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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23G
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23G
管理番号 1059509
異議申立番号 異議2001-71701  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-06-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-06-15 
確定日 2002-04-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3117970号「模様付き油性菓子及びその製造方法」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3117970号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3117970号(以下、本件特許という)は、特願平11-350418号(出願日 平成11年12月9日)に係り、平成12年10月6日に設定登録されたところ、異議申立人 板井 三郎、松浦 恵治より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年12月21日に訂正請求がされたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を下記のとおりに訂正する。
「【請求項】油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地と、上記第1の菓子生地とは色調が異なる第2の菓子生地とが接合されており、該接合面には凹凸が形成され、この凹凸によって前記第1の菓子生地には壁厚の薄い部分と厚い部分とが設けられ、前記第1の菓子生地の薄い部分の厚さが0.05〜2mmであり、前記第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.0 5mm以上であって、前記第1の菓子生地の外側から見たときに前記第2の菓子生地が透けて見える度合いが部分的に異なることにより、所定形状の模様が画一的に形成されていることを特徴とする模様付き油性菓子。」
イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6を下記のとおりに訂正する。
「【請求項6】油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地をモールドに充填する工程と、このモールドの内壁に対して部分的に近接する突出面を有し、該突出面とその周囲の面との段差が0.0 5mm以上ある押し型を、前記押し型の突出面が前記モールドの内壁に対して0.05〜2mmの範囲に近接するように前記モールドに挿入して冷却することにより、前記第1の菓子生地を前記モールド内壁に沿って流動、固化させる工程と、前記押し型を抜き出して、前記モールド内で固化した前記第1の菓子生地の上に前記第1の菓子生地とは色調の異なる第2の菓子生地を充填する工程と、こうして接合された菓子生地を前記モールドから取出す工程とを含むことを特徴とする請求項1記載の模様付き油性菓子の製造方法。」
ウ.訂正事項3 本件特許明細書の請求項7を削除する。
エ.訂正事項4 本件特許明細書の請求項8を請求項7に繰り上げると共に、請求項の引用に関する「請求項6又は7記載の」という記載を「請求項6記載の」と訂正する。
オ.訂正事項5 本件特許明細書の段落【0010】を下記のとおりに訂正する。
「【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明による模様付き油性菓子は、油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地と、上記第1の菓子生地とは色調が異なる第2の菓子生地とが接合されており、該接合面には凹凸が形成され、この凹凸によって前記第1の菓子生地には壁厚の薄い部分と厚い部分とが設けられ、前記第1の菓子生地の薄い部分の厚さが0.05〜2mmであり、前記第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.05mm以上であって、前記第1の菓子生地の外側から見たときに前記第2の菓子生地が透けて見える度合いが部分的に異なることにより、所定形状の模様が画一的に形成されていることを特徴とする。」
カ.訂正事項6 本件特許明細書の段落【0018】を下記のとおりに訂正する。
「【0018】
次に、本発明による模様付き油性菓子の製造方法は、油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地をモールドに充填する工程と、このモールドの内壁に対して部分的に近接する突出面を有し、該突出面とその周囲の面との段差が0.0 5
mm以上ある押し型を、前記押し型の突出面が前記モールドの内壁に対して0.0 5〜2mmの範囲に近接するように前記モールドに挿入して冷却することにより、前記第1の菓子生地を前記モールド内壁に沿って流動、固化させる工程と、前記押し型を抜き出して、前記モールド内で固化した前記第1の菓子生地の上に前記第1の菓子生地とは色調の異なる第2の菓子生地を充填する工程と、こうして接合された菓子生地を前記モールドから取出す工程とを含むことを特徴とする前記模様付き油性菓子の製造方法である。」
キ.訂正事項7 本件特許明細書の段落【0019】を下記のとおりに訂正する。
「【0019】
本発明の油性菓子の製造方法においては、前記押し型の突出面とその周囲の面との段差を0.05mm以上、より好ましくは0.2mm以上とする。押し型の突出面とその周囲の面との段差を0.05mm以上とすることにより、第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との差が0.05mm以上となるので、第2の菓子生地が透けて見える度合いを明確に変えて、模様をはっきりと形成することができる。」
ク.訂正事項8 本件特許明細書の段落【0020】を下記のとおりに訂正する。
「【0020】
また、前記押し型の突出面と前記モールドの内壁との距離が、0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜0.5mmの範囲となるように、前記押し型を前記モールドに挿入する。また、押し型の突出面とモールドの内壁との距離が0.05〜2mmの範囲になるように押し型を挿入することにより、第1の菓子生地の薄い部分が0.05〜2mmの厚さになるので、薄い部分の強度をある程度保ちながら、第2の菓子生地が充分に透けて見えるようにすることができる。」
ケ.訂正事項9 本件特許明細書の段落【0030】を下記のとおりに訂正する。
「【0030】
この油性菓子10は、シェル形状をした第1の菓子生地11と、その内部に充填された第2の菓子生地12とで構成され、全体として断面が台形のブロック形状をなしている。第1の菓子生地11としては、この例ではホワイトチョコレートが使用され、第2の菓子生地12としては、この例ではミルクチョコレートが使用されている。第1の菓子生地11は、上面(台形の上辺に当たる面)の厚さが部分的に変化しており、薄い部分11aの厚さt1は、0.05〜2mm、好
ましくは0.1〜0.5mmとされ、厚い部分l1bの厚さt2は、薄い部分の厚さt1よりも、0.05mm以上、好ましくは0.2mm以上厚くされている。薄い部分11aは、図1に示すように正方形が斜めに並んだように形成されて
おり、この薄い部分11aを通して第2の菓子生地12が透けて見え、長方形が斜めに並んだような透け模様が形成されている。」
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
1)訂正事項1について
訂正事項1は訂正前の請求項1において、「該接合面には凹凸が形成され、この凹凸によって前記第1の菓子生地には壁厚の薄い部分と厚い
部分とが設けられ、」という構成要件を付加すること(以下、訂正事項1-aという)、及び訂正前の請求項1における「前記第1の菓子生地の薄い部分の厚さが0.05〜2mmであり、前記第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.05mm以上である」という記載を、上記「該接合面には凹凸が形成され、この凹凸によって前記第1の菓子生地には壁厚の薄い部分と厚い部分とが設けられ、」という記載の後に、「前記第1の菓子生地の薄い部分の厚さが0.0 5〜2mmであり、前記第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.05mm以上であって、」という記載にして挿入する(以下、訂正事項1-bという)ものである。
上記訂正事項1-aは、第1の菓子生地と第2の菓子生地との接合面に凹凸が形成され、それによって第1の菓子生地に壁厚の薄い部分と厚い部分とが形成されるという構造に限定しようとするのであるから、特許請求の範囲の減縮に相当し、この点は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1に「油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地と、上記第1の菓子生地とは色調が異なる第2の菓子生地とが接合されており、」と記載されており、また、同明細書の段落【0 0 3 5】の記載、及び図2、3の記載から該上記訂正事項は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、上記訂正事項1-bは、訂正事項1-aの訂正に伴ない、その文意を明確にするためになされたものであり、明りょうでない記載の釈明に相当する。
2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項7に記載されていた要件を請求項6に加えて、「このモールドの内壁に対して部分的に近接する突出面を有し、該突出面とその周囲の面との段差が0.0 5mm以上ある押し型を、前記押し型の突出面が前記モールドの内壁に対して0.05〜2mmの範囲に近接するように前記モールドに挿入して冷却する」という要件に限定し、さらに、「請求項1記載の模様付き油性菓子の製造方法」であることを限定することであるから、この訂正事項は、特許請求の範囲の減縮に相当する。
3)訂正事項3について
訂正事項3は、上記訂正事項2に伴って、その整合性を図るための請求項を削除することであるから、特許請求の範囲の減縮に相当する。
4)訂正事項4について
訂正事項4は、上記訂正事項3の訂正に伴って、請求項が繰り上がったことに対する整合性を図るための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に相当する。
5)訂正事項5〜9について
訂正事項5〜9は、訂正事項1、2によって、特許請求の範囲の記載を訂正することに伴い、発明の詳細な説明中における整合性を図るための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に相当する。
そして、訂正事項1〜9は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、各訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)むすび
よって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2,3項の規定に適合するので、この訂正を認める。

