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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
管理番号 1059565
異議申立番号 異議2001-72958  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-10-24 
確定日 2002-05-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第3160705号「増大された水のpH上昇特性及び金属イオン吸着特性を有する電気石含有セラミック焼成品の製法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3160705号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3160705号の請求項1に係る発明は、平成7年12月15日に特許出願され、平成13年2月23日に特許の設定登録がなされたものである。
これに対し、その後特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、指定期間内に意見書が提出されたものである。
2.特許異議申立について
(1)本件発明
請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、本件特許明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】増大された水のpH上昇特性及び金属イオン吸着特性を有する電気石含有セラミック焼成品を製造する方法において、粒径10μ以下を有する電気石粉末及びスメクタイト粉末を混合し、成形後、750℃以下の温度で焼成することを特徴とする、増大された水のpH上昇特性及び金属イオン吸着特性を有する電気石含有セラミック焼成品の製法。」
(2)申立の理由の概要
特許異議申立人フロー工業株式会社は、証拠方法として、甲第1号証(特開平5-64787号公報)、甲第2号証(特開平5-220486号公報)、甲第3号証(特開平7-24444号公報)、甲第4号証(特開平7-51664号公報)、甲第5号証(特公平7-38987号公報)、甲第6号証(特開平6-268282号公報)、甲第7号証(特開平7-97280号公報)、甲第8号証(特開平6-48724号公報)、甲第9号証(特開平7-247155号公報)及び甲第10号証(特開平7-60279号公報)を提出し、本件発明の特許は、甲第1〜10号証に記載された発明であるか(特許異議申立人は、同一であるとする証拠を特定していないので、このように認定した)、又はこれら証拠に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきであると主張している。
(3)証拠の記載内容
甲第1〜10号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。
甲第1号証:特開平5-64787号公報
ア.「【0014】まず、電気石粒状物10がある。これは、電気石の微細粉状物11をセラミックの電気絶縁物微細粉末12に混合して粒状物に形成し、それを焼結したものである。つぎに、以下の小型通水器20がある。これは、上記の電気石粒状物10の集合体を収納するものである。」
イ.「【0027】水中に溶解する恐れのある鉛、亜鉛、その他その量によっては身体に有害な重金属イオンは電気石の電極(負極)に電着させ水から除去される。水にとけている鉄イオンも同様である。さらに、この活水器は、水の味をよくすること、重金属イオンを除去すること以外に、つぎのような従来の浄水器にない大きな機能を有する。すなわち、その第1に、通水した水の中の塩素は減少せず殺菌力が維持されるので活水器間の残り水、付着した水における汚染や腐敗はない。つぎに、通水した水の保持も水道水と同じである。活性炭方式のものは塩素が除去される結果もちは悪い。」
ウ.「まず、ペレットに混合される電気石微細結晶は平均3〜5ミクロン(最大10ミクロン)のものである。」(【0018】)
甲第2号証:特開平5-220486号公報
ア.「【0014】しかして、上記の電気石粒状物10は、図3に示すその1粒の拡大図のごとくに、電気石の微粉末11に電気絶縁物の微粉末12を混合し、耐水性に造粒したものである。」
イ.「【0015】すなわち、この電気石使用の洗濯用球形浮遊活水器は、その洗濯槽の中の水の渦の中心部に吸引され、その浮遊体によってその水の中を浮遊しその水をまんべんなく活性化する。」
甲第3号証:特開平7-24444号公報
ア.「【請求項5】直径 0.3 〜5ミクロン程度特に0.5〜3ミクロン程度の電気石微細粉末、該電気石微細粉末を担持するものであって且つプラスチックやゴム等の高電気絶縁性物質にカーボンブラックやグラファイトや金属等の良電導性粉末を混合することにより成る電気石担持物で且つその直流体積電気抵抗の値が104Ω・cm 〜108Ω・cm 程度特に105Ω・cm 〜107Ω・cm 程度の電気石担持物、該電気石担持物を収納するものであって且つシャワーヘッドとそのシャワーホースの間あるいはそのシャワーホースとそのシャワーホース取付用蛇口との間とに接続し通水させるハウジング、より構成されることを特徴としたシャワーに取付用の電気石担持物入りアダプター。」
