• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1061010
異議申立番号 異議2000-72452  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-06-12 
確定日 2002-03-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2993062号「オキシメチレン共重合体組成物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2993062号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第2993062号の発明は、平成2年7月2日に特許出願され、平成11年10月22日にその特許の設定登録がなされたものであり、その後ポリプラスチックス株式会社より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年12月28日付けで特許異議意見書と訂正請求書が提出され、それに対し特許異議申立人から平成13年2月2日付けで上申書が提出され、さらに、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年7月26日付けで特許異議意見書が提出されたものである。
[2]訂正の適否
尚、○の中に数字のあるものは、「○数字」と以下表示する。
[訂正の内容]
訂正事項a:
特許請求の範囲の請求項1を次の通り訂正する。
「オキシメチレン共重合体100重量部に、「○1」炭素数2〜10を有する多価アルコールと炭素数22〜32を有する高級脂肪酸とから誘導される多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上を0.01〜2.0重量部、「○2」炭素数12〜35の脂肪酸のアルカリ土類金属塩の1種以上を0.01〜3.0 重量部、「○3」ホルムアルデヒド捕捉剤0.01〜7重量部、及び「○4」抗酸化剤0.03〜5重量部を配合してなる安定化されたオキシメチレン共重合体組成物。」
訂正事項b:
特許明細書の第4頁第14行〜第5頁第1行の「オキシメチレン共重合体100重量部に、「○1」炭素数2〜10を有する多価アルコールと炭素数22〜32を有する高級脂肪酸とから誘導される多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上を0.01〜2.0 重量部と、「○2」炭素数12〜35の脂肪酸のアルカリ土類金属塩の1種以上を0.01〜3.0重量部とを配合してなる安定化されたオキシメチレン共重合体組成物にある。」を「オキシメチレン共重合体100重量部に、「○1」炭素数 2〜10を有する多価アルコールと炭素数22〜32を有する高級脂肪酸とから誘導される多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上を0.01〜2.0重量部、「○2」炭素数12〜35の脂肪酸のアルカリ土類金属塩の1種以上を0.01〜3.0重量部、「○3」ホルムアルデヒド捕捉剤0.01〜7重量部、及び「○4」抗酸化剤0.03〜5重量部を配合してなる安定化されたオキシメチレン共重合体組成物にある。」に訂正する。
訂正事項c:
特許明細書の第11頁の第15行、同第14頁第12行、同第14頁第13行、同第14頁第17行、同第14頁第19行、同第15頁第1行、同第15頁第2行、同第15頁第6行、同第15頁第8行、同第15頁第10行、同第15頁第11行、同第15頁第15行、同第15頁第17行、同第15頁第19行、同第15頁第20行、同第16頁第4行、同第16頁第6行、同第16頁第8行、同第16頁第9行、同第16頁第13行、同第16頁第15行、同第16頁第17行、同第16頁第18行、同第17頁第2行、同第17頁第4行、同第17頁第6行、同第17頁第7行、同第17頁第11行、同第17頁第13行、同第17頁第15行、同第17頁第16行、同第17頁第20行、同第18頁第2行、同第18頁第4行、同第18頁第5行、同第18頁第9行、同第18頁第11行、同第18頁第13行、同第18頁第14行、同第18頁第18行、同第18頁第20行、同第19頁第2行、同第19頁第3行、同第19頁第12行、同第19頁第18行、同第20頁第2行、同第20頁第11行、同第20頁第14〜15行、同第20頁第18行、同第21頁第4行、同第21頁第8行、同第21頁第11行、同第21頁第19行、同第22頁第3行、同第22頁第6行、同第22頁第14〜15行、同第22頁第18行、同第23頁第2行、同第23頁第9行、同第23頁第12行、同第23頁第15行、同第24頁第2行、同第24頁第5行、同第24頁第8行、同第24頁第14行、同第24頁第18行、同第26頁第2行、同第26頁第5行、同第26頁第7行、同第26頁第10行、同第26頁第13行、同第26頁第15行、同第26頁第18行、同第27頁第1行、同第27頁第3行、同第27頁第6行、同第27頁第9行、同第27頁第15行、同第27頁第18行、同第28頁第4行、同第28頁第7行、同第28頁第13行、同第28頁第16行、同第28頁第18行、同第29頁第2行、及び同第29頁第5行の「実施例」を「比較例」に訂正する。
訂正事項d:
特許明細書の第20頁第1行の「実施例13」を「実施例1」に、同第20頁第17行の「実施例14」を「実施例2」に、同第21頁第10行の「実施例15」を「実施例3」に、同第22頁第5行の「実施例16」を「実施例4」に、同第23頁第1行の「実施例17」を「実施例5」に、同第23頁第14行の「実施例18」を「実施例6」に、同第24頁第7行の「実施例19」を「実施例7」に、それぞれ訂正する。
訂正事項e:
特許明細書の第26頁第1行の「比較例1」を「比較例13」に、同第26頁第9行の「比較例2」を「比較例14」に、同第26頁第17行の「比較例3」を「比較例15」に、同第27頁第5行の「比較例4」を「比較例16」に、同第27頁第14行の「比較例5」を「比較例17」に、同第28頁第3行の「比較例6」を「比較例18」に、同第28頁第12行の「比較例7」を「比較例19」に、同第29頁第1行の「比較例8」を「比較例20」に、それぞれ訂正する。
訂正事項f:
特許明細書の第25頁の第1表の「実施例1〜12」を「比較例1〜12」に、同第25頁の第1表の「実施例13〜19」を「実施例1〜7」に、同第30頁の第2表の「比較例1〜8」を「比較例13〜20」に、それぞれ訂正する。
[訂正の適否]
訂正事項aの訂正は、特許明細書の詳細な説明の欄の第9頁第11行〜第11頁第7行に記載された、ホルムアルデヒド捕捉剤及び抗酸化剤とそれらの添加量を特許請求の範囲に挿入することによって、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。
