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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1060643
審判番号 審判1999-11302  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-01-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-07-08 
確定日 2002-06-26 
事件の表示 平成 8年特許願第162129号「無線選択呼出受信機」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 1月16日出願公開、特開平10- 13899]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年6月21日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成10年5月12日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。
「電話番号メモリとメッセージメモリとを有し、前記電話番号メモリからメッセージ送信先の電話番号を読み出し、前記メッセージメモリから送信するメッセージ情報を読み出し、これらをDTMF信号に変換して送信するオートダイヤル機能を有する無線選択呼出受信機において、
前記オートダイヤル機能を用いて前記メッセージ情報を他の無線選択呼出受信機へ送信する際に、予め記憶された発信者情報をメッセージ情報の一部として自動的に前記メッセージ情報に付加する発信者情報付加手段を有することを特徴とする無線選択呼出受信機。」

2.引用例
これに対して、当審において平成14年1月23日付けで通知した拒絶の理由に引用した実願平4-5578号(実開平5-65142号)のCD-ROM(平成5年8月27日出願公開、以下「引用例1」という。)、及び、特開平8-125603号公報(平成8年5月17日出願公開、以下「引用例2」という。)には、それぞれ、次の事項が記載されている。

[引用例1]
A.「【産業上の利用分野】
この考案はメッセージを伝達可能とされているページャ・メッセージ・ダイアラーに関する。」(第4頁第3〜5行)
B.「【課題を解決するための手段】
この考案によれば、メッセージ入力手段と、その入力手段に入力されたメッセージを記憶する記憶手段と、その記憶されたメッセージを読み出し、順次トーン信号音で送出する手段とを備え、電源として電池が用いられる。
また少くとも1つのページャ呼出し番号(ID番号)が記憶され、その記憶されたID番号が読み出されて順次トーン信号音で送出される。」(第5頁第27行〜第6頁第3行)
C.「【実施例】
以上に述べた如く、新たにメッセージ入力手段、メッセージ記憶(登録)手段、メッセージ送出手段を設け、単純・簡単な操作と、少数のキーと、小型軽量性を実現したこの考案の実施例について外形とキー配列とを図1に電気的構成を図2に示す。
【0018】
実施例では、ページャID番号を6つ登録(記憶)することができ、またメッセージも頻度多く使用するものを6つ登録(記憶)することができるようにした例で、それぞれの記憶番地は1,2,4,5,7,8の番号を附してあり、夫々の対応するキーを押すことで番地を指定できる。勿論全キーを使用すれば、夫々に12種、更には2桁の番地を指定することも可能であるが、ページャ専用で単純性を重視し、夫々6種づつとした例について説明する。
【0019】
図1Bに示すようにこの考案のページャ11の裏面12の中央部にスピーカの放音孔13が形成され、その下部に電池交換カバー14が取付けられ、これと対応して電池15が内蔵されている。ページャ11の表面16に12キー(123…7890*#)17と、訂正キーCLEAR記憶キーMERY、メッセージキーMESS、ID番号キーDIAL、送信用としてID送信キーDIAL SEND、メッセージ送信キーMESS SENDが設けられている。
・・・(中略)・・・
【0032】
トーンダイヤル電話機に対しては、ダイアラー側は一度の送信操作でID番号が送信された後、メッセージ送信も自動的に継続して行われる。これはID番号送信後回線が接続される迄の時間(呼の発生状況でこの時間は長・短がある)と、その後サービス局からの案内アナウンス「…どうぞメッセージをお入れ下さい」が終了する迄の時間(この時間は一定である)との和に若干の余裕時間を加えた時間TWだけID番号の送信後に休止して、つづいてメッセージを送るようにすればよい。しかしこの休止時間TWは一般に長く30秒程度になるので、ID番号送信と、メッセージ送信とは分離した方が使い勝手がよい。」(第8頁第25行〜第13頁第8行、及び図1参照)
D.「【0034】
図2にこの実施例の電気的な機能構成を示す。マイクロ・コンピュータ(マイコンと記す)23としては4ビット系で十分であり、これに12キー群(1,2,3,4,5,6,7,8,9,0,*,#)17、CLEARキー24、登録(記憶)メモリ選択用のDIAL,MESSキー25,26、登録(記憶)指令用のMERYキー27、ID番号送信用のDIAL SENDキー28、メッセージ送信用のMESS SENDキー29が収容される。12キー17中の番地指定用キー17a(1,2,4,5,7,8)はOR回路31を通じてAND回路32にも接続され、またキー25,26,28,29もOR回路33を通じてAND回路32に接続され、AND回路32の出力側は、電池34からマイクロコンピュータ23の電源端子へ電力供給を制御するON-OFF回路35のON指令側へ接続されている。
・・・(中略)・・・
【0036】
ON-OFF回路35がONとなると、マイコン23は初期シーケンスを行い、入力端子を順次走査して入力情況をしらべる。信号線a群と信号線b群との情況からIDメモリ36、メッセージメモリ37の何れのどの番地に使用者が何を行なおうとするかをマイコン23が判断することができる。例えば番地指定用キー17a中の4のキーとIDメモリ指定用キー25とが押されていることを検出すると、IDメモリ36の4番地に対し、これから入力されるデータを書込むためのプログラムが起動される。従ってつづくキー群17の入力は入出力レジスター(図示せず)に順次記入され、表示器38に表示され、もし途中に誤りがありCLEARキー24が押されると消されて入力がやり直される。入力が終了しMERYキー27が押されると前記入出力レジスタのデータはIDメモリ36の4番地に移される。MERYキー27によりデータのIDメモリ36の番地4への移送が終了するとマイコン23はOFF信号をON-OFF回路35に送りON-OFF回路35はOFFとなる。同様にしてメッセージもメッセージメモリ37の所望の番地に書込み登録することができる。
【0037】
次に送信の場合を説明する。例えば番地指定キー17a中の4のキーが押され、且つDIAL SENDキー28が押されていることをマイコン23が検出すると、IDメモリ36の番地4の内容が入出力レジスターに読み出されプログラムにより1桁づつトーン発生回路39に送られトーン(DTMF信号)信号となりスピーカ41から放音される。ID番号の10桁のみが送出され、つづく局コード(**や*)及び最長桁数は送信されない。これは送出桁を計数し、10桁迄で止めることで実現できる。」(第13頁第16行〜第15頁第2行、及び図2参照)

