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審決分類 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
審判 査定不服 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1060826
審判番号 不服2000-17589  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-06-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-28 
確定日 2002-07-04 
事件の表示 平成 3年特許願第299434号「空中線監視装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 6月 1日出願公開、特開平 5-136747]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、平成3年11月15日の出願であって、「空中線監視装置」に関するものである。
一方、当審が通知した平成14年1月24日付けの拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
「本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない。

請求項1及び請求項2に、「前記論理積をとる回路が、間欠的送信波の非送信時に反射波電力を検出した場合は、他空中線からの干渉電波として弁別すること」とあるが、明細書の発明の詳細な説明の欄には、その点についての技術説明がなされていない。」
これに対し、請求人は、手続補正書を提出し、出願当初の明細書の【0005】に、「自局無線送信機1が間欠的送信波の非送信時に方向性結合器2で反射波電力を検出した場合は、隣接する空中線4からの干渉電波として弁別することを可能としている。また、」を追加して、次のとおりとする補正を行っている。
「【0005】 次に、本発明について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例の構成図である。図1において、無線送信機1から空中線3へ送出する進行波電力および空中線3から反射してくる反射波電力の両方を検出する方向性結合器2と、この2つのうちの進行波電力を基準値と比較増幅する差動増幅器5Aと、同じく方向性結合器2によって検出した他方の反射波電力を基準値と比較増幅する差動増幅器5Bと、この2つの差動増幅器出力のANDをとり、両信号が存在し、かつ、基準値を超えている場合にアラームを発生する論理積回路6から構成される。すなわち、論理回路6は、進行波電力有り、反射波電力有りの時のみアラームを発する論理回路とし、それ以外の条件では、アラームを発しない論理積回路とする。したがって、自局無線送信機1が間欠的送信波の非送信時に方向性結合器2で反射波電力を検出した場合は、隣接する空中線4からの干渉電波として弁別することを可能としている。また、間欠送信の送信波がない場合に同期して、そのタイムスロットを検出すれば、他空中線からの干渉波が混入して見かけ上反射電力として検出されるので、干渉波の検出としての機能に利用することも可能である。」
また、意見書を提出し、次のとおりの意見を述べている。
『本願発明は平成14年1月24日に起案された拒絶理由通知において、明細書及び図面の記載が不備なため、特許法36条4項及び5項に規定する要件を満たしていない旨の拒絶理由の通知を受けました。
本件出願人は本拒絶理由に承伏(「服」の誤記)することができませんので、下記にその旨を釈明いたします。
まず、特許請求の範囲には「前記論理積をとる回路が、間欠的送信波の非送信時に反射波電力を検出した場合は、他空中線からの干渉電波として弁別すること」は形式的には記載されていません。
しかし、「0003」「発明が解決しようとする課題」欄には「間欠送信により無線送信機が送信を行っていない時に、隣接する空中線4から同類の無線送信機が送信を行っている場合に、自局の空中線に高周波電力が誘導し、方向性結合器2にて反射波として検出され、アラームの誤発生が生じて、自局の空中線の異常監視が困難となる欠点があった。」との記載が、「0005」「実施例」欄には「論理回路6は、進行波電力有り、反射波電力有りの時のみアラームを発する論理回路とし、それ以外の条件では、アラームを発しない論理積回路とする。」との記載があり、それぞれの欄の趣旨に基づいて解釈しますと、従来は、自局から送信を行っていないときに他空中線からの干渉電波が誘導されると、自局の反射波電力ではないにもかかわらず反射波電力を検出した旨のアラームが誤発生するため、本発明はこれを解決するために、論理回路は進行波電力と反射波電力の双方が検出したときのみアラームを発するようにしたものです。
これはつまり、アラームの発生の有無は、間欠的送信波の非送信時に反射波電力を検出した場合は、他空中線からの干渉電波として弁別していることを示しています。
従って、本発明の目的である間欠送信による他空中線からの干渉電波の弁別することは出願当初の技術水準に基づいて出願当初明細書の記載から当然に導き出せる事項であるため、「発明の詳細な説明」の欄では簡潔な説明とすべく、特許請求の範囲と形式的に同一の事項を記載しなかったものです。
