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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01B
管理番号 1061058
異議申立番号 異議1999-71355  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-15 
確定日 2002-05-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2810320号「球体の回転量測定装置及び測定方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2810320号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続きの経緯
本件特許第2810320号発明は、平成6年4月18日に特許出願され、平成10年7月31日にその特許の設定登録がなされ、その後、花井 恭子より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年4月24日に訂正請求がなされたものである。
【2】訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
a.特許請求の範囲に関する訂正
a1.明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】 回転中の球体1を所定の一方向から複数の静止円形画像として撮影記録する記録手段2と、該記録手段2にて記録された複数の上記静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する計測手段3と、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を、上記球体1の中心Cを原点とする3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段4と、を備えたことを特徴とする球体の回転量測定装置。」を、
「【請求項1】 回転中の球体1を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段2と、該記録手段2にて記録された複数の上記静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する計測手段3と、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記球体1の中心Cを原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段4と、を備えたことを特徴とする球体の回転量測定装置。」
と訂正するものである。
a2.特許請求の範囲の請求項2の記載
「【請求項2】 回転に伴って移動する球体1を所定の一方向から複数の静止円形画像として撮影記録する記録手段2と、該記録手段2にて記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する計測手段3と、一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせた状態において該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段4と、を備えたことを特徴とする球体の回転量測定装置。」を、
「【請求項2】 回転に伴って移動する球体1を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段2と、該記録手段2にて記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する計測手段3と、一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせた状態において該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値から、XYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段4と、を備えたことを特徴とする球体の回転量測定装置。」
と訂正するものである。
a3.特許請求の範囲の請求項4の記載
「【請求項4】 回転中の球体1を所定の一方向から所定のタイミングで複数の静止円形画像として撮影記録した後、その記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測し、その後、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を、上記球体1の中心Cを原点とする3次元座標系の各軸廻りについて演算することを特徴とする球体の回転量測定方法。」を
「【請求項4】 回転中の球体1を所定の一方向から所定のタイミングで複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録した後、その記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測し、その後、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記球体1の中心Cを原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算することを特徴とする球体の回転量測定方法。」
と訂正するものである。
a4.特許請求の範囲の請求項5の記載
