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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1059540 |
異議申立番号 | 異議2001-72258 |
総通号数 | 31 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-05-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-08-17 |
確定日 | 2002-03-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3136802号「基板乾燥方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3136802号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
【1】 手続きの経緯 特許出願 平成4年11月13日 特許権設定登録 平成12年12月8日 特許異議の申立て 平成13年8月17日 取消理由通知 平成13年11月20日 訂正請求 平成14年1月11日 【2】 訂正の適否について [1] 訂正事項 1 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「基板の裏面中心部に気体を吹き付けつつ」を「基板の裏面中心部に基板の回転軸に対して傾斜した角度でかつ前記アーム等の支持部の外側から気体を吹き付けつつ」に訂正する。 2 訂正事項2 明細書の段落【0008】の第3行に記載された「基板の裏面中心部に気体を吹き付けつつ」を「基板の裏面中心部に基板の回転軸に対して傾斜した角度でかつ前記アーム等の支持部の外側から気体を吹き付けつつ」に訂正する。 3 訂正事項3 明細書の段落【0003】の第1行ないし第2行に記載された「残ってしまいをシミや次工の程装置」を「残ってしまい、シミや次工程の装置」に訂正する。 4 訂正事項4 明細書の段落【0005】の第1行に記載された「前記気体25を吹き付ける」を「前記気体25と同様な気体28を吹き付ける」に訂正する。 [2] 訂正の目的の適正、新規事項の有無及び拡張、変更の存否 1 訂正事項1による訂正について 基板の裏面中心部に気体を吹き付けるにあたり、さらに、気体を吹き付ける角度及び経路を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2 訂正事項2による訂正について 訂正事項1による訂正に伴って生じる明細書の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 4 訂正事項3及び訂正事項4による訂正について 明らかに、明細書の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 この訂正事項は、願書に添付した明細書の段落番号【0011】及び【図1】の記載に基づくものであるから、訂正事項1ないし訂正事項4による訂正は、明らかに新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 [3] むすび 以上のとおりであるから、前記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2項及び同条第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 【3】 特許異議申立人よりの特許異議の申立て及び取消理由についての判断 [1]1 特許異議申立人が掲げている特許異議の申立ての理由の概要は、次のとおりである。 本件請求項1に係る発明が、下記の甲第1号証ないし甲第3号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 甲第1号証刊行物:実願平2-129721号(実開平4-87638公報参照)のマイクロフイルム 甲第2号証刊行物:特開平2-83927号公報 甲第3号証刊行物:特開平4-48436号公報 2 取消理由は、前記特許異議の申立ての理由に次のとおりの理由を加えたものである。 本件請求項1に係る特許は、下記の点において明細書の記載が不備であるから、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 記 特許請求の範囲の「基板の裏面中心部に気体を吹き付け」という記載は不明りょうである。 