3.本件発明
本件特許の請求項1〜7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1〜7」という)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地と、上記第1の菓子生地とは色調が異なる第2の菓子生地とが接合されており、該接合面には凹凸が形成され、この凹凸によって前記第1の菓子生地には壁厚の薄い部分と厚い部分とが設けられ、前記第1の菓子生地の薄い部分の厚さが0.05〜2mmであり、前記第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.05mm以上であって、前記第1の菓子生地の外側から見たときに前記第2の菓子生地が透けて見える度合いが部分的に異なることにより、所定形状の模様が画一的に形成されていることを特徴とする模様付き油性菓子。
【請求項2】前記第1の菓子生地がシェル形状をなし、前記第2の菓子生地が、シェル形状をなす前記第1の菓子生地の内部に充填されている請求項1記載の模様付き油性菓子。
【請求項3】前記第1の菓子生地及び前記第2の菓子生地の一方がホワイトチョコレートからなり、他方がミルクチョコレート又はビターチョコレートからなる請求項1又は2記載の模様付き油性菓子。
【請求項4】前記第1の菓子生地及び前記第2の菓子生地の一方がミルクチョコレートからなり、他方がビターチョコレートからなる請求項1又は2記載の模様付き油性菓子。
【請求項5】前記第2の菓子生地が、チョコレート、クリーム、冷菓から選ばれた1種である請求項1〜3のいずれか1つに記載の模様付き油性菓子。
【請求項6】油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地をモールドに充填する工程と、このモールドの内壁に対して部分的に近接する突出面を有し、該突出面とその周囲の面との段差が0.05mm以上ある押し型を、前記押し型の突出面が前記モールドの内壁に対して0.05〜2mmの範囲に近接するように前記モールドに挿入して冷却することにより、前記第1の菓子生地を前記モールド内壁に沿って流動、固化させる工程と、前記押し型を抜き出して、前記モールド内で固化した前記第1の菓子生地の上に前記第1の菓子生地とは色調の異なる第2の菓子生地を充填する工程と、こうして接合された菓子生地を前記モールド
から取出す工程とを含むことを特徴とする請求項1記載の模様付き油性菓子の製造方法。
【請求項7】前記押し型が-10℃〜十10℃の範囲に冷却されている請求6記載の模様付き油性菓子の製造方法。」

4.特許異議申し立てについて
(1)異議申立人 板井 三郎は、訂正前の請求項1に係る発明の特許は、下記の甲第1、2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し取り消されるべきであり(理由1)、また、請求項2〜8に係る発明の特許は、下記の甲第1〜4号証により、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消されるべきであり(理由2)、また、本件特許明細書の記載は不備であるから、特許法第36条第4項、第6項に規定する要件を満たしていないので、取り消されるべきである(理由3)旨主張している。

甲第1号証:米国特許第5705217号明細書
甲第2号証:特開昭57-174057号公報
甲第3号証:特開昭60-98947号公報
甲第4号証:特開平6-153799号公報
甲第5号証:平成12年6月15日審査官作成の面接記録
甲第6号証:甲第5号証たる面接記録の添付書類
甲第7号証:チョコレート類の表示に関する公正競争規約(昭和46年3月29日公正取引委員会告示第16号、変更平成11年10月21日公正取引委員会告示第14号)抜粋写し

甲各号証の記載内容
甲第1号証:
甲第1号証(米国特許第5705217号明細書)は、当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物1(EP0 589820A1(1994年3月30日公開)と同一内容であるところ、甲第1号証には、「チョコレート製品の成型方法及び成型装置」に係り、「本発明は、特にチョコレート製品用の脂肪を含有したチョコレート様の生地の外側シェルを製造する方法に関するものであり、その方法において、テンパリングしたチョコレート様の生地をモールド(mould cavity)に充填し、その生地はモールドにより結晶化し、固化してモールドの内側にシェルの外形を形成し、モールドの温度はテンパリングした生地の温度よりも低温である。」(第1欄6〜13行)、「特にチョコレート製品の脂肪含有チョコレート様生地の外側シェルを製造する本発明の方法は、前記生地をモールドに充填した直後に0℃より低い温度の冷却押し型(cooling member)を該生地内に浸漬し、完全に浸漬した位置で所定時間維持して、冷却押し型とモールドの間で所定のシェル量を規定する」(第1欄60行〜第2欄1行)、「最終的には、本発明によれば、冷却押し型の外側表面に窪み、すなわち凹部を設けて、これに対応するリブ、パーティション又は字体(text)のような突起部をチョコレートシェルの内側表面上に形成させることが可能である。」(第2欄37〜41行)、「また、モールドプレートを再び反転し、次の工程においてチョコレートシェルに例えばクリームを満たすことが可能であることも言及する必要がある。また、チョコレートシェルに種々のセンターを入れることも考えられる。というのは、チョコレートシェルは、冷却押し型に凹部または溝を設けることによって形成されるリブ又はパーティションにより分割することが可能であるからである。又、冷却押し型の外側に突起部を設け、これによって該チョコレートの生地で該チョコレートシェルの内面にエンボス又は字体を形成することも考えられる。」(第4欄5〜14行)、「最終的には、異なるタイプのチョコレートの生地で該チョコレートシェルを充填し、そこに小さな冷却押し型を浸漬してチョコレートシェルの内側表面に内部被覆を形成することも考えられる。」(第4欄14〜18行)、「前記冷却押し型(1)の外面に窪み、すなわち凹部を設け、これに対応するリブ、パーティション又は字体のような突起部をチョコレートシェル(5)の内側表面上に形成させることを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載のシステム。」(第6欄12〜15行)、「本発明の装置は、さらに、仕上げられたシェルの内側形状に対応する外側形状を有する冷却押し型を備え、該冷却押し型は0℃以下の温度に冷やすことができ、かつチョコレート様の生地を浸漬することができ、しかも該チョコレート様生地を十分に浸漬した位置に所定時間維持し、前記冷却剤とモールドとの間に所定のシェルの量を定めることができるようにしていることに特色がある。」(第2欄25〜33行)が記載されている。

