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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E05B
審判 全部申し立て 2項進歩性  E05B
管理番号 1061054
異議申立番号 異議2001-72211  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-09-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-08-08 
確定日 2002-05-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3135341号「ドアロック制御装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3135341号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕手続の経緯
本件特許第3135341号の請求項1に係る発明についての出願は、平成4年2月28日に特許出願され、平成12年12月1日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、株式会社大井製作所より、その特許について特許異議の申立てがなされ、当審において取消しの理由を通知したところ、その指定期間内の平成14年3月12日に訂正請求がなされた。

〔2〕訂正請求について
1 訂正請求の内容
本件訂正請求の趣旨は、特許第3135341号の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、訂正事項は以下のとおりである。
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載「【請求項1】昇降可能な窓ガラスを有する車両のドア内に、ベースを介して固定され、このドアに設けられた操作ハンドルからの操作力を、ドアロック装置に伝達するドアロック制御装置において、上記ベースに、操作ハンドルの上記操作力を受けて回動しドアロック装置に該操作力を伝達するレバー部材を、上記ドアの厚さ方向に向いた軸部材により枢着し、かつ上記レバー部材が、上記窓ガラスの一方の側に、操作ハンドルの操作力を受ける操作力受部を有し、他方の側に、該操作力をドアロック装置に伝達する操作力伝達部を有していることを特徴とするドアロック制御装置。」を、
「【請求項1】昇降可能な窓ガラスを有する車両のドア内に、ベースを介して固定され、このドアに設けられた操作ハンドルからの操作力を、ドアロック装置に伝達するドアロック制御装置において、上記ベースに、上記ドアの厚さ方向に向いた一連の単一の軸部材を支持し、この軸部材に、窓ガラスの一方の側に位置し該軸部材とは異なる位置で操作ハンドルの操作力を受ける操作力受部と、窓ガラスの他方の側に位置し該軸部材とは異なる位置で該操作力をドアロック装置に伝達する操作力伝達部とを有するレバー部材を枢着したことを特徴とするドアロック制御装置。」
と訂正する。
訂正事項b
発明の詳細な説明の段落【0006】の「ベースに、操作ハンドルの上記操作力を受けて回動しドアロック装置に該操作力を伝達するレバー部材を、上記ドアの厚さ方向に向いた軸部材により枢着し、かつレバー部材が、窓ガラスの一方の側に、操作ハンドルの操作力を受ける操作力受部を有し、他方の側に、該操作力をドアロック装置に伝達する操作力伝達部を有していることに特徴を有している。」(本件特許公報3欄32〜38行)を、
「上記ベースに、上記ドアの厚さ方向に向いた一連の単一の軸部材を支持し、この軸部材に、窓ガラスの一方の側に位置し該軸部材とは異なる位置で操作ハンドルの操作力を受ける操作力受部と、窓ガラスの他方の側に位置し該軸部材とは異なる位置で該操作力をドアロック装置に伝達する操作力伝達部とを有するレバー部材を枢着したことに特徴を有している。」
と訂正する。

2 訂正の適否
訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1において、軸部材の構成を「一連の単一の軸部材」と限定し、操作力受部における操作ハンドルの操作力を受ける位置及び操作力伝達部における該操作力をドアロック装置に伝達する位置を、「軸部材とは異なる位置」に限定し、「軸部材に」「レバー部材を枢着」する構成に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、これらの構成の限定は、願書に添付した明細書の段落【0011】、段落【0013】、段落【0014】の記載及び同図面の図2、図4に基づくものである