「【請求項5】 回転に伴って移動する球体1を所定の一方向から所定のタイミングで複数の静止円形画像として撮影記録した後、その記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測し、その後、一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせ、その重ね合わせた状態において、該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を3次元座標系の各軸廻りについて演算することを特徴とする球体の回転量測定方法。」を
「【請求項5】 回転に伴って移動する球体1を所定の一方向から所定のタイミングで複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録した後、その記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測し、その後、一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせ、その重ね合わせた状態において、該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値から,XYZ座用の3次元座標系の各軸廻りについて演算することを特徴とする球体の回転量測定方法。」
と訂正するものである。
b.発明の詳細な説明に関する訂正
発明の詳細な説明に関する訂正は、平成10年10月15日発行特許第2810320号公報に記載の特許明細書(以下、「特許明細書」という)中、
b1.明細書の段落【0007】の “前半部”に、「回転中の球体を所定の一方向から複数の静止円形画像として撮影記録する記録手段」とあるのを、「回転中の球体を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段」に訂正する。
b2.明細書の段落【0007】の “後半部” に、「上記球体の回転量を、上記球体の中心を原点とする3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段」とあるのを、「上記球体の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記 球体の中心を原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段」に訂正する。
b3.明細書の段落【0008】の“前半部”に、「球体を所定の-方向から複数の静止円形画像として撮影記録する記録手段」とあるのを、「球体を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段」に訂正する。
b4.明細書の段落【0008】の “後半部” に、「上記球体の回転量を3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段」とあるのを、「上記球体の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値からXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段」に訂正する。
b5.【0010】の“前半部” に、「静止円形画像」とあるのを、「XY座標のみの静止円形画像」に訂正する。
b6.明細書の段落【0010】の“後半部”に、「球体の回転量を、上記球体の中心を原点とする3次元座標系の各軸廻りについて演算する」とあるのを、「球体の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記球体の中心を原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する」に訂正する。
b7.明細書の段落【0011】の “前半部”に、「静止円形画像」とあるのを、「XY座標のみの静止円形画像」に訂正する。
b8.明細書の段落【0011】の “後半部” に、「球体の回転量を3次元座標系の各軸廻りについて演算する」とあるのを、「球体の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値からXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する」に訂正する。
イ.訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否
a1.について、
請求項1中の構成「複数の静止円形画像として撮影記録する記録手段2」を、「複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段2」とする訂正(以下、「訂正a1-1」という)については、特許明細書第3頁第6欄第37行〜第40行に、「【0029】ところで、画面上で測定できるのは、X座標値とY座標値だけであるから、・・・」と記載されており、かつ、上記構成「複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段2」は記録手段2の構成を限定するものであるから、上記訂正a1-1は、特許請求の範囲の減縮に該当し、かつ、願書に添付された明細書及び図面に記載された範囲内での訂正であって、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
また、「球体1の回転量を、上記球体1の中心Cを原点とする3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段4」を、「球体1の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記球体1の中心Cを原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段4」とする訂正(以下、「訂正a1-2」という)の内、「球体1の中心Cを原点とする・・・演算する演算手段4」を「XY座標のX座標値及びY座標値から球体1の中心Cを原点とする・・・演算する演算手段4」とする訂正については、特許明細書3頁【数1】、第4頁式マル1〜マル3、【数4】、段落番号【0046】のS0を求める式、段落番号【0047】の各軸廻りの回転量を求める式から明らかなように、特許請求の範囲の減縮に該当し、かつ、願書に添付された明細書及び図面に記載された範囲内での訂正であって、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
