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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1060798
審判番号 不服2001-11454  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-08-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-04 
確定日 2002-07-04 
事件の表示 平成10年特許願第293992号「熱処理装置及び熱処理方法」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 8月 6日出願公開、特開平11-214319]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年2月6日(優先権主張平成1年2月14日)に出願した特願平2-26871号の一部を平成10年10月15日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「板状の被加熱材の少なくとも一方の面に対向して配置される複数の点状光源と、前記複数の点状光源を略同心状の複数の制御ゾーンに区分けし、前記制御ゾーン毎に前記複数の点状光源の光照射量を設定する照射量設定手段とを備え、前記複数の点状光源の照射する光により前記被加熱材を加熱する熱処理装置であって、
前記照射量設定手段は、前記被加熱材内において中央部から外周に向かうに従って当該被加熱材への光の入射エネルギー密度が徐々に増加するとともに、前記被加熱材において周縁部に対向する第1の制御ゾーンに対応する第1の領域とその第1の制御ゾーンの内側で隣接する第2の制御ゾーンに対応する第2の領域との入射エネルギー密度差が、前記被加熱材内における各制御ゾーンに対応する各領域のうちの隣接する領域相互間の入射エネルギー密度差の中で最も大きくなるように前記複数の点状光源の光照射量を設定することを特徴とする熱処理装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された特開昭59-36927号公報(以下「引用例」という。)には、「半導体気相成長装置」(発明の名称)に関して、「1.反応原料ガスの導入口と反応排ガスの排出口を有する反応容器内に前記導入口より反応原料ガスを導入し、半導体基板上に所望の半導体層を気相成長させる装置において、加熱用ランプを同心的に配置して、加熱用ランプの出力を内側と外側で調整することにより半導体基板の中心部と周辺部への光照射量を調節することによつて半導体基板を均一に加熱して、結晶性がよく、膜厚分布と抵抗率分布の均一性がすぐれた気相成長層を得ることを特徴とする半導体気相成長装置。
2.第1項において、加熱用ランプと半導体基板は同軸状に配置されていることを特徴とする半導体気相成長装置。」(第1頁、特許請求の範囲)であり、「従来の方法を、縦型反応容器を使用した場合について第1図により説明する。」(第1頁右下欄第7〜8行)こと、「上記従来例においては、加熱用ランプ5を反応容器1の外部全面または一部の面に並べ、加熱用ランプ5のさらに外側に反射鏡6を置くことによつて、光が外部にもれることを少なくし、半導体基板3を均一に光照射することによつて、半導体基板3を均一に加熱することを試みている。しかしながら、半導体基板3が大口径化するに伴い、半導体基板3の中心部と周辺部で熱の放散速度に違いが生じてくる。その結果、半導体基板3を全面、均一な光量で照射しても、中心部と周辺部で温度差が生じてくる。この温度差は半導体基板上にスリツプなどの結晶欠陥を生じさせたり、気相成長層の膜厚分布と抵抗率分布のばらつきを大きくさせたりする原因となつている。」(第2頁左上欄第6〜19行)こと、「本発明は半導体気相成長装置において、加熱用ランプを同心的に配置し、内側と外側でその出力を調整することを特徴とする。
本発明は、半導体基板からの熱の放散速度は周辺部と中心部とでは異なるために、均一に光照射するのでなく、周辺部と中心部のランプ出力を調整して光照射を同心的に調節することによつて半導体基板を均一に加熱できることを見出すことによつて成し遂げられた。