イ.「【0047】【発明の効果】 本発明にかかるシャワーに取付用の電気石担持物入りアダプターとカートリッジは、以上のごとくになしたゆえに以下のごとき多大な効果が生じた。すなわち水道水(温冷水)がこのアダプター内の電気石担持物に通水されて、シャワーヘッドから放水される。その水は、電気石の電極のもつ微少電圧による電気分解によって界面活性をもつ水になる。そこで、髪や肌を洗う水として次のような効果が生じる。」
甲第4号証:特開平7-51664号公報
ア.「【請求項1】直径 0.3〜5ミクロン程度特に 0.5〜3ミクロン程度の電気石微細粉末、該電気石微細粉末を担持するものであってその直流電気抵抗(体積抵抗を言う。以下同じ)の値が104Ω・cm〜108Ω・cm 程度特に105Ω・cm〜107Ω・cm 程度の担持物、該担持物を収納したものであってその内外の筒からの水は通すが上記の担持物は流失させない多孔二重筒容器、より構成されることを特徴とした電気石担持物を収納した浸漬型多孔二重筒容器による水の界面活性化手段。」
イ.「【発明の効果】本発明にかかる電気石担持物を収納した浸漬型多孔二重筒容器による水の界面活性化手段は、以上のごとくになしたゆえに以下のごとき多大な効果が生じた。すなわち、大型の電気石利用の界面活性装置の場合の通水性の悪化を二重の筒にすることによって、それに使用する電気石担持物の量を減らさないで層を非常に薄くすることができた。これによって、中の筒の細孔から電気石担持物の層に入った水がその電気石担持物の薄い層を容易に通過して、外の筒の細孔から出て行く、あるいはその逆とか、さらにはその両者の繰り返し等で、水がきわめて容易に電気石担持物に接触できその界面活性効果が非常に上がった。」
甲第5号証:特公平7-38987号公報
ア.「【請求項2】電気石の微粉末と互いに誘電率の異なる複数のセラミックの粉を混合して造粒焼結した粒状物の集合体、該粒状物の集合体を入れるものであって上記の粒状物は流通させない水の流通孔を有した容器、下記の電気石の微粉末を主成分とした粒状物の集合体より構成されることを特徴とした電気石を用いた水の界面活性化装置。」
甲第6号証:特開平6-268282号公報
ア.「【請求項5】直径 0.3 〜5ミクロン程度特に0.5または3ミクロン程度の電気石結晶微細粉末、該電気石結晶微細粉末を担持するものであってプラスチックやゴム等の高電気絶縁性物質にブラックカーボンやグラファイトや金属等の電気良導性粉末を混合することにより成る担持物で且つその直流電気抵抗値が104 Ω・cm 〜108 Ω・cm 程度特に105〜107 Ω・cm 程度の担持物、より構成されることを特徴とした電気石利用の永久電極担持物。」
甲第7号証:特開平7-97280号公報
ア.「【請求項1】(1)内部連通空間を有する三次元網状骨格構造の複数の合成樹脂発泡体それぞれをセラミック泥漿に浸漬してそれぞれの合成樹脂発泡体にセラミック泥漿を付着させ、
(2)それぞれの合成樹脂発泡体から余剰泥漿を除去し、
(3)余剰泥漿を除去したそれぞれのセラミック泥漿付着合成樹脂発泡体相互の所定面を合わせて積層し、
(4)この積層物を乾燥し、焼成して、三次元網状骨格構造のセラミック多孔体積層物を製造するに際し、上記セラミック泥漿付着合成樹脂発泡体相互間を接着剤成分として粘土鉱物をセラミック固形分の5〜30重量%含有し、かつ水分量が15〜25重量%に調整されたセラミック接着剤により接着、積層したことを特徴とするセラミック多孔体の製造方法。」
イ.「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、溶融金属ろ過材、通気性断熱材、厨房用グリスフィルター、触媒担体などに好適に用いられ、通気・通液抵抗の少ない厚みのあるセラミック多孔体積層体を製造する方法に関する。」
甲第8号証:特開平6-48724号公報
ア.「【請求項1】高い結晶性及び熱安定性を有し、約20〜22Åの層間隔を有するジルコニア柱状粘土の製造方法であって、次のステップを含むもの:
(a)スメクタイト粘土及びフルオロマイカからなる群れから選ばれる粘土を酢酸ジルコニルの溶液と、柱状粘土生成物を形成するのに充分な時間及び温度で混合し;
(b)前記溶液から形成された前記柱状粘土生成物を分離し;
(c)前記分離された柱状粘土生成物を水で洗浄し;
(d)前記分離され、洗浄された柱状粘土生成物を約50〜200℃で乾燥し;
(e)前記乾燥された粘土生成物を約300〜700℃で焼成する。」
甲第9号証:特開平7-247155号公報
ア.「【請求項3】粘土鉱物と、粘土鉱物に対して、0.5〜40重量%の量のアルカリ金属、アルカリ土類金属、両性金属及び遷移金属の炭酸塩、ペルオクソ炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、硝酸塩、ペルオクソ硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、ペルオクソリン酸塩、硫酸塩、ペルオクソ硫酸塩、硫酸水素塩、臭化物及び塩化物並びに過酸化水素から選ばれた少なくとも一種の化合物との混練物又は過酸化水素を0.5〜10重量%含有した粘土鉱物を500℃〜800℃の温度で焼結した焼結組成物で処理した水から成る無機塩の結晶構造偏向性能を有する調製水。」