なお、疑義をなくするため、手続補正書において、「0005」「実施例」欄の記載を形式的に「特許請求の範囲」の記載と同一にする補正をしましたが、上述のように、当該補正は出願当初の技術水準から当然に導き出せる事項であるため、当該補正は要旨を変更するものではありません。』
そこで検討するに、本件発明においては、「前記論理積をとる回路が、間欠的送信波の非送信時に反射波電力を検出した場合は、他空中線からの干渉電波として弁別すること」を要件としているが、上記の「自局無線送信機1が間欠的送信波の非送信時に方向性結合器2で反射波電力を検出した場合は、隣接する空中線4からの干渉電波として弁別することを可能としている。」との補正をみてみると、「弁別」する主体が何であるのか明確でなく、また、「可能」であるとのべるに留まり、どうして弁別できるのかを説明していない。前後の文脈から、弁別の主体が論理回路であるとしても、どうして論理回路により弁別できるのかの説明になっていないから、補正により、当審が通知した平成14年1月24日付けの拒絶の理由は解消したことにはならない。
そして、図1に示される回路構成から明らかなように、間欠的送信波の非送信時においては、論理回路6は、他空中線からの干渉電波がある場合であっても、また、他空中線からの干渉電波がない場合であっても、論理積回路6は、アラームを出力することはないから、論理回路が他空中線からの干渉電波を弁別するということにはならない。
さらに、請求人の提出した意見書をみてみると、『まず、特許請求の範囲には「前記論理積をとる回路が、間欠的送信波の非送信時に反射波電力を検出した場合は、他空中線からの干渉電波として弁別すること」は形式的には記載されていません。』と述べているが、本件出願の特許請求の範囲には、「前記論理積をとる回路が、間欠的送信波の非送信時に反射波電力を検出した場合は、他空中線からの干渉電波として弁別すること」と記載されているのであるから、請求人のいう、形式的には記載されていない、ということの意味は不明である。
ただ、続けて、『しかし、「0003」「発明が解決しようとする課題」欄には「間欠送信により無線送信機が送信を行っていない時に、隣接する空中線4から同類の無線送信機が送信を行っている場合に、自局の空中線に高周波電力が誘導し、方向性結合器2にて反射波として検出され、アラームの誤発生が生じて、自局の空中線の異常監視が困難となる欠点があった。」との記載が、「0005」「実施例」欄には「論理回路6は、進行波電力有り、反射波電力有りの時のみアラームを発する論理回路とし、それ以外の条件では、アラームを発しない論理積回路とする。」との記載があり、それぞれの欄の趣旨に基づいて解釈しますと、従来は、自局から送信を行っていないときに他空中線からの干渉電波が誘導されると、自局の反射波電力ではないにもかかわらず反射波電力を検出した旨のアラームが誤発生するため、本発明はこれを解決するために、論理回路は進行波電力と反射波電力の双方が検出したときのみアラームを発するようにしたものです。』とする点は、明細書に記載されたとおりであって、この点に異論はない。
しかるに、続けて、『これはつまり、アラームの発生の有無は、間欠的送信波の非送信時に反射波電力を検出した場合は、他空中線からの干渉電波として弁別していることを示しています。』と述べている点については、前述したように、「弁別」する主体が何であるのか明確でなく、仮に、前後の文脈から、弁別の主体が論理回路であるとしても、「0003」、「0005」には、どうして論理回路により弁別できるのか説明されていない。
そして、さらに、『従って、本発明の目的である間欠送信による他空中線からの干渉電波の弁別することは出願当初の技術水準に基づいて出願当初明細書の記載から当然に導き出せる事項であるため、「発明の詳細な説明」の欄では簡潔な説明とすべく、特許請求の範囲と形式的に同一の事項を記載しなかったものです。』と述べているが、「発明の詳細な説明」の欄に特許請求の範囲と形式的に同一の事項を記載したとしても、その技術説明がないということでは、発明を説明したことにはならない。なお、念のために繰り返すが、図1に示される回路構成から明らかなように、間欠的送信波の非送信時においては、論理回路6は、他空中線からの干渉電波がある場合であっても、また、他空中線からの干渉電波がない場合であっても、論理積回路6は、アラームを出力することはないから、論理回路6が他空中線からの干渉電波を弁別するということにはならない。
以上のとおりであるから、補正等によっても、依然として、当審が通知した平成14年1月24日付けの拒絶の理由は解消していない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-04-24 
結審通知日 2002-05-07 
審決日 2002-05-21 
出願番号 特願平3-299434
審決分類 P 1 8・ 531- WZ (H04B)
P 1 8・ 532- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉岡 浩板橋 通孝  
特許庁審判長 川名 幹夫
特許庁審判官 吉見 信明
橋本 正弘
発明の名称 空中線監視装置  
代理人 福田 修一  
代理人 河合 信明  
代理人 京本 直樹  

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