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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1060794
審判番号 不服2001-22192  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-03-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-12 
確定日 2002-07-04 
事件の表示 特願2000-210948「視覚装置」拒絶査定に対する審判事件[平成13年 3月16日出願公開、特開2001- 69429]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 本願発明
本願は、平成12年7月12日の出願(昭和62年11月19日に出願された特願昭62-292585号を分割した特願平9-12254号をさらに分割した出願)であって、その発明は、補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲(請求項の数3)に記載された「視覚装置」に係るものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次に掲げるとおりのものである。
「人の頭部に着脱自在に取り付け可能に構成された視覚装置において、
ゴーグル形状に形成されるとともに上部に配設される表示部と当該表示部より供給される映像から拡大された虚像を生成する虚像生成手段と、前記虚像生成手段で生成された虚像および外光を目に供給する映像供給手段とを有する装置本体と、
前記装置本体の左右側部からヒンジ部を介して取り付けられるとともに前記装置本体を顔面に当接させるため顔面当接手段と、
人の耳にヘッドホンによって音声を供給する音声供給手段と、
前記虚像および前記音声の供給を停止させる単一のスイッチと電源元とを持つ箱型部と、
を備える視覚装置であって、
前記表示部は液晶ディスプレイとバックライト手段からなり、
前記液晶ディスプレイは前記装置本体の上部に配置されるとともに前記液晶ディスプレイの表示面を下方の前記虚像生成手段が配置される装置本体の内部へ向けて設けられ、
前記液晶ディスプレイの上方に前記バックライト手段を配置することにより、前記バックライト手段を最上部に配置して前記液晶ディスプレイにより前記バックライト手段と前記装置本体とが区切られるようにし、
前記音声供給手段は、前記ヘッドホンを駆動するヘッドホンアンプを有し、前記音声の供給の停止にあたっては、前記スイッチの操作により前記ヘッドホンアンプをミュートするように構成した
ことを特徴とする視覚装置」

第2 刊行物発明
1 刊行物1の発明
原審の拒絶理由に引用された刊行物である、本願の出願の日前の昭和59年7月7日に頒布された特開昭59-117876号公報(以下「刊行物1」という。)には、次に掲げる(1)ないし(4)の事項からなるパーソナル液晶映像表示器(以下「刊行物1の発明」という。)が記載されている。
(1) 透過型液晶表示パネル20はレンズ手段10の焦点距離(f)の内側に位置しているため、自然光80又はランプ光により照射された透過型液晶表示パネル20上の表示画像21をレンズ手段10を介して見れば、実際の表示画像21より以遠にしかも拡大した虚像50を見ることができる。(2頁右下欄12行ないし18行)
(2) 本発明の一実施例を第2図を用いて説明する。
第1図と同一番号は、同一作用効果を有するものである。この実施例は、透過型液晶表示パネル20を1枚とレンズ手段1枚を用いたものである。
自然光80は、集光窓81により照射され透過型液晶表示パネル20、レンズ手段10を介してプリズム60によって左右に分離され、反射鏡61によって左・右の目40に到達する様に、集光窓81、透過型液晶表示パネル20、レンズ手段10、プリズム60及び反射鏡61が保持手段30によって保持されている。
更に保持手段30には、透過型液晶表示パネル20を駆動するIC等の回路62が空間を利用して配置され、回路62の外部接続線は外部接続端子63に接続されている。又音声出力用のヘッドホーン64は保持手段30の1部に人間の耳70に対応できる様に調整可能に取り付けられている。(3頁左上欄9行ないし同頁右上欄5行)
(3) チューナ部を含めた本体90は、外部アンテナからの放送電波を入力信号としてハイパスフィルタを介して入力され、チューナ、中間周波増幅検出回路、音声中間周波増幅検波回路及びオーディオ増幅回路を経て、映像信号、音声信号を出力する信号処理部と、DC-DCコンバータと電池からなる電源部で構成されている。
ケーブル線91を介して、映像信号、音声信号及び駆動電圧は、保持手段30の外部接続端子65に接続され、映像信号は回路62に入力され、ビデオ増幅器、水平・垂直同期分離回路、マトリックス信号発生回路等により、透過型液晶表示パネル20を駆動する。一方音声信号は、保持手段30の1部に取り付けられたヘッドホーン64に接続されている。(3頁左下欄下から7行ないし同頁右下欄8行)
(4) ヘッドホーン64を内蔵した保持手段30を頭にセットし、電源スイッチ兼音量調節ツマミ94を回動して電源をオンし(ON)、チャンネルツマミ93を所望のチャンネルに合わせれば、ケーブル線91がアンテナとなり、放送電波をとらえ、本体90によって、映像信号と音声信号を出力し、映像信号は透過型液晶パネル20上に表示し、音声信号はヘッドホーン64から音声が出る。(3頁右下欄11行ないし18行)

