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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1059563
異議申立番号 異議2001-71762  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-06-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-06-20 
確定日 2002-05-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第3119578号「印刷回路用積層板の製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3119578号の請求項1に係る特許を取り消す。 同請求項2に係る特許を維持する。 
理由 1、本件発明
本件特許第3119578号の請求項1〜2に係る発明(平成8年3月25日出願、平成7年9月22日国内優先権主張、平成12年10月13日設定登録。)は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 表面層はエポキシ樹脂を含浸したガラス織布プリプレグからなり、中間層はエポキシ樹脂に対して無機充填材が50〜250重量%含有されている樹脂を含浸したガラス不織布プリプレグからなる積層板において、中間層における樹脂の組成が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤としてノボラック型フェノール樹脂、及びビスフェノールA及び又はテトラブロモビスフェノールAを必須成分とし、ビスフェノールAとテトラブロモビスフェノールAのOH基の合計量とエポキシ樹脂のエポキシ基数の比が、エポキシ基/OH基=3〜6であり、かつ、ノボラック型フェノール樹脂及びビスフェノールAとテトラブロモビスフェノールAのOH基の合計とエポキシ樹脂のエポキシ基数の比が、エポキシ基/OH基=0.8〜1.4であることを特徴とする印刷回路用積層板の製造方法。
【請求項2】 表面層に含浸する樹脂の組成として、エポキシ樹脂とジシアンジアミドを用い、エポキシ樹脂のエポキシ基数とジシアンジアミドの反応点の合計の比が、ジシアンジアミド反応点/エポキシ基=0.3〜1.0である請求項1記載の積層板の製造方法。」

2、請求項1の発明に係る特許について
当審において、本件請求項1の発明に係る特許に対して、平成13年11月8日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたけれども、特許権者からは何らの応答もない。
そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項1の発明に係る特許は、その取消理由、すなわち、本件請求項1に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである、によって取り消されるべきものである。