また訂正事項bは、特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明及び図面の簡単な説明の記載との整合を図るために行う訂正であって、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項a及びbは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記訂正事項a及びbの訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法126条1項ただし書及び2項の規定に適合するので、本件訂正請求を認める。

〔3〕特許異議の申立てについて
1 異議申立ての理由の概要
異義申立人株式会社大井製作所は、甲第1号証の1及び甲第1号証の2を提出して、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証の1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号の規定する発明であるから特許を受けることができないものであり、本件請求項1に係る発明についての特許は取り消されるべきである旨主張している。
甲第1号証の1:英国特許第406613号明細書(1934年)
甲第1号証の2:甲第1号証の1の翻訳(抄訳)

2 本件発明
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。(上記〔2〕の「1 訂正請求の内容」の訂正事項a参照。)

3 特許異議の申立てについての判断
3-1 甲1号証の記載事項
甲第1号証(取消しの理由に引用した刊行物1)には、
「本発明によれば、このようなタイプの、4つのドアがそれぞれ別個にロック機構を有し、該ロック機構は車体の敷居や上部水平フレームに係合する車体において、隣接するドアの自由エッジ間に両ドアを閉位置で互いに固定する手段を設ける。」(1頁15〜25行)、
「図5に示されるドア内部で上下動可能な窓」(1頁72〜74行)、
「この実施形態において、ドアを閉位置に保持する手段は、上フック形ラッチ36と下フック形ラッチ37とからなる。ラッチ36はドア内部にベースプレート38に当接して軸支され、スプリング39の外側方向の圧力により作動する。ラッチ36はドア及びベースプレート38の開口を抜けて外側に突出するヘッドが、ヘッドレール40の下部に固定されるストライカプレート41に係合する。
ロッド42の一端はスロット・ピン連結によりラッチの突起36’に係合し、ロッドの他端はロックベースプレート44上で上下にスライドする部品45に連結される。……ラッチ37はドアレール21の内壁の開口を抜けて突出し、縦シル46の外壁の開口47を抜けてドアの閉位置に入る。ラッチ37はドアレール21に連結されるベースプレート48に軸支され、シル46の内部においてストライカ49に係合する。連結ロッド50の一端はラッチの延部37’に軸支され、上記ロッドの他端はスロット・ピン連結により、部品45に対応するスライド板52に係合する。ラッチ36はスプリング39によりロック位置に弾性的に保持され、同じ動作が、ラッチ37に関する限り、後者自身の重量と連結ロッド50の重量により実行される。
両スライド板45及び52はダブルアームレバー53の端部に軸支される。レバー53はロックベースプレート44と固定ブリッジ44’との間に回転可能に取り付けられた軸54に固着される。これに加え、レバー55は軸54に連結され、通常、図示されない中間ロッドにより、ドア内側に一定距離を設けて配置されたハンドルに連結される。窓23の側端周縁にガイドされるU字型部56の一方のアームは軸54に固着され、上記U字型部56の他方のアームは、外側ハンドル57(図1)に回転可能に取り付けられ同ハンドルを保持する軸58に固着される。
内側ハンドルでレバー55を動かすことにより、又は外側ハンドルでU字型部56を動かすことにより、レバー53を回転させることができ、スライド板45及び52は、それが軸支されているロッド42及び50とラッチ36、37と共に互いに向かって移動し、ラッチ36、37のロックヘッドはストライカ板41及び49から外れる。スプリング59の圧力で作動し、ベースプレート44に軸支されたアーム60を設けて、ロックを閉位置に固定する。上記レバー60はその端部がスライド可能部品45の突起61に係合することにより、上記スライド可能部品及び他のロック部品の動きを阻止できる。回転可能に取り付けられ、ドアの内側から作動させる部品62により、レバー60を固定位置から動かすことができる。」(2頁13〜88行)の記載がある。
