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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47K
管理番号 1060316
審判番号 不服2001-14163  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-10-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-08-09 
確定日 2002-06-13 
事件の表示 平成 5年特許願第 68538号「浴槽装着具」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年10月 4日出願公開、特開平 6-277157]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年3月26日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年9月10日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 浴槽に穿設した取付開口の浴槽外側に水密用の第1パッキンを介して位置する後面ケースと、同取付開口の浴槽内側に水密用の第2パッキンを介して位置するとともに、前記後面ケースに浴槽内側から螺合固定する固定ケースとを備え、前記後面ケースはねじ部を有すると共に、当該ねじ部に螺合する保持棒を具備し、この保持棒は浴槽に穿設した取付開口にひっかけられるかぎ形の形状とするとともに当該かぎ形状部分の外径寸法lを、固定ケースの内径寸法Lより小さくし、この保持棒のかぎ形状部分を取付開口に保持させて前記後面ケースを前記固定ケースに嵌合固定する浴槽装着具。」

2.引用刊行物に記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された実願平3-42313号(実開平4-128686号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物」という。)には、
(ア)「以下、この考案の実施例を図1から図11までの図面に基づいて説明する。図1はこの考案による循環具取り付け用工具(以下、工具と略称する)の第1実施例の組み立て斜視図であり、図2は同分解斜視図である。この工具100は図12に示す循環具10を取り付ける際に用いられるものである。……工具100は、長尺のロッド110と、ロッド110の基部に設けられた第1係合体(第1係合部)120と、ロッド110の先部に設けられた第2係合体(第2係合部)130を主要構成としている。……第2係合体130はポリプロピレン等の樹脂板で形成されており、中央部131から4枚の羽根132が放射状に延び、十字形をなしている。第2係合体130は、その中央部131をロッド110の先端面に突き当て、各羽根132をロッド110の径方向外方へ延ばした状態にして、ねじ141及びワッシャ142によってロッド110に固定されている。図3に示すように、各羽根132の裏面(ロッド110に近い方の面)には、ロッド110の外周面よりも外側に位置する部位に、あり溝133が形成されている。各羽根132はこのあり溝133を屈曲点としてロッド110の基部側に接近する方向にだけ折り畳み可能になっている。尚、羽根132をあり溝133の所から折り畳んでも、手を離すと羽根132は弾性によって広げた状態に復元する。第2係合体130は、羽根132を広げた状態ではロッド110の径方向に沿う寸法が浴槽1の取付孔3の内径よりも大きくなり、羽根132を折り畳んだ状態ではロッド110の径方向に沿う寸法が循環具10における雄フレーム30のねじ孔(貫通孔)33の内径よりも小さくなる。次に、上記工具100の使用方法を図4及び図5を参照して説明する。尚、この循環具10の雌フレーム20におけるフランジ部29の表面はゴム等からなるシール材29aによって被覆されている。初めに、循環具10の雌フレーム20に上記工具100を装着する。即ち、雌フレーム20の循環復路24に工具100の第1係合体120を圧入して嵌合する。次に、上記雌フレーム20を持って作業者は浴槽1の外側に回り、工具100の第2係合体130の各羽根132をあり溝133の所から折り畳み、浴槽1の取付孔3に挿通して、図4に示すように、第2係合体130及びロッド110の先部を浴槽1の内側に突き出す。尚、この時の羽根132の折り畳みかげんは取付孔3の内径よりも小さくすればよく、極小にする必要はない。又、羽根132を手で折り畳んでもよいし、あるいは、羽根132に手を触れることなく羽根132を取付孔3に押し込むことによりすぼめてもよい。取付孔3を通過すると、上記羽根132は弾性により再び広がり、第2係合体130のロッド110の径方向に沿う長さが取付孔3よりも大きくなる。しかも、羽根132はワッシャ142側には折り曲がらないので、羽根132を浴槽1の壁部2に引っ掛けることができる。工具100の羽根132を浴槽1に引っ掛けることにより、浴槽1の外側において雌フレーム20を支持しなくても(即ち、雌フレーム20から手を離しても)、雌フレーム20は落下することがない。次に、作業者は浴槽1の内側に回って、取付孔3を貫通したロッド110を持って手前に引き寄せ、雌フレーム20のフランジ部29を浴槽1の壁部2の外面に当接させて位置決めする。次に、羽根132を再度折り畳んで、羽根132及びロッド110の先部を、浴槽1の内側に用意しておいたパッキン40と雄フレーム30に挿通する。この時の羽根132の折り畳みかげんは、雄フレーム30のねじ孔33を挿通させる必要があるので、ほぼ極小の状態(図4において二点鎖線で示す状態)にする。雌フレーム30を挿通すると、羽根132は再度広がる。図5はこの状態を示している。この後、片手でロッド110を持ち、もう一方の手で雄フレーム30を持って、雄フレーム30のねじ孔33を雌フレーム20の雄ねじ28にねじ込んでいく。そして、雌フレーム20のフランジ部29と雄フレーム30のフランジ部32によって浴槽1の壁部2を挟持することにより、雌フレーム20と雄フレーム30を浴槽1に固定する。」(段落【0014】ないし【0024】)、
(イ)「図7は、ロッド110の基部外周面に雄ねじ112を設け、この雄ねじ112を工具100における第1係合部としたものである。この場合には、循環具10における雌フレーム20の内筒21の内周面に、上記雄ねじ112が螺合する雌ねじ21aを形成しておく。」(段落【0028】)
と記載されており、これらの記載及び図1ないし5、図7の記載からみて、引用刊行物には、
「浴槽1の取付孔3の浴槽外側にシール材29aを介して位置する雌フレーム20と、取付孔3の浴槽内側にパッキン40を介して位置するとともに、雌フレーム20に浴槽内側から螺合固定する雄フレーム30とを備え、雌フレーム20は雌ねじ21aを有すると共に、雌ねじ21aに螺合する循環具取り付け用工具100を具備し、循環具取り付け用工具100は浴槽1の取付孔3にひっかけられる羽根132を備えるとともに、循環具取り付け用工具100は羽根132を広げた状態では径方向に沿う寸法を取付孔3の内径よりも大きくし、羽根132を折り畳んだ状態では径方向に沿う寸法を雄フレーム30の内径よりも小さくし、循環具取り付け用工具100の羽根132を取付孔3に保持させて、雌フレーム20を雄フレーム30に嵌合固定する循環具及び循環具取り付け用工具。」
の発明が記載されていると認められる。

