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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04G
管理番号 1059545
異議申立番号 異議2000-73714  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-08-01 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-10-04 
確定日 2002-03-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3027819号「鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3027819号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第3027819号の請求項1〜7に係る発明の出願は、出願日が平成5年12月30日である実願平5-74866号を平成6年2月9日に特許出願に変更したものであって、平成12年2月4日にその特許の設定登録がなされ、その後、その特許について藤本昭博より特許異議の申立がなされ、当審において取消理由の通知がなされたところ、その指定期間内である平成13年9月7日に訂正請求がなされたものである。


【2】訂正の適否についての判断
〔1〕訂正の要旨
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を、「鉄筋コンクリート構築物の表面に沿って、その切断予定面と同一平面上に一対の第1メインガイドプーリーを設置し、該第1メインガイドプーリーのプーリー溝を通る接線を共通にして前記第1メインガイドプーリーに隣接して一対の第2メインガイドプーリーを設置するとともに、緩み側に設置された補助ガイドプーリーを前記第2ガイドプーリーと同一面上に設け、切削用ケーブルは、ケーブル駆動プーリーに掛けられると共にその緩み側から出発し、前記補助ガイドプーリ一の外側を通り一方の第2メインガイドプーリーの内側を通り、該一方の第2メインガイドプーリーに隣接する一方の第1メインガイドプーリーの外側から鉄筋コンクリート構築物に巻き掛けられ、他方の第1メインガイドプーリーの内側を通り、該第1メインガイドプーリーに隣接する第2メインガイドプーリーの外側から引き出され、ケーブル駆動プーリーの張り側に戻るように無端状態に配設されて前記第2メインガイドプーリーで案内される切削用ケーブルを相互に離間させるようにしてなることを特徴とする鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2ないし請求項7を削除する。
(3)訂正事項c
特許明細書の段落【0005】の記載内容を削除する。
(4)訂正事項d
同、段落【0006】の記載を、「【0005】また、切削用ケーブルは、ワイヤーソーイング中に破断事故がない場合でも、切断の終了と同時に鉄筋コンクリート構築物から離反して跳ね飛び、周囲に危険を及ぼすなどの問題があった。」と訂正する。
(5)訂正事項e
同、段落【0028】の記載を、「【0027】本発明は、上記実施例のほか、図3乃至図9に示すような各種の参考態様が考えられる。即ち、図3に示す参考例は、上記実施例のガイドプーリーに加えて、側部ガイドプーリー20を設置し、1対のメインガイドプーリーを近接して配置しても、切断終了間近の時の切断用ケーブルの曲がりを少なくしたものであり、この例においても、補助ガイドプーリー8cは、図2に示す実施例と同様に設置される。」と訂正する。
(6)訂正事項f
同、段落【0029】の記載を、「【0028】図4に示す参考例は、前記参考例の第2メインガイドプーリー8a,8bを第1メインガイドプーリー7a,7bより内側に配置したものであり、この時の補助ガイドプーリー8cも図2に示す実施例と同様に設置される。」と訂正する。
(7)訂正事項g
同、段落【0030】の記載を、「【0029】図5乃至図9に示す参考例のものは、鉄筋コンクリート構築物に対して切削用ケーブルを巻き掛ける側面2’に垂直方向に、メインガイドプーリーからケーブル駆動装置側に延びる切削用ケーブルを配置したものであり、そのうち図5に示す参考例は、メインガイドプーリー7a,7b,8a,8bの両側に側部ガイドプーリー20,21を配置したものである。この例においては、補助ガイドプーリー8cは、図5(ロ)に示すように、被切断物に近い第2メインガイドプーリー8a,8bからケーブル駆動装置側に延びる切削用ケーブルを、他方の切削用ケーブルから離すように設置する。この例において、側部ガイドプーリー21は、切断が進行した後にガイド作用をなす。」と訂正する。
(8)訂正事項h
同、段落【0031】の記載を、「【0030】図6に示す参考例は、図5に示す参考例において、片方の側部ガイドプーリー20を、メインガイドプーリーを中心として他方の側部ガイドプーリー21側に寄せて配置したものであり、この例においては、両方の側部ガイド20,21共に、切断が進行した後にガイド作用をなす。この例における補助ガイドプーリー8cは図5(ロ)と同様に設置される。」と訂正する。
(9)訂正事項j
同、段落【0032】の記載を、「【0031】図7に示す参考例は、鉄筋コンクリート構築物5の側面と同一面に第1メインガイドプーリー7bのガイド面が位置するように配置し、側部ガイドプーリー21のみを設けたものであり、これにより側部ガイドプーリーの片方の設置が省略される。この例においても、補助ガイドプーリー8cは図5(ロ)と同様に設置される。」と訂正する。
(10)訂正事項k
同、段落【0033】の記載を、「【0032】図8に示す参考例は、メインガイドプーリー全体を鉄筋コンクリート構築物5から離れた位置に設置した参考例であり、鉄筋コンクリート構築物には側部ガイドプーリー20,21のみが設置される。この例においても、補助ガイドプーリー8cは図5(ロ)と同様に設置される。」と訂正する。
(11)訂正事項l
同、段落【0034】の記載を、「【0034】図9に示す参考例は、上記図5乃至図8に示す参考例におけるメインガイドプーリーを逆向きに設置した例を示し、側部ガイドプーリー20,21の配置は、図5に示す参考例と同様の配置を示している。この例における両方の側部ガイドプーリー20,21は共に切断の進行後にガイド作用をなす。なお、補助ガイドプーリー8cは、図5(ロ)と同様に設置することができる。」と訂正する。