以上の記載及び図面によれば、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認められる。
「上下動可能な窓23を有する車輌のドア内に、ロックベースプレート44を介して固定され、このドアに設けられた外側ハンドル57の動きをラッチ36、37に伝達する、ロッド42、50、スライド板45、52、ダブルアームレバー53、アーム60等からなるドアロック制御装置において、
上記ロックベースプレート44に、上記ドアの厚さ方向に向いた軸54及び軸58を枢着し、この軸54及び軸58に、窓23の一方の側に位置し外側ハンドル57の動きを受ける他方のアームと、窓23の一方の側に位置し該動きをラッチ36、37に伝達する一方のアームとを有するU字型部56を固定したドアロック制御装置」
の発明が記載されているものと認められる。

3-2 対比・判断
本件発明1と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「上下動可能な窓23」、「ロックベースプレート44」及び「外側ハンドル57」は、それぞれ本件発明1の「昇降可能な窓ガラス」、「ベース」及び「操作ハンドル」に相当し、甲第1号証記載の発明の「外側ハンドル57の動き」は、外側ハンドル57からの操作力が態様を変えたものであるから、本件発明1の「操作ハンドルからの操作力」に相当し、また、甲第1号証記載の発明の「ラッチ36、37」、「U字型部56」、「軸54及び軸58」、「他方のアーム」及び「一方のアーム」は、それぞれ本件発明1の「ドアロック装置」、「レバー部材」、「軸部材」、「操作力受部」及び「操作力伝達部」に相当するから、両者は、
「昇降可能な窓ガラスを有する車両のドア内に、ベースを介して固定され、このドアに設けられた操作ハンドルからの操作力を、ドアロック装置に伝達するドアロック制御装置において、上記ベースに、上記ドアの厚さ方向に向いた軸部材を支持し、この軸部材に、窓ガラスの一方の側に位置し操作ハンドルの操作力を受ける操作力受部と、窓ガラスの他方の側に位置し該操作力をドアロック装置に伝達する操作力伝達部とを有するレバー部材を取り付けたドアロック制御装置」
である点で一致するものの、以下の点で相違する。
相違点1
軸部材が、本件発明1では、一連の単一の軸部材であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、一連の単一の軸部材ではない。
相違点2
本件発明1では、軸部材にレバー部材を枢着し、レバー部材の操作力受部は、軸部材とは異なる位置で操作ハンドルの操作力を受け、操作力伝達部は、軸部材とは異なる位置で該操作力をドアロック装置に伝達するのに対し、甲第1号証記載の発明では、軸部材にレバー部材を固着し、レバー部材の操作力受部は、軸部材(軸58)を通じて操作ハンドル(外側ハンドル57)の操作力を受け、即ち、軸部材と同じ位置で操作ハンドルの操作力を受け、操作力伝達部は、軸部材(軸54)を通じて該操作力をドアロック装置に伝達する、即ち、軸部材と同じ位置で該操作力をドアロック装置に伝達する。
このように、本件発明1は、上記相違点1及び2に挙げた構成を備える点で、甲第1号証記載の発明とは明らかに相違し、上記構成は当該技術分野において周知の技術的事項ともいえない。そして、本件発明1は、上記構成を備えることにより、「レバー部材は単に軸部材に回動自在に枢着されているだけであるので、枢着部が損傷するおそれはなく、また、操作力受部と操作力伝達部の軸部材位置からのオフセット量を変更することにより、操作ハンドルに与えるストロークとロック装置側で受けるストロークとを容易に設定(変更)することができ」(平成14年3月12日付け特許異議意見書3頁下から7〜3行参照。)との甲第1号証記載の発明からは期待できない効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとも、また、甲第1号証記載の発明に基いて同業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。