甲第2号証:
甲第2号証は、同じく引用された刊行物2であり、甲第2号証には、「装飾チョコレートの成形方法」に係り、その特許請求の範囲には、「チョコレート本体の表面に該チョコレート本体の色と異なった色の薄い厚さの凹凸立体装飾模様チョコレートを成形固着させ得るための装飾チョコレートの成形方法であって、前記立体的装飾模様を形成すべき第1のチョコレート材料中のベース油脂及び前記チョコレート本体を形成すべき第2のチョコレート材料中のベース油脂として少なくとも60重量%の油脂が同一であるものを用い、第1及び第2のチョコレート材料中のベース油脂の含有量が30乃至40重量%の範囲のものから選択し、
前記装飾模様を刻設した型にまず流動状態の前記第1のチョコレート材料を薄い厚さに流し込み、前記型の表面をスクレープして型の装飾模様刻設部に第1のチョコレート材料を挿込みチョコレート材料を掻き取り、次いで直ちに第1のチョコレート材料の表面温度が18℃乃至22℃となるよう急冷して該材料中のベース油脂の微結晶化を進行させ、該微結晶化の進行過程において前記第1のチョコレート材料の上に流動状態の前記第2のチョコレート材料を流し込み、前記第1及び第2のチョコレート材料の接触表面部において前記第2のチョコレート材料中のベース油脂が第1のチョコレート材料に浸透して結晶固化するまで冷却し、しかる後型抜きすることを特徴とする装飾チョコレートの成形方法。」と記載され、詳細な説明の項には、「本発明の更に別の目的はチョコレート本体の色が異なった色の薄い厚さの装飾模様チョコレートを透過して混合色となって見える装飾チョコレートの成形方法を提供することにある。」(第2頁左下欄19行〜同頁右下欄2行)、「本発明にて用いる立体装飾模様を形成するチョコレート材料はいわゆるホワイトチョコレートと一般に呼ばれる白色チョコレートが好ましく、この場合チョコレート本体は通常の褐色チョコレートを用いるのが望ましい。装飾模様を形成するチョコレート材料として逆に褐色チョコレートを用い、チョコレート本体を白色チョコレートとしてもよいし、又他の色のチョコレートの組合せも可能である。」(第3頁左上欄11行〜19行)、「幅が最小200μの細かな凹凸線を含む立体装飾模様を刻設したポリカーボネート製の型にテンパリング処理を終えた温度29℃の白色チョコレートを薄い部分の厚さ約100μ、最大厚さ約1mmとなるように流し込んだ」(第5頁右上欄11行〜15行)、「幅約200μ、厚さ約100μの凹凸線部分が鮮明に表われていた。白色チョコレートの装飾模様中、厚さが薄い部分はチョコレート本体の褐色を透過して混合色となって見えた。」(第5頁左下欄4行〜7行)と記載されている。

甲第3号証:
甲第3号証は、同じく引用された刊行物4(特開昭60-98947号公報)であり、甲第3号証には、「模様入り冷菓類の製造方法」に係り、その特許請求の範囲には、「凍結管に充填したシロップ第一液を2mmの厚さに凍結したる後、直ちに未凍結液を吸引し抜き取る第一工程、
第一工程では、凍結層は未だ完全に凍結していないので、更に微細且つ均一結晶形成するまで完全凍結せしめる第2工程、
第2工程終了したる後、未凍結液抜き取り後の空洞部に加熱型押し板を挿入して完全凍結層に瞬間的(1.5秒〜2秒)に接触せしめ、その熱により接触部を溶解して完全凍結層に模様下地の空洞部を形成せしめる第3工程、
シロップ第2液を夫々の空洞部に圧入充填後、柄をさして更に完全凍結せしめたる後に製品化する第4工程
とによって製品に一定模様を形成することを特徴とする模様入り冷菓の製造方法。」、その発明のまとめとして「以上の通り、凍結管の内部より模様付け工程操作を行うので、出来上がり製品の表面に鮮明且つ一定の模様が形成される事となり、新しいデザインにより購買効果を期待できる。又加熱型押板は顧客の希望する模様や図形等を想定して自由に製作出来るので、製品の模様付けについての著しい特徴を出す事が可能となる」と記載されている。

甲第4号証:
甲第4号証は、同じく引用された刊行物3(特開平6-153799号公報)であり、甲第4号証には、「低粘度チョコレート等及びそれを用いた固形物の透けて見えるチョコレート等の製造法」に係り、「混入した殆どの固形物の片面が外からきれいに透けて見えるチョコレート等は今までに無かった。」(第2欄4行〜6行)、表1には、それぞれ組成が示された「通常のチョコレート」、「低粘度チョコレート(1)」、「低粘度チョコレート(2)の物性」が示されており、透けて見える厚さについては、それぞれ「0.5mm以下」、「2.0mm以下」、「1.0mm以下」と記載されている。

甲第5号証:
面接記録であり、審査官の「使用するチョコレートについて、引用例に記載されたものを除くことで、拒絶理由は解消される」コメントがある。

甲第6号証:
面接資料に添付された手続補正書であり、その請求項1には、「油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地(ただし粘度が30℃で100〜1000センチポアズであるものを除く)と、・・・」等の記載がある。

甲第7号証:
「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」の第2条、第2類、第(2)号準チョコレート生地のイ項及びロ項に「脂肪分が全重量の十八パーセント以上」と規定されている。

ア)理由1について
甲第1号証には、「チョコレート製品の成形方法及び成形装置」に係り、前記摘示したとおり、チョコレート製品用の脂肪を含有したチョコレート様生地をモールドに充填する工程、このモールドに冷却押し型を挿入して、流動固化させる工程、前記冷却押し型を抜き出して、前記モールド内でチョコレート様生地の外側シェル(以下、チョコレートシェルという)を形成する工程を経てチョコレートシェルを得、得られたチョコレートシェルの内部にクリーム等の種々のセンターを入れ得ること、又は異なる種類のチョコレートにより該シェルを内部コーティング(以下、これらをセンター菓子という)し得るチョコレート菓子が記載されており、さらに前記冷却押し型の外側に凹部又は溝を設けることにより、チョコレートシェルの内面にリブ又はパーティションが形成され、又冷却押し型の外側に突出部を設けることによりチョコレートシェルの内面にエンボス又は字型を形成されることも記載されている。
本件発明1と甲第1号証に記載のものとを対比すると、甲第1号証に記載の「チョコレートシェル」、「センター菓子」、「チョコレート菓子」は、本件発明1の「油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地」、「第2の菓子生地」、「油性菓子」にそれぞれ相当し、チョコレートシェルとセンター菓子の接合面には、凹凸が形成されているといえるから、両者は、油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地と、上記第1の菓子生地とは種類が異なる第2の菓子生地とが接合されており、該接合面には凹凸が形成された油性菓子である点で共通するが、甲第1号証には、本件発明1の構成要件である「この凹凸によって前記第1の菓子生地には壁厚の薄い部分と厚い部分とが設けられ、前記第1の菓子生地の薄い部分の厚さが0.05〜2mmであり、前記第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.05mm以上であって、前記第1の菓子生地の外側から見たときに前記第2の菓子生地が透けて見える度合いが部分的に異なることにより、所定形状の模様が画一的に形成されていること」は記載されていない。
したがって、本件発明1は甲第1号証に記載された発明とはいえない。
次に甲第2号証についてみると、ここには、前記摘示したとおり、チョコレート本体の表面に該チョコレート本体の色と異なった色の薄い厚さの凹凸立体装飾模様チョコレートを成形固着した装飾チョコレートについて記載され、薄い厚さのものは、例えば白色チョコレートを用いて装飾模様を形成するものであって、厚さ約100μから最大で約1mmであり、チョコレート本体の褐色を透過して混合色となってみることができると記載されている。
本件発明1と甲第2号証記載のものとを対比すると、甲第2号証には、凹凸立体模様装飾チョコレート(油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地)と該チョコレート(上記第1の菓子生地)とは色調が異なるチョコレート本体(第2の菓子生地)とを接合する点、及び上記立体模様装飾チョコレートが厚さ約100μから最大で約1mmであり、チョコレート本体の褐色を透過して混合色となって見えることができる点が記載されているが、前記2種のチョコレートの接合面に凹凸が形成されているものではない。
そうすると、本件発明1が甲第2号証に記載された発明ということはできない。
以上のとおり、本件発明1は、甲第1、2号証に記載された発明とはいえない。