(12)訂正事項m
同、段落【0035】の記載を、「【0035】図9に示す参考例のようなメインガイドプーリーの配置を行う際には、前記図6乃至図8に示す参考実施例においても同様に設置することができる。この他、メインガイドプーリーを適宜の角度に設置し、あるいは側部ガイドプーリー及び他の補助ガイドプーリーを各種組み合わせて設置し、水平切断、垂直切断等、各種の実施の態様が任意に選択可能である。」と訂正する。
(13)訂正事項n
特許明細書の【図面の簡単な説明】における【図3】の説明記載を、「本発明の他の参考例の平面図である。」と訂正する。
(14)訂正事項o
同、【図4】の説明記載を、「本発明の更に他の参考例の平面図である。」と訂正する。
(15)訂正事項p
同、【図5】の説明記載を、「(イ)は、本発明の更に他の参考例の平面図、(ロ)は、同側面図である。」と訂正する。
(16)訂正事項q
同、【図6】の説明記載を、「本発明の更に他の参考例の平面図である。」と訂正する。
(17)訂正事項r
同、【図7】の説明記載を、「本発明の更に他の参考例の平面図である。」と訂正する。
(18)訂正事項s
同、【図8】の説明記載を、「本発明の更に他の参考例の平面図である。」と訂正する。
(19)訂正事項t
同、【図9】の説明記載を、「(イ)は、本発明の更に他の参考例の平面図、(ロ)は、同側面図である。」と訂正する。

(尚、上記訂正事項a,k,m,n,oの訂正については、「訂正の要旨」の欄の記載と訂正明細書の記載とで整合しない部分があるが、これらの訂正の内容は訂正明細書の記載と一致させた。また、訂正明細書の記載においては、「訂正の要旨」の欄に言及されていないが、訂正事項cの段落【0005】の記載内容削除の訂正に伴って訂正事項d〜kの訂正に係る段落【0006】〜【0033】の段落番号は繰り上がって段落【0005】〜【0032】とすると共に段落【0033】を削除している。)

〔2〕訂正の目的、新規事項の有無、拡張変更の存否の各要件についての判断
(1)訂正事項aについて
この訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「第2(メイン)ガイドプーリーで案内される切削用ケーブルを相互に離間させ」る手段について、それより下位概念である、「緩み側に設置された補助ガイドプーリーを前記第2ガイドプーリーと同一面上に設け、切削用ケーブルは、ケーブル駆動プーリーに掛けられると共にその緩み側から出発し、前記補助ガイドプーリ一の外側を通り一方の第2メインガイドプーリーの内側を通り、該一方の第2メインガイドプーリーに隣接する一方の第1メインガイドプーリーの外側から鉄筋コンクリート構築物に巻き掛けられ、他方の第1メインガイドプーリーの内側を通り、該第1メインガイドプーリーに隣接する第2メインガイドプーリーの外側から引き出され、ケーブル駆動プーリーの張り側に戻るように無端状態に配設されて」と限定しようとするものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記限定しようとする事項は、特許明細書の段落【0017】及び図1,2に記載されているから、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(2)訂正事項bについて
この訂正は、特許請求の範囲の請求項2ないし請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3)訂正事項c〜tについて
これらの訂正は、上記訂正事項a,bの訂正に伴い、それらとの整合を図るために特許明細書の発明の詳細な説明及び図面の簡単な説明の記載を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

〔3〕訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、本訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、本訂正を認める。


【3】特許異議の申立てについての判断
〔1〕訂正後の請求項1に係る発明
本件訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」という)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
【請求項1】鉄筋コンクリート構築物の表面に沿って、その切断予定面と同一平面上に一対の第1メインガイドプーリーを設置し、該第1メインガイドプーリーのプーリー溝を通る接線を共通にして前記第1メインガイドプーリーに隣接して一対の第2メインガイドプーリーを設置するとともに、緩み側に設置された補助ガイドプーリーを前記第2ガイドプーリーと同一面上に設け、切削用ケーブルは、ケーブル駆動プーリーに掛けられると共にその緩み側から出発し、前記補助ガイドプーリ一の外側を通り一方の第2メインガイドプーリーの内側を通り、該一方の第2メインガイドプーリーに隣接する一方の第1メインガイドプーリーの外側から鉄筋コンクリート構築物に巻き掛けられ、他方の第1メインガイドプーリーの内側を通り、該第1メインガイドプーリーに隣接する第2メインガイドプーリーの外側から引き出され、ケーブル駆動プーリーの張り側に戻るように無端状態に配設されて前記第2メインガイドプーリーで案内される切削用ケーブルを相互に離間させるようにしてなることを特徴とする鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法。

〔2〕刊行物に記載された発明
(1)取消理由で引用した刊行物2〔特公平4-10956号公報〕(異議申立書の甲第2号証)には、鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法に関して、以下の技術事項が記載されている。