イ.「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、焼結組成物に関し、浄水用又は防錆用等に使用される焼結組成物に関する。」
甲第10号証:特開平7-60279号公報
ア.「【請求項1】ワラストナイト(Wollastonite)及びアノーサイト(Anorthite)を少なくとも含有しているセラミックス成形物からなる水処理材。」
イ.「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、水処理材、特に鑑賞魚槽、水族館又は水生植物用の水槽もしくは養殖場に張られる水を浄化処理するための、又は同水のpHの変動を一定の範囲内に維持する水処理材、水道水用の▲ろ▼過装置に充填される水処理材及びその水処理材を製造するための方法に関するものである。」
(4)対比・判断
甲第1号証には、「電気石の微細粉状物11をセラミックの電気絶縁物微細粉末12に混合して粒状物に形成し、それを焼結したものである。つぎに、以下の小型通水器20がある。これは、上記の電気石粒状物10の集合体を収納するものである。」と記載され、電気石の大きさも最大10μと記載されているから、「電気石含有セラミック焼成品を製造する方法において、粒径10μ以下の微細粉の電気石粉末及びセラミックの電気絶縁物微細粉末を混合し、成形後、焼成する電気石含有セラミック焼成品の製法」の発明(以下、「甲1発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件発明と甲1発明とを対比すると、両者は、「粒径10μ以下の電気石の微細粉状物とセラミックの無機物を混合して粒状物に成形し、その後焼結してなる電気石含有セラミック焼成品の製法」という点で一致し、少なくとも以下の点で相違していると云える。
相違点1:本件発明では、無機物がスメクタイト粉末であるのに対し、甲1発明では、セラミックの電気絶縁物微細粉末である点。
相違点2:本件発明では、750℃以下の温度で焼成するのに対し、甲1発明では、その焼成温度が明らかでない点。
次に、これら相違点につき甲第2〜6号証を検討すると、甲第2号証には、電気石微細粉末に電気絶縁物の微粉末を混合し、耐水性に造粒したものが洗濯槽内の水を活性化することが記載されているが、前記相違点の特に「スメクタイト粉末」については、何ら記載も示唆もない。
また、甲第3〜6号証にも、電気石微細粉末と電気石担持物を粒状に成形したものが水を活性化すると記載されているだけであり、前記相違点については、何ら記載も示唆もない。
さらに甲第7〜10号証を検討すると、甲第7号証には、ろ過材等の用途を有するセラミック多孔体積層物を製造する際に粘土鉱物が接着剤として使用することが、また、スメクタイト粉末について唯一記載のある甲第8号証には、スメクタイト粘土を出発原料とするジルコニア柱状粘土の製造方法がそれぞれ記載されているだけであり、特に甲第8号証にはスメクタイトを水の改質のための材料として使用することについては何ら示唆されていないから、前記相違点については、何ら記載も示唆もないと云うべきである。甲第9号証には、アルカリ金属等の化合物と粘土鉱物の混合物の焼結体からなる水処理材が、甲第10号証には、ワラストナイト及びアノーサイトを含有する成形物からなる水処理材が、それぞれ記載されているだけであり、前記相違点についての記載も示唆もない。
そして、本件発明は、前記相違点によって、水のpHを上昇させ、さらに、金属イオン吸着特性を増大させるという甲第1〜10号証の記載から予測できない特許明細書に記載のとおりの効果を奏するものである。
してみると、本件発明は、甲第1〜10号証に記載された発明とすることはできないし、またこれらの発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。
3.むすび
以上のとおり、本件請求項1に係る発明の特許は、特許異議申立の理由及び証拠方法によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-05-01 
出願番号 特願平7-347179
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C04B)
P 1 651・ 121- Y (C04B)
最終処分 維持  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 服部 智
山田 充
登録日 2001-02-23 
登録番号 特許第3160705号(P3160705)
権利者 無添加食品販売協同組合 クニミネ工業株式会社
発明の名称 増大された水のpH上昇特性及び金属イオン吸着特性を有する電気石含有セラミック焼成品の製法  
代理人 朝倉 勝三  
復代理人 朝倉 勝三  
代理人 倉持 裕  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 中馬 典嗣  

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