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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F03B
管理番号 1060957
審判番号 不服2000-15326  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-01-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-27 
確定日 2002-07-10 
事件の表示 平成10年特許願第201272号「暗渠発電装置」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 1月18日出願公開、特開2000-18146]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願発明
本願は、平成10年7月1日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年4月5日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 陸地15が海10と海10に挟まれて、該陸地15が狭くなっている所に複数本の暗渠6…を該暗渠6…が上記各海10の水位よりも常に下となるように作り、さらに該暗渠6の端に水路4を作り、該水路4の中に水車1を設け、回転力を変速機2で増幅し発電機3に伝えることを特徴とする暗渠発電装置。」

【2】引用例の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用した特開平5-263413号公報(以下、「引用例」という。)には、次の技術的事項が記載されている。
「【請求項1】 潮流の発生する海峡、島間などの海域にほぼ並行した陸又は島に対して、オープン水路又はトンネル水路を形成し、該水路内にそのまま又はオリフィスを形成した場所に水流を駆動源とする発電装置を設置してなる潮流発電施設。」(特許請求の範囲)、
「【0005】潮流のはげしい場所は、広い海域より島や陸等で狭くなった海域であるので、まず、その島や陸に対して潮流方向とほぼ並行な水路を人工的に構築する。水路はオープン水路明渠であってもトンネル水路による暗渠であってもよく、潮の取入口や出口を広く、中間を狭くして水流を速めるオリフィス状とし、この部分に回転するプロペラを設置して発電機を動かすようにする。」(第2頁第1欄第40〜46行)、
「潮の干満によって生ずる潮流は海峡1とし並行して陸の半島2や島3に設けた水路4内でも当然に発生する。海峡1に対して細く突出した島や半島であれば、複数の水路4を設けることもできる。 【0009】これら水路4の中間に発電装置5を備える。水路4中には潮流から回転力に変換するプロペラや水車6を設ける。」(第2頁第2欄第18〜25行)
以上の記載、及び、第1、2図の記載からみて、引用例には、
「陸地2が海と海に挟まれている所、例えば半島、に複数本のオープン水路である水路4を作り、該水路4の中にプロペラまたは水車6を設け、回転力を発電装置5に伝える発電施設」という発明が記載されているものと認められる。

【3】対比・判断
(対比)
そこで、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と上記引用例に記載された発明とを対比すると、引用例に記載された「オープン水路」、「プロペラまたは水車6」、「発電装置5」、「発電施設」は、それぞれ、本願発明の「水路4」、「水車1」、「発電機3」、「発電装置」に相当するものであるから、両者は、
「陸地が海と海に挟まれている所に複数本の水路を作り、該水路の中に水車を設け、回転力を発電機に伝える発電装置」で一致し、以下の各点(イ)〜(ハ)で相違している。
(相違点)
(イ)本願発明の発電装置は、陸地が狭くなっている所に作られるものであるのに対し、引用例に記載された発明は、海と海に挟まれている陸地のどこに作られるものであるのか、不明である点。
(ロ)本願発明の水車は、暗渠の端に作られた水路の中に設けるものであり、また、該暗渠は各海の水位よりも常に下となるように作るものであるのに対し、引用例に記載された発明は、(暗渠をもたない)水路だけの中に水車を設けるものである点。
(ハ)本願発明は、水車の回転力を変速機で増幅し発電機に伝えるものであるのに対し、引用例に記載された発明は、水車の回転力を発電機に伝えるものであって、変速機を備えるものであるのか、不明である点。
以下、前記各相違点(イ)〜(ハ)について検討する。
(相違点の検討)
・相違点(イ)について;
海と海とに挟まれた陸地にそれらの海をつなぐ「水路」を作る際、該水路を陸地が狭くなっている所に作ることは、工事費等を勘案して、当業者が適宜選択する程度の設計事項にすぎない。
・相違点(ロ)について;
海と海との間の陸地に山や丘等の障害物があり、山や丘に「水路」を作れない場合、山や丘の部分に暗渠を作ることは、当業者にとって技術常識にすぎないから、陸地の山や丘の部分に暗渠を作れば、水路の間に該暗渠が作られ、その結果、該暗渠の端に水路が作られることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、陸地を挟む一方の海から他方の海へ向けて海水を交互に流すためには、水路や暗渠を両方の海の水位より高くできない(即ち、高くすると水路や暗渠に海水は流れない)ことは、当業者にとって技術的常識であるから、刊行物に記載された発明の「水路」の間を暗渠とするに際し、該暗渠を各海の水位よりも常に下となるように作ることは、当業者が必然的に考慮しなければならない程度の設計的事項にすぎないものと認められる。
・相違点(ハ)について;
水車の回転力を変速機で増速し発電機に伝えることは、一例として、実願昭55-2089号(実開昭56-105524号)のマイクロフィルム……等に記載されるように、本願出願前、当業者にとって周知の技術的事項であるので、引用例に記載された発明に上記周知の技術的事項を適用し、もって、相違点(ハ)における本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得るものと云うべきである。
(効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例に記載された発明及び上記周知の技術的事項から当業者であれば当然予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

【4】むすび
以上のとおりであって、本願発明は、引用例に記載された発明及び上記周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-04-25 
結審通知日 2002-05-07 
審決日 2002-05-20 
出願番号 特願平10-201272
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 町田 隆志前田 幸雄  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 清田 栄章
亀井 孝志
発明の名称 暗渠発電装置  
代理人 中谷 武嗣  

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