(ア)「鉄筋コンクリート構築物表面に沿って、その切断予定面と同一平面上に一対のガイドプーリーを、また各ガイドプーリーとプーリー溝を通る接線を共通にする補助ガイドプーリーを各ガイドプーリーに隣接してそれぞれ設置すること、切削用ケーブルを、一方の補助ガイドプーリーに通し、それに隣接するガイドプーリーの外側から鉄筋コンクリート構築物に掛けると共に他方のガイドプーリーの内側を通し、それに隣接する補助ガイドプーリーから引き出すように配設して、張力及び走行速度の調節の下に無端状態で循環走行させることからなる鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法。」(特許請求の範囲第2項)
(イ)「本発明は、ビル、橋梁、基礎、その他の鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法に関する。」(1頁2欄3〜5行)
(ウ)「本発明に係る鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法を説明する平面図及び側面図である第1図及び第2図において、路面1上に、被切断体である四角柱状の鉄筋コンクリート構築物2が垂設され、その鉄筋コンクリート構築物2は、コンクリート層3内に鉄筋4が軸線方向に配設されて構成されている。鉄筋コンクリート構築物2の表面に、ガイドプーリー台5がアンカー6によって固定され、そのガイドプーリー台5には、水平に配向した一対のガイドプーリー7a,7bと、ガイドプーリー7a,7bに隣接し、プーリー溝を通る接線を共通にする、垂直に配向した一対の補助ガイドプーリー8a,8bが、それぞれ回転自在に軸架されている。なお、ガイドプーリー7a,7bや補助ガイドプーリー8a,8bは、上記のようにガイドプーリー台5によって一体化されている方が取扱いや設置などに際して至便であるが、各々個別に設置されるものでも差支えはなく、また鉄筋コンクリート構築物2以外の固定物、例えば路面1に設置されてもよい。一方、路面1上に、鉄筋コンクリート構築物2から若干離れて第二ガイドプーリー台9がアンカー10によって固定され、さらにそれに隣接してレール11が敷設されている。第二ガイドプーリー9には、垂直に配向した緩み側ガイドプーリー12,13及び張り側ガイドプーリー14が回転自在に軸架され、またレール11にはケーブル駆動装置15が移動可能に設置されている。ケーブル駆動装置15は、ケーブル駆動プーリー16とその駆動機構(図示を省略する)、及びレール11と嵌合する駆動車輪17とその駆動機構(図示を省略する)を備えている。切削用ケーブル18は、図面中に破線で示すように、ケーブル駆動プーリー16に掛けられると共にその緩み側から出発し、緩み側ガイドプーリー12,13を介し、一方の補助ガイドプーリー8aを通り、それに隣接するガイドプーリー7aの外側から鉄筋コンクリート構築物2に巻き掛けられ、他方のガイドプーリー7bの内側を通り、それに隣接する補助ガイドプーリー8bから引き出され、張り側ガイドプーリー14を介してケーブル駆動プーリー16の張り側に戻るように、無端状態に配設される。」(2頁4欄33行〜3頁5欄31行)
(エ)「また、補助ガイドプーリー8a,8bや緩み側ガイドプーリー12,13、張り側ガイドプーリー14などは、鉄筋コンクリート構築物2における上部切断個所に掛けられた無端状切削用ケーブル18を路面1上のケーブル駆動装置15のケーブル駆動プーリー16まで、走行可能に円滑に導くために役立つものである。従って、切断個所とケーブル駆動プーリー16との配置関係によっては、それらは不要であり、或は別態様のガイドプーリー類が、路面1、鉄筋コンクリート構築物2、ケーブル駆動装置15その他に設置される。」(3頁6欄18〜28行)
(オ)「なお、上記の切削用ケーブル18の張り側と緩み側との間隔が適当に広くなるように、ガイドプーリー7a,7bを設置することが好ましい。」(4頁7欄7〜10行)
(カ)第1図には、補助ガイドプーリー8a,8bと緩み側ガイドプーリー12,13及び張り側ガイドプーリー14とが同一面上に設けられていることが示され、また、第2図には、補助ガイドプーリー8a,8bで案内された切削用ケーブル18が、緩み側ガイドプーリー13により相互に離間させるようにして無端状態に配設されていることが示されている。
これら(ア)〜(カ)の記載及び第1,2図の記載を含む刊行物2全体の記載並びにワイヤーソーイングに係る当業者の技術常識によれば、刊行物2には次の発明が記載されているものと認められる。
「鉄筋コンクリート構築物の表面に沿って、その切断予定面と同一平面上に一対のガイドプーリー7a,7bを設置し、該ガイドプーリー7a,7bのプーリー溝を通る接線を共通にして前記ガイドプーリー7a,7bに隣接して一対の補助ガイドプーリー8a,8bを設置するとともに、鉄筋コンクリート構築物から離れた緩み側に設置されたガイドプーリー13を前記補助ガイドプーリー8a,8bと同一面上に設け、切削用ケーブルは、ケーブル駆動プーリーに掛けられると共にその緩み側から出発し、前記緩み側ガイドプーリー13の外側を通り一方の補助ガイドプーリー8aの内側を通り、該一方の補助ガイドプーリー8aに隣接する一方のガイドプーリー7aの外側から鉄筋コンクリート構築物に巻き掛けられ、他方のガイドプーリー7bの内側を通り、該ガイドプーリー7bに隣接する補助ガイドプーリー8bの外側から引き出され、ケーブル駆動プーリーの張り側に戻るように無端状態に配設されて前記補助ガイドプーリー8a,8bで案内される切削用ケーブルを相互に離間させるようにしてなる鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法。」
(2)同、刊行物1〔実願平3-94873号(実開平5-41725号)のCD-ROM〕(異議申立書の甲第1号証)には、段落【0010】〜【0017】の図2の実施例についての記載及び段落【0018】〜【0023】の図4の実施例についての記載からみて、ワイヤソー用ガイド装置に関して、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「コンクリート躯体12」の表面に沿って、その切断予定面と同一平面上に「第1および第2水平プーリ36a,b(16a,b)」を設置し、これに隣接して「第1および第2垂直プーリ36c,d(16c,d)」を設置し、「補助プーリ36e(16e)」を「第1および第2垂直プーリ36c,d(16c,d)」と同一面上に設置してなるワイヤソー用ガイド装置において、「第1垂直プーリ36c(第2垂直プーリ16d)」により案内される「ワイヤソー20」の導出方向を、その「第1および第2垂直プーリ36c,d(16c,d)」に近接した位置で「補助プーリ36e(16e)」により調整できるようにすること。