本件発明2〜7について
本件発明2〜7はいずれも本件発明1を引用しており、本件発明1に対する判断と同様の理由により、甲第1、2号証に記載された発明とはいえない。

イ)理由2について
甲第1号証には、前記4.甲各号証の記載内容の項(甲第1号証)で記載されたとおりの事項が示されており、そして前記4.ア)理由1についての項で説示したとおり、甲第1号証には、本件発明1の構成要件である「この凹凸によって前記第1の菓子生地には壁厚の薄い部分と厚い部分とが設けられ、前記第1の菓子生地の薄い部分の厚さが0.05〜2mmであり、前記第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.05mm以上であって、前記第1の菓子生地の外側から見たときに前記第2の菓子生地が透けて見える度合いが部分的に異なることにより、所定形状の模様が画一的に形成されていること」は記載されていない点で相違する。
この点について更に検討すると、甲第1号証には、該冷却押し型の外側に突出部を設けることにより、チョコレートシェル内部にエンボス、字型が形成され得ると記載されているが、該突出部がどのような目的で設けられるのかの記載はなく、エンボス等が該シェルをとおして透けて見えることはどこにも記載されておらず、むしろ、甲第1号証の第5欄7〜11行には、イースターエッグのような、内部空洞を有するその内側表面が見えるチョコレート製品に有利である旨記載されているのである。
このように、甲第1号証には、本件発明1の如き、第1の菓子生地の外側から見たときに第2の菓子生地が透けて見えることはもとより、第1の菓子生地の厚さの度合いが部分的に異なることにより、所定形状の模様が画一的に形成される点については何ら示唆されていない。
この点に関連して、異議申立人 松浦 恵治は、平成14年2月18日付けで上申書を提出し、特許権者が提出した意見書の内容に対して反論しており、その内容の一つは、甲第1号証の第3欄40〜41行目(米国特許5705217号明細書の箇所に読み替えた)に、チョコレートシェルの厚さが2mmのものを作成したことが開示されており、この厚さは、本件発明1において規定している、第1の菓子生地が透けて見える限界に相当する旨主張している。そこで、さらに、甲第1号証の記載を検討すると、甲第1号証の前記の箇所の前後(第3欄35行〜43行)には、シェル形成に際し、所定の重さや厚さとすることにより、所望の形状、たとえば、円錐形シェル、長方形のもの、プラリネ用チョコレートシェルを成形できる旨記載され、その一例として2mmの厚さのものが例示(プラリネ用)されている。このように、チョコレートシェルの形状、チョコレート菓子の種類により、厚さ等を考慮することが示されているのであり、本件発明1におけるように、第1の菓子生地の外側から見たときに第2の菓子生地が透けて見えるように、第1の菓子生地の薄い部分の上限が2mmとするものとは、目的、構成、効果を異にするといわざるを得ない。
したがって、前記上申書における、異議申立人の主張は採用できない。
次に、甲第2号証には、理由1に述べたとおりの発明が記載され、第1の菓子生地を透過して、第2の菓子生地が混合色となって見えることが記載されているが、甲第2号証に記載されたものは、第1の菓子生地と第2の菓子生地の接合部において凹凸部を形成しないのであり、基本的に模様形成を異にするものであり、甲第3号証には、「模様入り冷菓類の製造方法」について記載されており、その原料はシェルもセンターも水系のシロップであって、本件発明1の原料である油脂を20%以上含有する菓子生地とは、その性状や透明度などが大きく異なるものであり、さらに、甲第4号証には、「低粘度チョコレート等及びそれを用いた固形物の透けて見えるチョコレート等の製造法」に係り、低粘度チョコレートを用いることにより混入されている固形物は、透けて見え、その厚さについては、たとえば0.5mm以下、2.0mm以下、1.0mm以下のものであることが記載されているが、甲第4号証には、色調の異なる2種類のチョコレートの如き油性菓子生地を用いるものでもなく、さらには模様形成についての記載もない。
そうすると、甲第1号証には、第1の菓子生地の外側から見たときに第2の菓子生地が透けて見える模様を有する油性菓子について何ら記載乃至示唆されていないし、この甲第1号証に記載の発明に、甲第2号証に記載の模様形成を全く異にする第1の菓子生地が透けて第2の菓子生地が見える構成、甲第3号証に記載の外側から模様が見える模様入り冷菓の構成、および甲第4号証に記載の固形物が透けて見える低粘度チョコレートの構成を組み合わせる動機は見あたらない以上、本件発明1を想到することは、当業者において容易になしえたものとはいえない。
そして、本件発明1は、第1の菓子生地の厚さが部分的に異なっていることにより、第1の菓子生地の外側から見たときに、第1の菓子生地の薄いところでは、内側の第2の菓子生地がよく透けて見え、第1の菓子生地の厚いところでは、内側の第2の菓子生地が見えにくくなるので、第2の菓子生地が部分的によく透けて見える、透かし模様入り油性菓子を提供するという刊行物1〜4に記載された発明から予期できない、優れた効果を奏するものと認められる。

本件発明2〜7について
本件発明2〜7は、いずれも本件発明1を引用しているので、本件発明1に対する判断と同様の理由により、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をし得たものとはいえない。

ウ)理由3について
異議申立人は、1)発明の詳細な説明の段落【0002】、【0005】の項には、この種のものの従来技術では、平面模様を形成することはできなかったという記述に対して、本件特許発明は平面模様を形成しうると記載されているのであるから、段落【0009】(本件発明の目的)、【0043】(本件発明の効果)には、本件特許発明は平面模様を形成しうると記述されるべきであるところ、これらの段落には、平面模様が形成されるという記述は全く存在せず、この点で、本件明細書の記載は不備であり、2)詳細な説明の段落【0027】のシェルの製法からみて、透けて見える部分は、平面に限定されないのであるから、この点で従来技術との比較面で、明細書の記載は不備である旨主張している。
そこで、前記の主張1)、2)について検討する。
前記主張1)及び2)は、平面部に関しての主張であるので、合わせて検討すると、本件発明1は、特許請求の範囲の請求項1に記載のとおり、互いに色調の異なる第1の菓子生地と第2の菓子生地とが接合されており、該接合面に凹凸が形成され、所定の厚さの薄い部分と厚い部分との厚さの差を所定の厚さとし、第1の菓子生地の外側から見たときに前記の第2の菓子生地が透けて見える度合いが部分的に異なることにより所定形状の模様を画一的に形成するのであり、該模様が形成された表面に更に他の模様を形成させることにより、結果的に凸部が形成されることを排除しているものとは認められない。したがって、詳細な説明の項の記載において、平面部に関しての記載が不明瞭であるとはいえない。
なお、異議申立人は、甲第5号証、甲第6号証を提出して、特許異議申立書第15頁21行〜17頁17行において、本件明細書の記載は、審査官の面接の結果として、冷却押出型を使用することおよび使用するチョコレートを引用例から除く旨の心証を得た発明とは別異のものの記載であり、拒絶理由は解消されておらず、特許は取り消されるべきである旨主張している。
しかしながら、たとえ面接時に審査官がそのような心証を得たとしても、その後、特許査定時に特許法第29条第36条等の拒絶理由があるか否かを再度検討し、このままの記載でも拒絶理由は存在しないと判断して特許査定されたと考えられ、面接の結果の記載のみから、拒絶理由が依然として残っているとはいえない。しかも、総合的・客観的に判断して、上記の拒絶理由があるとは認められない。したがって、この点についての異議申立人の主張は採用できない。
また、甲第7号証には、チョコレート類の表示に関する公正競争規約について記載され、準チョコレート生地等では、脂肪分が全重量の18%以上であることが記載されており、異議申立人は、このような脂肪含量は、チョコレート等において周知である旨主張しているにすぎない。
(2)異議申立人 松浦 恵治は、下記の甲第1〜3号証により、訂正前の請求項1,6に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから取り消すべきである(理由a)、及び本件明細書は不備であるから取り消すべきである(理由b)旨主張している。

