいは内容器の底部に落下したお茶の葉等の異物の液体注出通路内への流入を確実に防止し且つ液体流通部を通過する異物の大きさが、電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さいものに限られるようにしたので、内容器内に混入した異物が液体注出通路へ吸い込まれることがなくなり、電動ポンプ内への異物流入に起因して起こる故障を確実に防止することができるという優れた効果がある。
【0043】
しかも、異物流入防止カバーにおける最低液体流入部位を、電気ヒータの面上に位置される内容器の底面より高い位置に位置せしめたことにより、内容器内(即ち、電気ヒータの面上に位置される内容器の底面より高い位置)には残水が常時確保されることとなり、空焚きを確実に防止することができるという効果もある。
【0044】
また、前記異物流入防止カバーを、前記液体注出通路の入口開口に嵌挿される耐熱ゴム製の嵌挿部と、該嵌挿部の上端開口を覆う液体流通部とにより構成した場合、異物流入防止カバーの液体注出通路入口開口への着脱が容易となるとともに、残水を捨てる際にも異物流入防止カバーが外れることがなくなる。
【0045】
また、前記液体注出通路に、前記内容器内の液体が最低水位となったことを検知する水位検知手段を付設するとともに、前記液体流通部における最低液体流入部位を、前記水位検知手段により検知される最低水位と同一もしくは稍下位に位置させた場合、水位検知手段が故障した場合にも、確実に空焚き防止ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本願発明の第1の実施の形態にかかるポンプ注液式電気貯湯容器の上部を示す縦断面図である。
【図2】
本願発明の第1の実施の形態にかかるポンプ注液式電気貯湯容器の下部を示す縦断面図である。
【図3】
本願発明の第1の実施の形態にかかるポンプ注液式電気貯湯容器における要部を示す断面図である。
【図4】
本願発明の第1の実施の形態にかかるポンプ注液式電気貯湯容器における電動ポンプの構造を示す拡大断面図である。
【図5】
本願発明の第1の実施の形態にかかるポンプ注液式電気貯湯容器における電気的要素の回路ブロック図である。
【符号の説明】
1は容器本体、4は内容器、6は電気ヒータ、7は液体注出通路、39は入口開口、40は注出口、41は電動ポンプ、46は水位検知手段、75は異物流入防止カバー、76は嵌挿部、77は液体流通部、Lは最低水位、L′は検知最低水位。
【図面】





 
訂正の要旨 特許権者が求めている訂正の内容は、次のとおりである。
・訂正事項a
願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の【請求項1】の「容器本体内に配設された内容器と、該内容器の底部に配設された電気ヒータと、前記内容器の底部から前記容器本体上部における外部へ至る液体注出通路と、該液体注出通路の途中に配設した注液用の電動ポンプとを備えたポンプ注液式電気貯湯容器であって、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底部に前記液体注出通路を設け、該液体注出通路の入口には、異物の流入を許容しない程度の液体流通部を有する異物流入防止カバーを嵌挿するとともに、前記異物流入防止カバーにおける最低液体流入部位を、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底面より高い位置に位置させたことを特徴とするポンプ注液式電気貯湯容器。」を「容器本体内に配設された内容器と、該内容器の底部に配設された電気ヒータと、前記内容器の底部から前記容器本体上部における外部へ至る液体注出通路と、該液体注出通路の途中に配設した注液用の電動ポンプとを備えたポンプ注液式電気貯湯容器であって、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底部に前記液体注出通路を設け、該液体注出通路の入口には、前記電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さい網目のステンレスメッシュからなる液体流通部を有する異物流入防止カバーを嵌挿するとともに、前記異物流入防止カバーにおける最低液体流入部位を、前記電気ヒータの面上に位置される内容器の底面より高い位置に位置させたことを特徴とするポンプ注液式電気貯湯容器。」と訂正する。
・訂正事項b
特許明細書の特許請求の範囲の【請求項2】、【請求項4】を削除し、【請求項3】を【請求項2】に、【請求項5】を【請求項3】に訂正し、項番を繰り上げる。
・訂正事項c
(c-1)特許明細書の段落【0007】における「異物の流入を許容しない程度の」を「前記電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さい網目のステンレスメッシュからなる」と訂正する。
(c-2)特許明細書の段落【0008】に「本願発明…得られる。」とあるのを削除する。
(c-3)特許明細書の段落【0009】における「また、」を「本願発明の基本構成において、」と訂正する。
(c-4)特許明細書の段落【0010】に「また、…好ましい。」とあるのを削除する。
(c-5)特許明細書の段落【0012】に「幾つかの」とあるのを削除する。
(c-6)特許明細書の段落【0044】に「第2の実施の形態…示されている。」とあるのを削除する。
(c-7)特許明細書の段落【0045】に「この場合、…解消できる。」とあるのを削除する。
(c-8)特許明細書の段落【0046】に「なお、…なくなる。」とあるのを削除する。
(c-9)特許明細書の段落【0047】に「その他の…省略する。」とあるのを削除する。
(c-10)特許明細書の段落【0048】における「異物の流入を許容しない程度の」を「前記電動ポンプにおけるインペラの外周とポンプ室の内壁との隙間より小さい網目のステンレスメッシュからなる」と訂正する。
(c-11)特許明細書の段落【0050】の「また、…得られる。」とあるのを削除する。
(c-12)特許明細書の段落【0052】の「また、…低コストとなる。」とあるのを削除する。
(c-13)特許明細書の段落【図面の簡単な説明】の「【図6】・・・他の例を示す平面図である。」とあるのを削除する。
(c-14)特許明細書の段落【符号の説明】の「78は・・・閉塞部、」とあるのを削除する。
(c-15)願書に添付された図面の【図6】、【図7】、【図8】および【図9】を削除する。
異議決定日 2002-03-06 
出願番号 特願平8-149130
審決分類 P 1 652・ 113- YA (A47J)
P 1 652・ 121- YA (A47J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 深草 亜子  
特許庁審判長 滝本 静雄
特許庁審判官 井上 茂夫
櫻井 康平
登録日 2000-07-07 
登録番号 特許第3085521号(P3085521)
権利者 タイガー魔法瓶株式会社
発明の名称 ポンプ注液式電気貯湯容器  
代理人 大浜 博  
代理人 大浜 博  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