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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04F |
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管理番号 | 1060735 |
審判番号 | 不服2001-16045 |
総通号数 | 32 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-04-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-09-07 |
確定日 | 2002-07-01 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第273139号「外壁の化粧方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 4月12日出願公開、特開平 6-101319]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本件発明 本願は、平成4年10月12日(優先権主張平成4年8月4日)に特許出願されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成13年5月2日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】基材の表面に耐候性湿気硬化型接着剤を一定の厚さに塗付して表面化粧板を接着し、そのまま目地を打たずに外壁として使用する外壁の化粧方法であって、上記耐候性湿気硬化型接着剤が、a)分子中に1個以上の反応性珪素基を有する高分子化合物(A)及びその硬化促進剤(B)よりなるシリコーン系及び/又は変成シリコーン系接着剤、及び/又はb)上記(A)及び/又は(B)とエポキシ基を有する化合物(C)およびその硬化剤(D)の混合物よりなる変成シリコーン系エポキシ接着剤であり、上記a)及び/又はb)に、さらにc)分子末端に反応性珪素を有するアクリル酸エステル系重合体または共重合体及び/又はメタクリル酸エステル系重合体または共重合体、及び/またはd)分子中に少なくとも1個以上の反応性珪素と1個以上のアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを含む下記式(I)で示される化合物(E)を配合することを特徴とする外壁の化粧方法。 【化1】 ![]() 〔式(I)中、R1はH又はCH3、R2は炭素数1〜10の置換若しくは非置換の1価の有機基又はトリオルガノシロキサン基、Xは水酸基又は異質もしくは同様の加水分解基、nは0〜8の整数、mは0、1、2または3である。〕」(以下「本願発明」という)。 2.引用刊行物の記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物には、以下の事項が記載されている。 実願昭63-159903号(実開平2-79738号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という)には、「建物の外壁等に用いられるタイル及びタイルが貼られた壁」(第1頁第20行〜第2頁第1行)について記載され、「タイルの裏面の内側に裏足を設け・・・その裏足部分で壁下地面に接着剤層を介して複数枚隣接して接着し、上記タイルの空隙部を雨水の流れる排水溝とした」(実用新案登録請求の範囲第2項)、「接着剤層3は・・・特に弾性を有する接着剤が、振動や衝撃によるタイル1の剥がれ落ちを防止する効果があるので好ましい。弾性を有する接着剤としては、変成シリコン樹脂を含む接着剤が好ましい。例えば、変成シリコン樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤と変成シリコン樹脂の混合物からなる接着剤、エポキシ樹脂系接着剤と変成シリコン樹脂の混合物からなる接着剤などである。」(第6頁第13行〜第7頁第2行)と記載されている。 これらの記載及び図面の記載からみて、引用例1には、「壁下地材の表面に接着剤を一定の厚さに塗付してタイルを接着し、そのまま目地を打たずに外壁として使用する外壁の化粧方法において、接着剤が、変成シリコーン系接着剤、又は変成シリコーン系エポキシ接着剤である外壁の化粧方法」の発明が記載されていると認める。 特開平2-214759号公報(以下「引用例2」という)には、 「(A)反応性珪素基を少なくとも1個有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体、(B)反応性珪素基を少なくとも1個有するオキシアルキレン系重合体、及び(C)エポキシ樹脂を含有してなる硬化性組成物」(2頁右上欄11〜16行)について記載され、「本発明の硬化性組成物から得られる硬化物は、優れた接着性を有する他、土木用接着剤等において重要な耐候性にも優れたものである。」