本件出願の発明が解決しようとする課題は、支持部材を越えて気体を吹き付けた場合に発生する問題を解決する点にある。 これに対して、前記の記載では、支持部材を越えて気体を吹き付けた場合に対応する構成が記載されていない。 [2] 前記理由について検討する。 1 特許異議の申立ての理由について検討する。 (1) 本件特許の請求項1に係る発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 回転軸に取り付けられたアーム等の支持部によって支持された基板の裏面中心部に基板の回転軸に対して傾斜した角度でかつ前記アーム等の支持部の外側から気体を吹き付けつつ基板を高速回転させた後、前記基板の回転を停止または低速で保持した後、前記気体の吐出を停止して再度高速回転させることを特徴とする基板乾燥方法。」 (2) 本件請求項1に係る発明は、回転軸に取り付けられたアーム等の支持部によって支持された基板の裏面中心部に気体を吹き付けるにあたり、吹き付ける角度及び経路を、回転軸に対して傾斜した角度で、かつ、アーム等の支持部の外側からとし、気体を吹き付け時期と基板の回転速度との関係を基板を高速回転させた後、前記基板の回転を停止または低速で保持した後、前記気体の吐出を停止して再度高速回転させるものとすることを必須の構成要件として具備している。 そして、本件請求項1に係る発明は前記した必須の構成要件を具備していることにより、訂正明細書の段落番号【0009】に記載された「まず高速回転中に、基板周辺部の水滴は遠心力によって周囲に飛ばされ、更に中心部付近の回転シャフトおよび支持部の水滴は裏面中心部に吹き付けた気体によって吹き飛ばされた後回転によって周囲に飛ばされる。これによって基板の裏面中心部付近の水滴以外はほぼ除去されている。次に低速回転に落とすことによって、基板の裏面中心部に吹き付けた気体は、基板支持部による擾乱が小さくなるため基板の裏面中心部の水滴部まで十分到達可能になり、中心部に残った水滴を回転中心から移動させる。最後に気体の吹き付けを停止して高速で回転させることによって裏面に残った水滴は遠心力によって周囲に飛ばされ良好な乾燥基板が得られる。」という明細書記載の作用効果を奏し、所期の目的を達成できるものである。 これに対して、甲第1号証刊行物ないし甲第3号証刊行物には、それぞれ次の発明が記載されている。 ア 甲第1号証刊行物 基板の上部側の表面、すなわち、回転軸に取り付けられたアーム等の支持部が存在しない側の表面に気体を吹き付けるにあたり、気体を吹き付けつつ基板の回転を低速で保持した後、高速回転させ、その後、高速回転中に気体の吐出を停止する基板乾燥方法。 イ 甲第2号証刊行物 回転軸に取り付けられたアーム等の支持部によって支持された基板の裏面中心部に、回転軸に開口したノズルより気体を吹き付けつつ基板を回転させる基板乾燥方法。 ウ 甲第3号証刊行物 ディスクの内周面に気体を吹き付けるにあたり、ディスクを回転させながら気体を吹き付け、その後、気体の吐出を停止して再度高速回転させるディスクの乾燥方法。 本件請求項1に係る発明と甲第1号証刊行物に記載された発明とを比較すると、少なくとも次の点において相違する。 相違点:気体を吹き付けるにあたり、本件請求項1に係る発明においては、回転軸に取り付けられたアーム等の支持部によって支持された基板の裏面中心部に基板の回転軸に対して傾斜した角度で、かつ、アーム等の支持部の外側から気体を吹き付けているのに対して、甲第1号証刊行物に記載された発明においては、回転軸に取り付けられたアーム等の支持部が存在しない側の表面に気体を吹き付けている点。 そこで、前記相違点について検討する。 甲第2号証刊行物に記載された発明は、回転軸に取り付けられたアーム等の支持部によって支持された基板の裏面中心部に気体を吹き付けるにあたり、アーム等の支持部による気体の擾乱は発生しない。 しかし、回転軸に開口したノズルより気体を吹き付けているものであり、本件訂正明細書に従来例として記載されているものであって、このように構成したことによる不都合を解消するために、アーム等の支持部の外側から気体を吹き付けるものとした本件請求項1に係る発明におけるものとは、吹き付けられた気体の、基板の裏面中心に至る進入角度及び経路が相違する、すなわち、前提となる条件を異にしている。 したがって、甲第2号証刊行物に記載された発明を甲第1号証刊行物に記載された発明に適用したところで、前記相違点において掲げた本件請求項1に係る発明における構成のごとくならないばかりでなく、適用することについても、その動機付けがない。 また、甲第3号証刊行物には、前記相違点において掲げた本件請求項1に係る発明における構成に係る点については記載がない。 