3、請求項2の発明に係る特許について
本件請求項1に係る特許は、上記のとおり取り消すべきものであるから、本件特許異議申立てについては、請求項2に係る特許について判断する。
(1)特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人 新神戸電機株式会社は、本件請求項2の発明は本件出願前公知の甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項2に係る特許は取り消されるべきものであると主張している。
(2)甲号証記載の発明
甲第1号証:特開平6-345883号公報
ア.「【請求項1】(a)エポキシ樹脂、(b)ビスフェノールAとホルムアルデヒドの重縮合物、(c)無機充填剤及び(d)還元剤を必須成分として配合したワニスを基材に含浸後、乾燥させることを特徴とする印刷配線板用プリプレグの製造法。
【請求項2】還元剤がフェノール系還元剤である請求項1記載の印刷配線板用プリプレグの製造方法。」(特許請求の範囲)
イ.「印刷配線板の絶縁材料として従来から広く使用されているエポキシ樹脂は、主にジシアンジアミドで硬化させる系が広く検討されているが、ジシアンジアミド硬化系ではプリプレグを作製する際にジシアンジアミドの結晶が析出したり、得られた積層板の吸湿性が高くなる等の欠点がある。」(段落【0003】の1〜6行)
ウ.「(c)の無機充填材としては、特に制限はなく、(中略)その配合量も特に制限されるものではないが、(a)のエポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは5〜400重量部配合される。」(段落【0012】)
エ.「実施例1 ビスフェノールA1,000g、37%ホルマリン220g、シュウ酸10gを(中略)反応させた後、脱水濃縮してビスフェノールAノボラック樹脂[A]を得た。これを用いて次のようにしてワニスを得た。
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量530)
100重量部
ビスフェノールAノボラック樹脂[A](水酸基当量116)
22重量部
2-エチルー4-メチルイミダゾール 0.5重量部
水酸化アルミニウム 100重量部
ピロガロール 0.5重量部
上記化合物をメチルエチルケトンに溶解し、不揮発分75重量%のワニスを作製した。このワニスをガラス不織布(日本バイリーン(株)製EPM-4060N)に樹脂分90.0±2.0重量%になるように含浸、乾燥してガラス不織布プリプレグを得た。」(段落【0021】)
オ.「水酸化アルミニウムを配合しない他は、前記と同じ組成のワニスをガラス織布(中略)に樹脂分90.0±2.0重量%になるように含浸、乾燥してガラス織布プリプレグを得た。」(段落【0022】)
カ.「上記ガラス不織布プリプレグの上下に上記ガラス織布プリプレグを重ね、最外層に厚さ18μmの電解銅箔(中略)を配置し、170℃/2.94MPaで70分間加熱加圧して厚さ1.6mmのMCLを得た。」(段落【0023】)
キ.「実施例3 実施例1における臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂の代わりにビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量450)を100重量部配合し、ビスフェノールAノボラック樹脂[A]22重量部の代わりにビスフェノールAノボラック樹脂[A]を21重量部とテトラブロモビスフェノールAを11重量部配合する以外は実施例1と同様にしてMCLを作製した。」(段落【0025】)
上記コンポジット積層板の製造、特に実施例3においては、中間層における樹脂組成が、(a)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤としてビスフェノールAノボラック樹脂及びテトラブロモビスフェノールAを必須成分とすることを開示しており、各成分のエポキシ当量、水酸基も当量、ならびに配合量は本件請求項1の発明で規定する範囲内にあるものと認められる。
したがって、上記ア〜キの記載を総合すると、甲第1号証には「表面層はエポキシ樹脂を含浸したガラス織布プリプレグからなり、中間層はエポキシ樹脂100重量部に対して無機充填材が5〜400重量部含有されている樹脂を含浸したガラス不織布プリプレグからなる積層板において、中間層における樹脂の組成が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤としてノボラック型フェノール樹脂、及びビスフェノールA及び又はテトラブロモビスフェノールAを必須成分とする印刷回路用積層板の製造方法であって、ビスフェノールAとテトラブロモビスフェノールAのOH基の合計量とエポキシ樹脂のエポキシ基数の比がエポキシ基/OH基=3〜6であり、かつ、ノボラック型フェノール樹脂及びビスフェノールAとテトラブロモビスフェノールAのOH基の合計とエポキシ樹脂のエポキシ基数の比がエポキシ基/OH基=0.8〜1.4の範囲内にある」発明(以下、甲第1号証の発明という)が記載されていると認められる。
甲第2号証:特開平4-53182号公報
ク.「1 ガラス不織布にエポキシ樹脂を含浸乾燥させたプリプレグ(I)の両面に、ガラス織布にエポキシ樹脂を含浸乾燥させたプリプレグ(II)を重ね合わせ、重ね合わせたものの少なくとも片面に銅箔を配置し加熱加圧一体に成形する銅張積層板において、前記プリプレグ(I)に含浸させる樹脂として、無機充填剤及びチタネートカップリング剤を含み、エポキシ樹脂100重量部に対して前記無機充填剤を35〜90重量部の割合に配合したエポキシ樹脂組成物を用いてなることを特徴とする銅張積層板。」(特許請求の範囲の記載)
ケ.「実施例1 ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量480)100部をメチルエチルケトン35部に溶解し、ジシアンジアミド3部と2-エチル-4-メチルイミダゾール0.1部を加えて撹拌し、無機充填剤として水酸化アルミニウム50部、チタネートカップリング剤としてテトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート0.5部を添加配合し均一に混合してワニスを調製した。」(第3頁右上欄8〜16行)
コ.「実施例1〜2及び比較例1〜2で調製したワニスを用いて、ガラス不織布に連続的に含浸させ、次いで165℃に保持したオーブンで6分間乾燥させてプリプレグ(I)を得た。 別に準備した無機充填剤、チタネートカップリング剤を含まないエポキシ樹脂ワニスをガラス織布に含浸・乾燥させてプリプレグ(II)を得た。プリプレグ(I)を6枚重ね合わせ、その両面にプリプレグ(II)を重ね合わせ、更にその両面に厚さ18μmの銅箔を配置して、170℃に加熱した熱盤に挟み、50kg/cm2の圧力で90分間、加熱加圧一体に成形して銅張積層板を製造した。」(第3頁左下欄16行〜右下欄7行)
(3)請求項2の発明と甲各号証記載の発明との対比・判断
本件請求項2の発明(前者)と甲第1号証の発明(後者)とを対比すると、両者は、「表面層はエポキシ樹脂を含浸したガラス織布プリプレグからなり、中間層はエポキシ樹脂に対して無機充填材が含有されている樹脂を含浸したガラス不織布プリプレグからなる積層板において、中間層における樹脂の組成が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤としてノボラック型フェノール樹脂、及びビスフェノールA及び又はテトラブロモビスフェノールAを必須成分とする印刷回路用積層板の製造方法。」という点で一致し、かつ、無機充填剤の配合量、ビスフェノールAとテトラブロモビスフェノールAのOH基の合計量とエポキシ樹脂のエポキシ基数の比、ノボラック型フェノール樹脂及びビスフェノールAとテトラブロモビスフェノールAのOH基の合計とエポキシ樹脂のエポキシ基数の比においても両者間に実質的な差異があるとは認められない。
しかしながら、甲第1号証には、「水酸化アルミニウムを配合しない他は、前記と同じ組成のワニスをガラス織布(中略)に樹脂分90.0±2.0重量%になるように含浸、乾燥してガラス織布プリプレグを得た。」と記載(上記オの記載参照)されているように甲第1号証の発明は、表面層に含浸する樹脂の組成として、水酸化アルミニウムを配合しない以外は中間層と同じエポキシ樹脂組成物を用いるものであり、請求項2の発明の構成事項の一つである「表面層に含浸する樹脂の組成として、エポキシ樹脂とジシアンジアミドを用いる」という点については記載されておらず、この点において両者は相違していると認められる。
この相違点に関して、申立人は、「表面層の樹脂組成を本件特許の請求項2に係る発明のようにすることは、甲第2号証記載の発明を参照して甲第1号証記載の発明に基づき当業者が容易になし得るところである。」(申立書第7頁25〜27行)と主張しているので検討する。
なるほど、甲第2号証には、中間層及び表面層における樹脂組成としてエポキシ樹脂と硬化剤であるジシアンジアミドとを用いたものが記載(上記ケ、コの記載)されているけれども、そもそも甲第1号証の発明においては、硬化剤として「ジシアンジアミド」の使用を排除しようとする発明(上記イの記載参照)であるから、甲第1号証の発明における、表面層のエポキシ樹脂の硬化剤として、甲第2号証に記載されている「ジシアンジアミド」を採用する合理的な理由がないので、この申立人の主張は採用できない。
そして、本件請求項2の発明は、上記請求項2記載の構成事項を具備することにより、本件特許明細書記載のとおりの効果を奏し得ているものと認められる。
したがって、本件請求項2の発明は、甲1〜2号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項2の発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、本件請求項2の発明に係る特許については、他に取消理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-03-15 
出願番号 特願平8-68275
審決分類 P 1 651・ 113- ZC (B32B)
P 1 651・ 121- ZC (B32B)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 鴨野 研一  
特許庁審判長 小林 正巳
特許庁審判官 石井 克彦
喜納 稔
登録日 2000-10-13 
登録番号 特許第3119578号(P3119578)
権利者 住友ベークライト株式会社
発明の名称 印刷回路用積層板の製造方法  

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