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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01H
管理番号 1060788
審判番号 不服2001-3962  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-15 
確定日 2002-07-04 
事件の表示 平成 3年特許願第152818号「リレー」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 9月16日出願公開、特開平 6-260071]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年6月25日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年12月3日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「コイルの励磁,逆励磁によりコイルを巻装した鉄心の磁極面に吸引されるアマチュアと、アマチュアと磁気的結合を図るヨークと、2つの主接点部と、アマチュアが鉄心の磁極面に吸引されることにより2つの主接点部を開閉駆動する駆動手段とを備え、上記ヨークを略L型に形成し、該ヨークの一片と鉄心とを連結して略T字型の電磁石部を構成し、ヨークの他片をコイルの下面に配設し、上記電磁石部の両側に主接点部を夫々配設するとともに、各主接点部は、開成又は閉成する固定接点および可動接点と、可動接点が配設される板バネと、板バネと並列に接続する編組導線とを備え、駆動手段は、アマチュアが鉄心の磁極面に吸引されることにより回動し、回動方向の両端部に各主接点部の板バネを保持する可動枠を備えて、各主接点部の固定接点が可動接点に対してそれぞれ可動枠の回動方向の同じ向きに配置されることで、一方の主接点部を開成したときには他方の主接点部も開成し、一方の主接点部を閉成したときには他方の主接点部も閉成するリレーにおいて、上記両主接点部を夫々の板バネが上記可動枠の回動によってバネ付勢方向とは逆方向に押動されたときに閉成するフレクシャー型とするとともに、一方の主接点部の外側に補助接点部を設け、この補助接点部が、上記可動枠が上記の両主接点部を開成する方向の回動時に上記可動枠の一部で押し駆動される板バネと、該板バネに備えられた可動接点と、該可動接点に対して対向配置され、上記板バネが上記可動枠により押し駆動されたときに上記可動接点が開離し、上記可動枠による押し駆動力が解除されて上記板バネが復帰したときに上記可動接点が接触する固定接点とからなるリフトオフ型の接点部により構成されていることを特徴とするリレー。」
2. 当審の拒絶理由
当審において平成13年9月27日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願出願前頒布された「特開平2-114419号公報」(以下、「引用例1」という。)及び「実願昭58-102054号(実開昭60-10255号)のマイクロフィルム」(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3. 引用発明
(引用例1)
引用例1には、以下のように記載されている。
(イ)「コイルの励磁、非励磁により接点を開閉して負荷を制御するリレーにおいて、固定接点に対向する可動接点と、この可動接点を一端に固着した板バネと、この板バネの他端に固着され板バネを取り付ける端子とを有し、上記可動接点と端子間に板バネと並列に可撓性導体を接続したことを特徴とするリレーの接点装置。」(第1頁左下欄第5〜11行)
(ロ)「板バネ14と導体板16とを可動接点15で同時にかしめて固着している。…そして、導体板16の下部と端子板13の中央部分との間に板バネ14と平行して可撓性の編組導線18をスポット溶接して接続している。…導電性の端子板19の上端部には可動接点15と相対する固定接点20が固着され、」(第3頁左上欄第12〜20行)
(ハ)「主接点ブロックBとは反対側に配置される補助接点ブロックCは以下のように構成されている。すなわち、…補助端子板22の上端部には固定接点23を固着し、この固定接点23を相対する可動接点26を先端に固着した板バネ25の基部は補助端子板24の上端部に固着されている。」(第3頁右上欄第2〜8行)
(ニ)「主接点ブロックBと補助接点ブロックCとの間のベース11の上面中央に配置されるコイルブロックAについて説明する。L型に折曲されたヨーク27の一片には四角状の穴27aが穿設され、他片の両端部から磁極片28が夫々対向して立設してある。…鉄心29がヨーク27に固定される。鉄心29の端部はコイル枠31より出ていて、両側面を磁極面30としている。コイル枠31の外周面にはコイル32が巻装され、…鍔部33の上面に突台33aが形成されており、この突台33aに上面開口で円形の軸穴35が形成してある。