甲第1号証:EPO589820A1(1994年3月30日)
甲第2号証:特開昭57-174057号公報
甲第3号証:特開平6-153799号公報

(理由a)について
甲1〜3号証の記載内容
甲第1号証は、前記4.異議申立人 板井 三郎が提出した甲第1号証と同一内容であり、甲第2号証及び3号証は、前記異議申立人 板井 三郎が提出した甲第2号証及び甲第4号証と同一の証拠であるから、甲1〜3各号証には、前記4.甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証に記載されたとおりの発明が記載されている。
そして、本件発明1〜7については、4.(1)イ.の項に記載された判断と同様の理由により、本件発明1〜7は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(理由b)について
異議申立人が主張する記載不備に関する理由を詳述すると、i)本件明細書には、第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.05mm以上と規定した根拠として、「厚さの差が0.05未満では、第2の菓子生地の透けて見える度合いが近似してしまい、模様がはっきりしなくなる。」(公報4欄43〜46行参照)と述べているが、本件特許明細書には、このことを立証するデータは記載されておらず、そして、この点に関する実験によれば(特許異議申立書第13〜14頁)、0.05mm以上であっても、第2の菓子生地の透けて見える度合いが近似してしまい、模様がはっきりしない場合があることが明らかとなり、すなわち模様付きでない油性菓子を包含するのであり、本件特許請求の範囲の記載は不備である、ii)請求項1の「油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地と」において、この菓子生地の油脂含量を「20質量%以上」と特定した根拠が全く示されていない、及びiii)本件発明は所定形状の模様が画一的に形成されていることを要件としているが、本件明細書(本件特許公報第3欄40行〜43行)には、「モールド内面に凹凸を形成して模様を付す方法は、立体模様としてチョコレートの表面に一定の模様を付すことができるものの、平面模様を形成することはできなかった。」と記載され、従来から存在していた立体模様でなく、平面模様を形成することが本件特許発明の課題であることを明らかにしており、請求項6に記載の製造方法も平面模様が形成された油性菓子を製造する方法であり、この方法では立体模様付きの油性菓子は得られないことは明白である。すなわち、本件特許発明の出願前公知の立体模様付きの油性菓子をも包含している請求項1の特許発明は、記載不備であるというものである。

(ア)主張i)について
特許権者は、第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.05mm程度であっても、模様が視認できる場合があるとする実験成績証明書を平成13年12月21日付けの特許異議意見書と共に提出した。
この実験成績証明書によれば、約0.05mm程度の厚さで、模様が視認できるといえるので、この点に関する明細書の不備はない。
(イ)主張ii)について
例えば、異議申立人 板井 三郎が提出した甲第7号証には、チョコレート生地は、ココアバターを全重量の18%以上含み、且つ、乳脂肪を全重量の3%以上含むものであること、又、準チョコレート生地は、脂肪分を全重量の18%以上含むものであることが記載され、一方、本件特許明細書の実施例においても、第1の菓子生地としてチョコレート生地が使用されている。
そうすると、本件発明1は、通常、油脂を18重量%以上を含むチョコレートを使用することを含む第1の菓子生地として、前記の「18重量%以上」より多い「20%質量%以上」と限定したことにより、明細書の記載が不明瞭な記載となるものでもない。
したがって、この点に関する明細書の不備はない。