したがって、本件請求項1に係る発明は甲第1号証刊行物ないし甲第3号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 2 取消理由について検討する。 この理由は、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たすため対応した訂正によって解消された。 【4】 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1に係るを特許を取り消すことができない。 また、他に本件特許の請求項1に係るを特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 基板乾燥方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】回転軸に取り付けられたアーム等の支持部によって支持された基板の裏面中心部に基板の回転軸に対して傾斜した角度でかつ前記アーム等の支持部の外側から気体を吹き付けつつ基板を高速回転させた後、前記基板の回転を停止または低速で保持した後、前記気体の吐出を停止して再度高速回転させることを特徴とする基板乾燥方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は液晶ディスプレーや半導体等の洗浄・エッチング工程に於ける基板乾燥方法に関し、特に枚葉式のスピン乾燥に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来のスピン乾燥は図2(A)に示すように、回転シャフト21に取り付けられた基板支持部22に基板23を載せ、前記基板23を回転させることにより遠心力によって前記基板23の表面に付いた水滴26を飛散させ基板の乾燥を行っている。 【0003】 しかしこの時前記基板23の回転中心では遠心力が働かないため水滴26が残ってしまい、シミや次工程の装置の腐食の原因となる。 【0004】 基板の表面に関しては前記基板23の上部よりノズル24により窒素等の気体25を吹き付けることによって前記水滴26は除去可能である。 【0005】 基板の裏面に関してもノズル27より回転中心部に前記気体25と同様な気体28を吹き付ける方法がある。この時の乾燥方法としては、図2(B)に示すように前記回転シャフト21を高速で回転させると同時に気体28を吹き出し、t1秒立った後前記気体28を停止し、その後t2秒まで高速回転させている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 図2(B)に示す様なシーケンスで乾燥を行っているため、前記気体28の吐出中、前記基板支持部22が高速で回転しているため前記気体28を乱し、前記基板中心部は十分に乾燥されない。更に前記基板支持部22からの水滴の再付着によっても前記基板23の裏面中央部に水滴が残り十分な乾燥が行われない。 【0007】 また、前記回転シャフト21内に配管ライン29を設けて前記基板23の裏面中央に気体を吹き付ける方法も在るが、加工が困難で、図示はしていないがシール等構成が複雑になるため装置コストが高くなる。 【0008】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するため、本発明は回転軸に取り付けられたアーム等の支持部によって支持された基板の裏面中心部に基板の回転軸に対して傾斜した角度でかつ前記アーム等の支持部の外側から気体を吹き付けつつ基板を高速回転させた後、前記基板の回転を停止または低速で保持した後、前記気体の吐出を停止して再度高速回転させることを特徴とする基板乾燥方法である。 【0009】 【作用】 上記手段によれば、まず高速回転中に、基板周辺部の水滴は遠心力によって周囲に飛ばされ、更に中心部付近の回転シャフトおよび支持部の水滴は裏面中心部に吹き付けた気体によって吹き飛ばされた後回転によって周囲に飛ばされる。これによって基板の裏面中心部付近の水滴以外はほぼ除去されている。次に低速回転に落とすことによって、基板の裏面中心部に吹き付けた気体は、基板支持部による擾乱が小さくなるため基板の裏面中心部の水滴部まで十分到達可能になり、中心部に残った水滴を回転中心から移動させる。最後に気体の吹き付けを停止して高速で回転させることによって裏面に残った水滴は遠心力によって周囲に飛ばされ良好な乾燥基板が得られる。 【0010】 但し、最後に基板への気体の吹き付けを停止しない場合シャフト中心部に残った水滴が再度基板裏面に付着する場合がある。 