3.対比・判断
本願発明と引用刊行物に記載の発明とを比較すると、引用刊行物に記載の発明の「取付孔3」、「シール材29a」、「雌フレーム20」、「パッキン40」、「雄フレーム30」、「雌ねじ21a」、「循環具取り付け用工具100」、「径方向に沿う寸法」及び「循環具及び循環具取り付け用工具」が、それぞれ本願発明の「取付開口」、「水密用の第1パッキン」、「後面ケース」、「水密用の第2パッキン」、「固定ケース」、「ねじ部」、「保持棒」、「外径寸法」及び「浴槽装着具」に相当し、本願発明の保持棒の「かぎ形状部分」と引用刊行物に記載の発明の「羽根132」は、ともに取付開口への「係止部」である点で共通するから、両者は、
「浴槽の取付開口の浴槽外側に水密用の第1パッキンを介して位置する後面ケースと、取付開口の浴槽内側に水密用の第2パッキンを介して位置するとともに、後面ケースに浴槽内側から螺合固定する固定ケースとを備え、後面ケースはねじ部を有すると共に、当該ねじ部に螺合する保持棒を具備し、保持棒は浴槽の取付開口にひっかけられる係止部を具備し、保持棒の係止部を取付開口に保持させて後面ケースを固定ケースに嵌合固定する浴槽装着具。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本願発明の取付開口は浴槽に穿設したものであるのに対し、引用刊行物に記載の発明の取付開口は浴槽に穿設したものであるか否かが不明な点

相違点2
本願発明の係止部はかぎ形状部分であり、かぎ形状部分の外径寸法が固定ケースの内径寸法より小さいのに対し、引用刊行物に記載の発明の係止部は羽根であり、羽根を折り畳んだ状態では外径寸法が固定ケースの内径寸法より小さい点

そこで、相違点1について検討すると、面材に開口を穿設により形成することは慣用技術にすぎず、引用刊行物に記載の発明において、浴槽に取付開口を穿設により形成することは当業者が適宜なし得ることである。
次に、相違点2について検討すると、棒状部材の係止手段として、かぎ形状部分を設けることはごく普通に行われていることであって、慣用技術にすぎず、また、引用刊行物に記載の発明においても、羽根を折り畳んだ状態の外径寸法が固定ケースの内径寸法より小さい保持棒を固定ケースに挿通しているから、引用刊行物に記載の発明において、保持棒に羽根にかえてかぎ形状部分を設けるとともに、固定ケースに挿通し得るように、かぎ形状部分の外径寸法を固定ケースの内径寸法より小さくすることは当業者が容易になし得ることにすぎない。
そして、全体として本願発明によりもたらされる効果も引用刊行物に記載の発明及び慣用技術から当業者であれば当然に予測できる程度のものであって顕著なものではない。
したがって、本願発明は、引用刊行物に記載の発明及び慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-04-09 
結審通知日 2002-04-16 
審決日 2002-05-01 
出願番号 特願平5-68538
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤木 啓二横井 巨人  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 鈴木 公子
中田 誠
発明の名称 浴槽装着具  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  

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