また、「3次元座標系の各軸廻りについて」を「XYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて」とする訂正は、上記訂正a1-1に伴って生じる不明瞭な記載の釈明に相当するものであり、かつ、願書に添付された明細書及び図面に記載された範囲内での訂正であって、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
a2.〜a4.について、
上記訂正a2.〜a4.も上記a1.について、と同様の理由により特許請求の範囲の減縮に該当し、また、不明瞭な記載の釈明に該当するものであり、かつ、願書に添付された明細書及び図面に記載された範囲内での訂正であって、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

b1.〜b8.について、
上記訂正b1.〜b8.は、上記特許請求の範囲の訂正a1.に合わせて発明の詳細な説明の対応箇所を訂正するものであり、特許法第120条の4第2項但し書き第3号に規定する不明瞭な記載の釈明に相当するものである。
ウ.独立特許要件の判断
(引用刊行物)
訂正明細書の請求項1〜5に係る発明に対して、当審が通知した取消理由で引用した刊行物(特開昭62-104279号公報 以下、「刊行物1」という。)には、ゴルフボールやテニスボールの速度やスピンを解析する装置に関し、
回転中の球体を所定の一方向から複数の静止円形画像として撮影記録し、この記録された複数の静止円形画像を用いて球体の回転量を解析して、球体の回転量を測定するための装置、
が記載されている。
同じく取消理由で引用した刊行物(「精密工学学会誌」、1991年第57巻第9号、第101〜106頁、「CADにおける3次元入力システムに関する研究」(平成3年9月発行)以下、「刊行物2」という。)は、CADにおいて、ボールの回転によって生じるボール表面の3カ所の測定点における変位を測定することによって回転ベクトルを測定し、入力を行うものが記載されている。
同じく取消理由で引用した刊行物(特開平1-148285号公報、以下、「刊行物3」という。)には、
ボールの静止状態の画像情報とクラブによりショット後の所定時間経過後の画像情報とを検出する画像情報検出手段を備えたゴルフ練習装置において、ボールの上下左右の回転を検出するために、色彩を施した半球部を目印としてボールに形成することが開示されている。
同じく取消理由で引用した刊行物(特開昭62‐254057号公報、以下、「刊行物4」という。)には、
ボールのスピン量を演算するボールのスピン量計測方法において、ボールのスピン量を計測するために、ボールの軸心方向に有色の経線を目印としてボールに記入し、ラインイメージセンサによりボールに記入した経線を検知して、このボールの回転位相を計測する方法、
が開示されている。
同じく取消理由で引用した刊行物(特開平6-52316号公報、以下、「刊行物5」という。)には、
移動するスポーツ用物体の飛行特性を測定するモニターシステムにおいて、目印として3つ以上の反射部分を有する飛行物体を少なくとも2回照射して撮映することにより、飛行物体の線速度及び回転速度を計算するように構成されたモニターシステムが記載されている。
同じく取消理由で引用した刊行物(「数学」、関 豊二、文雅堂銀行研究社、(昭和55年4月15日発行)、以下、「刊行物6」という。)には、116頁に中心を原点とする球面の方程式が
X2+Y2+Z2=r2であることが記載されている。
同じく取消理由で引用した刊行物(「科学新興社モノグラフ 24 公式集改訂版」、春日正文、科学新興社、(1978年9月20日発行)、以下、「刊行物7」という。)には、83頁に位置ベクトルの定義が記載されている。
(対比・判断)
・請求項1に係る発明について、
そこで、請求項1に係る発明と刊行物1〜7の発明とを対比すると、刊行物1の発明には請求項1に係る発明の構成要件である「回転中の球体1を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段2と、・・・一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を・・・演算する演算手段」について、記載されていない。
すなわち、刊行物1のものは、 回転中の球体を所定の一方向から複数の静止円形画像として撮影記録し、この記録された複数の静止円形画像を用いて球体の回転量を解析して、球体の回転量を測定するための装置が記載されているものの、「一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を・・・演算する演算手段」について記載されていない。
刊行物2のものには、ボールの回転によって生じるボール表面の3カ所の測定点における変位を測定することによって回転ベクトルを測定し、入力を行うものが記載されているものの、「回転中の球体1を所定の一方向からXY座標のみの複数の静止円形画像として撮影記録する記録手段2」を備えてはいない。また、刊行物2のものは、CADにおける回転ベクトル入力装置であって、該刊行物2のものを例えば刊行物1のもののような、飛翔するボールの回転量の測定に適用し得るものではない。
刊行物3〜5のものは、いずれも本願発明とは回転量を検出する原理を異にするもので、「一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を・・・演算する演算手段」について記載されていない。
刊行物6及び7は、それぞれ球面の方程式と位置ベクトルについて記載されているに止まる。