〔3〕本件訂正発明と刊行物に記載された発明との対比・判断
(1)本件訂正発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、刊行物2に記載された発明の「ガイドプーリー7a,7b」 ,「補助ガイドプーリー8a,8b」が、本件訂正発明の「第1メインガイドプーリー」,「第2メインガイドプーリー」にそれぞれ相当し、また、刊行物2に記載された発明の「ガイドプーリー13」は、切削用ケーブルの案内という通常の機能以外に、切削用ケーブルを相互に離間させる機能も有している点で、本件訂正発明の「補助ガイドプーリー」と機能上一致するものであるから、
両者は、「鉄筋コンクリート構築物の表面に沿って、その切断予定面と同一平面上に一対の第1メインガイドプーリーを設置し、該第1メインガイドプーリーのプーリー溝を通る接線を共通にして前記第1メインガイドプーリーに隣接して一対の第2メインガイドプーリーを設置し、緩み側に設置され切削用ケーブルを相互に離間させるプーリーを前記第2メインガイドプーリーと同一面上に設け、切削用ケーブルは、ケーブル駆動プーリーに掛けられると共にその緩み側から出発し、前記切削用ケーブルを相互に離間させるプーリーの外側を通り一方の第2メインガイドプーリーの内側を通り、該一方の第2メインガイドプーリーに隣接する一方の第1メインガイドプーリーの外側から鉄筋コンクリート構築物に巻き掛けられ、他方の第1メインガイドプーリーの内側を通り、該第1メインガイドプーリーに隣接する第2メインガイドプーリーの外側から引き出され、ケーブル駆動プーリーの張り側に戻るように無端状態に配設されて前記第2メインガイドプーリーで案内される切削用ケーブルを相互に離間させるようにしてなる鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法。」の点で構成が一致し、次の点で構成が相違している。
〈相違点〉切削用ケーブルを相互に離間させるプーリーに関して、本件訂正発明が、鉄筋コンクリート構築物の表面に沿って、緩み側に設置された「補助ガイドプーリー」であるのに対して、刊行物2に記載された発明では、緩み側に設置されたものではあるものの、鉄筋コンクリート構築物から離れた位置に設置されたもの(「ガイドプーリー13」)である点。
(2)上記相違点について検討すると、刊行物1には、「補助プーリ」を「第1および第2水平プーリ」及び「第1および第2垂直プーリ」と共にコンクリート躯体の表面に沿って「第1および第2垂直プーリ」と同一面上に設置して、「第1および第2垂直プーリ」により案内される「ワイヤソー」の導出方向を「補助プーリ」により「第1および第2垂直プーリ」に近接した位置において調整できるようにすることが記載されており、そして、刊行物2には、ガイドプーリー類に関して、切断個所とケーブル駆動プーリーとの配置関係によっては別態様のガイドプーリー類が路面,鉄筋コンクリート構築物,ケーブル駆動装置,その他に設置される旨記載され(記載事項(エ)参照)、切削用ケーブルの張り側と緩み側との間隔が適当に広くなるようにガイドプーリーを設置することが好ましい旨記載され(記載事項(オ)参照)ていること、また、本件訂正発明に係る訂正明細書には、ワイヤーソーイングの技術分野において、切削用ケーブルがその緩み側で緩んで走行し緩み側と張り側とで相互に接触することが技術常識である旨記載されていることを考慮すると、切削用ケーブルの緩み側での緩みを防止するために、刊行物1に記載された技術を、刊行物2に記載された発明に適用することは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。
(3)そして、本件訂正発明に係る全体の構成によって奏する作用効果も、刊行物2に記載された発明及び刊行物1に記載された技術事項から普通に予測できる範囲内のものであって格別のものであるとは認められない。


【4】むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明は、刊行物2に記載された発明及び刊行物1に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
従って、本件訂正発明に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 鉄筋コンクリート構築物の表面に沿って、その切断予定面と同一平面上に一対の第1メインガイドプーリーを設置し、該第1メインガイドプーリーのプーリー溝を通る接線を共通にして前記第1メインガイドプーリーに隣接して一対の第2メインガイドプーリーを設置するとともに、緩み側に設置された補助ガイドプーリーを前記第2ガイドプーリーと同一面上に設け、切削用ケーブルは、ケーブル駆動プーリーに掛けられると共にその緩み側から出発し、前記補助ガイドプーリーの外側を通り一方の第2メインガイドプーリーの内側を通り、該一方の第2メインガイドプーリーに隣接する一方の第1メインガイドプーリーの外側から鉄筋コンクリート構築物に巻き掛けられ、他方の第1メインガイドプーリーの内側を通り、該第1メインガイドプーリーに隣接する第2メインガイドプーリーの外側から引き出され、ケーブル駆動プーリーの張り側に戻るように無端状態に配設されて前記第2メインガイドプーリーで案内される切削用ケーブルを相互に離間させるようにしてなることを特徴とする鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ビル、橋梁、基礎等の鉄筋コンクリート構築物をワイヤーソーイングにより切断、解体する鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄筋コンクリート構築物の切断による部分解体には、従来より円板ブレード式切断機が広く使用されているが、ブレード製造上の都合や作業性、取扱い上などの都合で小型軽量化されているため切断能力に劣り、切断断面積は狭い範囲に制限され、また切断可能深さも30乃至40cm程度が最大である。また、このような円板ブレードの回転による部分解体の場合は、切断不要個所にもオーバーカットを要するなどの問題があった。