(2頁右上欄17〜左下欄1行)、「反応性珪素基は(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体分子鎖の末端に存在してもよく、内部に存在してもよく、或いは両方に存在してもよい。特に反応性珪素基が分子鎖の末端に存在する場合には、・・・高強度で高伸びのゴム状硬化物が得られ易くなる等の点から好ましい。」(4頁右下欄5〜13行)、「本発明の硬化性組成物には、該組成物の硬化性を向上させるため、シラノール縮合触媒、エポキシ樹脂硬化剤等を必要に応じて配合してもよい。」(10頁左上欄第16〜18行)と記載されている。 さらに、実施例の合成例1には、(B)成分である、分子末端に反応性珪素基を有するポリオキシプロピレン系重合体を合成することが、合成例2には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含むモノマー混合液から(A)成分を合成すること(12頁右上欄下から3行〜右下欄11行)が記載され、実施例1〜8には、 「(B)成分である合成例1で得られたポリマーと 、(A)成分である合成例2で得られたポリマー及び(C)成分としてエピコート824(油化シェルエポキシ(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)とを固形分比が下記第1表で示した割合となるように配合し、混合した後、・・・合成例1で得られたポリマーと 合成例2で得られたポリマーの総量100に対して、・・・シラノール縮合触媒として♯918(三共(株)製の有機スズ化合物)1部及び水0.4部を、エピコート824 100部に対してエポキシ樹脂硬化剤として2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(以下「DMP-30」という)10部をそれぞれ添加混合した組成物」の引張剪断接着強さ、剥離接着強さ優れていることが示され、実施例9には実施例1〜8と同様にして製造された組成物の耐候性が優れていることが記載されている(13頁右上欄6行〜14頁右下欄下から6行)。 特開平3-263478号公報(引用例3)には、湿気硬化型接着剤によるコンタクト型接着方法に関して記載され、該接着方法に用いられる接着剤として「(a)分子中に1個以上の反応性珪素基を有する高分子化合物(A)よりなるシリコーン系接着剤及び変性シリコーン系接着剤、(b)分子中1個以上のイソシアネート基を有する高分子化合物(B)よりなるウレタン系接着剤及び(c)上記(A)及び/又は(B)とエポキシ基を有する化合物より構成される特殊タイプのエポキシ系接着剤の少なくともいずれか一種である接着剤」(特許請求の範囲第4項)が記載され、さらに、「コンタクト接着方法において使用可能な接着剤は、・・硬化促進剤を・・配合して得られる。」(3頁左下欄8〜10行)と記載されている。 そして、5頁左下欄の第2表には、接着剤組成物Bとして、「合成例1」で合成された(メタ)アクリル酸アルキルエステルとγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含むモノマー混合液から合成された(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、「合成例6」で合成された、分子末端に反応性珪素基を有するポリオキシプロピレン、及び硬化促進剤であるジブチル錫オキサイド溶液を配合した接着剤、及び接着剤組成物Cとして、「合成例1」で合成された(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、「合成例7」で合成された、分子末端に反応性珪素基を有するポリオキシプロピレン、及び硬化促進剤であるジブチル錫オキサイド溶液を配合した接着剤が記載され、実施例9〜12には、組成物B、Cを軟鋼板の接着に用い、手で容易にズレない固定性、手で容易に剥がれない接着性が得られたことが記載されている(6頁右上欄末行〜右下欄)。 3.対比・判断 本願発明と引用例1記載の発明を対比すると、引用例1記載の「壁下地材」、「タイル」はそれぞれ本願発明の「基材」及び「表面化粧材」に相当するから、本願発明と引用例1記載の発明とは、「基材の表面に耐候性湿気硬化型接着剤を一定の厚さに塗付して表面化粧板を接着し、そのまま目地を打たずに外壁として使用する外壁の化粧方法であって、接着剤が、変成シリコーン系接着剤、又は変成シリコーン系エポキシ接着剤である外壁の化粧方法」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 接着剤が、本願発明においては、耐候性湿気硬化型接着剤であり、「a)分子中に1個以上の反応性珪素基を有する高分子化合物(A)及びその硬化促進剤(B)よりなるシリコーン系及び/又は変成シリコーン系接着剤、及び/又はb)上記(A)及び/又は(B)とエポキシ基を有する化合物(C)およびその硬化剤(D)の混合物よりなる変成シリコーン系エポキシ接着剤であり、上記a)及び/又はb)に、さらにc)分子末端に反応性珪素を有するアクリル酸エステル系重合体または共重合体及び/又はメタクリル酸エステル系重合体または共重合体、及び/またはd)分子中に少なくとも1個以上の反応性珪素と1個以上のアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを含む式(I)で示される化合物(E)を配合」したものであるのに対し、引用例1に記載の接着剤は、変成シリコーン系接着剤、又は変成シリコーン系エポキシ接着剤ではあるものの、接着剤の具体的な組成が不明である点。 