(ウ)主張iii)について
本件発明1は、特許請求の範囲の請求項1に記載のとおり、互いに色調の異なる第1の菓子生地と第2の菓子生地とが接合されており、該接合面に凹凸が形成され、所定の厚さの薄い部分と薄い部分と厚い部分との厚さの差を所定の厚さとし、第1の菓子生地の外側から見たときに前記の第2の菓子生地が透けて見える度合いが部分的に異なることにより所定形状の模様を画一的に形成するのであり、この模様形成と、菓子表面(第2の菓子生地)に他の菓子生地(第1の菓子生地)により模様を立体的に施すことによる模様形成とは、その形成方法が基本的に相違するのである。したがって、本件発明1において、模様形成は、本質的に平面にて形成されることが明瞭に記載されている以上、菓子表面を立体的に形成することにより、模様を形成させることを必須の要件とするものではないから、特許請求の範囲の請求項1の記載は不明瞭であるとする理由で本件明細書は不備であるとすることはできない。
5.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議の理由及び証拠方法によっては、本件発明1〜7の特許を取り消すことはできない。
又、他に本件発明1〜7の特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
模様付き油性菓子及びその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地と、上記第1の菓子生地とは色調が異なる第2の菓子生地とが接合されており、該接合面には凹凸が形成され、この凹凸によって前記第1の菓子生地には壁厚の薄い部分と厚い部分とが設けられ、前記第1の菓子生地の薄い部分の厚さが0.05〜2mmであり、前記第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.05mm以上であって、前記第1の菓子生地の外側から見たときに前記第2の菓子生地が透けて見える度合いが部分的に異なることにより、所定形状の模様が画一的に形成されていることを特徴とする模様付き油性菓子。
【請求項2】 前記第1の菓子生地がシェル形状をなし、前記第2の菓子生地が、シェル形状をなす前記第1の菓子生地の内部に充填されている請求項1記載の模様付き油性菓子。
【請求項3】 前記第1の菓子生地及び前記第2の菓子生地の一方がホワイトチョコレートからなり、他方がミルクチョコレート又はビターチョコレートからなる請求項1又は2記載の模様付き油性菓子。
【請求項4】 前記第1の菓子生地及び前記第2の菓子生地の一方がミルクチョコレートからなり、他方がビターチョコレートからなる請求項1又は2記載の模様付き油性菓子。
【請求項5】 前記第2の菓子生地が、チョコレート、クリーム、冷菓から選ばれた1種である請求項1〜3のいずれか1つに記載の模様付き油性菓子。
【請求項6】 油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地をモールドに充填する工程と、このモールドの内壁に対して部分的に近接する突出面を有し、該突出面とその周囲の面との段差が0.05mm以上ある押し型を、前記押し型の突出面が前記モールドの内壁に対して0.05〜2mmの範囲に近接するように前記モールドに挿入して冷却することにより、前記第1の菓子生地を前記モールド内壁に沿って流動、固化させる工程と、前記押し型を抜き出して、前記モールド内で固化した前記第1の菓子生地の上に前記第1の菓子生地とは色調の異なる第2の菓子生地を充填する工程と、こうして接合された菓子生地を前記モールドから取出す工程とを含むことを特徴とする請求項1記載の模様付き油性菓子の製造方法。
【請求項7】 前記押し型が-10℃〜+10℃の範囲に冷却されている請求項6記載の模様付き油性菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、色調が異なる複数の菓子生地を接合させて得られる透かし模様付きの油性菓子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、油性菓子、特にチョコレートに模様を付ける方法としては、2色以上のチョコレート生地を同時にモールドに注入してマーブル模様等を付ける方法(特開平9-23818号、特開平10-234303号参照)や、モールド内面に凹凸を形成して立体的な模様を付す方法や、モールドにインク等を付けた後、チョコレートに転写する方法や、デコマ成形法などが知られている。
【0003】
また、ナッツ等の固形物をチョコレート層で薄く覆い、外側のチョコレート層から内部の固形物が透けて見えるようにしたチョコレートも知られている(特開平6-1537995号参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、2色以上のチョコレート生地を同時にモールドに注入する方法では、模様を付すために手間がかかり、特殊な装置が必要となり、また、マーブル模様等が常に一定の形にならず、模様が安定しないという問題点があった。
【0005】
また、モールド内面に凹凸を形成して模様を付す方法は、立体模様としてチョコレート表面に一定の模様を付すことができるものの、平面模様を形成することはできなかった。
【0006】
更に、モールドにインクを付けた後にチョコレートに転写する方法は、チョコレート表面が平面の場合だけでなく、ある程度の立体的な表面にも模様を転写することができるが、モールドに転写するインクを付する工程が必要となり、手間がかかった。
【0007】
更にまた、デコマ成形法は、チョコレート表面に色調の異なるチョコレート等を筋状にかけるだけであり、画一的な模様を付することは困難であった。
【0008】
一方、特開平6-1537995号に示される、内部の固形物の片面が透けて見えるチョコレートは、チョコレートに包含される固形物を外観より透けて見えるようにしたものであるが、チョコレートとして特殊な低粘性のチョコレートを使わなくてはならず、また、内容固形物を見えるようにしただけで、チョコレート表面に画一的な模様を形成するものではなかった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、透かし模様の付いた斬新なデザインの油性菓子及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明による模様付き油性菓子は、油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地と、上記第1の菓子生地とは色調が異なる第2の菓子生地とが接合されており、該接合面には凹凸が形成され、この凹凸によって前記第1の菓子生地には壁厚の薄い部分と厚い部分とが設けられ、前記第1の菓子生地の薄い部分の厚さが0.05〜2mmであり、前記第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.05mm以上であって、前記第1の菓子生地の外側から見たときに前記第2の菓子生地が透けて見える度合いが部分的に異なることにより、所定形状の模様が画一的に形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記本発明の油性菓子によれば、第1の菓子生地の厚さが部分的に異なっていることにより、第1の菓子生地の外側から見たときに、第1の菓子生地の薄いところでは、内側の第2の菓子生地がよく透けて見え、第1の菓子生地の厚いところでは、内側の第2の菓子生地が見えにくくなるので、第2の菓子生地が部分的によく透けて見える斬新なデザインの油性菓子を提供することができる。また、上記模様は、第1の菓子生地の厚さを部分的に変化させることにより形成できるので、例えば押し型を用いるモールド成形等の方法によって、安定して生産性よく製造することができる。
【0012】
本発明の油性菓子において、前記第1の菓子生地の薄い部分の厚さは、0.05〜2mmであり、0.1〜0.5mmであることが好ましい。また、前記第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差は、0.05mm以上である。第1の菓子生地の薄い部分の厚さが0.05mmよりも薄いと、第1の菓子生地の成形が困難となり、2mmよりも厚いと、第2の菓子生地が透けて見えにくくなる。また、第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.05mm未満では、第2の菓子生地の透けて見える度合いが近似してしまい、模様がはっきりしなくなる。
【0013】
また、前記第1の菓子生地がシェル形状をなし、前記第2の菓子生地が、シェル形状をなす前記第1の菓子生地の内部に充填されていることが好ましい。これによれば、第1の菓子生地で包まれていて、第1の菓子生地を通して第2の菓子生地が透けて見える、斬新な模様の油性菓子を提供することができる。
【0014】
更に、前記第1の菓子生地及び前記第2の菓子生地の一方がホワイトチョコレートからなり、他方がミルクチョコレート又はビターチョコレートからなることが好ましい。これによれば、明度が大きく異なる2つの菓子生地を組合せることによって、透かし模様のはっきりとした油性菓子を提供することができる。
【0015】
また、前記第1の菓子生地及び前記第2の菓子生地の一方がミルクチョコレートからなり、他方がビターチョコレートからなっていてもよい。これによれば、色調が似たチョコレートの組合せからなるため、デザイン的に調和のとれた模様が形成される。
【0016】
更にまた、前記第2の菓子生地が、チョコレート、クリーム、冷菓から選ばれた1種であることが好ましい。これによれば、第2の菓子生地を選択することにより、様々な食感、風味の油性菓子を提供することができる。
【0017】
なお、本発明による模様付き油性菓子において、前記第2の菓子生地が透けて見える部分は、平面であることが好ましい。すなわち、第1の菓子生地の表面が平面をなしていて、その平面において第2の菓子生地が部分的に透けて見えるものが、意匠的により斬新であるため好ましい。
【0018】
次に、本発明による模様付き油性菓子の製造方法は、油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地をモールドに充填する工程と、このモールドの内壁に対して部分的に近接する突出面を有し、該突出面とその周囲の面との段差が0.05mm以上ある押し型を、前記押し型の突出面が前記モールドの内壁に対して0.05〜2mmの範囲に近接するように前記モールドに挿入して冷却することにより、前記第1の菓子生地を前記モールド内壁に沿って流動、固化させる工程と、前記押し型を抜き出して、前記モールド内で固化した前記第1の菓子生地の上に前記第1の菓子生地とは色調の異なる第2の菓子生地を充填する工程と、こうして接合された菓子生地を前記モールドから取出す工程とを含むことを特徴とする前記模様付き油性菓子の製造方法である。
【0019】