加熱用ランプは、それ自体がリング状のものを同心的に配置するか、多数のランプを同心状となるように配置して、各列のランプの出力を調整すればよい。半導体基板における熱放散は周辺において多いので、外側のランプの出力を内側のランプの出力より大きくする。」(第2頁右上欄第4〜18行)こと、「加熱用ランプ14b〜14dは石英製反応容器(ベルジヤー)10の上面に同心円状に3重に並べてある。中心には通常の加熱用ランプ14aを1つ配置してある。半導体基板12と加熱用ランプ14a〜14dは同軸的に配置されている。加熱用ランプの外側には、断面が放物線状の反射鏡15a〜15dを取付けてある。加熱用ランプ14a〜14dを反射鏡15a〜15dの放物面の焦点付近に置くことによつて、各ランプ14a〜14dの光を平行光線に近いものにして半導体基板12を照射している。」(第2頁左下欄第10〜20行)こと、「本実施例では、外側の加熱用リング状ランプの出力を大きくして単位面積当りの光量を増すことによつて、半導体基板12の周辺部ほど照射光量を多くして半導体基板12を均一に加熱するようにしてある。」(第2頁右下欄第2〜6行)こと、「本発明装置によれば、結晶性がよく、均一性のすぐれた膜厚分布と抵抗率分布とを持つた半導体気相成長層を得ることができる。」(第2頁右下欄第16〜18行)ことが、第1図、第2図と共に記載されている。
以上の記載から、引用例には、「半導体基板の一方の面に対向して配置される多数のランプと、前記多数のランプを同心状となるように配置して、各列のランプの出力を調整し、前記多数のランプの照射する光により前記半導体基板を加熱する半導体気相成長装置であって、
前記各列のランプの出力を調整し、半導体基板における熱放散は周辺において多いので、外側のランプの出力を内側のランプの出力より大きくするように前記多数のランプの出力を設定することを特徴とする半導体気相成長装置。」が示されている。

3.対比
本願発明と上記引用例に記載された発明を対比すると、両者はいずれも半導体を製造するための装置に関する発明であり、上記引用例に記載された発明の「半導体基板」は、本願発明の「板状の被加熱材」に相当し、上記引用例に記載の「多数のランプ」は、1つ1つのランプがほぼ点状光源と認められるため、本願発明の「複数の点状光源」に相当し、上記引用例に記載の「多数のランプを同心状となるように配置し」た「各列」は、本願発明の「複数の点状光源」の「略同心状の複数の制御ゾーン」に相当し、上記引用例に記載された発明の「各列のランプの出力を調整すればよい。」ことは、各列のランプの光照射量を調整しているので、手段という表現はないものの、本願発明の「制御ゾーン毎に複数の点状光源の光照射量を設定する照射量設定手段」に相当している。
また、上記引用例に記載された発明の「半導体基板における熱放散は周辺において多いので、外側のランプの出力を内側のランプの出力より大きくする。」ことは、「外側の加熱用リング状ランプの出力を大きくして単位面積当りの光量を増す」という上記引用例の記載からも明らかなように、ランプの出力の増減が半導体基板への光の入射エネルギー密度の増減となることは当然であるから、本願発明の「被加熱材内において中央部から外周に向かうに従って当該被加熱材への光の入射エネルギー密度が徐々に増加する」ことに相当しており、上記引用例に記載された発明の「加熱用ランプ14d」部分、「加熱用ランプ14c」部分は、それぞれ本願発明の「前記被加熱材において周縁部に対向する第1の制御ゾーン」、「第1の制御ゾーンの内側で隣接する第2の制御ゾーン」に相当しているので、両者は、「板状の被加熱材の少なくとも一方の面に対向して配置される複数の点状光源と、前記複数の点状光源を略同心状の複数の制御ゾーンに区分けし、前記制御ゾーン毎に前記複数の点状光源の光照射量を設定する照射量設定手段とを備え、前記複数の点状光源の照射する光により前記被加熱材を加熱する装置であって、
前記照射量設定手段は、前記被加熱材内において中央部から外周に向かうに従って当該被加熱材への光の入射エネルギー密度が徐々に増加するように前記複数の点状光源の光照射量を設定することを特徴とする装置。」の点で一致し、次の点で相違している。
(1)照射量設定手段が、被加熱材内において中央部から外周に向かうに従って当該被加熱材への光の入射エネルギー密度が徐々に増加するように複数の点状光源の光照射量を設定するに当たり、本願発明では、「被加熱材において周縁部に対向する第1の制御ゾーンに対応する第1の領域とその第1の制御ゾーンの内側で隣接する第2の制御ゾーンに対応する第2の領域との入射エネルギー密度差が、前記被加熱材内における各制御ゾーンに対応する各領域のうちの隣接する領域相互間の入射エネルギー密度差の中で最も大きくなるように前記複数の点状光源の光照射量を設定する」のに対して、上記引用例に記載された発明では、この点が明示されていない点(以下、「相違点1」という。)。
(2)本願発明は、熱処理装置であるのに対して、上記引用例に記載された発明は、半導体気相成長装置である点(以下、「相違点2」という。)。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