2 刊行物2の発明
同じく、原審の拒絶理由に引用された刊行物である、本願の出願の日前の1975年(昭和50年)12月2日に頒布された米国特許第3,787,109号明細書(特開昭49-43749号公報に対応、以下「刊行物2」という。)には、次に掲げる(1)ないし(3)の事項からなるヘルメット装架現示装置(以下「刊行物2の発明」という。)が記載されている。
(1) 何れの目に対しても重畳された影像を与える。前頭装架の、即ちヘルメット装架の現示装置(対応公報2頁右下欄2行ないし4行を参照)
(2) 今一つの可能な影像は、光学的ファイバ束を利用して、光源18まで運ばれ得る。低いレベルのTV装置その他の可視的補助装置の出力である。(同3頁左下欄6行ないし9行を参照)
(3) 鏡34は、光輻射装置28によって現示される対象の虚像が、焦点14に位置ぎめされるように、配置されている。この実施例に於いては、鏡34は平面鏡であるが、これは必ずしも平面であることを要しない。これに拡大作用を持たせて、影像のサイズを増大させることもできる。(同4頁左下欄2行ないし8行を参照)

第3 刊行物発明と本願発明との対比
1 刊行物1の発明における事項と本願発明における事項との対比
刊行物1の発明は「パーソナル液晶映像表示器」に係るものであるが、この表示器は、本願発明のように、使用者の頭部に着脱自在に取り付け可能に構成されたものといえるから(刊行物1の第5図及び第6図(a)を参照)、本願発明に係る「視覚装置」に一応対応する。
したがって、刊行物1の発明における事項と本願発明における事項とを対比すると、次に掲げる(1)ないし(5)の事項がそれぞれ対応ないしは相当する。
(1) 刊行物1の発明における「レンズ手段10、プリズム60及び反射鏡61」は、保持手段30の内部に設けられると共に液晶表示パネル20より供給される映像から拡大された虚像を生成するから(上記第2の1の(1)を参照)、本願発明における「虚像生成手段」に一応対応する。
(2) 刊行物1の発明における「液晶表示パネル20、レンズ手段10、プリズム60及び反射鏡61」は、生成された虚像を左・右の目40に供給するから(上記第2の1の(2)を参照)、外光を目に供給するかどうかは別として、本願発明における「映像供給手段」に一応対応する。
(3) 刊行物1の発明における「保持手段30」は、両眼を覆うように形成され(刊行物1の第5図及び第6図(a)を参照)、その内部に「液晶表示パネル20、レンズ手段10、プリズム60及び反射鏡61」が設けられ、虚像を生成し、その虚像を目に供給しているが、ゴーグル形状に形成されるとともに上部に表示部が配設されるかどうかは別として、本願発明における「装置本体」に一応対応する。
(4) 刊行物1の発明における「オーディオ増幅回路等の回路」は、音声出力用であって、人間の耳70に対応して取り付けられているヘッドホーン64へ音声信号を出力するから(上記第2の1の(2)(3)を参照)、本願発明における「音声供給手段」に相当する。
(5) 刊行物1の発明における「本体90」は、電源スイッチ兼音量調節ツマミ94を備え、このツマミを回動して本体90の内部に設けられた電源をオンし(ON)、チャンネルツマミ93を所望のチャンネルに合わせて、放送電波をとらえ、映像信号と音声信号を出力し、映像信号は透過型液晶パネル20上に表示し、音声信号はヘッドホーン64から音声が出る、すなわち、電源スイッチ兼音量調節ツマミ94によって、電源がオン・オフされ、映像と音声を供給したり、供給を停止しているといえるから(上記第2の1の(4)を参照)、本願発明における「箱型部」に相当する。

2 刊行物1の発明と本願発明との一致点と相違点の検討
上記対比から刊行物1の発明と本願発明とは、次に掲げる(1)の点で一致し、次に掲げる(2)の点で相違する。
(1) 一致点
「人の頭部に着脱自在に取り付け可能に構成された視覚装置において、
表示部より供給される映像から拡大された虚像を生成する虚像生成手段と、前記虚像生成手段で生成された虚像を目に供給する映像供給手段とを有する装置本体と、
人の耳にヘッドホンによって音声を供給する音声供給手段と、
前記虚像および前記音声の供給を停止させる単一のスイッチと電源元とを持つ箱型部と、
を備える視覚装置」
(2) 相違点
ア 上記「装置本体」が、本願発明においては「ゴーグル形状に形成されるとともに上部に表示部が配設される」のに対して、刊行物1の発明においては、このようになされていない点
イ 上記「映像供給手段」が、本願発明においては「外光を供給する」のに対して、刊行物1の発明においては、このようになされていない点
ウ 上記「装置本体」に、本願発明においては「顔面当接手段」が設けられているのに対して、刊行物1の発明においては、設けられていない点
エ 上記「視覚装置」において、本願発明においては
「前記表示部は液晶ディスプレイとバックライト手段からなり、
前記液晶ディスプレイは前記装置本体の上部に配置されるとともに前記液晶ディスプレイの表示面を下方の前記虚像生成手段が配置される装置本体の内部へ向けて設けられ、
前記液晶ディスプレイの上方に前記バックライト手段を配置することにより、前記バックライト手段を最上部に配置して前記液晶ディスプレイにより前記バックライト手段と前記装置本体とが区切られるようにし、
前記音声供給手段は、前記ヘッドホンを駆動するヘッドホンアンプを有し、前記音声の供給の停止にあたっては、前記スイッチの操作により前記ヘッドホンアンプをミュートするように構成した」のに対して、
刊行物1の発明においては、表示部は液晶ディスプレイで構成されいるが、目に供給される虚像を生成するための手段の配置が異なる点