コイルブロックAの上方に配置される可動ブロックDは、可動枠36、2枚のアマチュア37及び永久磁石38等から構成されている。絶縁体からなる可動枠36の一端には回動軸40が垂設されていて、この回動軸40がコイル枠31の軸穴35に軸支されて、可動枠36が回動可能となっている。可動枠36の他端の下面には第3図に示すように永久磁石38を挟持した2枚のアマチュア37が配置されて固着され、可動枠36の一方の側部から坂バネ14を駆動する腕部41が形成されている。…腕部41は、第1図及び第3図に示すように隙間をあけて突部42、43が斜めに形成してあり、両突部42、43間のスリット44に板バネ14を配設している。」(第3頁右上欄第11行〜右下欄第1行)
(ホ)「セット端子34bと共通端子34aに電圧を印可すると、コイル32が励磁されて一方のアマチュア37bは鉄心29の磁極面30に、また、他方のアマチュア37aは磁極片28に夫々吸引されて、可動枠36は回動軸40を軸として時計方向に回動し、第4図に示すようなオン状態となる。つまり、可動枠36が時計方向に回動することで、腕部41にて主接点ブロックBの板バネ14を付勢して両端子15、20を閉成し、また、突起45が板バネ25より離れて、板バネ25自体の復帰力にて復帰することで、両端子23、26が閉成する。この第4図の状態で、リセット端子34cと共通端子34aに電圧を印加すると、第3図の状態に復帰することになる。」(第4頁左上欄第17行〜右上欄第11行)
(ヘ)「主接点側がフレクシャーで、補助接点側がリフトオフタイプとなっている」(第4頁左下欄第12〜14行)
また、コイルブロックAが略T字型を呈していることは、第2〜4図に、ヨーク27の他片がコイルの下面に配設されることは、第1図に、それぞれ記載されている。
これら(イ)〜(ヘ)の記載及び第1〜4図の記載を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「コイル32の励磁、非励磁によりコイル32を巻装した鉄心29の磁極面に吸引されるアマチュア37と、アマチュア37と磁気的結合を図るヨーク27と、主接点ブロックBと、アマチュア37が鉄心29の磁極面に吸引されることにより主接点ブロックBを開閉駆動する可動ブロックDとを備え、上記ヨーク27を略L型に形成し、該ヨーク27の一片と鉄心29とを連結して略T字型のコイルブロックAを構成し、ヨーク27の他片をコイル32の下面に配設し、上記コイルブロックAの一側に主接点ブロックBを配設するとともに、主接点ブロックBは、開成又は閉成する固定接点20および可動接点15と、可動接点15が配設される板バネ14と、板バネ14と並列に接続する編組導線18とを備え、可動ブロックDは、アマチュア37が鉄心29の磁極面30に吸引されることにより回動し、回動方向の端部に主接点ブロックBの板バネ14を保持する可動枠36を備えて、主接点ブロックBの固定接点20が可動接点15に対して可動枠36の回動方向に配置されたリレーにおいて、上記主接点ブロックBを板バネ14が上記可動枠36の回動によってバネ付勢方向とは逆方向に押動されたときに閉成するフレクシャー型とするとともに、補助接点ブロックCを設け、この補助接点ブロックCが、上記可動枠36が上記の主接点ブロックBを開成する方向の回動時に上記可動枠36の一部で押し駆動される板バネ25と、該板バネ25に備えられた可動接点26と、該可動接点26に対して対向配置され、上記板バネ25が上記可動枠36により押し駆動されたときに上記可動接点26が開離し、上記可動枠36による押し駆動力が解除されて上記板バネ25が復帰したときに上記可動接点26が接触する固定接点23とからなるリフトオフ型の接点部により構成されていることを特徴とするリレー。」
(引用例2)
引用例2には次の記載が認められる。
(イ)「E字型ヨークの中央片に励磁コイルを巻装して形成された電磁ブロックと、永久磁石の両端にI字型ヨークが取着され中央に向ってはね付勢されたスライド自在なコ字型アーマチュアとよりなり、E字型ヨークの中央片と両側片との間にそれぞれアーマチュアの両I字型ヨークが位置するように電磁ブロツクおよびアーマチュアを配設し、電磁ブロックを直流励磁することによりアーマチュアをばね付勢力に抗して所定方向に駆動せしめ、励磁位置の永久磁石によるアーマチュアの吸引ラッチ力よりもばね付勢力が大きくかつ非励磁時に永久磁石による吸引ラッチ力にてアーマチュアをばね付勢力に抗して非励磁位置にラッチするように励磁位置および非励磁位置における永久磁石を含む磁気回路の磁気抵抗を非対称にして成る有極電磁石装置。」(明細書第1頁5行〜第2頁1行)
(ロ)「第4図乃至第8図は上記有極電磁石を用いて形成される有極リレーを示す図であり、アーマチュア(7)には接点(8)を駆動する駆動突部(9a)(9b)が両側に突設されたコ字状の合成樹脂成形体(10)が包み込むように被嵌されており、駆動突部(9a)(9b)がE字型ヨーク(1)の両側片(2b)(2c)に穿設されたガイド用切欠(11b)(11c)にスライド自在に係合されることにより、アーマチュア(7)がX方向にスライド自在に保持されている。」(同第6頁第4〜12行)