【0011】 【実施例】 以下、本発明の一実施例について詳細に説明する。図1(A)は、本発明の実施例の概略図である。乾燥槽1内に設置された基板回転機構は基板支持部2とそれを接続した回転シャフト3よりなり、前記回転シャフト3は前記乾燥槽1の外に設置されたサーボモーター4に接続されている。更に基板6の裏面中央部付近に気体7を吹き付け可能な位置にノズル5を設置した。前記ノズル5は気体配管ライン8に接続し電磁バルブ9によって気体7の供給制御を行った。 【0012】 この時、電磁バルブ9と前記サーボモーター4はプログラマブルコントローラー10によって図1(B)に示すような同期運転を行った。図1(B)は本実施例の乾燥方法のタイムチャートである。乾燥開始からt’1秒までは気体7を吹き付けつつ前記基板6を高速回転(1800rpm)させ、t’1からt’2までは低速回転(50rpm)で前記気体7を吹き付けた。最後にt’2からt’3までは前記気体7の吐出を停止して前記基板6を高速回転させた。 【0013】 尚、基板回転開始と気体吹き付け開始が一致しなくても同様の効果が得られるし、気体吹き付け開始からt’2まで連続吐出でなく間欠的な吐出であっても同様な効果が得られる。 【0014】 以下いくつかの乾燥実験結果に付いて(表1)に示す。 実験1は本発明の乾燥方法によるもので良好な乾燥結果がえられた。実験2の場合は最後の高速回転時に気体7によって前記基板支持部2に残った水滴が再付着し、前記基板6の裏面中央部に残ったものである。実験3の場合は前記基板6の裏面中央まで十分に気体7が到達していないため前記基板6の裏面中央部に残ったものである。実験4の場合は最初の高速回転時に前記基板支持部2の水滴を除去していないために低速回転時の気体7の吹き付けによって前記基板支持部2の水滴が前記基板6の裏面に多量に付着したために残ったものである。 【0015】 【表1】 【0016】 【発明の効果】 以上のように本発明の乾燥方法によって、基板の裏面中央部まで十分に気体を到達させ、かつ回転シャフトからの水滴の再付着を防止することによって基板裏面中央部に水滴を残さずに良好な基板乾燥が、簡単な装置構成にて可能となった。 【図面の簡単な説明】 【図1】 (A)は、本発明の乾燥方法を具現化した装置の構成図 (B)は、同装置の運転時のタイムチャート図 【図2】 (A)は、従来の乾燥装置の構成図 (B)は、同従来装置の運転時のタイムチャート図 【符号の説明】 1 乾燥槽 2 基板支持部 3 回転シャフト 4 サーボモーター 5 ノズル 6 基板 7 気体 8 気体配管ライン 9 電磁バルブ 10 プログラマブルコントローラー |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 【1】 訂正事項 1 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「基板の裏面中心部に気体を吹き付けつつ」を「基板の裏面中心部に基板の回転軸に対して傾斜した角度でかつ前記アーム等の支持部の外側から気体を吹き付けつつ」に訂正する。 2 訂正事項2 明細書の段落【0008】の第3行に記載された「基板の裏面中心部に気体を吹き付けつつ」を「基板の裏面中心部に基板の回転軸に対して傾斜した角度でかつ前記アーム等の支持部の外側から気体を吹き付けつつ」に訂正する。 3 訂正事項3 明細書の段落【0003】の第1行ないし第2行に記載された「残ってしまいをシミや次工の程装置」を「残ってしまい、シミや次工程の装置」に訂正する。 4 訂正事項4 明細書の段落【0005】の第1行に記載された「前記気体25を吹き付ける」を「前記気体25と同様な気体28を吹き付ける」に訂正する。 |
異議決定日 | 2002-03-01 |
出願番号 | 特願平4-303369 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(H01L)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鈴木 充 |
特許庁審判長 |
小林 武 |
特許庁審判官 |
宮崎 侑久 桐本 勲 |
登録日 | 2000-12-08 |
登録番号 | 特許第3136802号(P3136802) |
権利者 | 松下電器産業株式会社 |
発明の名称 | 基板乾燥方法 |
代理人 | 内藤 浩樹 |
代理人 | 坂口 智康 |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 内藤 浩樹 |
代理人 | 坂口 智康 |
代理人 | 岩橋 文雄 |