【0003】
これらの問題を一挙に解決するものとして、本発明者は、最近、鉄筋コンクリート構築物をワイヤーソーイングによって切断解体する工法を開発するに至った。この工法は、ワイヤーロープに切削能を付与してなる切削用ケーブルを鉄筋コンクリート構築物に掛けると共にその切削用ケーブルをケーブル駆動装置によって走行速度及び張力調節の下に循環走行させるものである。
【0004】
その場合、切削用ケーブルは、例えばダイヤモンド砥粒層を有するビーズを、コイルスプリングその他のスペーサーを介し又は介しないで、ワイヤーロープに適宜のピッチで配設した構造が通常採用される。また、ケーブル駆動装置は、例えば切削用ケーブルを巻き掛ける駆動プーリー、そのケーブル駆動プーリーを回転させる油圧モータや伝導モータその他の原動機、及びその他の付属機構を備えた構造が採用され、軌道に沿って移動するようにしたもの、具体的には駆動車輪によってレール上を移動するものや駆動ピニオンによってラック上を移動するものなどが適宜使用される。
【0005】
また、切削用ケーブルは、ワイヤーソーイング中に破断事故がない場合でも、切断の終了と同時に鉄筋コンクリート構築物から離反して跳ね飛び、周囲に危険を及ぼすなどの問題があった。
【0006】
その対策として、被切断物である鉄筋コンクリート構築物の表面に、その切断予定面と同一平面上に一対のガイドプーリーを設置し、このガイドプーリーの外側から切削用ケーブルを掛けることを本出願人によって先に提案している(特公平4-10956号)。また、上記提案においては、上記一対のガイドプーリーのほかに、適宜の補助プーリーを設置し、切削用ケーブルを被切断物から駆動装置に円滑に走行できるようにもしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法においては、切削用ケーブルの円滑な走行のために各種のガイドプーリーが用いられることとなるが、その際、水平プーリーと垂直プーリーを組み合わせ、切削用ケーブルを水平面内での走行から垂直平面内での走行に変換し、あるいはその逆に変換し、更には、この組み合せプーリーを適宜の傾斜状態で設置することにより、任意の平面からそれに直角な平面への走行方向の変換を行うことができるようにしている。
【0008】
このような、水平プーリーと垂直プーリーを組み合わせてなる組み合わせプーリーを一対設置して切削用ケーブルを走行させる時、駆動装置の設置場所の制約により、この組み合わせプーリーから駆動装置に至る往復2本の切削用ケーブルが相互に近接せざるをえなくなることがある。その際には、切削用ケーブルの駆動中、走行方向の異なる2本の切削用ケーブルが完全に平行状態を維持することができなくなり、特に駆動装置から被切断物方向に走行する側の切削用ケーブルは緩み側となるため、緩んで走行することがある。その時には、異なる走行方向で高速に走行する2本の切削用ケーブルが相互に接触することとなり、切削用ケーブルに適宜固定されているダイヤモンドビーズが衝突し、ダイヤモンドビーズが損傷するほか、甚だしい場合は切削用ケーブルが切断することもある。
【0009】
したがって、本発明は、ワイヤーソーイングの切削用ケーブルを一対のガイドプーリーで案内するに際し、各ガイドプーリーで案内されて走行する切削用ケーブルが相互に接触して破損を生じないようにする鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、鉄筋コンクリート構築物の表面に沿って、その切断予定面と同一平面上に設置した一対のガイドプーリーで案内される切削用ケーブルを、相互に離間させる補助ガイドプーリーを介して張力及び走行速度の調節の下に無端状態で循環走行させることを特徴とする鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法を構成したものである。
【0011】
【作用】
本発明は、上記のように構成したので、鉄筋コンクリート構築物に掛けられた切削用ケーブルが循環走行することにより鉄筋コンクリート構築物は切断される。その際、走行する切削用ケーブルは一対のガイドプーリーによって案内され、更にこの一対のガイドプーリーで案内される切削用ケーブルは補助ガイドプーリーによって相互に離間され、相互に接触することが防止される。
【0012】
【実施例】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。図1,図2に示すように、路面1上に、被切断体である四角柱状の鉄筋コンクリート構築物2が垂設され、その鉄筋コンクリート構築物2は、コンクリート層3内に鉄筋4が軸線方向に配設されて構成されている。鉄筋コンクリート構築物2の表面に、第1ガイドプーリー台5がアンカー6によって固定され、その第1ガイドプーリー台5には、水平に配向した一対の第1メインガイドプーリー7a,7bと、第1メインガイドプーリー7a,7bに隣接し、プーリー溝を通る接線を共通にする、垂直に配向した一対の第2メインガイドプーリー8a,8bが、それぞれ回転自在に軸架されている。
【0013】
第1ガイドプーリー台5の第2メインガイドプーリー8aと8bとの間には、補助ガイドプーリー台5´が下方に突設しており、この補助ガイドプーリー台5´には、補助ガイドプーリー8cが回転自在に軸架されている。この補助ガイドプーリー8cは、後述するように、第2メインガイドプーリー8a,8bからケーブル駆動装置側に延びる2本の切削用ケーブルの1本が補助ガイドプーリー8cに掛けられるとき、相互の切削用ケーブルが離間するように配置されている。
【0014】
なお、第1メインガイドプーリー7a,7bや第2メインガイドプーリー8a,8bは、上記のように第1ガイドプーリー台5によって一体化されている方が取扱いや設置などに際して至便であるが、各々個別に設置されるものでも差支えはなく、また鉄筋コンクリート構築物2以外の固定物、例えば路面1に設置されてもよい。
【0015】
一方、路面1上に、鉄筋コンクリート構築物2から若干離れて第2ガイドプーリー台9がアンカー10によって固定され、さらにそれに隣接してレール11が敷設されている。第2ガイドプーリー台9には、垂直に配向した緩み側ガイドプーリー12,13及び張り側ガイドプーリー14が回転自在に軸架され、またレール11にはケーブル駆動装置15が移動可能に設置されている。ケーブル駆動装置15は、ケーブル駆動プーリー16とその駆動機構(図示を省略する)、及びレール11と嵌合する駆動車輪17とその駆動機構(図示を省略する)を備えている。