また、第4図には、固定接点(8b)が同一方向(図で接点(8)の下方向)に向いて設けられることが記載されていると認められる。
これらの記載を総合すると、引用例2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「リレーにおいて、電磁石部の両側に、可動接点に対してそれぞれ可動枠の回動方向の同じ向きに配置された固定接点を有する接点部を夫々配設すること。」
4. 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、後者における「主接点ブロックB」は、前者における「主接点部」に、「可動ブロックD」は、「駆動手段」に、「コイルブロックA」は、「電磁石部」に、また、「補助接点ブロックC」は、「補助接点部」に、それぞれ、その機能、構造からみて相当するものである。
したがって、両者は、
「コイルの励磁、逆励磁によりコイルを巻装した鉄心の磁極面に吸引されるアマチュアと、アマチュアと磁気的結合を図るヨークと、主接点部と、アマチュアが鉄心の磁極面に吸引されることにより主接点部を開閉駆動する駆動手段とを備え、上記ヨークを略L型に形成し、該ヨークの一片と鉄心とを連結して略T字型の電磁石部を構成し、ヨークの他片をコイルの下面に配設し、上記電磁石部の側部に主接点部を配設するとともに、主接点部は、開成又は閉成する固定接点および可動接点と、可動接点が配設される板バネと、板バネと並列に接続する編組導線とを備え、駆動手段は、アマチュアが鉄心の磁極面に吸引されることにより回動し、回動方向の端部に主接点部の板バネを保持する可動枠を備えて、主接点部の固定接点が可動接点に対して可動枠の回動方向に配置されたリレーにおいて、上記主接点部を板バネが上記可動枠の回動によってバネ付勢方向とは逆方向に押動されたときに閉成するフレクシャー型とするとともに、補助接点部を設け、この補助接点部が、上記可動枠が上記の主接点部を開成する方向の回動時に上記可動枠の一部で押し駆動される板バネと、該板バネに備えられた可動接点と、該可動接点に対して対向配置され、上記板バネが上記可動枠により押し駆動されたときに上記可動接点が開離し、上記可動枠による押し駆動力が解除されて上記板バネが復帰したときに上記可動接点が接触する固定接点とからなるリフトオフ型の接点部により構成されていることを特徴とするリレー。」である点で一致し、以下の点で相違している。
(1)本件発明においては、フレクシャー型の主接点部の配設に関して「電磁石部の両側」(主接点部は2つ)とし、各主接点部の固定接点を、「可動接点に対してそれぞれ可動枠の回動方向の同じ向きに配置」することで、「一方の主接点部を開成したときには他方の主接点部も開成し、一方の主接点部を閉成したときには他方の主接点部も閉成する」ようにしているのに対し、引用発明1においては、フレクシャー型の主接点部の配設に関して「電磁石部の一側」(主接点部は1つ)としている点
5. 当審の判断
電磁石部の両側に接点部を配置し、一方の主接点部を開成したときには他方の主接点部も開成し、一方の主接点部を閉成したときには他方の主接点部も閉成するようにすることは、引用発明2が開示するところであるし、そもそも、接点部をいくつ設けるかは、当業者が必要に応じて設計できることであるから、引用発明1において、引用発明2が開示するところに従い、主接点部を電磁石部の両側に配設する(主接点部を2つとする)ことは、当業者ならば容易に想到し得ることと言うべきである。そして、接点部として、フレクシャー型とリフトオフ型が存在することは、本願出願前周知のことであり、2つの接点部を設ける際にいずれの型を組み合わせるかは当業者が適宜選択できることである。してみると、本願発明において、2つの主接点部を、「可動接点に対してそれぞれ可動枠の回動方向の同じ向きに配置」したフレクシャー型とした点には格別の技術的意義は見出せない。(なお、電磁石部の両側に2つの接点部を配設し、これらを同一の型とすることは、例えば、「実願昭57-104643号(実開昭59-9457号)のマイクロフィルム」に記載されているように、リレーの分野において普通に知られていることである。)
また、上記相違点により、当業者の予測し難い効果が奏されているとは認められない。
6. むすび
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-05-02 
結審通知日 2002-05-07 
審決日 2002-05-21 
出願番号 特願平3-152818
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩澤 克利仁木 浩  
特許庁審判長 梅田 幸秀
特許庁審判官 平上 悦司
石川 伸一
発明の名称 リレー  
代理人 森 厚夫  
代理人 西川 惠清  

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