そして、本件請求項1に係る発明は上記構成により、「回転中の球体1を、一方向からの記録映像のみによって、高精度に、球体1の回転量を3次元座標系の各軸廻りについて求めることができる」という、明細書に記載の効果を奏するものであるから、本件請求項1に係る発明が上記刊行物に記載のものから容易に発明をすることができたものとすることはできない。
・請求項2に係る発明について、
刊行物1〜7の発明には請求項2に係る発明の構成要件である「回転に伴って移動する球体1を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段2と、・・・一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせた状態において該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値から、XYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段4」について記載されていない故、本件請求項2に係る発明が上記刊行物に記載のものから容易に発明をすることができたものとすることはできない。
・請求項3に係る発明について、
上記のように、請求項1、請求項2に係る発明が上記刊行物に記載のものから容易に発明をすることができたものとすることはできない以上、その従属請求項である請求項3に係る発明についても上記刊行物に記載のものから容易に発明をすることができたものとすることはできない。
・請求項4に係る発明について、
刊行物1〜7の発明には請求項4に係る発明の構成要件である「 回転中の球体1を所定の一方向から所定のタイミングで複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録した後、・・・一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記球体1の中心Cを原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する」構成について記載されていない故、本件請求項4に係る発明が上記刊行物に記載のものから容易に発明をすることができたものとすることはできない。
請求項5に係る発明について、
刊行物1〜7の発明には請求項5に係る発明の構成要件である「回転に伴って移動する球体1を所定の一方向から所定のタイミングで複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録した後、・・・一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせ、その重ね合わせた状態において、該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値から,XYZ座用の3次元座標系の各軸廻りについて演算する」構成について記載されていない故、本件請求項5に係る発明が上記刊行物に記載のものから容易に発明をすることができたものとすることはできない。
したがって、本件請求項1〜5に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない発明とすることはできない。

エ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項、及び同条第3項で準用する同法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
【3】特許異議の申立てについての判断
ア.申立ての理由の概要
申立人 花井 恭子は、請求項1〜5に係る発明は、甲第1号証(特開昭62-104279号公報)、甲第2号証(「精密工学学会誌」、1991年第57巻第9号、第101〜106頁、「CADにおける3次元入力システムに関する研究」(平成3年9月発行))、甲第3号証(特開平1-148285号公報)、甲第4号証(特開昭62‐254057号公報)、甲第5号証(特開平6-52316号公報)、甲第6号証(「数学」、関 豊二、文雅堂銀行研究社、(昭和55年4月15日発行))、甲第7号証(「科学新興社モノグラフ 24 公式集改訂版」、春日正文、科学新興社、(1978年9月20日発行))に記載された発明をもとに容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべきであると主張している。

イ.判断
本件請求項1〜5に係る発明は、上記【2】ウ.で示したように、取消理由通知で示した刊行物に記載された発明から容易に発明をすることができたものとすることはできない。

ウ.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1〜5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
球体の回転量測定装置及び測定方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転中の球体1を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段2と、該記録手段2にて記録された複数の上記静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する計測手段3と、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記球体1の中心Cを原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段4と、を備えたことを特徴とする球体の回転量測定装置。
【請求項2】 回転に伴って移動する球体1を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段2と、該記録手段2にて記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する計測手段3と、一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせた状態において該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値から、XYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段4と、を備えたことを特徴とする球体の回転量測定装置。