【0016】
切削用ケーブル18は、図面中に破線で示すように、ケーブル駆動プーリー16に掛けられると共にその緩み側から出発し、緩み側ガイドプーリー12,13を介し、一方の第2メインガイドプーリー8aを通り、それに隣接する第1メインガイドプーリー7aの外側から鉄筋コンクリート構築物2に巻き掛けられ、他方の第1メインガイドプーリー7bの内側を通り、それに隣接する第2メインガイドプーリー8bから引き出され、張り側ガイドプーリー14を介してケーブル駆動プーリー16の張り側に戻るように無端状態に配設される。
【0017】
なお、例えば部分切断や開口部の形成などに際して、鉄筋コンクリート構築物2における所定区間のみを切断する必要がある場合は、切削用ケーブル18を、鉄筋コンクリート構築物2の全周に巻き掛ける代わりに、鉄筋コンクリート構築物2に貫通させた1又は2個の穿孔部(図示を省略する)に通すように掛ければよい。
【0018】
上記において、ケーブル駆動装置15を作動させ、それをレール11に沿って図面右方向に移動可能に付勢しながら、ケーブル駆動プーリー16を回転駆動すると、切削用ケーブル18は、所要張力下に循環走行し、それと摩擦接触する鉄筋コンクリート構築物2はその表面から内部へと漸次切断される。
【0019】
なお、第1メインガイドプーリー7a,7bは、上記のように水平切断の場合は水平に配向されるが、傾斜切断や垂直切断の場合も同様であり、切断予定面と同一平面上に設置される。さらに、第1メインガイドプーリー7a,7bに対する第2メインガイドプーリー8a,8bの設置角度は、上記の場合は直角であるが、ケーブル駆動プーリー16への切削用ケーブル18の配設態様によっては、直角以外の角度が採用されてもよい。第1メインガイドプーリー7a,7bと対応する第2メインガイドプーリー8a,8bは、プーリー溝を通る接線を共通にするので、切削用ケーブル18は、その接線に沿って切削用の第1メインガイドプーリー7a,7bと対応する第2メインガイドプーリー8a,8bの間を走行可能に円滑に架橋することができる。
【0020】
また、第2メインガイドプーリー8a,8bや緩み側ガイドプーリー12,13、張り側ガイドプーリー14などは、鉄筋コンクリート構築物2における上部切断個所に掛けられた無端状切削用ケーブル18を路面1上のケーブル駆動装置15のケーブル駆動プーリー16まで、走行可能に円滑に導くために役立つものである。したがって、切断個所とケーブル駆動プーリー16との配置関係によっては、それらは不要であり、或いは別態様のガイドプーリー類が、路面1、鉄筋コンクリート構築物2、ケーブル駆動装置15その他に設置される。例えば、切断個所がケーブル駆動装置15よりも下方にあるような場合、例えば水中にある鉄筋コンクリート構築物2の根部を、陸上に設置したケーブル駆動装置15によってワイヤーソーイングする場合は、第2メインプーリー8a,8bを第1メインガイドプーリー7a,7bの上方に設置して、切削用ケーブル18を上方に導くこともできる。
【0021】
切断が進行するに従って、切削用ケーブル18における鉄筋コンクリート構築物2との接触部分は曲がりながら走行すると共にその曲がり部分が第1メインガイドプーリー7a,7b方向に漸次移動するが、既述のように切削用ケーブル18が、一方の第1のメインガイドプーリー7aの外側から、鉄筋コンクリート構築物2を介して、他方の第1メインガイドプーリー7bの内側へと配設されているので、切断の終期になっても、鉄筋コンクリート構築物2の未切断部分に掛けられる切削用ケーブル18の張り側と緩み側との間隔が、一方の第1メインガイドプーリー7aの外側と他方の第1メインガイドプーリー7bの内側との間隔以下には狭くならないので、その接触部分の曲がりは、図面中に一点鎖線で示すように、極端に小さく鋭くなったり、折れ曲がることがなく、切削用ケーブル18の破断が生じにくい。なお、上記の切削用ケーブル18の張り側と緩み側との間隔が適当に広くなるように、第1メインガイドプーリー7a,7bを設置することが好ましい。
【0022】
また、切断が完了して、切削用ケーブル18が鉄筋コンクリート構築物2から離反しても、切削用ケーブル18は一方の第1メインガイドプーリー7aに掛かって止められるので、危険な跳ね飛びが生じない。
【0023】
上記のような第1メインガイドプーリー7a,7b及び第2メインガイドプーリー8a,8bの切削用ケーブルの案内作用に加え、本考案においては、更に補助ガイドプーリー8cが上記のように、また図示のように設けられているので、緩み側ガイドプーリー13から片方の第2メインガイドプーリー8aへの切削用ケーブル18は、一旦補助ガイドプーリー8cに案内されることとなる。そのため、一対の第2メインガイドプーリーからケーブル駆動装置側に延びる2本の切削用ケーブルは、相互に離間されることとなり、両切削用ケーブルが相互に接触することがなくなる。
【0024】
特に、鉄筋コンクリート構築物の切断平面が、ケーブル駆動装置15の設置平面と比較的近接している場合には、両第2メインガイドプーリー8a,8bからケーブル駆動装置側に延びる2本の切削用ケーブル18は相互に近接することとなる。また、被切断物である鉄筋コンクリート構築物の第1ガイドプーリー台5の固定表面の状態によっては、第2メインガイドプーリー8a,8bが充分離間させて設置することができない場合にも、両第2メインガイドプーリー8a,8bからケーブル駆動装置側に延びる2本の切削用ケーブル18は相互に近接することとなる。特にこの際、両第2メインガイドプーリー8a,8bの対向する内側で切削用ケーブルを案内する際には、2本の切削用ケーブル18は更に相互に近接することとなる。
【0025】
しかしながら、上記のように補助ガイドプーリー8cを設けることにより、両第2メインガイドプーリー8a,8bからケーブル駆動装置側に延びる切削用ケーブルは、少なくとも補助ガイドプーリー8cの直径分はその間隔を保持することができ、両切削用ケーブルが相互に接触し、ケーブルワイヤに固定されたダイヤモンドビーズが相互に衝突して破損し、あるいは両者が絡み合って切削用ケーブルが切断する等の切削用ケーブルの損傷を防止することができる。
【0026】