4 むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件発明1についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ドアロック制御装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 昇降可能な窓ガラスを有する車両のドア内に、ベースを介して固定され、このドアに設けられた操作ハンドルからの操作力を、ドアロック装置に伝達するドアロック制御装置において、
上記ベースに、上記ドアの厚さ方向に向いた一連の単一の軸部材を支持し、
この軸部材に、窓ガラスの一方の側に位置し該軸部材とは異なる位置で操作ハンドルの操作力を受ける操作力受部と、窓ガラスの他方の側に位置し該軸部材とは異なる位置で該操作力をドアロック装置に伝達する操作力伝達部とを有するレバー部材を枢着したことを特徴とするドアロック制御装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
本発明は、ドアロック制御装置に関し、特に、昇降可能な窓ガラスを有する車両のドア内に設けられ、このドアの操作ハンドルからの操作力をドアロック装置に伝達するドアロック制御装置に関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】
この種のドアロック制御装置は、例えばドアパネル内に設けられていて、このドアの車外側に設けられたアウトサイドハンドルの操作力をドアロック装置に伝達、非伝達に切り替える。このようなドアロック制御装置を、例えば図6に示されるような所謂ワンボックスカー1の中央のドア2に搭載する場合、従来は、窓ガラスw′が窓枠3に嵌め込まれているため、アウトサイドハンドル5をドアロック制御装置6に直接的に連結していた。
【0003】
ところで、最近は、図7に示されるような、窓ガラスwをドア2内で昇降させる構造を採用する場合が増えており、従来のように、アウトサイドハンドル5をドアロック制御装置6に直接的に連結することが極めて困難となっている。このため、窓ガラスwの移動(昇降)空間を確保しつつアウトサイドハンドル5をドアロック制御装置6に連結するべく、ドア2内の一隅にブラケット8を設けこのブラケット8にベルクランク9を枢支し、アウトサイドハンドル5による操作力をロッド10を介し窓ガラスwを迂回させて、ドアロック制御装置6に伝えさらにドアロック装置4に伝達する構造が考えられている。
【0004】
しかしながら、このような構造は、複雑で部品点数が多く、組付け工数も増加されるため、コストアップを招来してしまう。またベルクランク9の回動のための空間、つまりドア2自体を厚めに構成しなければならない問題も生じる。さらに、窓ガラスw収納空間をより広くする場合には、ベルクランク9自体を大きいものと交換しなけれならず、ドア2自体の厚さの変更等、新たな問題を招来させてしまう。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、ドアロック制御装置についての以上の問題意識に基づき、部品点数を少なくした簡単な構成からなり、ドアの厚さを変更させることなく窓ガラスの収納空間を広くすることができるドアロック制御装置を得ることを目的としている。
【0006】
【発明の概要】
上記目的を達成する本発明は、したがって、昇降可能な窓ガラスを有する車両のドア内に、ベースを介して固定され、このドアに設けられた操作ハンドルからの操作力を、ドアロック装置に伝達するドアロック制御装置において、上記ベースに、上記ドアの厚さ方向に向いた一連の単一の軸部材を支持し、この軸部材に、窓ガラスの一方の側に位置し該軸部材とは異なる位置で操作ハンドルの操作力を受ける操作力受部と、窓ガラスの他方の側に位置し該軸部材とは異なる位置で該操作力をドアロック装置に伝達する操作力伝達部とを有するレバー部材を枢着したことに特徴を有している。
【0007】
【発明の実施例】
以下図示実施例について本発明を説明する。インサイドハンドル14aの操作力およびアウトサイドハンドル49の操作力を、ドアロック装置4(図7)に伝達させる状態と伝達させない状態とに切り替えるドアロック制御装置11を、図1および図2に示す。ドアロック制御装置11のベース12には、インサイドレバー14、第一コントロールレバー15、第二コントロールレバー16、ロッキングレバー24、第三コントロールレバー17、チャイルドプルーフレバー19およびアウトサイドレバー13が枢着されている。
【0008】