【請求項3】 記録手段2による静止円形画像の記録が2回である請求項1又は2記載の球体の回転量測定装置。
【請求項4】 回転中の球体1を所定の一方向から所定のタイミングで複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録した後、その記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測し、その後、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記球体1の中心Cを原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算することを特徴とする球体の回転量測定方法。
【請求項5】 回転に伴って移動する球体1を所定の一方向から所定のタイミングで複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録した後、その記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測し、その後、一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせ、その重ね合わせた状態において、該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値から、XYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算することを特徴とする球体の回転量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は球体の回転量測定装置及び測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ゴルフボール、テニスボール等の回転軸が不特定な(回転)球体において、3次元座標系の各軸廻りの回転量を測定する場合があった。
【0003】
しかして、従来においてこの回転量を測定する方法としては、図6に示すように、相互に直交するx,y,zの3軸上に、カメラ等の映像記録装置a,b,cを固定し、各映像記録装置a,b,cにて、所定のタイミングで複数回、測定対象である球体dを撮影し、x軸,y軸,z軸毎に、所定のタイミング間の回転量を、撮影映像より解析する方法が一般的であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6に示す測定方法では、3組の映像記録装置が必要であり、測定装置全体が大型化すると共に、3組の映像記録装置を相互に直交した位置関係に設定せねばならず、屋外等で測定する場合、この位置関係において映像記録装置を固定することが困難であった。さらに、測定対象物(つまり、球体)の移動方向と、3組の映像記録装置のうちの1組の固定方向が一致して、球体がその映像記録装置に衝突する可能性が高く、危険でかつ破損しやすかった。また、3組の記録映像の夫々につき、解析を行なう必要があり面倒であった。
【0005】
そこで、本発明では、装置全体がコンパクトであって、設置しやすくかつ高精度に回転量を測定することができる球体の回転量測定装置を提供することを一の目的とする。
【0006】
また、高精度にかつ簡単に回転量を測定することができる球体の回転量測定方法を提供することを他の目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明に係る一の球体の回転量測定装置は、回転中の球体を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段と、該記録手段にて記録された複数の上記静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する計測手段と、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記球体の中心を原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段と、を備えたものである。
【0008】
また、本発明に係る他の球体の回転量測定装置は、回転に伴って移動する球体を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段と、該記録手段にて記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する計測手段と、一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせた状態において該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値からXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段と、を備えたものである。
【0009】
そして、これら球体の回転量測定装置においては、記録手段による静止円形画像の記録を、例えば2回とする。
【0010】
次に、本発明に係る一の球体の回転量測定方法は、回転中の球体を所定の一方向から所定のタイミングで複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録した後、その記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測し、その後、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記球体の中心を原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算するものである。