上記A〜Dの記載、及び図1、2を参照すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
IDメモリ36とメッセージメモリ37とを有し、前記IDメモリ36からメッセージ送信先のページャ呼出し番号(ID番号)を読み出し、前記メッセージメモリ37から送信するメッセージを読み出し、これらをDTMF信号に変換して送信するオートダイヤル機能を有するページャ11。

[引用例2]
A.「【産業上の利用分野】本発明は通信端末装置に関し、例えばデイジタルセルラ端末に適用し得るものである。」(第2頁左欄第47〜48行)
B.「【0004】これらは携帯電話機能についてのシステムであるが、これらの中にはGSMのようにシヨートメツセージサービスの提供が予定されているものがある。シヨートメツセージサービスは 160文字までの7〔bit〕文字を送受信するサービスであり、これを使用すれば携帯電話をページヤーのように使用することができる。」(第2頁右欄第6〜11行)
C.「【0027】(2-4)自動挿入モードによる作成
このような例は、今まで述べたものと比べると若干異質ではあるが、メツセージ作成時に登録してある名前等を使用して、相手名や自分の名前を自動的に文章中に埋め込んでしまうようなことも考えられる。
例えば携帯電話1に自分(発信者)の名前を登録しておき、SIMカード12内の電話帳から相手を選択してメツセージを出すことを考える。
【0028】このようなとき分かりやすい例として、文の最初に「Dear xxxx,」、文の最後に「From yyyy.」を付加するようなものを考えてみる。ここで「xxxx」は相手の名前、「yyyy」は自分の名前であるとする。このような文を定型文の最初と最後に付加するような設定をした場合に、登録した発信者の名前を「yyyy」に挿入し、電話帳から選んだ相手先の名前を「xxxx」に自動挿入することは容易にできる。その他の定型文内でも自分の名前を入れる場所や相手の名前が入る場所がわかつている場合にはそのような設定を定型文に行い名前を自動挿入するようなことも可能である。」(第4頁左欄第47行〜右欄第15行)