インサイドレバー14は、車内に露出されるインサイドハンドル14a、および操作切替溝26を有している。この操作切替溝26は鉤状に形成されており、連動操作ピン27と係合してこれを押圧操作すべき押圧操作部26a、および連動操作ピン27を空移動させて第一コントロールレバー15との係合関係を解除する係合解除部26bを有している。第一コントロールレバー15は、略逆L字状に形成されその略中心部分を回動支軸21により回動自在に支持されている。第一コントロールレバー15は、その一端部に連結ピン29を介してアウトサイドレバー13と連結され、この連結ピン29と回動支軸21の中間に直線状の直線案内溝18が形成され、さらに他端部に操作切替溝30が形成されている。この操作切替溝30は鉤状に形成されており、連動操作ピン31と係合してこれを押圧操作すべき押圧操作部30a、および連動操作ピン31を空移動させて第二コントロールレバー16との係合関係を解除する係合解除部30bを有している。
【0009】
第二コントロールレバー16は、直線状に構成され、その一端部が回動支軸21により回動自在に支持され、他端部が連結ピン32を介して第三コントロールレバー17に連結されている。第二コントロールレバー16は、その長手方向に沿わせて形成され、操作切替溝30と一部重なるべき直線案内溝33を有している。またロッキングレバー24は回動支軸23により回動自在に支持され、この回動支軸23を中心として略放射状に形成されたアーム部35a、35b、35c、35dを有している。アーム部35cに、キー装置(図示せず)に一端を連結されたキーロッド37の他端が連結されており、アーム部35dには、円弧状の円弧案内溝36が形成されている。このアーム部35dは、操作切替溝30および直線案内溝33の上方に重なるように位置され、これらの操作切替溝30、直線案内溝33および円弧案内溝36には共通の連動操作ピン31が貫通している。
【0010】
第三コントロールレバー17は、その中間部を回動支軸22により回動自在に支持されており、一端部が連結ピン32により第二コントロールレバー16に連結され、他端部に、ドアロック装置4に一端を連結された操作ロッド35の他端が連結されている。チャイルドプルーフレバー19は、その略中間部を回動支軸25により回動自在に支持されており、その一端部に、車内に突出されるべき手動操作部19aを有し、他端部に、円弧状の円弧案内溝39を有している。この円弧案内溝39に操作切替溝26と直線案内溝18が重ねられていて、これらの操作切替溝26、直線案内溝18および円弧案内溝39には、共通の連動操作ピン27が貫通されている。
【0011】
アウトサイドレバー(レバー部材)13は、図2に示されるように、L字状の操作力伝達部40と操作力受部41とが連結部42によって連結されていて、側面視が略コ字状に構成されている。操作力伝達部40はその中央部に、回動自在に支持軸45を挿通されるべき挿通孔40aを有し、その先端部に、連結ピン29を把持して第一コントロールレバー15と連結されるべき連結切欠40bを有している。操作力受部41は、その一端をアウトサイドハンドル49に連結したアウトサイドロッド43の他端の屈曲部43aを挿通させこれを連結する連結孔操作力受部41aと、支軸(軸部材)45を挿通させる挿通孔操作力受部41bを有している。挿通孔41bと40aとを貫通した支軸45は、その先端部がベース12の支持孔12aに挿通された後かしめられてベース12に固定される。
【0012】
図4は、本ドアロック制御装置を車両のドア2(図6)に搭載した状態を概略的に示す平面図である。但し、車両の内側、外側の位置関係は、図7のそれとは逆に描かれている。図中、46は車内側パネル、47は車外側パネル、および49はアウトサイドロッド43に連結されてこのロッド43を介してアウトサイドレバー13を操作する、車外に露出されたアウトサイドハンドルである。また、アウトサイドレバー13の連結部42によって形成されたアウトサイドロッド43と第一コントロールレバー15との隙間に、枠部材51に嵌込まれた窓ガラスwが介在されている。
【0013】
上記構成の本ドアロック制御装置11は従って、図1と図3に示す通常操作可能な状態において、ドアロック装置によるロックを解除しドアを開放させる場合、次のように作動する。まず、車外のアウトサイドハンドル49を支軸52を中心に図4の反時計方向に回動させると、アウトサイドロッド43が牽引され、アウトサイドレバー13が支軸45を中心に図1の時計方向に回動する。すると、操作力伝達部40の連結切欠40bに挟持された連結ピン29を介して第一コントロールレバー15が同図反時計方向に回動される。これにより、直線案内溝33の押圧操作部30a側に位置している連動操作ピン31が該押圧操作部30aの内壁により押圧されて、同方向に移動する。このとき、連動操作ピン31は直線案内溝33内に位置しているから、その移動に伴って第二コントロールレバー16を回動支軸21を中心に時計方向に回動させる。これにより、連結ピン32を介して第二コントロールレバー16と連結されている第三コントロールレバー17が回動支軸22を中心に時計方向に回動され、従って、操作ロッド35が同図左方に牽引されるから、ドアロック装置4によるロックが解除されてドア2が開放される。