【0011】
また、本発明に係る他の球体の回転量測定方法は、回転に伴って移動する球体を所定の一方向から所定のタイミングで複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録した後、その記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測し、その後、一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせ、その重ね合わせた状態において、該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の上記2点の位置に基づいて上記球体の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値からXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算するものである。
【0012】
【作用】
回転中の球体(回転に伴って移動しない)は、所定の一方向から記録手段にて、複数の静止円形画像として撮影記録される。記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置は、夫々、計測手段にて計測される。そして、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて、球体の回転量を3次元座標系の各軸廻りについて演算手段にて演算する。
【0013】
即ち、1組の記録映像のみ解析すれば、3軸毎の回転量を求めることができる。
【0014】
また、回転に伴って移動している球体は、所定の一方向から記録手段にて、複数の静止円形画像として撮影記録される。記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置は、夫々、計測手段にて計測される。そして、一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせた状態において、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて、球体の回転量を3次元座標系の各軸廻りについて演算手段にて演算する。
【0015】
即ち、飛行中の回転球体においても、一方向のみからの記録映像のみを解析すれば、3軸毎の回転量を求めることができる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例を示す図面に基づいて本発明を詳説する。
【0017】
図1は本発明に係る球体の回転量測定装置を示し、回転に伴って移動する球体1(図2参照)を所定の一方向から複数の静止円形画像として撮影記録する記録手段2と、記録手段2にて記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する計測手段3と、一の静止円形画像と他の静止円形画像とを重ね合わせた状態において該一の静止円形画像内の所定の2点の位置と他の静止円形画像内の所定の上記2点の位置に基づいて球体1の回転量を演算する演算手段4と、を備える。
【0018】
ところで、図2に示す様なスピン軸Sを中心に回転している球体1の回転量は、x,y,z各軸廻りの回転成分に分けて考えることができる。y軸廻りの回転はサイドスピンとなり、z軸廻りの回転はバックスピンとなる。また、x軸廻りの回転は、ボールの進行方向を軸とする回転である。
【0019】
しかして、記録手段2としては、例えば、スチールカメラとマイクロフラッシュを備えたもの、シャッタ付きの高速度カメラを備えたもの、又は高速度ビデオを備えたもの等である。
【0020】
即ち、球体1の静止円形画像を得るための手段としては、画像を取り込むための部分(例えば、スチールカメラ本体部)と、その画像を記録する部分(例えば、フィルム)とに分けることができ、また、球体1の回転が高速であったり、移動速度が高速であったりした場合には画像を取り込む時間が長いと測定対象の球体がぶれてしまうので、画像の取り込み時間を短くするためのシャッタを使用したり、マイクロフラッシュ等の発光時間の短い照明装置を用い照明装置が発光したときの輝度差を利用して静止円形画像を得る必要がある。
【0021】
従って、静止円形画像を得る装置の組み合わせとしては、具体的には、スチールカメラとフィルムとマイクロフラッシュ、高速度スチールカメラとフィルムとシャッタ、CCDカメラと画像メモリとマイクロフラッシュ、又は、高速度カメラと画像メモリとシャッタ等が考えられる。
【0022】
そして、このように得られる球体1の像を、特定の時間差を有するタイミングで少なくとも2回取り込む必要があるが、それらの静止円形画像を1つの画面内におさまる必要はない。
【0023】
但し、それら複数タイミングの静止円形画像が1つの画面内におさまらない場合には、各画面において座標軸の方向が特定できる必要がある。
【0024】
次に、記録手段2によって得られた静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する手段3としては、記録媒体がフィルムの場合は、フィルムの現像・焼き付けを行ない、焼き付けられた写真に直接定規等を当て、測定する原始的な方法から、フィルムや写真の画像をコンピュータに取り込むことのできる画像入力装置を用い、コンピュータ画面上で測定用のカーソルを合せ測定する方法等がある。
【0025】
また、記録媒体が画像メモリーの場合には、メモリー上の画像データをコンピュータ画面上に展開し、画像入力装置を用いコンピュータに取り込まれたフィルム画像と同様に、コンピュータ画面上で測定用のカーソルを合わせ測定する方法等がある。
【0026】
次に、この測定装置を使用して、回転に伴って移動する球体1の回転量を演算する方法を説明する。
【0027】