訂正事項bの訂正は、訂正事項aの特許請求の範囲の減縮に伴って、特許明細書の発明の詳細な説明の欄の対応する部分を訂正するものであり、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項cの訂正は、訂正事項aの特許請求の範囲の滅縮に伴って、訂正前には、実施例に相当するものが比較例に相当するものとなったためになされたものであり、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項dの訂正は、訂正事項aの減縮された特許請求の範囲に相当するもののみを実施例にしたためになされた訂正であり、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項eの訂正は、訂正事項cに伴って発生したものであり、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項fの訂正は、訂正事項b〜eの訂正に一致する様に、第1表及び第2表の実施例及び比較例の番号を訂正したものであり、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
上記訂正事項a〜fは、いずれも特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[3]訂正後の本件発明
訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「訂正後の本件発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「オキシメチレン共重合体100重量部に、「○1」炭素数2〜10を有する多価アルコールと炭素数22〜32を有する高級脂肪酸とから誘導される多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上を0.01〜2.0重量部、「○2」炭素数12〜35の脂肪酸のアルカリ土類金属塩の1種以上を0.01〜3.0 重量部、「○3」ホルムアルデヒド捕捉剤0.01〜7重量部、及び「○4」抗酸化剤0.03〜5重量部を配合してなる安定化されたオキシメチレン共重合体組成物。」
[4]取消理由の概要
訂正後の本件発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記刊行物1〜5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

刊行物1:特開昭59-96157号公報 (甲第1号証)
刊行物2:特開昭63-295661号公報(甲第2号証)
刊行物3:特開昭63-63741号公報(平成13年2月2日付け上申書の参考資料A)
刊行物4:特開昭57-87410号公報(平成13年2月2日付け上申書の参考資料B)
刊行物5:特開昭53-78256号公報(平成13年2月2日付け上申書の参考資料C)
[5]引用刊行物記載の事項
刊行物1:
「1. ポリアセタールに水酸基を有する多価アルコール脂肪酸エステルとポリエチレングリコール及び有機金属塩を含有することを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
2.有機金属塩の含有量が全組成物中、0.01〜5重量%である特許請求の範囲第1項記載のポリアセタール樹脂組成物。
3.有機金属塩が、ステアリン酸カルシウム,酒石酸カルシウム,カルシウムヒドロキシステアレート,クエン酸カルシウム及びクエン酸リチウムからなる群から選ばれたものである特許請求の範囲第1項又は第2項記載のポリアセタール樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項1〜3)
「しかし例えばイオン性の物質はポリアセタールの変色や熱安定性の低下などの原因となり好ましくない。」(第1頁右欄第13〜第15行)
「本発明に用いられるポリアセタールとしては、ホモポリマー、コポリマーの何れもが用いられ得る。」(第2頁左下欄第1〜第3行)
「しかるに本発明者らは、ポリアセタールに対する種々の物質の効果についてさらに検討を重ねた結果、少量の有機金属塩を上記の組成物に添加すると、熱安定性・成形性等が良好であり、しかも帯電防止効果が更にすぐれた組成物が得られることを見出し本発明に到達したものである。」(第2頁左上欄第14〜第20行)
「ポリアセタールに添加される有機金属塩とは、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、・・・有機酸と、カルシウム、マグネシウム・・・との化合物である。好ましい有金属塩(これは、有機金属塩の誤記と認める。)の一例を示せば、ステアリン酸カルシウム、・・・、12カルシウムヒドロキシステアレートなどを挙げることができる。この金属塩の添加量は、全組成物の0.01〜5重量%である。・・・。尚、好ましい添加量は全組成物の0.05〜0.5重量%である。」(第2頁右上欄第6〜第20行)
「本発明の組成物には、種々の酸化防止剤、抗酸剤を加えることが出来る。酸化防止剤の一例を示せば、・・・・。また、抗酸剤の一例を示せば、尿素、ジシアンジアミド、メラミン、ポリアミド等である。」(第2頁左下欄第6行〜第2頁右下欄下から第3行)
「本発明のポリアセタール樹脂組成物に用いられる水酸基を有する多価アルコール脂肪酸エステルとは、・・・、ベヘン酸、・・・脂肪酸とグリセリン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール等の多価アルコールとの反応によって得られる・・・である。」(第2頁右下欄第19〜第3頁左上欄第11行)
刊行物2;
「アセタール樹脂100重量部に対し炭素数2〜10を有する多価アルコールと炭素数22〜32を有する高級脂肪酸とから誘導される多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上を0.01〜2.0重量部又は該多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上を0.01〜2.0重量部と炭素数10以上の直鎖を有する高級脂肪酸アミドの1種以上0.01〜2.0重量部とを配合してなるアセタール樹脂組成物」(特許請求の範囲の請求項(1))
「本発明は、アセタール樹脂の本来有する機械的性質、熱安定性及び成形品外観を実質的に全く損なわずして射出成形の際の離型性を極めて高度に改善したアセタール樹脂組成物に関する。」(第1頁左欄下から第3行〜右欄第1行)
刊行物3;
「トリオキサンと環状エーテルとの混合物を、・・・塊状重合させた後、ヒンダードアミンを添加して触媒失活した重合体に対してアルカリ金属、アルカリ土類金属の・・・の一種以上、ヒンダードフェノール系酸化防止剤ならびにホルムアルデヒドと反応してホルムアルデヒドを吸収することのできる試剤を添加混合してなるオキシメチレン共重合体組成物」(特許請求の範囲の請求項1)
「本発明で使用するヒンダードフエノール系酸化防止剤としては、下記一般式Bで表される化合物が挙げられる。
(一般式は省略)