上記相違点について検討する。 (1)引用例2の合成例2に記載の「γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン」は本願発明の式(I)において、R1が水素、nが3、Xが加水分解基であるメトキシ基、R2が炭素数1のメトキシ基である化合物であり、本願発明の式(I)で示される化合物(E)に相当するから、引用例2に記載の合成例2において合成される(A)成分は、本願発明の「c)成分」又は「c)成分及びd)成分」に相当し、引用例2に記載「(B)反応性珪素基を少なくとも1個有するオキシアルキレン系重合体」、「シラノール縮合触媒」及び「エポキシ樹脂硬化剤」は、それぞれ本願発明の「(A)成分」、「(B)成分」及び「(D)成分」に相当するから、引用例2には、本願発明の接着剤組成物に含まれる「分子中に1個以上の反応性珪素基を有する高分子化合物(A)及びその硬化促進剤(B)とエポキシ基を有する化合物(C)およびその硬化剤(D)の混合物よりなる変成シリコーン系エポキシ接着剤であり、さらにc)分子末端に反応性珪素を有するアクリル酸エステル系重合体または共重合体及び/又はメタクリル酸エステル系重合体または共重合体、又は、c)及びd)式(I)で示される化合物(E)を配合した接着剤」が具体的に記載されていると認められ、この接着剤は湿気硬化型接着剤であることは明らかである。 ところで、引用例1に記載の目地を打たない外壁においては、接着剤は外壁表面に一部が露出することになるから、接着剤として耐候性のあるものを選択しなければならないことは明らかである。そして引用例2の接着剤は優れた強度、耐候性を有するものであるから、引用例1記載の外壁の化粧方法の発明において、変成シリコーン系エポキシ接着剤として、引用例2に記載の接着剤を採用し、本願発明を構成することは当業者が容易に想到することができたものと認める。 (2)また、引用例3に記載の「合成例1」で合成された(メタ)アクリル酸アルキルエステルとγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含むモノマー混合液から合成された成分は、本願明細書に記載の合成例1と同一であり、本願発明の「c)成分」又は「c)成分及びd)成分」に相当し、「合成例6,7」において合成される「分子末端に反応性珪素基を有するポリオキシプロピレン成分」は本願明細書に記載の合成例8,9で合成される成分と同一であって、本願発明の「(A)成分」に相当し、引用例3に記載の「硬化促進剤」は本願発明の「(B)成分」に相当するからは、引用例3には、本願発明の接着剤組成物に含まれる、「分子中に1個以上の反応性珪素基を有する高分子化合物(A)及びその硬化促進剤(B)よりまる変成シリコーン系接着剤であって、さらにc)分子末端に反応性珪素を有するアクリル酸エステル系重合体または共重合体及び/又はメタクリル酸エステル系重合体または共重合体、または、c)及びd)式(I)で示される化合物(E)を配合した湿気硬化型接着剤」が具体的に記載されている。 そして、引用例3に記載の接着剤は、鋼板の接着に使用できる強度を有するものであり、また耐候性について記載されていないが、引用例3に記載の、分子末端に反応性珪素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体と、反応性珪素基を有するポリオキシアルキレンを配合した接着剤が、耐候性、耐水性を有し、構造用接着剤等として使用されることは、例えば特開昭63-112642号公報、特開平2-52935号公報に記載されているように周知であることから、引用例1記載の外壁の化粧方法において、変成シリコーン系接着剤として、引用例3に記載の湿気硬化性接着剤を採用し、本願発明を構成することは当業者が容易に想到することができたものと認める。 4.むすび したがって、本願発明は、上記引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて、又は引用例1及び引用例3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、特許を受けることができない。 |
審理終結日 | 2002-04-25 |
結審通知日 | 2002-04-26 |
審決日 | 2002-05-21 |
出願番号 | 特願平4-273139 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E04F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 七字 ひろみ |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
蔵野 いづみ 山口 由木 |
発明の名称 | 外壁の化粧方法 |
代理人 | 石原 詔二 |