ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16L |
---|---|
管理番号 | 1060854 |
審判番号 | 不服2000-2901 |
総通号数 | 32 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-03-02 |
確定日 | 2002-07-04 |
事件の表示 | 平成10年特許願第162458号「固定具」拒絶査定に対する審判事件[平成11年12月24日出願公開、特開平11-351451]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年6月10日の出願であって、その請求項1ないし請求項7に係る発明は、平成11年6月25日付け、平成12年3月21日付け、及び平成13年8月23日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。 「被固定物が載置される載置部と、当該載置部の両端に接続された一対の固定部とを備えた第1のクランプ部材と、 前記載置部の対面側から被固定物を保持する保持部と、当該保持部の両端に接続されて前記固定部と嵌合される一対の被固定部とを備えた第2のクランプ部材とから成る固定具であって、 前記被固定部は、前記保持部に接続された可撓性を有するヒンジ部と、当該ヒンジ部に接続された係合部とを備え、 前記固定部は、前記係合部と係合される被係合部を備え、 前記両クランプ部材の両端の双方が、いずれか一端における係合を解除することなく、他端における係合を解除可能で、該他端における係合を解除することにより、前記第2クランプ部材を前記第1クランプ部材から離脱させることなく、前記一端にある前記ヒンジ部を変形させつつ前記他端側を開閉可能な構造とされ、当該構造によって前記両クランプ部材の両端のどちらを開いても前記被固定物を着脱できる構造とされていることを特徴とする固定具。」 2.引用例の記載事項 これに対して、当審の拒絶理由で引用した、実公昭60-34856号公報(以下「引用例1」という)には、次の2-a〜2-cの事項が図面とともに記載されている。 2-a.(1ページ1欄2〜20行)「保持すべき管状、棒状材2の略ゞ上半周部分を覆う弧状部と、該弧状部の開口両側縁13,13に接続し、下向きに伸びる一対の壁面部14,14と、該各壁面部14に接続し、それぞれ対応する壁面部14に対して横方向に距離15を置きながら上向きに伸びる弾性翼片16と、をプラスチックで一体成形した保持具11と; 保持すべき管状、棒状材2の略ゞ下半周部分を収容する収容溝21を有し、上記保持具11の壁面部14及びこれに接続した弾性翼片16の挿入を許す取付孔23を持つ基板部材10と; から成り、上記保持具11の弾性翼片16の外面には上記基板部材10の取付孔23の取付孔裏縁に係止する係止面19が形成され、かつ、該弾性翼片の上部自由端18は上記基板部材10の上方にまで伸びていると共に、上記基板部材10には、上記保持具11の壁面部14を背面から支える支持面22が設けれていることを特徴とする管状、棒状材の保持装置」 2-b.(2ページ4欄17〜31行)「先づ、基板部材10のパイプ収容溝21にパイプ2を嵌め入れ、次いで保持具11をパイプの上から臨ませ、両側のU字型部分14,17,16をその下端から各取付孔23,23内に挿入し、押下する。 すると、壁面部14は基板部材の案内、支持面22,22に沿って撓むことなく真直ぐにこの取付孔23,23内に侵入して行くが、弾性翼片16,16はその外面が上向きに横方向に張出していくテーパ面となっているため、取付孔への侵入に伴いその外側の孔縁で相対的に内方に撓され乍ら進んでいき(第3図仮想線)、やがて、係止面19,19が取付孔の裏縁に至ると弾性翼片はその復元力で復元し、該係止面を該孔裏縁に係止させる。」 2-c.(3ページ5欄23〜28行)「弾性翼片16,16の自由端乃至摘み18,18を第3図仮想線で示すように作業者が本の指等で押し挟めば、弾性翼片は取付時と同様に内側に撓んで係止面19,19が孔裏縁から離れるので、保持具をそのまま上に抜き取ることができるのである。」 3.対比 本願発明(以下「前者」という)を、引用例1記載のもの(以下「後者」という)と比較すると、後者の保持具11は、管状、棒状材の上部を保持する弧状部を備え、弧状部の開口両側縁には、基板部材の取付孔23と嵌合する一対の壁面部14,14と、これに接続した弾性翼片16とを備えるものであるから、前者の、保持部と、その両端に接続された被固定部である可撓性を有するヒンジ部と、これに接続された係合部とを有する第2のクランプ部材に相当する。 