なお、上記実施例において、被切断物である鉄筋コンクリート構築物に掛けられる切削用ケーブルは、切断終了間近における切削用ケーブルの鋭角化、及び切断終了時の切削用ケーブルの飛び跳ね防止のため、一対の第1メインガイドプーリーに掛ける切削用ケーブルは、片方の第1メインガイドプーリーはその外側を通るように掛け、他方の第1メインガイドプーリーはその内側を通るように掛けた例を示したが、上記作用をなすためには、少なくとも片方の第1メインガイドプーリーの外側を通るように掛ければ良く、例えば両方の第1メインガイドプーリーの外側を通るように掛けても良いことは云うまでもない。
【0027】
本発明は、上記実施例のほか、図3乃至図9に示すような各種の参考態様が考えられる。即ち、図3に示す参考例は、上記実施例のガイドプーリーに加えて、側部ガイドプーリー20を設置し、1対のメインガイドプーリーを近接して配置しても、切断終了間近の時の切断用ケーブルの曲がりを少なくしたものであり、この例においても、補助ガイドプーリー8cは、図2に示す実施例と同様に設置される。
【0028】
図4に示す参考例は、前記参考例の第2メインガイドプーリー8a,8bを第1メインガイドプーリー7a,7bより内側に配置したものであり、この時の補助ガイドプーリー8cも図2に示す実施例と同様に設置される。
【0029】
図5乃至図9に示す参考例のものは、鉄筋コンクリート構築物に対して切削用ケーブルを巻き掛ける側面2’に垂直方向に、メインガイドプーリーからケーブル駆動装置側に延びる切削用ケーブルを配置したものであり、そのうち図5に示す参考例は、メインガイドプーリー7a,7b,8a,8bの両側に側部ガイドプーリー20,21を配置したものである。この例においては、補助ガイドプーリー8cは、図5(ロ)に示すように、被切断物に近い第2メインガイドプーリー8a,8bからケーブル駆動装置側に延びる切削用ケーブルを、他方の切削用ケーブルから離すように設置する。この例において、側部ガイドプーリー21は、切断が進行した後にガイド作用をなす。
【0030】
図6に示す参考例は、図5に示す参考例において、片方の側部ガイドプーリー20を、メインガイドプーリーを中心として他方の側部ガイドプーリー21側に寄せて配置したものであり、この例においては、両方の側部ガイド20,21共に、切断が進行した後にガイド作用をなす。この例における補助ガイドプーリー8cは図5(ロ)と同様に設置される。
【0031】
図7に示す参考例は、鉄筋コンクリート構築物5の側面と同一面に第1メインガイドプーリー7bのガイド面が位置するように配置し、側部ガイドプーリー21のみを設けたものであり、これにより側部ガイドプーリーの片方の設置が省略される。この例においても、補助ガイドプーリー8cは図5(ロ)と同様に設置される。
【0032】
図8に示す参考例は、メインガイドプーリー全体を鉄筋コンクリート構築物5から離れた位置に設置した参考例であり、鉄筋コンクリート構築物には側部ガイドプーリー20,21のみが設置される。この例においても、補助ガイドプーリー8cは図5(ロ)と同様に設置される。
【0034】
図9に示す参考例は、上記図5乃至図8に示す参考例におけるメインガイドプーリーを逆向きに設置した例を示し、側部ガイドプーリー20,21の配置は、図5に示す参考例と同様の配置を示している。この例における両方の側部ガイドプーリー20,21は共に切断の進行後にガイド作用をなす。なお、補助ガイドプーリー8cは、図5(ロ)と同様に設置することができる。
【0035】
図9に示す参考例のようなメインガイドプーリーの配置を行う際には、前記図6乃至図8に示す参考実施例においても同様に設置することができる。この他、メインガイドプーリーを適宜の角度に設置し、あるいは側部ガイドプーリー及び他の補助ガイドプーリーを各種組み合わせて設置し、水平切断、垂直切断等、各種の実施の態様が任意に選択可能である。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、上記のように構成し、作用するので、一対のガイドプーリーで案内される切断用ケーブルが相互に接触して破損することがなくなり、被切断物である鉄筋コンクリート構築物とが、ガイドプーリー及びケーブル駆動装置等を種々の態様に安全に配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例の平面図である。
【図2】
同側面図である。
【図3】
本発明の他の参考例の平面図である。
【図4】
本発明の更に他の参考例の平面図である。
【図5】
(イ)は、本発明の更に他の参考例の平面図、(ロ)は、同側面図である。
【図6】
本発明の更に他の参考例の平面図である。
【図7】
本発明の更に他の参考例の平面図である。
【図8】
本発明の更に他の参考例の平面図である。
【図9】
(イ)は、本発明の更に他の参考例の平面図、(ロ)は、同側面図である。
【符号の説明】
1 路面
2 鉄筋コンクリ-ト構築物
3 コンクリート層
4 鉄筋
5 第1ガイドプーリー台
6 アンカー
7a,7b 第1メインガイドプーリー
8a,8b 第2メインガイドプーリー
8c 補助ガイドプーリー
9 第2ガイドプーリー台
10 アンカー
11 レール
12,13 緩み側ガイドプーリー
14 張り側ガイドプーリー
15 ケーブル駆動装置ケーブル
16 ケーブル駆動プーリー
17 駆動車輪
18 切削用ケーブル
20 側部ガイドプーリー
【図面】









 
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を、「鉄筋コンクリート構築物の表面に沿って、その切断予定面と同一平面上に一対の第1メインガイドプーリーを設置し、該第1メインガイドプーリーのプーリー溝を通る接線を共通にして前記第1メインガイドプーリーに隣接して一対の第2メインガイドプーリーを設置するとともに、緩み側に設置された補助ガイドプーリーを前記第2ガイドプーリーと同一面上に設け、切削用ケーブルは、ケーブル駆動プーリーに掛けられると共にその緩み側から出発し、前記補助ガイドプーリーの外側を通り一方の第2メインガイドプーリーの内側を通り、該一方の第2メインガイドプーリーに隣接する一方の第1メインガイドプーリーの外側から鉄筋コンクリート構築物に巻き掛けられ、他方の第1メインガイドプーリーの内側を通り、該第1メインガイドプーリーに隣接する第2メインガイドプーリーの外側から引き出され、ケーブル駆動プーリーの張り側に戻るように無端状態に配設されて前記第2メインガイドプーリーで案内される切削用ケーブルを相互に離間させるようにしてなることを特徴とする鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2ないし請求項7を削除する。