まず、相違点1について検討すると、上記引用例の記載の発明は、「加熱用ランプ14b〜14dは石英製反応容器(ベルジヤー)10の上面に同心円状に3重に並べてある。中心には通常の加熱用ランプ14aを1つ配置してある。」ものであり、上記したように「加熱用ランプ14d」部分、「加熱用ランプ14c」部分は、それぞれ本願発明の「前記被加熱材において周縁部に対向する第1の制御ゾーン」、「第1の制御ゾーンの内側で隣接する第2の制御ゾーン」に相当している。そして、「加熱用ランプ14a〜14dを反射鏡15a〜15dの放物面の焦点付近に置くことによつて、各ランプ14a〜14dの光を平行光線に近いものにして半導体基板12を照射している。」ので、各ランプ14a〜14dからの平行光線に近い光で照射された半導体基板の各領域のうち、上記「加熱用ランプ14d」、「加熱用ランプ14c」で照射された半導体基板の各領域は、それぞれ本願発明の「被加熱材において周縁部に対向する第1の制御ゾーンに対応する第1の領域」、「第1の制御ゾーンの内側で隣接する第2の制御ゾーンに対応する第2の領域」に相当する。また、上記引用例の「外側の加熱用リング状ランプの出力を大きくして単位面積当りの光量を増すことによって、半導体基板12の周辺部ほど照射光量を多く」するという記載から明らかなように、ランプの出力の増減が半導体基板への光の入射エネルギー密度の増減となる。
してみると、上記引用例に記載の発明も、被加熱材に相当する半導体基板において周縁部に対向する第1の制御ゾーンに対応する第1の領域とその第1の制御ゾーンの内側で隣接する第2の制御ゾーンに対応する第2の領域との入射エネルギー密度差を有するが、この第1の領域と第2の領域との入射エネルギー密度差が、前記被加熱材内における各制御ゾーンに対応する各領域のうちの隣接する領域相互間の入射エネルギー密度差の中で最も大きくなるように前記複数の点状光源の光照射量を設定することは、明示されていない。
しかしながら、上記引用例に記載された発明は、「各列のランプの出力を調整すればよい。」、「周辺部と中心部のランプ出力を調整して光照射を同心的に調節することによつて半導体基板を均一に加熱できる」、「半導体基板12の周辺部ほど照射光量を多くして半導体基板12を均一に加熱するようにしてある。」ものであり、「板状被加熱材を均一に加熱することができ」るという本願発明の作用効果と同様の作用効果を奏するものであるので、複数の点状光源の光照射量の設定による、上記第1の領域と第2の領域との入射エネルギー密度差と、前記被加熱材内における各制御ゾーンに対応する各領域のうちの他の隣接する領域相互間の入射エネルギー密度差の大小は、板状被加熱材を均一に加熱するという作用効果を達成するために、板状被加熱材の各部の放射エネルギー密度(上記引用例に記載の「熱の放散速度」に類似)を考慮することにより、当業者が適宜設定できた程度のことと認められ、本願発明の、被加熱材において周縁部に対向する第1の制御ゾーンに対応する第1の領域とその第1の制御ゾーンの内側で隣接する第2の制御ゾーンに対応する第2の領域との入射エネルギー密度差が、前記被加熱材内における各制御ゾーンに対応する各領域のうちの隣接する領域相互間の入射エネルギー密度差の中で最も大きくなるように前記複数の点状光源の光照射量を設定することは、格別なものではない。
次に、相違点2について検討すると、上記引用例1に記載された半導体気相成長装置は、加熱用ランプを同心的に配置して、加熱用ランプの出力を内側と外側で調整することにより半導体基板の中心部と周辺部への光照射量を調節することによつて半導体基板を均一に加熱する部分を有しており、また、半導体気相成長装置も熱処理装置も、半導体を製造する装置としては周知であるので、半導体基板を均一に加熱する部分を有する半導体気相成長装置に関する技術を、同様に、半導体基板を均一に加熱することが必要とされる、熱処理装置に転用することは、当業者が装置の設計上適宜なし得た程度の事項である。
また、本願発明の作用効果も、当業者の予測を越えるものとは認められない。

5.むすび
したがって、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-05-01 
結審通知日 2002-05-07 
審決日 2002-05-20 
出願番号 特願平10-293992
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 園子  
特許庁審判長 松本 邦夫
特許庁審判官 橋本 武
池渕 立
発明の名称 熱処理装置及び熱処理方法  
代理人 加藤 大登  
代理人 矢作 和行  
代理人 碓氷 裕彦  

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