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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04F
管理番号 1060359
審判番号 不服2000-25  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-01-04 
確定日 2002-06-12 
事件の表示 平成 3年特許願第 46354号「外装用化粧パネル」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 8月31日出願公開、特開平 5-222819]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年3月12日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年4月30日付け、平成12年2月2日付け及び平成13年9月5日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、「本願発明」という)。
「【請求項1】 パネル基材上に、プライマー層、耐候性インキの絵柄印刷層および表面保護層を順に設けてなり、プライマー層が常温架橋型アクリル系樹脂であり、耐候性インキが、アクリル樹脂、フッ素樹脂またはアクリル樹脂-塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体混合物をビヒクルとするインキであり、表面保護層が、アクリル樹脂を主剤とし、シリコン化合物を硬化剤とした二液架橋反応型のシリコンアクリル系樹脂の硬化物からなることを特徴とする外装用化粧パネル。」

2.引用例記載事項
これに対して、当審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内に頒布された特開平2-58670号公報(以下、「引用例1」という。)には、
「(1)外装材の基材上に、防水性目止め材の層、絵柄の転写印刷層および耐候性プラスチックの保護層を順に設けてなる外装用化粧材。
(2)外装用の基材としてALC板、GRC板、中空押出しセメント板、ケイ酸カルシウム板、スレート板、陶磁器板およびポリカーボネート成形品からえらんだものを使用した請求項1の外装用化粧材。
(3)防水性目止め材として、アクリル系エマルジョン、アクリルースチレン系エマルジョン、アクリル-酢酸ビニル系エマルジヨンおよびセメントフィラーエマルジョンからえらんだ水性弾性塗料を使用した請求項1の外装用化粧材。(4)防水性目止め材として、アクリル系、アクリルーウレタン系およびポリ塩化ビニル系の少なくとも1種の樹脂を用いた有機溶剤系塗料を使用した請求項1の外装用化粧材。
(5)耐候性プラスチックとしてフッ素樹脂を使用した請求項1の外装用化粧材。(6)外装材の基材に防水性と目止め機能をもつ塗料を塗布し、乾燥させて平滑な面を形成し、その上に絵柄印刷を転写により行なったのち、表面に耐候性プラスチックの保護層を形成することからなる外装用化粧材の製造方法。」(特許請求の範囲)、
「本発明の目的は、美麗な絵柄をもつ外装用化粧材およびその製造方法を提供することにある。」(2頁右上欄2〜3行)、
「防水性目止め材の層は、化粧材に防水性をもたせるとともに、美麗な絵柄が設けられるよう基材とよく密着し、その表面の凹凸を埋めて平滑面を形成するために設ける。
このような条件にあうものの代表のひとつは、水性弾性塗料である。 好適な水性弾性塗料の例をあげれば、アクリル系エマルジョン、アクリル-スチレン系エマルジョン、アクリル-酢酸ビニル系エマルジヨンおよびセメントフィラーエマルジョンなどである。 いまひとつは溶剤系塗料であって、たとえばアクリル系、アクリル-ウレタン系およびポリ塩化ビニル系の少なくとも1種の樹脂を有機溶剤に溶解したものを用いる。」(2頁左下欄2〜14行)、
「絵柄の印刷は、前記のように転写による。転写シートの製造には一般の印刷インキを使用することができるが耐候性のあるインキたとえばアクリル樹脂または塩ビ-酢ビ共重合体/アクリル樹脂をビヒクルとし、それに適宜の顔料を分散させたものを使用することが好ましい。」(2頁右下欄2〜7行)、
「耐候性プラスチックの保護層は、耐汚染性、耐摩耗性および耐スクラッチ性などの表面物性もすぐれたプラスチックで形成するとよく、そのようなプラスチックとしてはアクリル樹脂、アクリル-ウレタン樹脂およびフッ素樹脂がある。とくにフッ素樹脂が好ましく、その例をあげれば、ポリビニリデンフルオライド、ポリメタクリル酸メチル、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体などである。」(2頁右下欄20行〜3頁左上欄8行)との記載がある。
以上の記載によれば、引用例1には、