具体的な化合物としては、2.2-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフエノール)、トリエチレングリコールービス〔3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフエニル)プロピオネート〕、2,2-チオ-ジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-tertーブチル-4-ヒドロキシフエニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフエニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサンジオールービス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフエニル)プロピオネート〕、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフエニル)プロピオネート、・・・、ステアリル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフエニル)プロピオネートもしくは2,2-ビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフエニルプロパノイルオキシ)メチル〕-1,3-プロパンジオールビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフエニル)プロピオネート〕が挙げられる。本発明で使用するヒンダードフエノール系酸化防止剤の添加量はオキシメチレン共重合体に対して0.001〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%である。0.001重量%より少ないと得られた組成物の熱安定性が低く、5重量%より多いと、オキシメチレン共重合体の表面に白粉状に折出するので好ましくない。」(第5頁左下欄下から第4行〜第6頁左下欄第3行)
「本発明で使用するホルムアルデヒドを吸収することのできる試剤としては、アミド化合物、ウレタン化合物、ピリジン誘導体、ピロリドン誘導体、尿素誘導体、トリアジン誘導体、ヒドラジン誘導体、アミジン化合物があげられ、具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジフエニルホルムアミド、N,N-ジフエニルアセトアミド、N,N-ジフエニルベンズアミド、N,N,N,N-テトラメチルアジバミド、シユウ酸ジアニリド、アジピン酸ジアニリド、α-(N-フエニル)アセトアニリド、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12などのラクタム類の単独重合体ないしは共重合体、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ダイマ酸のような二価カルボン酸とエチレンジアミン、チトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミンのようなジアミンから誘導されるポリアミド単独重合体ないしは共重合体、ラクタム類とジカルボン酸およびジアミンから誘導されるポリアミド共重合体、・・・、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、N-ブチルメラミン、N-フエニルメラミン、N,N-ジフエニルメラミン、N,N,N-トリフエニルメラミン、N-メチロ-ルメラミン、N,N-ジメチロールメラミン、N,N,N-トリメチロールメラミン、・・・、N-フエニル尿素、N,N-ジフエニル尿素、チオ尿素、N-フエニルチオ尿素、N,-ジフエニルチオ尿素、ノナメチレンポリ尿素などの尿素誘導体、・・・などである。中でも、ダイマ酸系ポリアミド、メラミン、グアナミン、ベンゾグアナミン、N-メチロール化メラミン、N-メチロール化ベンゾグアナミン、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ジシアンジアミド、グアニジン、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ尿素、メレム、メラムは、これらを含有するオキシメチレン共重合体の熱安定性が優れているため、特に好ましい。
ホルムアルデヒドを吸収することのできる試剤の添加量は、オキシメチレン共重合体に対して0.001〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%である。0.001重量より少ないと、・・・好ましくない。」(第6頁左下欄第4行〜第7頁左下欄第3行)
「上記のような安定剤の混練により確かに熱安定性が増大するものの、成形等において溶融状態のまま長時間滞留させると分離発泡してモールドデポジットを生じるなど、まだ満足できるものではなかった。・・・。本発明者らは熱安定性にきわめて優れたオキシメチレン共重合体組成物を得るべく鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。」(第2頁右上欄第10行〜左下欄第2行)
刊行物4;
「本発明の方法によって粗オキシメチレン共重合体を熱安定化処理するに当って、オキシメチレン共重合体主鎖の切断を防ぎ、成形材料として良好な熱安定性を持つ製品を得るために、安定剤を添加することが必須である。安定剤としては・・・含窒素高分子量化合物もしくはアミン置換トリアジン類ならびに立体障害性フェノール類の組合せからなる安定剤(特開昭53-78256及び特開昭54-94075)は特に好適である。」(第7頁右上欄第1行〜第15行)
刊行物5;
「(1)アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩およびアルコキシドよりなる群からえらばれた1種もしくは2種以上の化合物、含窒素高分子量化合物ならびに立体障害性フエノールを、ポリアセタールに添加してなるポリアセタール組成物
(14)含窒素高分子量化合物をポリアセタールに対して0.01〜10重量%使用してなる特許請求の範囲第1項記載のポリアセタール組成物
(15)立体障害性フエノールをポリアセタールに対して0.05〜5重量%使用してなる特許請求の範囲第1項記載のポリアセタール組成物」(特許請求の範囲の請求項(1)、(14)、(15))
[6]対比・判断
訂正後の本件発明と刊行物1記載の発明とを対比・判断する。
刊行物1には、ポリアセタール(訂正後の本件発明のオキシメチレン共重合体に該当)に、水酸基を有する多価アルコール脂肪酸エステル(特にベヘン酸を用いるものが、訂正後の本件発明の多価アルコール脂肪酸エステルに相当)と有機金属塩(訂正後の本件発明の脂肪酸のアルカリ土類金属塩に相当)と、を含む組成物が記載され、その用いる成分の割合も訂正後の本件発明と重複・一致しており、ただ、訂正後の本件発明は、さらにホルムアルデヒド補足剤、及び抗酸化剤を特定量配合するのに対し、刊行物1に記載された発明では、種々の酸化防止剤、抗酸剤を加えることができると記載されているだけで、ホルムアルデヒド補足剤、及び抗酸化剤を特定量配合するということについては記載されていない点で、両者は相違するものと認める。
