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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1060629
審判番号 不服2000-1534  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-10-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-02-10 
確定日 2002-06-26 
事件の表示 平成 9年特許願第 89939号「ガラス発泡複合体及びその製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成10年10月 6日出願公開、特開平10-266396]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成9年3月26日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成12年2月24日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】ガラス発泡体の内部に金属補強材を複合させたことを特徴とするガラス発泡複合体」

2.引用例の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である、特開昭63-252932号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
a「【請求項1】ガラスを粉砕したガラス粉30〜80wt%と、主成分がSiO2とAl2O3のいずれか又は両方を主成分とする……を含む無機粉粒体5〜60wt%と、ガス発泡剤と、粘度調整剤0〜40wt%とを混合し、これを700℃〜900℃で焼成し、ガラス粉と無機粉末とを溶融すると共に、ガス発泡剤でガス発泡させ、冷却して固化する発泡ガラスボードの製造方法。」(特許請求の範囲)
b「本発明の重要な目的は、原料に安価な屑ガラスが使用できるにも拘らず、冷却工程におけるさめ割れが極減でき、大きなボードが短時間で製造でき、……発泡ガラスボードの製造方法を提供する」(2頁左下欄2〜8行)
c「本発明の方法で製造されたボードは、コンクリート製のALC板に比べて極めて美しく、室内用の建築材としても使用可能である。」(6頁左上欄11〜13行)
以上の記載によれば、引用例1には、「発泡ガラスボード」の発明が記載されているものと認められる。
同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である、実願昭59-173941号(実開昭61-87814号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
a「本考案は外装材、内装材、間仕切り材等として用いられる耐火ボードに関する。」(明細書1頁12〜13行)
b「最近ケイ酸ソーダとこれを常温で発熱発泡固形化させる固形剤とから成る無機質バインダーが開発されたので、本出願人は、この無機質バインダーに注目し、これを無機質発泡骨材に混合し、型内に流し込んで耐火ボードを成形することを試みたのである。……こうして製造された耐火ボードは主として無機質材料で構成されているので耐火性がありかつ発泡材から成るので軽量であり、また耐水性を有する……等の優れた性質を備えているのであるが、バインダーが脆いガラス質であるため衝撃力に対して弱いという弱点を有している。……そこで本考案は、無機質発泡体を主材とする骨材を、ケイ酸ソーダとこれを発熱発泡固形化させる固形剤とから成るバインダーで板状に成形して成り、この板状成形体内に網状または線状の補強材を埋入してなる耐火ボードを提供するものである。」(同2頁11行〜3頁19行)
c「(作用)かかる構成の耐火ボードによると、……網状又は線状の補強材を埋入したことにより衝撃力を吸収でき、衝撃による破損を防止することができる。」(同3頁20行〜4頁5行)
d「第1図及び第2図において、(1)は耐火ボードで、パーライト、製鉄スラグ又はコクヨウ石やガラスの発泡粒体等の無機質発泡体を無機質バインダーで板状に成形した板状成形体(2)にて構成されている。……前記板状成形体(2)の厚み方向中間位置には、ほゞ全面にわたつてラス網又は金網からなる網状の補強材(3)が埋設されている。」(同4頁11行〜5頁6行)
e「この耐火ボード(1)を製造するには、無機質発泡体を主材とする骨材とケイ酸ソーダと『SBパウダー』を均一に混合し、予じめ100〜120℃に加温された型内にこの混合物を供給し、適当な厚みの平板状に整形し、その上にラス網等の補強材(3)を配置し、さらにその上に所定の厚みまで前記混合物を供給して平板状に成形する。すると、ケイ酸ソーダと『SBパウダー』が反応して発熱発泡固形化し、補強材(3)を埋入した板状成形体(2)が成形される。」(同5頁17行〜6頁6行)

3.対比・判断
本願発明1と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「発泡ガラスボード」は、ガラス発泡体であるから、両者は、「ガラス発泡体」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点
本願発明1は、ガラス発泡体の内部に金属補強材を複合させたガラス発泡複合体であるのに対し、引用例1記載の発明は、ガラス発泡体の内部に金属補強材を複合させていない。
そこで、上記相違点について検討する。
引用例2には、コクヨウ石やガラスの発泡粒体等の無機質発泡体をケイ酸ソーダとこれを発熱発泡固形化させる固形剤とから成るバインダーで板状に成形した板状成形体で構成された耐火ボードは、バインダーが脆いガラス質であるため衝撃力に対して弱いという問題点があり、それを解決するために、該板状成形体内に金網からなる補強材を埋入させ、衝撃力を吸収し、衝撃による破損を防止することが記載されている。換言すると、引用例2には、板状成形体の内部に金網からなる補強材を埋入させることにより、ガラス質の板状成形体を補強するという技術事項が開示されている。そして、建築材として用いられる板状体(ボード)に強度が要求されることは、自明の事項であり、建築材としての用途が例示されている引用例1記載の発明に係るガラス発泡体(発泡ガラスボード)において、強度の面でより強いものとすることを妨げる要因はないから、引用例2に開示された上記技術事項を引用例1記載の発明に適用して、本願発明1の相違点における事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

4.むすび
したがって、本願発明1は、引用例1記載の発明及び引用例2に開示された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-03-12 
結審通知日 2002-04-02 
審決日 2002-04-15 
出願番号 特願平9-89939
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 忠夫長谷部 善太郎住田 秀弘  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 蔵野 いづみ
鈴木 公子
発明の名称 ガラス発泡複合体及びその製造方法  
代理人 神戸 真  
代理人 神戸 清  

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