「外装用の基材上に、防水性目止め材の層、耐候性のあるインキを用いた絵柄の転写印刷層および保護層を順に設けてなり、防水性目止め材の層が溶剤系塗料であって、アクリル系、アクリル-ウレタン系およびポリ塩化ビニル系の少なくとも1種の樹脂を有機溶剤に溶解したものを用い、耐候性インキがアクリル樹脂または塩ビ-酢ビ共重合体/アクリル樹脂をビヒクルとするインキであり、保護層が、耐候性プラスチックのアクリル樹脂からなる外装用化粧材。」という発明が記載されていると認められる。
同じく、特開昭64-58543号公報(以下、「引用例2」という。)には、
「本発明は、外壁面、特に、多孔質不燃性の外装材基体表面に接着貼合等を行って防水層を付与するに好適であり、化粧層に最外表面層として特定のトップコート塗膜層を積層させた耐候性、耐汚染性に優れた外装用防水化粧シートに関するものである。」(1頁右下欄14〜19行)、
「本発明の外装用防水化粧シートは、繊維質シート部材(1)と化粧層(3)と中間の防水層(2)とからなり、該防水層(2)の一部が防水塗料を前記繊維質シート部材(1)に含浸させた防水塗料含浸部(4)である表面化粧性を有するシート状物の化粧層(3)に硬化型フッ素樹脂系又はアクリルシリコン樹脂系の溶剤型塗料で形成されたトップコート塗膜層(9)を積層させたことを特徴としている。」(2頁左下欄12〜20行)、
「本発明に係る防水化粧シートを得るに当り、トップコート層として用いて本発明の効果を享受し得て好適に用いられるトップコート塗膜層形成用の前記以外の塗料としては、アクリルシリコン樹脂系の溶剤型塗料がある。例えば、鐘淵化学工業社製カネカゼムラック(KANEKA GEMLAC 商品名)がある。このものは主鎖にアルコキシシリル基を結合せしめてなるシロキサン架橋型反応性ポリマーであり、空気中の微量水分と反応して硬化し、良好な耐候性、耐汚染性トップコート塗膜層を好適に形成し、前記本発明の効果を享受しうるものとなり得る。」(3頁右下欄1〜12行)、
「本実施例で得た外装用防水化粧シートの裏面に下記配合割合の接着剤300g/m2 を均一にロールコーターで塗布して含浸させた後、外壁面下地(7)としてプレキャストコンクリート板(PC板)に貼合し、温度20℃、湿度65%の条件下に14日間乾燥した。」(5頁左下欄12〜17行)との記載がある。
同じく、特開昭50一95388号公報(以下、「引用例3」という。)には、
「つぎの単量体群
(a)水酸基を含有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステルまたはアミド誘導体、
(b)α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、
および
(c)(メタ)アクリル酸のアルキルエステルまたはシクロアルキルエステル、あるいは該エステルを主成分とする共重合可能なビニル系単量体混合物
を、下記一般式〔I〕で示される水可溶性溶剤中で共重合させて得た、カルボキシル基を3.0重量%以上と水酸基を含有するアクリル系共重合体の溶剤溶液に、下記平均組成式〔II〕で示される非水溶性有機けい素化合物を、該けい素化合物が前記共重合体中の水酸基に対して等モル以下に相当し、かつ該けい素化合物が5〜50重量%で前記共重合体が95〜50重量%となる量加えて反応せしめ、かくして得た相互反応重合体の溶剤溶液に、アミンまたはアンモニアを添加して相互反応重合体中のカルボキシル基を中和することにより水稀釈性を付与することを特徴とする、シリコン変性アクリル樹脂の製造方法。(〔I〕、〔II〕式の記載省略)」(特許請求の範囲)、
「本発明方法により製造されたシリコン変性アクリル樹脂は、水不溶性の有機けい素化合物とアクリル樹脂が一体化されて、アクリル樹脂自体の特長を損うことなく有機けい素化合物に固有の特性が導入されており、被膜形成能はもとより耐薬品性、耐汚染性、耐候性、耐熱性といつた諸性質が非常に優れているにもかかわらず、良好な水稀釈性を具備しているものであつて、多くの分野で使用される各種の材質からなる物体の被膜材などとして有用なものである。」(7頁左上欄1O行〜右上欄1行)との記載がある。
同じく、特開平1-204782号公報(以下、「引用例4」という。)には、
「(1)離型性基体シートの離型性面に、転写層として官能基を有する変成アクリル系樹脂が前記変成アクリル系樹脂の官能基と反応し得る官能基を有するシラン系化合物で架橋した架橋樹脂からなる耐熱性層と金属薄膜層とがこの順に積層されていることを特徴とする金属薄膜層転写シート。」(特許請求の範囲)、
「耐熱性層6は基本的には、官能基を有する変成アクリル系樹脂が前記変成アクリル系樹脂の官能基と反応し得る官能基を有するシラン系化合物で架橋した架橋樹脂からなる。官能基を有する変成アクリル樹脂としては、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルなどのアクリル樹脂に官能基を導入したもの、もしくはアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルなどのアクリルモノマーで官能基を有するものを重合させて得られる樹脂がある。いずれのものにおいても、官能基としては、水酸基、…アミノ基、…カルボルキシル基、…メルカプト基…などが適している。……前記変成アクリル系樹脂の官能基と反応し得る官能基を有するシラン系化合物としては、アルコキシシラン、アミノシラン…などのシラン系カップリング剤、又は、アセトキシシラン、アルコキシシラン…などのシラン化合物がある。」(4頁左下欄17行〜5頁左上欄10行)との記載がある。