【0014】
アウトサイドレバー13は、操作力受部41と操作力伝達部40の間に形成される収納幅内に、窓ガラスwを余裕を持って収納することができ、連結部42の長さを変更するだけで、上記収納幅を容易に変更させることができる。また連結部42は板状に形成され、それ自身も強度を有しているが、操作力伝達部40と操作力受部41を貫通する支軸45によって補強されているから、アウトサイドロッド43に牽引され第一コントロールレバー15に操作力を伝達する際に作用する捻り力に対し、極めて強く構成されている。
【0015】
また車内に突出させたインサイドハンドル14aを操作し、インサイドレバー14を回動支軸21を中心に同図の反時計方向に回動させると、操作切替溝26の押圧操作部26aに位置された連動操作ピン27が同方向に移動され、直線案内溝18を介して第一コントロールレバー15を同図の反時計方向に回動させる。これにより、以下、アウトサイドハンドル49の操作時と同様にして操作ロッド35が牽引され、ドアロック装置によるロックが解除される。上述のアウトサイドハンドル49とインサイドハンドル14aの操作時に移動する連動操作ピン27は、チャイルドプルーフレバー19の円弧案内溝39内を空移動するだけであるから、チャイルドプルーフレバー19には何等影響を及ぼさない。
【0016】
他方、ドアロック装置によるロックの解除を禁止する場合は、キー装置を操作してキーロッド37を図1の左方に牽引する。すると、ロッキングレバー24が回動支軸23を中心に同図の時計方向に回動され、円弧案内溝36によって、連動操作ピン31が直線案内溝33内を回動支軸21側に移動され、かつ押圧操作部30a側から係合解除部30b側に移動される。これにより、連動操作ピン31は操作切替溝30d内で空移動して第一コントロールレバー15の回動操作力を第二コントロールレバー16に伝達することができない状態とされる。したがって、この状態でアウトサイドハンドル49またはインサイドハンドル14aを操作しても、その操作力をドアロック装置に伝達させることはできないから、ドア2を開放させることはできない。
【0017】
またチャイルドプルーフ機能を作動させる場合を説明する。運転者が、車内に突出された手動操作力伝達部19aを操作してチャイルドプルーフレバー19を回動支軸25を中心に図の時計方向に回動させると、円弧案内溝39に挿通されている連動操作ピン27がこの円弧案内溝39により押圧操作部26a側から係合解除部26b側に移動される。これにより、インサイドハンドル14aを操作してインサイドレバー14を同図の反時計方向に回動させても連動操作ピン27が係合解除部26b内で空移動するから、インサイドハンドル14aの操作力はこの部分で断たれ、従ってドアロック装置によるロックを解除させることはできない。
【0018】
【発明の効果】
以上のように本発明のドアロック制御装置によれば、部品点数を少なくした簡略な構造を実現させることができるから、組付け工数を減少させ、これに伴うコストダウンも期待することができる。さらにレバー部材を、ドアの厚さ方向に向いた軸部材によって枢着したから、操作力受部と操作力伝達部間の長さを適宜変更させるだけで、ドアの厚さにあまり影響を及ぼすことなく、ドア内の窓ガラス収納幅を変えることができる。またレバー部材はそれ自身も強度を有しているが、支軸によってさらに補強されるから、操作力を伝達する際に作用する捻り力に対してより強い構成とすることができる。したがって、特別に大きくしなくてもレバー部材の強度を向上させることができ、装置全体をコンパクトにして、重量を軽減させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るドアロック制御装置の全体構造を示す正面図である。
【図2】
同ドアロック制御装置の要部を拡大させて示す斜視図である。
【図3】
同ドアロック制御装置の要部を拡大させて示す正面図である。
【図4】
ドア内に収納された同ドアロック制御装置の要部を示す側面図である。
【図5】
同ドアロック制御装置の全体構造を示す側面図である。