なお、両発明の比較について、平成13年7月26日付けの特許異議意見書で、「刊行物1のものは、帯電防止剤としてポリエチレングリコールが含まれており、優れた帯電防止効果を有することを目的としているのに対し、訂正後の本件発明には、ポリエチレングリコールは含まれておらず、モールドデポジットが著しく少なく、高い熱安定性を有することを目的としているので、目的及び構成が別異である。」旨の主張をしている。
しかし、訂正後の本件発明1では、その請求の範囲において帯電防止剤を含むことを排除しているものではなく、むしろ、訂正後の本件特許明細書の第4頁第23行において「また、本発明の組成物には、・・・、帯電防止剤等の添加剤を任意に含有せしめることができる」と明記されているところから、帯電防止剤の有無は相違点とはいえず、特許権者の主張は採用できない。
ところで、刊行物1を精査すると、「本発明の組成物には、種々の酸化防止剤、抗酸剤を加えることができる。酸化防止剤の一例を示せば、・・・・。また、抗酸剤の一例を示せば、尿素、ジシアンジアミド、メラミン、ポリアミド等である。」(刊行物1の第2頁左下欄第6行〜第2頁左下欄下から3行)との記載があり、訂正後の本件発明のホルムアルデヒド補足剤と抗酸化剤は、その具体例を勘案すると、刊行物1に記載された抗酸剤と酸化防止剤に実質的に相当するものであるといえる。
さらに、訂正後の本件発明と同様の系であるオキシメチレン共重合体組成物に、性状の改善のためいわゆるホルムアルデヒド補足剤、及び抗酸化剤を訂正後の本件発明と重複・一致する量配合することは、刊行物2〜刊行物5に記載されているように、周知の技術事項である。
したがって、上記相違点である、さらにホルムアルデヒド補足剤、及び抗酸化剤を特定量配合する点に、格別の技術的困難性はなく、格別の創意性があるものとはいえない。
また、訂正された本件特許明細書において、第1表の記載を根拠に、ホルムアルデヒド補足剤、及び抗酸化剤の配合による格別顕著な効果を奏する旨特許権者は主張する。
しかし、これらの効果は、刊行物2〜5の記載、特にモールドデポジットに関する効果は刊行物3(刊行物3の第2頁右上欄第10行〜第2頁左下欄第2行)から、予測しうる程度のものといえる。
よって、訂正後の本件発明は、刊行物1〜5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものといえる。
[7]むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項に違反により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
オキシメチレン共重合体組成物
(57)【特許請求の範囲】
オキシメチレン共重合体100重量部に、▲1▼炭素数2〜10を有する多価アルコールと炭素数22〜32を有する高級脂肪酸とから誘導される多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上を0.01〜2.0重量部、▲2▼炭素数12〜35の脂肪酸のアルカリ土類金属塩の1種以上を0.01〜3.0重量部、▲3▼ホルムアルデヒド捕捉剤0.01〜7重量部、及び▲4▼抗酸化剤0.03〜5重量部を配合してなる安定化されたオキシメチレン共重合体組成物。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、熱安定性に優れ、成形時に変色が少なく且つ金型への析出物が極めて少ないオキシメチレン共重合体組成物に関するものである。
〔従来技術〕
ホルムアルデヒドまたはその環状オリゴマーであるトリオキサンやテトラオキサンとこれらと共重合可能なモノマーとを共重合させて得られるオキシメチレン共重合体は、その重合体分子の末端から容易に分解することが知られている。
従って、安定なオキシメチレン共重合体を得るために従来より、オキシメチレン共重合体の末端分子に種々の処理が施され、次いでこれに酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の添加剤を配合混練する方法が種々行われて来た。
例えば、特公昭47-10531には、オキシメチレン重合体に炭素数6個以上のカルボン酸のストロンチウム塩またはマグネシウム塩を配合する方法が、特公昭62-4422には、(1)ポリアミドと(2)炭素数12〜35の脂肪酸、炭素数12〜35の脂肪酸のカルシウム塩、炭素数12〜35の脂肪族アルコールのカルシウムまたはマグネシウム塩からなる群の少なくとも1つをオキシメチレン共重合体に配合する方法が提示されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながらこれらの方法にて得られたオキシメチレン共重合体組成物を、成形用材料として見た場合、種々の更に改良されるべき欠点が見出されるのである。
すなわち、オキシメチレン共重合体は、歯車軸受、プーリー等の機構部品と言った小型の成形用に供されることが多いが、上記の方法によって得られるオキシメチレン共重合体組成物を、これらの成形用材料として使用した場合、成形機の容量によっては、成形材のシリンダー内での滞留時間が往々にして、上記成形材料の分解開始時間を上廻り、従ってシリンダー内において材料の分解、発泡等の好ましからざる現象がおこり、結局、不良成形品の発生を惹起するといった問題点が見い出された。
また従来のオキシメチレン共重合体組成物の内、使用する安定化剤によっては、成形材として使用したオキシメチレン共重合体組成物が成形機のシリンダー内での滞留時に黄変し成形品の価値を損なう等の問題点があった。
更に上記した如く、オキシメチレン共重合体組成物は、プーリー、歯車等の高度の寸法精度を要求される成形品の材料として使用されるにもかかわらず、従来のオキシメチレン共重合体組成物では、長時間の連続射出成形に供した場合、熱分解によって発生したホルムアルデヒドガスに基づくと考えられるモールドデポジットが発生し、歯車等の成形品において所定の寸法範囲よりはずれるばかりでなく成形品の表面状態も損なう等の問題もあった。
そこで我々は上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。
〔課題を解決するための手段〕
すなわち、本発明は、オキシメチレン共重合体100重量部に対して、▲1▼炭素数2〜10を有する多価アルコールと炭素数22〜32を有する高級脂肪酸とから誘導される多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上を0.01〜2.0重量部、▲2▼炭素数12〜35の脂肪酸のアルカリ土類金属塩の1種以上を0.01〜3.0重量部、▲3▼ホルムアルデヒド捕捉剤0.01〜7重量部、及び▲4▼抗酸化剤0.03〜5重量部を配合してなる安定化されたオキシメチレン共重合体組成物にある。
▲1▼の多価アルコール脂肪酸エステルのみではオキシメチレン共重合体を十分に安定化することは困難であり、実際の射出成形に供することができるような熱的に安定なオキシメチレン共重合体組成物を得ることは難しい。