(3)訂正事項c
特許明細書の段落【0005】の記載内容を削除する。
(4)訂正事項d
同、段落【0006】の記載を、「【0005】また、切削用ケーブルは、ワイヤーソーイング中に破断事故がない場合でも、切断の終了と同時に鉄筋コンクリート構築物から離反して跳ね飛び、周囲に危険を及ぼすなどの問題があった。」と訂正する。
(5)訂正事項e
同、段落【0028】の記載を、「【0027】本発明は、上記実施例のほか、図3乃至図9に示すような各種の参考態様が考えられる。即ち、図3に示す参考例は、上記実施例のガイドプーリーに加えて、側部ガイドプーリー20を設置し、1対のメインガイドプーリーを近接して配置しても、切断終了間近の時の切断用ケーブルの曲がりを少なくしたものであり、この例においても、補助ガイドプーリー8cは、図2に示す実施例と同様に設置される。」と訂正する。
(6)訂正事項f
同、段落【0029】の記載を、「【0028】図4に示す参考例は、前記参考例の第2メインガイドプーリー8a,8bを第1メインガイドプーリー7a,7bより内側に配置したものであり、この時の補助ガイドプーリー8cも図2に示す実施例と同様に設置される。」と訂正する。
(7)訂正事項g
同、段落【0030】の記載を、「【0029】図5乃至図9に示す参考例のものは、鉄筋コンクリート構築物に対して切削用ケーブルを巻き掛ける側面2’に垂直方向に、メインガイドプーリーからケーブル駆動装置側に延びる切削用ケーブルを配置したものであり、そのうち図5に示す参考例は、メインガイドプーリー7a,7b,8a,8bの両側に側部ガイドプーリー20,21を配置したものである。この例においては、補助ガイドプーリー8cは、図5(ロ)に示すように、被切断物に近い第2メインガイドプーリー8a,8bからケーブル駆動装置側に延びる切削用ケーブルを、他方の切削用ケーブルから離すように設置する。この例において、側部ガイドプーリー21は、切断が進行した後にガイド作用をなす。」と訂正する。
(8)訂正事項h
同、段落【0031】の記載を、「【0030】図6に示す参考例は、図5に示す参考例において、片方の側部ガイドプーリー20を、メインガイドプーリーを中心として他方の側部ガイドプーリー21側に寄せて配置したものであり、この例においては、両方の側部ガイド20,21共に、切断が進行した後にガイド作用をなす。この例における補助ガイドプーリー8cは図5(ロ)と同様に設置される。」と訂正する。
(9)訂正事項j
同、段落【0032】の記載を、「【0031】図7に示す参考例は、鉄筋コンクリート構築物5の側面と同一面に第1メインガイドプーリー7bのガイド面が位置するように配置し、側部ガイドプーリー21のみを設けたものであり、これにより側部ガイドプーリーの片方の設置が省略される。この例においても、補助ガイドプーリー8cは図5(ロ)と同様に設置される。」と訂正する。
(10)訂正事項k
同、段落【0033】の記載を、「【0032】図8に示す参考例は、メインガイドプーリー全体を鉄筋コンクリート構築物5から離れた位置に設置した参考例であり、鉄筋コンクリート構築物には側部ガイドプーリー20,21のみが設置される。この例においても、補助ガイドプーリー8cは図5(ロ)と同様に設置される。」と訂正する。
(11)訂正事項l
同、段落【0034】の記載を、「【0034】図9に示す参考例は、上記図5乃至図8に示す参考例におけるメインガイドプーリーを逆向きに設置した例を示し、側部ガイドプーリー20,21の配置は、図5に示す参考例と同様の配置を示している。この例における両方の側部ガイドプーリー20,21は共に切断の進行後にガイド作用をなす。なお、補助ガイドプーリー8cは、図5(ロ)と同様に設置することができる。」と訂正する。
(12)訂正事項m
同、段落【0035】の記載を、「【0035】図9に示す参考例のようなメインガイドプーリーの配置を行う際には、前記図6乃至図8に示す参考実施例においても同様に設置することができる。この他、メインガイドプーリーを適宜の角度に設置し、あるいは側部ガイドプーリー及び他の補助ガイドプーリーを各種組み合わせて設置し、水平切断、垂直切断等、各種の実施の態様が任意に選択可能である。」と訂正する。
(13)訂正事項n
特許明細書の【図面の簡単な説明】における【図3】の説明記載を、「本発明の他の参考例の平面図である。」と訂正する。
(14)訂正事項o
同、【図4】の説明記載を、「本発明の更に他の参考例の平面図である。」と訂正する。
(15)訂正事項p
同、【図5】の説明記載を、「(イ)は、本発明の更に他の参考例の平面図、(ロ)は、同側面図である。」と訂正する。
(16)訂正事項q
同、【図6】の説明記載を、「本発明の更に他の参考例の平面図である。」と訂正する。
(17)訂正事項r
同、【図7】の説明記載を、「本発明の更に他の参考例の平面図である。」と訂正する。
(18)訂正事項s
同、【図8】の説明記載を、「本発明の更に他の参考例の平面図である。」と訂正する。
(19)訂正事項t
同、【図9】の説明記載を、「(イ)は、本発明の更に他の参考例の平面図、(ロ)は、同側面図である。」と訂正する。
異議決定日 2002-02-04 
出願番号 特願平6-35163
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (E04G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小山 清二  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 中田 誠
伊波 猛
登録日 2000-02-04 
登録番号 特許第3027819号(P3027819)
権利者 株式会社ダイモ社
発明の名称 鉄筋コンクリート構築物のワイヤーソーイング工法  
代理人 草野 浩一  
代理人 中野 収二  
代理人 草野 浩一  

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