まず、球体1に点P,Qをマークし、かつ、球体1の中心Cを図3に示すように、x,y,z軸の原点Oにとり、点P,Qが球体中心Cを通るある回転軸を軸とする回転によって、夫々、P′,Q′に移動したとする。なお、点P,Qは任意の位置にマークすることができるが、撮影された像で確認できる位置になければならない。
【0028】
具体的には、z軸方向にスチールカメラとマイクロフラッシュを配し、球体1(ゴルフボール)がカメラ前を通過している間に、フラッシュを球体1に向け、3ミリ秒間隔で2度発光させ、その間、カメラのシャッタを開けたままとしておく。カメラレンズの絞りとフラッシュを発光させるタイミングを適当に調整することにより、1コマの中に2個の球体1の像を撮影することができる。
【0029】
ところで、画面上で測定できるのは、X座標値とY座標値だけであるから、Z座標値は画面上での球体1の半径をRとすると球の方程式から次の式のように表わすことができ、この値を使用することになる。
【0030】
【数1】

【0031】
なお、XY座標値の測定については、様々な方法が考えられるが、スチールカメラを用いた場合、まずフィルムの現像、若しくはフィルムの現像及び焼き付けという作業を行ない、その後画像の解析を行なわなければならない。フィルムの現像のみの場合は、フィルムの画像を万能投影機を介し、適当な大きさに拡大し、その画像のXY座標をコンピュータ(演算手段4)に接続された2次元デジタイザーでポインティングし、座標値をコンピュータ(演算手段4)に取り込む方法がある。また、写真に焼き付けた場合は、コンピュータ(演算手段4)に接続された画像入力装置を用い、画像を1度コンピュータに入力し、この入力画像に対し、XY座標を測定し、計算処理を行なう方法がある。
【0032】
しかして、図3の2つの球体1を重ね合わせたときの球体1の中心Cを原点とする3次元座標系を考えれば、点P,Qはt秒間で球体1の中心C(原点)を通るある回転軸を軸とする回転によって、夫々、点P′,Q′となるので、点P(xp,yp,xp)がP′(xp′,yp′,zp′)となり、点Q(xq,yq,zq)がQ′(xq′,yq′,zq′)となる。
【0033】
このある回転軸をスピン軸Sと呼ぶこととすると、スピン軸Sの方向ベクトルの単位ベクトルv=(α,β,γ)において次の▲1▼の式が成り立つ。
α2+β2+γ2=1 ▲1▼
【0034】
そして、図4に示すように、点Pから点P′へはベクトルvに垂直な平面上を回転しているはずであるからベクトルPP′とベクトルvは垂直な位置関係にあり、次の▲2▼式が成り立つ。
α(xp-xp′)+β(yp-yp′)+γ(zp-zp′)=0 ▲2▼
【0035】
また、点Q,Q′についても同様のことが言えるので、次の▲3▼式を求めることができる。
α(xq-xq′)+β(yq-yq′)+γ(zq-zq′)=0 ▲3▼
【0036】
従って、上述の▲1▼▲2▼▲3▼を連立して解くと、以下の様にスピン軸Sの方向ベクトルvが求まる。
γ=1/√A
β=Bγ
α=-{β(yp-yp′)+γ(zp-zp′)}/(xp-xp′)
又は、
α=-{β(yq-yq′)+γ(zq-zq′)}/(xq-xq′)
【0037】
但し、この場合、
【0038】
【数2】

【0039】
【数3】

である。
【0040】
点Pあるいは点P′からスピン軸Sへ下ろした垂線の足を(xhp,yhp,zhp)とすると、
xhp=t1α
yhp=t1β
zhp=t1γ
となる。
【0041】
但し、この場合、t1=αxp+βyp+γzp、あるいはt1=αxp′+βyp′+γzp′である。
【0042】
次に、点Qあるいは点Q′からスピン軸Sへ下ろした垂線の足を(xhq,yhq,zhq)とすると、
xhq=t2α
yhq=t2β
zhq=t2γ
となる。
【0043】
但し、この場合、t2=αxq+βyq+γzq、あるいはt2=αxq′+βyq′+γzq′となる。
【0044】
従って、スピン軸S廻りにt秒間で回転した角度をθ(単位を“度”とする)とすると次の式が求まる。
【0045】
【数4】

【0046】
従って、t秒間での球体1のスピン軸S廻りの回転数S0は、
S0=(θ/360)×(60/t)〔r.p.m〕
となる。
【0047】
また、回転軸の各軸廻りの量は上記回転数S0を方向ベクトルvの各成分に分解したものであるので、
x軸廻りの回転量Sx=αS0
y軸廻りの回転量Sy=βS0
z軸廻りの回転量Sz=γS0
と求まる。
【0048】
従って、一方向からの記録映像によって、回転に伴って移動している球体1の回転量を3次元座標系の各軸廻りについて求めることができる。
【0049】
次に、図5はCCDカメラと画像メモリーとマイクロフラッシュの組み合わせで得た静止円形画像を示し、コンピュータ画面上での点を測定し、3軸の回転量の演算結果を表1に示した。この場合、画面5,6の時間間隔は3ミリ秒である。また、この方法によれば、フィルムの現像という作業が省略でき、ほぼリアルタイムの測定が可能となる。
【0050】
【表1】

【0051】
この場合、画面5,6上にuv座標系をとり、球体1の静止円形画像の上境及び左境に接する接線の交点をA,A′とし、球体1の静止円形画像の下境及び右境に接する交点をB,B′とする。
【0052】
なお、A,A′,B,B′は球体1の静止円形画像の中心位置とその半径を算出するために測定した。また、表1において、スピンの単位はr,p,mであり、バックスピンのプラス符号は図5の(イ)(ロ)に於て球体を反時計廻りに回転させる方向であり、サイドスピンのプラス符号は左へ曲げようとする回転(フック回転)を示し、軸スピンのプラス符号は球体1の進行方向に対して時計廻りを示している。
【0053】
しかして、図5の(イ)(ロ)のように2回画像を取り込んだ場合、球体1の移動する方向(カメラから遠ざかる方向、あるいは近づく方向)によって、実際には画面上の球体の大きさは同じには取り込めない。そこで、以下に示すような座標変換を行ない2画像の重ね合わせを行なう必要がある。
【0054】
まず、図5の(イ)に於ける各点のuv座標を以下の通りとする。
【0055】