▲2▼の脂肪酸のアルカリ土類金属塩のみで安定化して得られたオキシメチレン共重合体組成物は、成形機のシリンダー内で溶融化状態で保持した際比較的短時間で分解発泡するばかりでなく、射出成形機にて連続成形に供した場合少ないショット数において、モールドデポジットが観察される。即ち前述した多価アルコール脂肪酸エステルと脂肪酸のアルカリ土類金属塩の両者をオキシメチレン共重合体に配合することにより、本発明の目的である熱安定性に優れたオキシメチレン共重合体組成物を得ることができる。
本発明において用いる多価アルコール脂肪酸エステルは、炭素数2〜10を有する多価アルコールと炭素数22〜32を有する高級脂肪酸とから誘導される1個以上のエステル基を有する化合物であり、斯かる多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールメタン、トリエチロールメタンが適当であり、高級脂肪酸としては、べヘン酸、セロチン酸、モンタン酸、ラクセル酸等が適当である。
また、本発明で用いられる炭素数12〜35の脂肪酸のアルカリ土類金属塩とは、炭素数12〜35を有する飽和、または、不飽和カルボン酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩及びストロンチウム塩を意味し、カルボン酸の例としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、べヘン酸、モンタン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸等が好ましい。本発明の組成物で用いるポリオキシメチレン共重合体は、ホルムアルデヒドまたはその環状オリゴマー、例えばトリオキサン、テトラオキサン等と、環状エーテルまたは環状アセタール、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキセパン、グリコールのホルマール等とを、触媒の存在下に共重合させて得られる重合体であって、オキシメチレン主鎖中に炭素数2以上のオキシアルキレン単位を、好ましくは0.4〜40モル%、特に好ましくは、0.4〜10モル%含有する重合体であり、所望により、粗共重合体を熔融状態にして不安定部分を分解する方法等により、末端の安定化処理が施された重合体である。
重合触媒としては、一般のカチオン重合触媒が用いられるが、特に弗化硼素を含む化合物が好適であり、水和物および配位錯体化合物が用いられ、エーテル類との配位錯体である三弗化硼素ジエチルエーテラートは特に好ましい触媒として挙げることができる。
重合反応によって得られたオキシメチレン共重合体は、公知の方法によって触媒の除去処理を行ってもよいし、また、特公昭55-42085に示された如き、三価の有機燐化合物を添加し、触媒を失活処理を施しても良い。
後者の反応停止剤を用いる処理を施した場合、重合触媒が失活し、重合反応が停止するだけでなく、失活した触媒が共重合体中に残存しても、それが共重合体の熱安定性に何ら悪影響も及ぼさず、その後の洗浄操作を必要としないばかりでなく、さらに加えて、本発明で用いる安定剤系は、この有機燐化合物にて処理を施して得られるオキシメチレン共重合体において特に効果的に作用するものである。
尚、前記安定剤の内、多価アルコール脂肪酸エステルの配合量は、オキシメチレン共重合体100重量部に対して0.01〜2.0重量部、好ましくは、0.01〜1.0重量部の範囲である。脂肪酸のアルカリ土類金属塩の配合量は0.01〜3.0重量部、好ましくは0.01〜2.0重量部であり、これらの限定範囲をはずれた場合、射出成形時の射出成形品の外観の悪化、例えば、色調不良、銀条の発生、金型汚染物〔モールドデポジット〕の成形品への転写による寸法不良、表面荒れを招き、好ましくない。
また、本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、タルク、酸化チタン、マイカ粉末のような充填剤、炭素繊維、ガラス繊維のような補強材、着色剤、離型性を付与するための滑剤、帯電防止剤等の添加剤を任意に含有せしめることができる。
また、安定化助剤として、ホルムアルデヒド捕捉剤、及び抗酸化剤を併用すると成形時の熱安定性、及び成形品の長期熱安定性等の面でより優れた性質を示すようになるので好ましい。ホルムアルデヒド捕捉剤としては、ウレタン化合物、ピリジン誘導体、ピロリドン誘導体、尿素誘導体、アミン置換トリアジン類または該アミン置換トリアジン類とホルムアルデヒドとの初期縮合物類、アミド化合物等が挙げられる。特に本発明の組成物と併用するのに好ましい例としては、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、N-ブチルメラミン、N,N-ジアリルメラミン、N,N’,N”-トリメチロールメラミン、ナイロン6/6.6/6.10 3元共重合体、ナイロン6/6.6/6.10/12 4元共重合体、ダイマー酸系ポリアミド等が挙げられる。
抗酸化剤としては、オキシメチレン共重合体に使用されている公知の物質を適宜使用することができるが、好ましい例としては、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、2,2’-チオジエチル-ビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
ホルムアルデヒド捕捉剤の添加量は、オキシメチレン共重合体100重量部に対して0.01〜7重量部、好ましくは、0.02〜5重量部の範囲であり、抗酸化剤においてはオキシメチレン共重合体100重量部に対して0.03〜5重量部、好ましくは、0.05〜3重量部の範囲で適宜選ばれる。添加量がこれらの範囲より少ないと添加効果がなく、多いと連続射出成形時における成形品の外観の悪化を招き好ましくない。
以下に実施例および比較例を示して本発明をさらに具体的に説明する。なお以下の記載において極限粘度は2重量%のα-ピネンを添加したp-クロロフェノール中で60℃で測定した値を示す。また、安定剤の添加量の単位である「phr」は、オキシメチレン共重合体100重量部あたりの重量部を意味する。
比較例1
2枚のΣ型の攪拌羽根を有するニーダーにトリオキサンを仕込み60℃に加熱して融解した。これに、トリオキサンに対して2.5重量%のエチレンオキサイドおよび、トリオキサンに対して0.010モル%の弗化硼素ジエチルエーテラートを加えて、攪拌下に重合を行ったところ、粗オキシメチレン共重合体が収率98%にて得られた。
この粗オキシメチレン共重合体の極限粘度は1.45dl/gであった。この共重合体に触媒量の二倍モルに相当するトリフェニルホスフィンを添加し触媒を失活させた。
この粗オキシメチレン共重合体にステアリン酸カルシウム0.1phr、べヘニン酸モノグリセリド0.15phrを添加し、ヘンシエルミキサーにて1500rpm、約3分間混合したのち、混合物をL/D27、直径32mmのベント付2軸押出機を用いて溶融し安定化した。この安定化時、前記オキシメチレン共重合体混合物の2軸押出機中の平均滞留時間は約15分間であった。安定化されたオキシメチレン共重合体組成物は、2軸押出機のダイヘッドからストランドとして押し出され、ストランドは直ちにペレタイダーを経てペレット化した。得られた安定化されたオキシメチレン共重合体組成物の試験結果を第1表に示す。なお第1表中に示される試験項目は以下のようにして測定・判定した。