【図6】
同ドアロック制御装置を搭載可能な車両を示す斜視図である。
【図7】
図6のVII-VII線に沿わせた、従来のドアロック制御装置とアウトサイドハンドルの連結状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
11 ドアロック制御装置
12 ベース
13 アウトサイドレバー(レバー部材)
14 インサイドレバー
14a インサイドハンドル
15 第一コントロールレバー
16 第二コントロールレバー
17 第三コントロールレバー
18 33 直線案内溝
19 チャイルドプルーフレバー
21 22 23 25 回動支軸
24 ロッキングレバー
26 30 操作切替溝
26a 押圧操作力伝達部
26b 係合解除部
27 31 連動操作ピン
29 連結ピン
30a 押圧操作部
30b 係合解除部
32 連結ピン
35c 35d アーム部
36 39 円弧案内溝
37 キーロッド
40 操作力伝達部
40a 挿通孔
40b 連結切欠
41 操作力受部
41a 連結孔
42 連結部
43 アウトサイドロッド
43a 屈曲部
45 支軸(軸部材)
46 車内側パネル
47 車外パネル
49 アウトサイドハンドル(操作ハンドル)
51 枠部材
w 窓ガラス
 
訂正の要旨 〔訂正の要旨〕
特許第3135341号の明細書を、特許請求の範囲の減縮を目的として下記訂正事項aのとおり、明瞭でない記載の釈明を目的として下記訂正事項bのとおり訂正する。
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載「【請求項1】昇降可能な窓ガラスを有する車両のドア内に、ベースを介して固定され、このドアに設けられた操作ハンドルからの操作力を、ドアロック装置に伝達するドアロック制御装置において、上記ベースに、操作ハンドルの上記操作力を受けて回動しドアロック装置に該操作力を伝達するレバー部材を、上記ドアの厚さ方向に向いた軸部材により枢着し、かつ上記レバー部材が、上記窓ガラスの一方の側に、操作ハンドルの操作力を受ける操作力受部を有し、他方の側に、該操作力をドアロック装置に伝達する操作力伝達部を有していることを特徴とするドアロック制御装置。」を、
「【請求項1】昇降可能な窓ガラスを有する車両のドア内に、ベースを介して固定され、このドアに設けられた操作ハンドルからの操作力を、ドアロック装置に伝達するドアロック制御装置において、上記ベースに、上記ドアの厚さ方向に向いた一連の単一の軸部材を支持し、この軸部材に、窓ガラスの一方の側に位置し該軸部材とは異なる位置で操作ハンドルの操作力を受ける操作力受部と、窓ガラスの他方の側に位置し該軸部材とは異なる位置で該操作力をドアロック装置に伝達する操作力伝達部とを有するレバー部材を枢着したことを特徴とするドアロック制御装置。」
と訂正する。
訂正事項b
発明の詳細な説明の段落【0006】の「ベースに、操作ハンドルの上記操作力を受けて回動しドアロック装置に該操作力を伝達するレバー部材を、上記ドアの厚さ方向に向いた軸部材により枢着し、かつレバー部材が、窓ガラスの一方の側に、操作ハンドルの操作力を受ける操作力受部を有し、他方の側に、該操作力をドアロック装置に伝達する操作力伝達部を有していることに特徴を有している。」(本件特許公報3欄32〜38行)を、
「上記ベースに、上記ドアの厚さ方向に向いた一連の単一の軸部材を支持し、この軸部材に、窓ガラスの一方の側に位置し該軸部材とは異なる位置で操作ハンドルの操作力を受ける操作力受部と、窓ガラスの他方の側に位置し該軸部材とは異なる位置で該操作力をドアロック装置に伝達する操作力伝達部とを有するレバー部材を枢着したことに特徴を有している。」
と訂正する。
異議決定日 2002-04-15 
出願番号 特願平4-43039
審決分類 P 1 651・ 121- YA (E05B)
P 1 651・ 113- YA (E05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 陽  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 鈴木 公子
中田 誠
登録日 2000-12-01 
登録番号 特許第3135341号(P3135341)
権利者 シロキ工業株式会社
発明の名称 ドアロック制御装置  
代理人 三浦 邦夫  
代理人 三浦 邦夫  
代理人 三好 秀和  

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