3.対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明における「IDメモリ36」、「メッセージメモリ37」、「ページャ呼出し番号(ID番号)」、「メッセージ」、「ページャ11」は、それぞれ、本願発明における「電話番号メモリ」、「メッセージメモリ」、「電話番号」、「メッセージ情報」、「無線選択呼出受信機」に対応するものと認められる。
よって、本願発明と引用例1記載の発明とは、
電話番号メモリとメッセージメモリとを有し、前記電話番号メモリからメッセージ送信先の電話番号を読み出し、前記メッセージメモリから送信するメッセージ情報を読み出し、これらをDTMF信号に変換して送信するオートダイヤル機能を有する無線選択呼出受信機
である点で一致し、次の点が相違する。
相違点:本願発明は、「オートダイヤル機能を用いてメッセージ情報を他の無線選択呼出受信機へ送信する際に、予め記憶された発信者情報をメッセージ情報の一部として自動的に前記メッセージ情報に付加する発信者情報付加手段」を備えるのに対し、引用例1記載の発明は、そのような手段を備えていない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
上記引用例2には、「通信端末装置」、例えば「ディジタルセルラ端末に適用し得るもの」について、上記Bの記載によれば、その背景として、携帯電話システムの中には、ショートメッセージサービスの提供が予定されているものがあり、それを使用すれば携帯電話をページャーのように使用することができるとされており、送信するメッセージを作成する具体例として、上記Cの記載によれば、「自動挿入モードによる作成」として、定型文に対して登録した発信者の名前を自動挿入する例が示されている。
引用例2記載の発明は、メッセージ情報をDTMF信号に変換して送信するオートダイヤル機能を有する無線選択呼出受信機(ページャ)に関するものではないが、メッセージ情報を送信する通信端末装置であるということにおいては、引用例2に「ページャーのように使用することができる」との記載があるように、ページャと類似の機能を有する通信端末装置であるということができる。
また、上記引用例2記載の発明においては、発信者情報をメッセージの中に自動挿入することをメッセージを作成する際に行うようにしているが、通信装置において、発信者情報を送信文書本体に自動的に付加することを文書を送信する際に行うようにすることは、周知技術にすぎない。(例えば、特開平5-110708号公報には、その第2頁左欄第2〜9行に、「通信相手のダイヤル数字を短縮ダイヤルに対応させて登録する短縮ダイヤル記憶手段と、前記短縮ダイヤル記憶手段に登録された各ダイヤル数字に対応する定型情報を記憶する短縮ブロック情報記憶手段と、前記短縮ダイヤルが入力されたときに、この短縮ダイヤルに対応する定型情報を前記短縮ブロック情報記憶手段から読出して送信文書本体に付加する手段とを具備した」と記載され、第4頁右欄第28〜32行に、「さらに、発信人の氏名など、複数の相手に共通するような汎用性のある短縮ブロック情報は、短縮ダイヤル毎にブロックを生成して登録しておくことはなく、共通のブロック番号によって1つの短縮ブロック情報を登録しておけばよいことはいうまでもない。」と記載されている点を参照されたい。)
よって、引用例1記載の発明と引用例2記載の発明のページャとしての機能の共通性及び上記周知技術を踏まえれば、引用例1記載の発明において、「オートダイヤル機能を用いてメッセージ情報を他の無線選択呼出受信機へ送信する際に、予め記憶された発信者情報をメッセージ情報の一部として自動的に前記メッセージ情報に付加する発信者情報付加手段」を備えるようにすることは、当業者が適宜に設計できる事項であるものと認められる。
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1、2に記載の発明及び上記周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1、2に記載の発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-04-12 
結審通知日 2002-04-23 
審決日 2002-05-08 
出願番号 特願平8-162129
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 溝本 安展  
特許庁審判長 井関 守三
特許庁審判官 長島 孝志
吉見 信明
発明の名称 無線選択呼出受信機  
代理人 京本 直樹  

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