3 相違点についての検討
(1) 相違点ア、ウについての検討
刊行物1には、保持手段30として、めがねのフレーム等が挙げられ(2頁右下欄5,6行を参照)、また、刊行物1の第5図には、ゴーグル形状で顔面に当接されるものが示されているともいえるから、保持手段30を、ゴーグル形状とし、ヒンジ部を介して顔面に当接させるため顔面当接手段を設けることは、当業者であれば、適宜なし得ることである。
したがって、「装置本体」を「ゴーグル形状に形成し、顔面当接手段を設ける」ことは、当業者であれば、適宜なし得ることである。
なお、「上部に表示部を配設する」ことについては、以下(3)で検討する。
(2) 相違点イについての検討
刊行物2の発明は、目に外光が供給されると共に鏡34からの虚像が重畳されるものであるから、刊行物1の発明における「反射鏡61」を刊行物2の発明における「鏡34」とすることによって、目に外光と虚像を供給することは、当業者であれば、適宜なし得ることである。
したがって、「映像供給手段」を「虚像および外光を目に供給する」とすることは、当業者であれば、適宜なし得ることである。
なお、目に外光と虚像を供給することに関して、以下(3)で、さらに検討する。
(3) 相違点エについての検討
刊行物1の発明における「液晶表示パネル20」はバックライト手段を必要としないものであるが、本来液晶表示手段は、液晶が自ら発光するものではないので、自然光や人工光を必要とするものであるから、刊行物1の発明において、「液晶表示パネル20」に人工光によるところの蛍光灯を有するバックライト手段を設けることは、設計事項である。
また、上記(2)で検討したように、刊行物2の発明を適用して目に外光を供給する構成とした場合にあっては、液晶表示パネル20は保持手段30の上部に配置すること、刊行物1の発明における反射鏡61は刊行物2の発明における鏡34に置き換えられ、この鏡34(虚像生成手段)に向けて下向きの姿勢で液晶表示パネル20の表示面を設けること、及び、このようにすることで、バックライト手段は液晶表示パネル20の上方となることは自明なことである。
さらに、刊行物2の発明を適用する場合にあっては、バックライト手段を、液晶ディスプレイにより区切られるように装置本体の最上部に配置することは、バックライト手段を装置本体の内部に設けるか、外部に設けるかの二者択一であるから、設計事項といえる。
なお、液晶ディスプレイやCRTなどの表示手段を装置本体の上部に配置して、表示手段に表示された映像を虚像として外光と共に見るものは、原審で引用された米国特許第3,923,370号明細書、特に図1ないし3に示されている。
また、従来の映像・音声再生装置において、スイッチ操作により音声をミュートする手段を設けることは適宜必要に応じて行われている。
したがって、「視覚装置」において、
「前記表示部は液晶ディスプレイとバックライト手段からなり、
前記液晶ディスプレイは前記装置本体の上部に配置されるとともに前記液晶ディスプレイの表示面を下方の前記虚像生成手段が配置される装置本体の内部へ向けて設けられ、
前記液晶ディスプレイの上方に前記バックライト手段を配置することにより、前記バックライト手段を最上部に配置して前記液晶ディスプレイにより前記バックライト手段と前記装置本体とが区切られるようにし、
前記音声供給手段は、前記ヘッドホンを駆動するヘッドホンアンプを有し、前記音声の供給の停止にあたっては、前記スイッチの操作により前記ヘッドホンアンプをミュートするように構成する」ことは、当業者であれば、適宜なし得ることである。

第4 むすび
以上、本願発明は、刊行物1の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項2,3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-04-23 
結審通知日 2002-05-07 
審決日 2002-05-20 
出願番号 特願2000-210948(P2000-210948)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 達也  
特許庁審判長 谷川 洋
特許庁審判官 小松 正
石川 伸一
発明の名称 視覚装置  
代理人 志賀 富士弥  
代理人 橋本 剛  

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