3.対比・判断
本願発明と引用例1記載の発明とを比較すると、
引用例1記載の発明の「外装材の基材」、「防水性目止め材の層」、「耐候性のあるインキを用いた絵柄の転写印刷層」、「保護層」、「塩ビ-酢ビ共重合体/アクリル樹脂」、「外装用化粧材」は、本願発明の「パネル基材」、「プライマー層」、「耐候性インキの絵柄印刷層」、「表面保護層」、「アクリル樹脂-塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体混合物」、「外装用化粧パネル」に相当するから、両者は、「パネル基材上に、プライマー層、耐候性インキの絵柄印刷層および表面保護層を順に設けてなり、耐候性インキがアクリル樹脂またはアクリル樹脂-塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体混合物をビヒクルとするインキであり、表面保護層が、耐候性プラスチックの硬化物からなる外装用化粧パネル。」である点で一致し、
(1)プライマー層が、本願発明は、常温架橋型アクリル系樹脂であるのに対して、引用例1記載の発明は、アクリル系、アクリル-ウレタン系およびポリ塩化ビニル系の少なくとも1種の樹脂を有機溶剤に溶解したものである点、及び
(2)表面保護層を構成する耐候性プラスチックが、本願発明は、アクリル樹脂を主剤とし、シリコン化合物を硬化剤とした二液架橋反応型のシリコンアクリル系樹脂であるのに対して、引用例1記載の発明は、アクリル樹脂である点、で相違している。
上記相違点について検討する。
相違点(1)について
引用例1には、プライマー層として、アクリル-ウレタン系の樹脂を有機溶剤に溶解したものを選択することが記載されており、該アクリルーウレタン系とは、常温架橋型のアクリル樹脂であるアクリルウレタンを意味するものであるから、引用例1にも、本願発明と同様、プライマー層として、常温架橋型アクリル系樹脂を採用することが記載されているということができる。
さらに、引用例1には、プライマー層と表面保護層を同種のアクリル系樹脂にて構成することも記載されており、引用例1記載の発明において、表面保護層として、選択したアクリル系樹脂との接着性を考慮すれば、プライマー層として、同種のアクリル系樹脂である常温架橋型アクリル系樹脂を選択し、相違点(1)に係る本願発明の構成とすることは、格別困難なことではなく、当業者であれば、必要に応じて容易に材料限定できることにすぎない。
相違点(2)について
引用例2記載の「トップコート塗膜層(9)」、「外壁面下地(7)としてのプレレキャストコンクリート板(PC板)に貼合された外装用防水化粧シート」は、本願発明の「表面保護層」、「外装用化粧パネル」に相当するから、引用例2には、外装用化粧パネルの表面保護層を構成する耐候性プラスチックとして、シロキサン架橋(-Si-O-)されたシリコン変性アクリル樹脂を採用することが記載されており、また、引用例3、4等に示すように、シロキサン架橋(-Si-O-)されたシリコン変性アクリル樹脂として、アクリル樹脂を主剤とし、シリコン化合物を硬化剤とした二液架橋反応型のシリコンアクリル系樹脂は、本願の出願前、周知技術にすぎない。
そうしてみると、引用例1記載の発明の外装用化粧パネルの表面保護層を構成する耐候性プラスチックとして、アクリル樹脂を主剤とし、シリコン化合物を硬化剤とした二液架橋反応型のシリコンアクリル系樹脂の硬化物を適用し、相違点(2)に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に材料変更できることにすぎない。
そして、本願発明の効果も、引用例1、2記載の発明及び上記周知技術に固有の物性等に基づき予測できる範囲内のものであって、格別なものがあるとは認められない。

4.むすび
したがって、本願発明は、上記引用例1、2記載の発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2002-03-26 
結審通知日 2002-04-02 
審決日 2002-04-15 
出願番号 特願平3-46354
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 忠夫長谷部 善太郎井上 博之  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 中田 誠
鈴木 公子
発明の名称 外装用化粧パネル  
代理人 須賀 総夫  

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