(1)引張強度、引張り伸び
ASTM-D638の方法により測定する
(2)滞留熱安定性、シルバー発生滞留時間
使用射出成形機:名機製作所製SJ-35A型
滞留条件:シリンダー温度240℃、滞留時間 最長60分間
評価方法:射出成形機内に6ショット分の樹脂を滞留させ、10分毎に射出成形し、樹脂の発泡に起因するシルバー〔銀条〕の発生時間〔例えば、3回目のショットで発生すれば30分〕を観察する。
(3)滞留色調変化
色差計:(株)スガ試験機製 ハンター色差計
使用射出成形機:名機製作所製SJ-35A型
滞留条件:シリンダー温度240℃、滞留時間20分間
滞留前の成形品色調:L1、a1、b1
滞留後の成形品色調:L2、a2、b2
算出式:

判定基準:◎;0 < △E ≦ 4
○;4 < △E ≦ 6
△;6 < △E ≦ 8
×;8 < △E ≦10
(4)モールドデポジット
使用射出成形機:(株)東芝製IS-75
試験方法:材料温度約220℃、金型温度70℃、成形サイクル約15秒にて連続射出成形を行い、金型にモールドデポジットが発生するまでのショット数を計測する。
比較例2
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.1phrに替えてステアリン酸カルシウム0.2phrを使用し、ベヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてソルビタンモノベヘネート0.10phrを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第1表に示す。
比較例3
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてステアリン酸カルシウム0.05phrとセロチン酸モノグリセリド0.05phrを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第1表に示す。
比較例4
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてステアリン酸マグネシウム0.10phrとベヘニン酸モノグリセリド0.15phrを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第1表に示す。
比較例5
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてステアリン酸マグネシウム0.10phrとソルビタンエルシネート0.10phrを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第1表に示す。
比較例6
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えて12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.10phrを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第1表に示す。
比較例7
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えて12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム0.15phrとラクセル酸モノグリセリド0.05phrを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第1表に示す。
比較例8
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてべヘニン酸カルシウム0.20phrとべヘニン酸モノグリセリド0.20phrを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第1表に示す。
比較例9
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてラウリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第1表に示す。
比較例10
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてモンタン酸カルシウム0.05phrとべヘニン酸モノグリセリド0.05phrを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第1表に示す。
比較例11
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてダイマー酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第1表に示す。
比較例12
比較例1と同様にしてトリオキサンとトリオキサンに対して3.5重量%の1.3-ジオキセパンおよびトリオキサンに対して0.013モル%の弗化硼素ジエチルエーテラートを加えて重合を行い、粗オキシメチレン共重合体を得た。この粗オキシメチレン共重合体の極限粘度は1.48dl/gであった。この共重合体に使用した触媒量の2倍モルに相当するトリフェニルホスヒンを添加し触媒を失活させた。
この粗オキシメチレン共重合体に比較例1と同様にステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrを添加し、ヘンシェルミキサーにて混合後、2軸押出機にて安定化し、安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。得られたオキシメチレン共重合体組成物を比較例1と同様に試験した。その結果を第1表に示す。
実施例1
比較例1で得られた粗オキシメチレン共重合体に重合時使用の触媒量の2倍モルに相当するトリフェニルホスフィンを添加し触媒を失活させた後、ステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.10phrおよびジメチロールメラミン0.20phr、イルガノックス-1010[チバ・ガイギー社商品名、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕]0.60phrを添加し、比較例1と同様にヘンシェルミキサーにて混合後、2軸押出機にて安定化し、安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。得られたオキシメチレン共重合体組成物を比較例1と同様に試験した。その結果を第1表に示す。
実施例2
比較例1で得られた粗オキシメチレン共重合体に重合時使用の触媒量の2倍モルに相当するトリフェニルホスフィンを添加し触媒を失活させた後、ステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.10phrおよびメラミン0.10phr、イルガノックス-1010[チバ・ガイギー社商品名]0.50phrを添加し、比較例1と同様にヘンシェルミキサーにて混合後、2軸押出機にて安定化し、安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。得られたオキシメチレン共重合体組成物を比較例1と同様に試験した。その結果を第1表に示す。
