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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C01G |
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管理番号 | 1060477 |
審判番号 | 不服2002-305 |
総通号数 | 32 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-09-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-01-10 |
確定日 | 2002-07-09 |
事件の表示 | 平成10年特許願第322808号「酸化物磁性材料、フェライト粒子、焼結磁石、ボンディッド磁石、磁気記録媒体およびモータ」拒絶査定に対する審判事件〔平成11年 9月14日出願公開、特開平11-246223、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年10月28日(遡及出願平成10年 2月25日優先権主張 平成 9年 2月25日 平成 9年 9月19日)の出願であって、その請求項1ないし7に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。 「【請求項1】六方晶構造を有するフェライトを主相とし、かつSr,BaおよびPbから選択される少なくとも1種の元素であってSrを必ず含むものをAとし、 希土類元素(Yを含む)から選択される少なくとも1種の元素であってLaを必ず含むものをRとし、 CoであるかCoおよびZnをMとしたとき、 式I A1-xRx(Fe12-yMy)zO19と表したとき、 0.04≦x≦0.6、 0.04≦y≦0.5、 0.7≦z≦1.2 である組成を有する酸化物磁性材料。 【請求項2】請求項1の酸化物磁性材料を含有するフェライト粒子。 【請求項3】請求項2のフェライト粒子を含むボンディッド磁石。 【請求項4】請求項1の酸化物磁性材料を含有する焼結磁石。 【請求項5】請求項4の焼結磁石を有するモータ。 【請求項6】請求項3のボンディット磁石を有するモータ。 【請求項7】請求項1の酸化物磁性材料を含有する薄膜磁性層を有する磁気記録媒体。」 2.原査定の理由 本願を拒絶すべきものとした原査定の理由の概要は、「請求項1に記載された組成式は、引用文献1(特開平1-278426号公報)に記載された範囲内のものである。なお、請求項2〜7に記載されたものは、酸化物磁性材料の用途として通常使われるものであり格別なものではない。」とした上で、「なお、本願発明はSrとLaを必ず含むものとしているが、例えば特開昭56-61101号公報に記載(請求項4及び公報第3頁右下欄8〜9行を参照)されているように従来周知であり、必要に応じて適宜選択し得ることである」とし、「請求項1ないし7に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物(引用文献1)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。 3.引用例記載の発明 (1)引用文献1(特開平1-278426号公報)には以下の記載がある。 ア-1.「鉄とハロゲン化アルカリ土類金属の供給される溶液は、化学式 M1-xPxFe12-xQxO19に従うバリウム又はストロンチウムフェライトM相結晶構造を有する。凝集しない初成磁性微粒子を製造するに十分な量のPハロゲン化溶液とQハロゲン化溶液を含み、ここに、Mはバリウム、ストロンチウム、鉛、ランタナム、カルシウム及びこれらの混合物からなるグループから選択され、Pは三価ランタナム、タンタニド、希土類及びこれらの混合物からなるグループから選択され、Qはニッケル、コバルト、第一鉄及びこれらの混合物からなるグループから選択され、xはゼロから1の範囲である請求項1記載のM相構造磁性微粒子の製造方法」(特許請求の範囲請求項12) ア-2.「(課題を解決するための手段及び作用)本発明は、M相結晶を有する微粒で凝集しないバリウム又はストロンチウムフェライト粒子を製造する方法である。」(第5頁左上欄16〜18行) ア-3.「M相粒子の磁性特性を変えるために、二価アルカリ土類金属と三価第二鉄イオンの両方が、一部他の金属イオンで置換される。」(第5頁右上欄4〜6行) (2)周知技術として引用した特開昭56-61101号公報(以下「引用文献2」という)には以下の記載がある。 イ-1.「特許請求の範囲第1項において、磁性微粉末が式A1-xLaxFe12-xCoxO19(x=0.5〜1.1の数)で示されるCo置換六方晶フェライト微粉末であることを特徴とする磁気記録体。」(特許請求の範囲第4項) イ-2.「上記にては磁性粉末としてCo-Nb置換バリウムフェライトを用いた場合を示したが、Coのみでの置換、Co-V置換、Co-Sb置換或いはCo-Ta置換の場合も、さらにCo,La置換、Co,Fe置換の場合もさらにまた被置換体がストロンチウムフェライト、カルシウムフェライトの場合もそれぞれ同様の結果が得られた。」(第3頁右下欄4〜10行) 4.本願発明1と引用文献1に記載される発明との対比・判断 記載ア-1によれば、引用文献1には、本願発明1の式Iにおいて、A、R、Mに相当する元素をそれぞれM、P、Qと表現し、当該式Iにおいてx=y、z=1に相当する化学式で表現された酸化物磁性材料が記載されている。 そこで、本願発明1と引用文献1に記載される発明とを対比すると、(a)本願発明では、x及びyがそれぞれ0.04≦x≦0.6、0.04≦y≦0.5という特定範囲に限定されているのに対し、刊行物記載のものでは、x=0〜1と例示されるものの、具体的な組成値についての記載がない点、(b)本件発明では、元素A、R、Mがそれぞれ、Sr、La、Coを必須の構成としているのに対し、刊行物記載のものは選択肢の一として例示されているにすぎない点で相違する。 一方、記載イ-1、特に記載イ-2によれば、引用文献2には、Sr,La,Coを含む「ストロンチウムフェライト」からなる磁性材料が例示されているが、その組成の具体的数値については記載されていない。 そして、引用文献2は、良好な垂直異方性を有し垂直磁化記録に適する六方晶フェライトの微粒子に関する発明であるのに対し、引用文献1は、M相結晶を有する微粒で凝集しないバリウム又はストロンチウムフェライト粒子の製造方法に関する発明であり、両者は発明の目的及び課題を異にするから、引用文献2において、Sr,La,Coを含む「ストロンチウムフェライト」が例示されていたからといって、引用文献1においてSr,La,Coを選択することが容易であるとはいえない。 本願発明1は、元素A、R、Mとして、それぞれSr、La、Coを必須の構成とするとともに、それぞれの組成割合を上記特定範囲とすることにより、飽和磁化と磁気異方性が共に高い六方晶フェライトを実現することにより、高い残留磁束密度と高い保磁力とを有すると共に、保磁力の温度特性が極めて優れたフェライト磁石を提供できるという、上記各引用文献からは予測できない作用効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、各引用文献に記載された発明といえないばかりか、各引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。 5.本願発明2ないし本願発明7について 本願発明2ないし7は、本願発明1を引用する発明であるから、本願発明1について検討したのと同じ理由で、各引用文献に記載された発明といえないばかりか、各引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。 6.むすび 以上のとおり、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2002-06-25 |
出願番号 | 特願平10-322808 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(C01G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 平塚 義三、酒井 朋広 |
特許庁審判長 |
石井 良夫 |
特許庁審判官 |
山田 充 岡田 和加子 |
発明の名称 | 酸化物磁性材料、フェライト粒子、焼結磁石、ボンディッド磁石、磁気記録媒体およびモータ |
代理人 | 石井 陽一 |