また、後者の基板部材10は、管状、棒状材2の下部を支持する収容溝21を備え、その両側に、保持具11の壁面部14および弾性翼片16の挿入を許すとともに、弾性翼片16の係止面と係合する取付孔23を備えるものであるから、前者の、載置部と該載置部の両端に接続された一対の固定部とを備えた第1のクランプ部材に相当する。 そこで、本願発明は、次の一致点で引用例1記載のものと一致し、次の相違点1,2で相違する。 一致点 「被固定物が載置される載置部と、当該載置部の両端に接続された一対の固定部とを備えた第1のクランプ部材と、 前記載置部の対面側から被固定物を保持する保持部と、当該保持部の両端に接続されて前記固定部と嵌合される一対の被固定部とを備えた第2のクランプ部材とから成る固定具であって、 前記被固定部は、前記保持部に接続されたヒンジ部と、当該ヒンジ部に接続された係合部とを備え、 前記固定部は、前記係合部と係合される被係合部を備えたことを特徴とする固定具。」 相違点1 前者の被固定部は、保持部に接続された可撓性を有するヒンジ部と、当該ヒンジ部に接続された係合部とを備えるものであるのに対し、後者は、被固定部にあたるU字型部14,17,16が、弧状部12に接続された壁面部14と、当該壁面部に接続された可撓性のある弾性翼片16を備えている点。 相違点2 前者は、両クランプ部材の両端の双方が、いずれか一端における係合を解除することなく、他端における係合を解除可能で、該他端における係合を解除することにより、前記第2クランプ部材を前記第1クランプ部材から離脱させることなく、前記一端にある前記ヒンジ部を変形させつつ前記他端側を開閉可能な構造され、当該構造によって前記両クランプ部材の両端のどちらを開いても前記被固定物を着脱できる構造とされているのに対し、後者は、かかる構造であるか否か明かでない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 4-1.相違点1について 引用例1記載のものにおいて、壁面部14と、これに接続する弾性翼片16とからなるU字型部分14,17,16を撓めて、U字型部分の内側の間隔を狭めるためには、壁面部と弾性翼片との少なくとも一方を可撓性にすれば良いのであって、いずれを可撓性にするかは、適宜選択し得る設計的事項にすぎないから、弾性翼片に代え、壁面部を可撓性とし、相違点1に係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。 4-2.相違点2について 引用例1記載のものは、基板部材10の取付孔23内に、保持具11のU字型部を撓めて押込むと、弾性翼片16の復元力により、壁面部14の背面が取付孔23の支持面22に押圧支持されるとともに、弾性翼片16の係止面19が取付孔裏縁に係止されて、基板部材と保持具とが係合されるようになっているものであるから、1対のU字型部は、それぞれ基板部材の対応する取付孔に独立に固定されるものである。 そして、引用例1記載のものにおいて、一方のU字型部と取付孔との係合を解放しても、他方のU字型部と取付孔との係合は、その解放の影響を受けずに固定状態を維持可能なものであることは、その独立した固定構造より容易に予測し得るものであるので、引用例1記載のものに基づいて、1対のU字型部のいずれか一方を解放し、解放側より、被固定物である管状、棒状材を着脱できるようにして、相違点2に係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 5.むすび したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載されたものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると認められるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 以上のとおりであるから、本願出願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-04-23 |
結審通知日 | 2002-04-30 |
審決日 | 2002-05-22 |
出願番号 | 特願平10-162458 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F16L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐野 遵、生越 由美 |
特許庁審判長 |
村本 佳史 |
特許庁審判官 |
鈴木 美知子 山崎 豊 |
発明の名称 | 固定具 |
代理人 | 田中 敏博 |
代理人 | 足立 勉 |