実施例3
比較例1で得られた粗オキシメチレン共重合体に重合時使用の触媒量の2倍モルに相当するトリフェニルホスフィンを添加し触媒を失活させた後、ステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrおよびメラミン0.20phr、イルガノックス-259[チバ・ガイギー社商品名、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕]0.50phrを添加し、比較例1と同様にヘンシェルミキサーにて混合後、2軸押出機にて安定化し、安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。得られたオキシメチレン共重合体組成物を比較例1と同様に試験した。その結果を第1表に示す。
実施例4
比較例1で得られた粗オキシメチレン共重合体に重合時使用の触媒量の2倍モルに相当するトリフェニルホスフィンを添加し触媒を失活させた後、ステアリン酸マグネシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrおよびメラミン0.20phr、イルガノックス-245[チバ・ガイギー社商品名、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕]0.50phrを添加し、比較例1と同様にヘンシェルミキサーにて混合後、2軸押出機にて安定化し、安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。得られたオキシメチレン共重合体組成物を比較例1と同様に試験した。その結果を第1表に示す。
実施例5
比較例1で得られた粗オキシメチレン共重合体に重合時使用の触媒量の2倍モルに相当するトリフェニルホスフィンを添加し触媒を失活させた後、ステアリン酸カルシウム0.10phrとソルビタンモノベヘネート0.15phrおよびベンゾグアナミン0.20phr、イルガノックス-1010[チバ・ガイギー社商品名]0.50phrを添加し、比較例1と同様にヘンシェルミキサーにて混合後、2軸押出機にて安定化し、安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。得られたオキシメチレン共重合体組成物を比較例1と同様に試験した。その結果を第1表に示す。
実施例6
比較例1で得られた粗オキシメチレン共重合体に重合時使用の触媒量の2倍モルに相当するトリフェニルホスフィンを添加し触媒を失活させた後、ステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrおよびダイマー酸ポリアミド0.20phr、イルガノックス-245[チバ・ガイギー社商品名]0.50phrを添加し、比較例1と同様にヘンシェルミキサーにて混合後、2軸押出機にて安定化し、安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。得られたオキシメチレン共重合体組成物を比較例1と同様に試験した。その結果を第1表に示す。
実施例7
比較例12で得られた粗オキシメチレン共重合体に重合時使用の触媒量の2倍モルに相当するトリフェニルホスフィンを添加し触媒を失活させた後、ステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.10phrおよびメラミン0.10phr、イルガノックス-1010[チバ・ガイギー社商品名]0.50phrを添加し、比較例1と同様にヘンシェルミキサーにて混合後、2軸押出機にて安定化し、安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。得られたオキシメチレン共重合体組成物を比較例1と同様に試験した、その結果を第1表に示す。

比較例13
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてステアリン酸カルシウム0.10phrのみを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第2表に示す。
比較例14
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてステアリン酸マグネシウム0.20phrのみを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第2表に示す。
比較例15
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えて12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム0.40phrのみを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第2表に示す。
比較例16
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてべヘニン酸モノグリセリド0.20phrのみを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にてオキシメチレン共重合体の安定化を試みたが樹脂の分解に起因すると思われるストランドの発泡が観察され、安定化したオキシメチレン共重合体のペレットを得ることができなかった。
比較例17
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてラクセル酸モノグリセリド0.20phrのみを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にてオキシメチレン共重合体の安定化を試みたが樹脂の分解に起因すると思われるストランドの発泡が観察され、安定化したオキシメチレン共重合体のペレットを得ることができなかった。
比較例18
比較例1で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてソルビタンモノベヘネート0.30phrのみを使用した以外は、比較例1と全く同じ方法にてオキシメチレン共重合体の安定化を試みたが樹脂の分解に起因すると思われるストランドの発泡が観察され、安定化したオキシメチレン共重合体のペレットを得ることができなかった。
比較例19
比較例12で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとべヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてステアリン酸カルシウム0.20phrのみを使用した以外は、比較例12と全く同じ方法にて安定化されたオキシメチレン共重合体組成物を得た。この組成物を比較例1と同じ方法で試験した結果を第2表に示す。
比較例20