本発明の油性菓子の製造方法においては、前記押し型の突出面とその周囲の面との段差を0.05mm以上、より好ましくは0.2mm以上とする。押し型の突出面とその周囲の面との段差を0.05mm以上とすることにより、第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との差が0.05mm以上となるので、第2の菓子生地が透けて見える度合いを明確に変えて、模様をはっきりと形成することができる。
【0020】
また、前記押し型の突出面と前記モールドの内壁との距離が、0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜0.5mmの範囲となるように、前記押し型を前記モールドに挿入する。また、押し型の突出面とモールドの内壁との距離が0.05〜2mmの範囲になるように押し型を挿入することにより、第1の菓子生地の薄い部分が0.05〜2mmの厚さになるので、薄い部分の強度をある程度保ちながら、第2の菓子生地が充分に透けて見えるようにすることができる。
【0021】
また、前記押し型が-10℃〜+10℃の範囲に冷却されていることが好ましい。押し型の温度が-10℃よりも低いと、押し型に露が付きやすくなり、製造に支障が生じることがある。また、押し型の温度が+10℃よりも高いと、第1の菓子生地を固化させるのに時間がかかり、作業性が低下する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明において、第1の菓子生地としては、油脂を20質量%以上、好ましくは20質量%から70質量%含有するものが用いられる。このような菓子生地としては、例えばチョコレート、クリーム、キャラメル等が挙げられるが、特にチョコレートが好ましい。
【0023】
チョコレート原料としては、従来より一般的に用いられているものを適宜選択して使用することができ、例えば、カカオマス、カカオバター、その他の植物性油脂、粉糖、全脂粉乳、乳化剤などが用いられる。また、ビターチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート等、いずれの種類のチョコレートでもよく、規約に定められた純チョコレート、純ミルクチョコレートに限らず、準チョコレートなどであってもよい。
【0024】
第2の菓子生地としては、第1の菓子生地と同様な菓子生地、すなわちチョコレート、キャラメル、クリーム、キャンディーなどの他、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベットなどの冷菓を用いることもできる。ただし、第2の菓子生地は、第1の菓子生地とは色調が異なるものであることが必要である。この場合、特に明度が大きく異なるものが好ましく、例えば第1の菓子生地と第2の菓子生地の一方をホワイトチョコレートとし、他方をミルクチョコレート又はビターチョコレートとする組合せなどが好ましく採用される。
【0025】
第1の菓子生地及び第2の菓子生地は、着色したチョコレート、クリームなどを原料としてもよい。この際、着色するために、通常用いられている着色剤を用いてもよいし、天然素材を用いることによって結果的に天然素材の色調により着色された菓子生地を用いることもできる。天然素材としては、ブルーベリー、クランベリー、いちご、抹茶などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0026】
本発明は、第1の菓子生地の厚さを部分的に変化させることにより、第1の菓子生地の内側に接合された第2の菓子生地が部分的に透けて見えるようにすることに特徴がある。すなわち、第1の菓子生地を通して、内側の第2の菓子生地がよく透けて見える部分と、あまり透けて見えない部分とで、外観の模様を形成するのである。
【0027】
本発明においては、第1の菓子生地はシェル形状をなし、第2の菓子生地は、その内部に充填されたものであることが好ましいが、必ずしもそのような菓子に限定されるものではなく、例えば、第1の菓子生地と第2の菓子生地とがシート状に積層されていて、第1の菓子生地の厚さが部分的に異なることにより、第1の菓子生地側から見たとき、第2の菓子生地が部分的に透けて見えるようにしたものであってもよい。
【0028】
また、本発明の模様付き油性菓子は、2つの菓子生地の組合せに限られず、3以上の菓子生地の組合せでできていてもよい。その場合、少なくとも2つの菓子生地の色調が異なっており、そのうちの外側に位置する少なくとも1つの菓子生地の厚さが部分的に変化していて、外部から見たときに内部の菓子生地が部分的に透けて見えるようになっていればよい。
【0029】
図1、2には、本発明による模様付き油性菓子の一実施形態が示されている。図1は斜視図、図2は図1のA-A矢示線に沿った断面図である。
【0030】
この油性菓子10は、シェル形状をした第1の菓子生地11と、その内部に充填された第2の菓子生地12とで構成され、全体として断面が台形のブロック形状をなしている。第1の菓子生地11としては、この例ではホワイトチョコレートが使用され、第2の菓子生地12としては、この例ではミルクチョコレートが使用されている。第1の菓子生地11は、上面(台形の上辺に当たる面)の厚さが部分的に変化しており、薄い部分11aの厚さt1は、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜0.5mmとされ、厚い部分11bの厚さt2は、薄い部分の厚さt1よりも、0.05mm以上、好ましくは0.2mm以上厚くされている。薄い部分11aは、図1に示すように正方形が斜めに並んだように形成されており、この薄い部分11aを通して第2の菓子生地12が透けて見え、長方形が斜めに並んだような透け模様が形成されている。
【0031】
次に、本発明の模様付き油性菓子の製造方法について、その好ましい態様を挙げて説明する。図3は、製造工程の概略を示す説明図である。
【0032】
図3(a)に示すように、この製造方法においては、モールド20と押し型30とを用いる。モールド20は、上方に向かってやや広がるテーパ状の内壁を有する凹部21を有する。また、押し型30は、この凹部21内に挿入される形状をなし、その内部には冷媒が流れる流路31を有している。押し型30は、この冷媒によって、好ましくは-10℃〜+10℃、より好ましくは-3℃〜+5℃に冷却されるようになっている。押し型30の下面には、部分的に突出した突出面32と、その周囲の面33とが設けられ、突出面32は、その周囲の面33に対して、少なくとも0.05mm以上、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上突出されている。また、突出面32の周縁をR状に面取りして、第2の菓子生地が透けて見える部分と、透けて見えない部分との境界がぼんやりとした模様を付すこともできる。
【0033】
図3(b)に示すように、まず、モールド20の凹部21に、加熱溶融した状態の第1の菓子生地11を所定量注入する。この実施形態の場合、第1の菓子生地11の量は、後述するように押し型30で押したときに、第1の菓子生地11がモールド20の内周に沿って流動し、シェル形状を形成するのに充分な量とされる。
【0034】
次に、図3(c)に示すように、押し型30の流路31内に冷媒を流して押し型30を冷却し、その状態でモールド20の凹部21内に挿入し、数秒から数十秒間押し型30を挿入し続ける。上記第1の菓子生地11は押し型30とモールド20との間隙に流動し、モールド20の凹部21内面に沿ったシェル形状が形成され、冷却された押し型30によって迅速に冷却固化される。なお、押し型30は予め冷却されている必要は必ずしもなく、押し型30を常温で挿入した後、モールド20及び押し型30を冷却してもよい。
【0035】
その後、図3(d)に示すように、押し型30をモールド20内から抜き出すと、モールド20内には、第1の菓子生地11からなるシェルが残される。このシェルの底面(製品となったときには上面)には、上記押し型30の突出面32とその周囲の面33とによって、壁厚の薄い部分11aと、厚い部分11bとが形成される。
【0036】
次に、図3(e)に示すように、モールド20内に残された上記第1の菓子生地11からなるシェルの内部に、第2の菓子生地12を分注し固化させる。
【0037】
更に、図3(f)に示すように、第2の菓子生地12上に、再び第1の菓子生地11を流し込み、第1の菓子生地11からなるシェルで第2の菓子生地12を完全に包みこむように被覆する。そして、この固化物をモールドから取出すことにより、例えば図1、2に示したような油脂性菓子を製造することができる。
【0038】
なお、上記図3(f)による包み込み工程は必ずしも必要なものではない。また、第2の菓子生地12は、2層、3層の異なる菓子生地を積層して構成することもできる。例えば第2の菓子生地12は、単数または複数の色調や種類の異なるチョコレート、クリームなどを包含していてもよい。
【0039】
【実施例】
通常のホワイトチョコレートを常法によりテンパリングし、これを内径42mmx18mmx17mmのモールドに3.2g分注した。なお、モールドの底面は平滑である。
【0040】
次に、ホワイトチョコレートを分注したモールドに、温度1℃に冷却された押し型を押し付け、ホワイトチョコレートが固まるまで10秒間放置した。この押し型の下面には、高さ0.3mmで9mm角の正方形状の突出面が数個形成されている。
【0041】
ホワイトチョコレートが固まった後、押し型を引き抜き、モールドに残ったホワイトチョコレートのシェルの内部に、ミルクチョコレートを分注した。更に、ミルクチョコレートの上面に再びホワイトチョコレートを分注して、ミルクチョコレートをホワイトチョコレートで完全に覆った。
【0042】
その後、モールドからチョコレートを取出すことにより、図1、2に示す形状のチョコレート製品を得た。このチョコレートは、シェルの上面を通して、内部に包含されたミルクチョコレートが透けて見え、9mm角の正方形の模様が存在していた。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、第1の菓子生地の厚さが部分的に異なっていることにより、第1の菓子生地の外側から見たときに、第1の菓子生地の薄いところでは、内側の第2の菓子生地がよく透けて見え、第1の菓子生地の厚いところでは、内側の第2の菓子生地が見えにくくなるので、第2の菓子生地が部分的によく透けて見える斬新なデザインの油性菓子を提供することができる。また、上記模様は、第1の菓子生地の厚さを部分的に変化させることにより形成できるので、例えば押し型を用いるモールド成形等の方法によって、画一的な模様が付された製品を安定して生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による模様付き油性菓子の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】 図1のA-A矢示線に沿った断面図である。
【図3】 本発明による模様付き油性菓子の製造方法の一実施形態を示す製造工程の概略説明図である。
【符号の説明】
10 油性菓子
11 第1の菓子生地
11a 薄い部分
11b 厚い部分
12 第2の菓子生地
20 モールド
21 凹部
30 押し型
31 冷媒の流路
32 突出面
33 周囲の面
 
