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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60K |
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管理番号 | 1060279 |
審判番号 | 不服2000-7432 |
総通号数 | 32 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1992-12-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-05-18 |
確定日 | 2002-07-02 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第 15304号「車両のヨーモーメント制御装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成 4年12月 9日出願公開、特開平 4-356233、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成3年2月6日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成11年3月26日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】車両に働くヨーモーメント量に対し付加ヨーモーメントを発生させる付加ヨーモーメント発生手段と、 車両の走行中の横滑り角あるいは横滑り角相当量を検出する横滑り角検出手段と、 横滑り角を車速もしくは舵角の少なくとも一方の増加に応じて増加するよう補正した値を車両の安定性が確保される付加ヨーモーメント量として演算する付加ヨーモーメント量演算手段と、 前記付加ヨーモーメント量が得られる指令を前記付加ヨーモーメント発生手段に対し出力する付加ヨーモーメント制御手段と、 を備えていることを特徴とする車両のヨーモーメント制御装置。」 2.原査定の拒絶の理由の概要 これに対して、原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は、下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、というにある。 刊行物1;特開平2-95982号公報 刊行物2;特開昭62-299430号公報 刊行物3;特開昭62-4674号公報 3.原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1〜3の記載事項 刊行物1(特開平2-95982号公報)には、4輪操舵車両の操舵制御方法に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 「前輪および後輪の舵力または横力または横すべり角のいずれかを検出し、該前輪および後輪の舵力または横力はそれぞれ横すべり角に比例するものとして、前輪舵角を前輪操舵角に前輪横すべり角に比例する補正舵角を加算した値で制御し、後輪舵角を後輪横すべり角に比例して制御することを特徴とする4輪操舵車両の操舵制御方法。」(特許請求の範囲の欄) 刊行物2(特開昭62-299430号公報)には、横すべり角を有効に制御する四輪駆動車の姿勢制御装置に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 「外部からの指令に従って、車両に作用するヨーイングモーメントを発生するヨーイングモーメント発生手段と、 上記車両の横すべり角を検出する横すべり角検出手段と、 上記車両の操縦状態を検出する操縦状態検出手段と、 該検出された操縦状態に応じた許容横すべり角を算出する許容横すべり角算出手段と、 上記横すべり角検出手段の検出した横すべり角が、上記許容横すべり角算出手段の算出した許容横すべり角を上回るか否かを判定する判定手段と、 該判定手段により横すべり角が許容横すべり角を上回ると判定されたときには、上記車両に生じているヨーイングを抑制する方向のヨーイングモーメントを発生する指令を上記ヨーイングモーメント発生手段に出力する制御手段と、 を備えたことを特徴とする四輪駆動車の姿勢制御装置。」(特許請求の範囲の欄) 刊行物3(特開昭62-4674号公報)には、予め想定された車両モデルによりステアリングハンドル操舵角と車速とから車両運動状態を推定するとともに、実測可能な運動状態量をフィードバックすることで、前記推定値あるいは、該推定値に基づいて行われる制御の精度向上を図った車両運動状態推定装置に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 「ステアリングハンドルの操舵角を検出するハンドル操舵角検出手段と、 車速を検出する車速検出手段と、 車両が定常旋回運動中であることを検出する定常旋回運動検出手段と、 車両に生じる横加速度を検出する横加速度検出手段と、 車両に生じるヨーレートを検出するヨーレート検出手段と、 前記横加速度およびヨーレートの検出値に基づいて、車両に生じる横すべり角等の横すべり因子を検出する横すべり因子検出手段と、 予め車両諸元および運動方程式によって設定された少なくとも1つの車両モデルに基づく演算により、前記ステアリングハンドル操舵角および車速に対応する運動状態量を推定する運動状態量推定手段と、 前記定常旋回運動検出手段によって、車両が定常旋回運動中であることが検出されるときに、前記横加速度またはヨーレートの少なくとも一方および横すべり因子の検出値と、前記運動状態量推定値のうちの横加速度またはヨーレートの少なくとも一方および横すべり因子の推定値との比較を行う比較手段と、 該比較手段による比較結果に対応して前記運動状態量推定手段における車両諸元を補正する車両諸元補正手段とを具備することを特徴とする車両運動状態推定装置。」(特許請求の範囲の欄) 4.当審の判断 刊行物2に記載された上記技術事項からみて、刊行物2に記載された発明の「ヨーイングモーメント発生手段」、「横すべり角検出手段」及び「ヨーイングモーメント発生手段に出力する制御手段」は、夫々本願発明の「付加ヨーモーメント発生手段」、「横滑り角検出手段」及び「付加ヨーモーメント制御手段」に相当するから、本願発明の用語を使用して本願発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、両者は、「車両に働くヨーモーメント量に対し付加ヨーモーメントを発生させる付加ヨーモーメント発生手段と、車両の走行中の横滑り角あるいは横滑り角相当量を検出する横滑り角検出手段と、付加ヨーモーメント量が得られる指令を前記付加ヨーモーメント発生手段に対し出力する付加ヨーモーメント制御手段とを備えている車両のヨーモーメント制御装置。」で一致しているが、下記の点で相違している。 相違点;本願発明では、付加ヨーモーメント量演算手段で、横滑り角を車速もしくは舵角の少なくとも一方の増加に応じて増加するよう補正した値を車両の安定性が確保される付加ヨーモーメント量として演算するものであるのに対して、刊行物2に記載された発明では、横すべり角検出手段の検出した横すべり角が、許容横すべり角算出手段の算出した許容横すべり角を上回るか否かを判定手段で判定し、該判定手段により横すべり角が許容横すべり角を上回ると判定されたときには、車両に生じているヨーイングを抑制する方向のヨーイングモーメントを制御手段で演算するものである点。 上記相違点について検討するに、刊行物1及び3にも上記摘記した事項が記載されているにすぎないものであって、本願発明のように横滑り角を車速もしくは舵角の少なくとも一方の増加に応じて増加するよう補正した値を車両の安定性が確保される付加ヨーモーメント量として演算することについては、記載されていないものである。 そして、本願発明のように車両の安定性を示す指標であるスタティック・マージン(SM)という数値に着目して、横滑り角に比例するような付加ヨーモーメントを発生させ、スタティック・マージン(SM)の値を等価的に大きくして、車両の安定性を稼ぐために、横滑り角を車速もしくは舵角の少なくとも一方の増加に応じて増加するよう補正した値を車両の安定性が確保される付加ヨーモーメント量として演算することは、本願出願前当業者において知られていた事項とも認めることができない。 そうすると、刊行物1〜3に記載された事項を総合勘案したとしても、本願発明の上記相違点に係る構成について想到するための契機がないものであるから、本願発明の上記相違点に係る構成は、当業者が容易に想到することができるものとは認めることができない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2002-06-19 |
出願番号 | 特願平3-15304 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 田々井 正吾、藤井 新也 |
特許庁審判長 |
村本 佳史 |
特許庁審判官 |
前田 幸雄 常盤 務 |
発明の名称 | 車両のヨーモーメント制御装置 |
代理人 | 朝倉 悟 |