比較例12で使用したステアリン酸カルシウム0.10phrとベヘニン酸モノグリセリド0.15phrに替えてべヘニン酸モノグリセリド0.20phrのみを使用した以外は、比較例12と全く同じ方法にてオキシメチレン共重合体の安定化を試みたが樹脂の分解に起因すると思われるストランドの発泡が観察され、安定化したオキシメチレン共重合体のペレットを得ることができなかった。

〔発明の効果〕
本発明によるオキシメチレン共重合体組成物は、長期連続射出成形に供された場合において金型汚染物(モールドデポジット)が著しく少なく、また成形機のシリンダー内で比較的高温下に溶融状態に置かれた場合でも、発泡、変色等の異常は認められず、高い安定性を有する。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
▲1▼訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1中の「オキシメチレン共重合体100重量部に、▲1▼炭素数2〜10を有する多価アルコールと炭素数22〜32を有する高級脂肪酸とから誘導される多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上を0.01〜2.0重量部と、▲2▼炭素数12〜35の脂肪酸のアルカリ土類金属塩の1種以上を0.01〜3.0重量部とを配合してなる安定化されたオキシメチレン共重合体組成物。」を特許請求の範囲の減縮を目的として、「オキシメチレン共重合体100重量部に、▲1▼炭素数2〜10を有する多価アルコールと炭素数22〜32を有する高級脂肪酸とから誘導される多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上を0.01〜2.0重量部、▲2▼炭素数12〜35の脂肪酸のアルカリ土類金属塩の1種以上を0.01〜3.0重量部、▲3▼ホルムアルデヒド捕捉剤0.01〜7重量部、及び▲4▼抗酸化剤0.03〜5重量部を配合してなる安定化されたオキシメチレン共重合体組成物。」に訂正する。
▲2▼訂正事項b
元明細書の第4頁第14行〜第5頁第1行の「オキシメチレン共重合体100重量部に、▲1▼炭素数2〜10を有する多価アルコールと炭素数22〜32を有する高級脂肪酸とから誘導される多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上を0.01〜2.0重量部と、▲2▼炭素数12〜35の脂肪酸のアルカリ土類金属塩の1種以上を0.01〜3.0重量部とを配合してなる安定化されたオキシメチレン共重合体組成物にある。」を「オキシメチレン共重合体100重量部に、▲1▼炭素数2〜10を有する多価アルコールと炭素数22〜32を有する高級脂肪酸とから誘導される多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上を0.01〜2.0重量部、▲2▼炭素数12〜35の脂肪酸のアルカリ土類金属塩の1種以上を0.01〜3.0重量部、▲3▼ホルムアルデヒド捕捉剤0.01〜7重量部、及び▲4▼抗酸化剤0.03〜5重量部を配合してなる安定化されたオキシメチレン共重合体組成物にある。」に訂正する。
▲3▼訂正事項c
元明細書の第11頁の第15行、同第14頁第12行、同第14頁第13行、同第14頁第17行、同第14頁第19行、同第15頁第1行、同第15頁第2行、同第15頁第6行、同第15頁第8行、同第15頁第10行、同第15頁第11行、同第15頁第15行、同第15頁第17行、同第15頁第19行、同第15頁第20行、同第16頁第4行、同第16頁第6行、同第16頁第8行、同第16頁第9行、同第16頁第13行、同第16頁第15行、同第16頁第17行、同第16頁第18行、同第17頁第2行、同第17頁第4行、同第17頁第6行、同第17頁第7行、同第17頁第11行、同第17頁第13行、同第17頁第15行、同第17頁第16行、同第17頁第20行、同第18頁第2行、同第18頁第4行、同第18頁第5行、同第18頁第9行、同第18頁第11行、同第18頁第13行、同第18頁第14行、同第18頁第18行、同第18頁第20行、同第19頁第2行、同第19頁第3行、同第19頁第12行、同第19頁第18行、同第20頁第2行、同第20頁第11行、同第20頁第14〜15行、同第20頁第18行、同第21頁第4行、同第21頁第8行、同第21頁第11行、同第21頁第19行、同第22頁第3行、同第22頁第6行、同第22頁第14〜15行、同第22頁第18行、同第23頁第2行、同第23頁第9行、同第23頁第12行、同第23頁第15行、同第24頁第2行、同第24頁第5行、同第24頁第8行、同第24頁第14行、同第24頁第18行、同第26頁第2行、同第26頁第5行、同第26頁第7行、同第26頁第10行、同第26頁第13行、同第26頁第15行、同第26頁第18行、同第27頁第1行、同第27頁第3行、同第27頁第6行、同第27頁第9行、同第27頁第15行、同第27頁第18行、同第28頁第4行、同第28頁第7行、同第28頁第13行、同第28頁第16行、同第28頁第18行、同第29頁第2行、及び同第29頁第5行の「実施例」を「比較例」に訂正する。
▲4▼訂正事項d
元明細書の第20頁第1行の「実施例13」を「実施例1」に、同第20頁第17行の「実施例14」を「実施例2」に、同第21頁第10行の「実施例15」を「実施例3」に、同第22頁第5行の「実施例16」を「実施例4」に、同第23頁第1行の「実施例17」を「実施例5」に、同第23頁第14行の「実施例18」を「実施例6」に、同第24頁第7行の「実施例19」を「実施例7」に、それぞれ訂正する。
▲5▼訂正事項e
元明細書の第26頁第1行の「比較例1」を「比較例13」に、同第26頁第9行の「比較例2」を「比較例14」に、同第26頁第17行の「比較例3」を「比較例15」に、同第27頁第5行の「比較例4」を「比較例16」に、同第27頁第14行の「比較例5」を「比較例17」に、同第28頁第3行の「比較例6」を「比較例18」に、同第28頁第12行の「比較例7」を「比較例19」に、同第29頁第1行の「比較例8」を「比較例20」に、それぞれ訂正する。
▲5▼訂正事項f
元明細書の第25頁の第1表の「実施例1〜12」を「比較例1〜12」に、同第25頁の第1表の「実施例13〜19」を「実施例1〜7」に、同第30頁の第2表の「比較例1〜8」を「比較例13〜20」に、それぞれ訂正する。
異議決定日 2002-01-18 
出願番号 特願平2-172597
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 木村 順子  
特許庁審判長 柿崎 良男
特許庁審判官 船岡 嘉彦
石井 あき子
登録日 1999-10-22 
登録番号 特許第2993062号(P2993062)
権利者 三菱瓦斯化学株式会社
発明の名称 オキシメチレン共重合体組成物  
代理人 古谷 馨  
代理人 持田 信二  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 古谷 聡  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