訂正の要旨 (訂正の要旨)
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として特許請求の範囲の請求項1を下記のとおりに訂正する。
「【請求項】油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地と、上記第1の菓子生地とは色調が異なる第2の菓子生地とが接合されており、該接合面には凹凸が形成され、この凹凸によって前記第1の菓子生地には壁厚の薄い部分と厚い部分とが設けられ、前記第1の菓子生地の薄い部分の厚さが0.05〜2mmであり、前記第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.05mm以上であって、前記第1の菓子生地の外側から見たときに前記第2の菓子生地が透けて見える度合いが部分的に異なることにより、所定形状の模様が画一的に形成されていることを特徴とする模様付き油性菓子。」
イ.訂正事項2
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項6を下記のとおりに訂正する。
「【請求項6】油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地をモールドに充填する工程と、このモールドの内壁に対して部分的に近接する突出面を有し、該突出面とその周囲の面との段差が0.05mm以上ある押し型を、前記押し型の突出面が前記モールドの内壁に対して0.05〜2mmの範囲に近接するように前記モールドに挿入して冷却することにより、前記第1の菓子生地を前記モールド内壁に沿って流動、固化させる工程と、前記押し型を抜き出して、前記モールド内で固化した前記第1の菓子生地の上に前記第1の菓子生地とは色調の異なる第2の菓子生地を充填する工程と、こうして接合された菓子生地を前記モールドから取出す工程とを含むことを特徴とする請求項1記載の模様付き油性菓子の製造方法。」
ウ.訂正事項3
特許請求の範囲の減縮を目的として、本件特許明細書の請求項7を削除する。
エ.訂正事項4
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の請求項8を請求項7に繰り上げると共に、請求項の引用に関する「請求項6又は7記載の」という記載を「請求項6記載の」と訂正する。
オ.訂正事項5
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落【0010】を下記のとおりに訂正する。
「【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明による模様付き油性菓子は、油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地と、上記第1の菓子生地とは色調が異なる第2の菓子生地とが接合されており、該接合面には凹凸が形成され、この凹凸によって前記第1の菓子生地には壁厚の薄い部分と厚い部分とが設けられ、前記第1の菓子生地の薄い部分の厚さが0.05〜2mmであり、前記第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との厚さの差が0.05mm以上であって、前記第1の菓子生地の外側から見たときに前記第2の菓子生地が透けて見える度合いが部分的に異なることにより、所定形状の模様が画一的に形成されていることを特徴とする。」
カ.訂正事項6
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落【0018】を下記のとおりに訂正する。
「【0018】
次に、本発明による模様付き油性菓子の製造方法は、油脂を20質量%以上含有する第1の菓子生地をモールドに充填する工程と、このモールドの内壁に対して部分的に近接する突出面を有し、該突出面とその周囲の面との段差が0.05mm以上ある押し型を、前記押し型の突出面が前記モールドの内壁に対して0.05〜2mmの範囲に近接するように前記モールドに挿入して冷却することにより、前記第1の菓子生地を前記モールド内壁に沿って流動、固化させる工程と、前記押し型を抜き出して、前記モールド内で固化した前記第1の菓子生地の上に前記第1の菓子生地とは色調の異なる第2の菓子生地を充填する工程と、こうして接合された菓子生地を前記モールドから取出す工程とを含むことを特徴とする前記模様付き油性菓子の製造方法である。」
キ.訂正事項7
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落【0019】を下記のとおりに訂正する。
「【0019】
本発明の油性菓子の製造方法においては、前記押し型の突出面とその周囲の面との段差を0.05mm以上、より好ましくは0.2mm以上とする。押し型の突出面とその周囲の面との段差を0.05mm以上とすることにより、第1の菓子生地の薄い部分と厚い部分との差が0.05mm以上となるので、第2の菓子生地が透けて見える度合いを明確に変えて、模様をはっきりと形成することができる。」
ク.訂正事項8
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落【0020】を下記のとおりに訂正する。
「【0020】
また、前記押し型の突出面と前記モールドの内壁との距離が、0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜0.5mmの範囲となるように、前記押し型を前記モールドに挿入する。また、押し型の突出面とモールドの内壁との距離が0.05〜2mmの範囲になるように押し型を挿入することにより、第1の菓子生地の薄い部分が0.05〜2mmの厚さになるので、薄い部分の強度をある程度保ちながら、第2の菓子生地が充分に透けて見えるようにすることができる。」
ケ.訂正事項9
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落【0030】を下記のとおりに訂正する。
「【0030】
この油性菓子10は、シェル形状をした第1の菓子生地11と、その内部に充填された第2の菓子生地12とで構成され、全体として断面が台形のブロック形状をなしている。第1の菓子生地11としては、この例ではホワイトチョコレートが使用され、第2の菓子生地12としては、この例ではミルクチョコレートが使用されている。第1の菓子生地11は、上面(台形の上辺に当たる面)の厚さが部分的に変化しており、薄い部分11aの厚さt1は、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜0.5mmとされ、厚い部分11bの厚さt2は、薄い部分の厚さt1よりも、0.05mm以上、好ましくは0.2mm以上厚くされている。薄い部分11aは、図1に示すように正方形が斜めに並んだように形成されており、この薄い部分11aを通して第2の菓子生地12が透けて見え、長方形が斜めに並んだような透け模様が形成されている。」
異議決定日 2002-03-13 
出願番号 特願平11-350418
審決分類 P 1 651・ 113- YA (A23G)
P 1 651・ 537- YA (A23G)
P 1 651・ 536- YA (A23G)
P 1 651・ 121- YA (A23G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 引地 進  
特許庁審判長 眞壽田 順啓
特許庁審判官 大高 とし子
斎藤 真由美
登録日 2000-10-06 
登録番号 特許第3117970号(P3117970)
権利者 森永製菓株式会社
発明の名称 模様付き油性菓子及びその製造方法  
代理人 松井 茂  
代理人 松井 茂  

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