点A(ua,va),点B(ub,vb),点C(uc,vc),点P(up,vp),点Q(uq,vq)
これにより、点Cは点A,点Bの中点であるから、
uc=(ua+ub)/2
vc=(va+vb)/2
となる。
【0056】
また、u方向の球半径をrad_u,v方向の球半径をrad_vとすると、
rad_u=|(ua-ub)/2|
rad_v=|(va-vb)/2|
となる。なお、| |は絶対値記号を示す。
【0057】
そして、球半径は(イ)(ロ)の画像において同じであるはずなので、この球半径rad_u,rad_vを用い半径を1に基準化する。
【0058】
この場合、u方向はx,y,z座標系のx方向と一致しているが、v方向はy方向と向きが反対となっているため、以下の様に(イ)の点P,点Qをuv座標系からx,y,z座標系へ変換すると、
xp=(up-uc)/rad_u
yp=-(vp-vc)/rad_v
【0059】
【数5】

【0060】
xq=(uq-uc)/rad_u
yq=-(vq-vc)/rad_v
【0061】
【数6】

となる。
【0062】
また、(ロ)の点P′,点Q′についても、点C′は点A′,点B′の中点であるから、
uc′=(ua′+ub′)/2
vc′=(va′+vb′)/2
となり、また、u方向の球半径をrad_u′,v方向の球半径をrad_v′とすると、
rad_u′=|(ua′-ub′)/2|
rad_v′=|(va′-vb′)/2|
となる。そして、(ロ)の点P′,点Q′をuv座標系からx,y,z座標系へ変換すると、
xp′=(up′-uc′)/rad_u′
yp′=-(vp′-vc′)/rad_v′
【0063】
【数7】

【0064】
xq′=(uq′-uc′)/rad_u′
yq′=-(vq′-vc′)/rad_v′
【0065】
【数8】

となる。
【0066】
そして、上述のように変換されたx,y,z座標値を用い、上述の計算処理を行なう。
【0067】
ところで、上述の各実施例においては、回転に伴って移動する球体の回転量を測定するものであるが、勿論、回転に伴って移動しない球体1、つまり、ある回転軸廻り回転しているのみの場合においても、上述の測定装置を使用して、その球体1の回転量を3次元座標系の各軸心廻りに演算することができる。
【0068】
ところで、記録手段2にて記録される球体1の静止円形画像としては、2個(回)に限らず、3個(回)以上の複数個(回)であってもよく、数が多ければ、より高精度に回転量を求めることができる。
【0069】
また、球体1としては、ゴルフボール、テニスボール等の回転軸が不特定な回転球体である。
【0070】
【発明の効果】
本発明は上述の如く構成されているので、次に記載する効果を奏する。
【0071】
▲1▼ 請求項1又は請求項4によれば、回転中の球体1を、一方向からの記録映像のみによって、高精度に、球体1の回転量を3次元座標系の各軸廻りについて求めることができる。また、特に、請求項1では、測定装置全体がコンパクト化し、設置が容易となる。
【0072】
▲2▼ 請求項2又は請求項5によれば、回転に伴って移動している球体1を、一方向からの記録映像のみによって、高精度に球体1の回転量を3次元座標系の各軸心廻りについて求めることができる。特に、請求項2では、測定装置全体がコンパクト化し、設置が容易となり、しかも、移動している球体1が装置に衝突することもなく、安全であり、測定中の球体1の衝突によって装置が損傷することがない。
【0073】
▲3▼ 請求項3によれば、この2回のデータにて確実に回転量を求めることができ、かつ演算が極めて簡単であり、短時間で処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る球体の回転測定装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】
回転中の球体の簡略図である。
【図3】
球体の変位を示す簡略図である。
【図4】
静止円形画像を示す簡略図である。
【図5】
静止円形画像を示す簡略図である。
【図6】
従来の球体の回転量測定装置の簡単斜視図である。
【符号の説明】
1 球体
2 記録手段
3 計測手段
4 演算手段
 
訂正の要旨 訂正の要旨
明細書(特許第2810320号明細書、以下同じ)を本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち特許請求の範囲の減縮を目的として下記のとおり、また、明瞭でない記載の釈明を目的として、下記のとおり訂正する。
1.訂正事項A:
a1.明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】 回転中の球体1を所定の一方向から複数の静止円形画像として撮影記録する記録手段2と、該記録手段2にて記録された複数の上記静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する計測手段3と、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を、上記球体1の中心Cを原点とする3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段4と、を備えたことを特徴とする球体の回転量測定装置。」を、
「【請求項1】 回転中の球体1を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段2と、該記録手段2にて記録された複数の上記静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する計測手段3と、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記球体1の中心Cを原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段4と、を備えたことを特徴とする球体の回転量測定装置。」
と訂正する。
a2.特許請求の範囲の請求項2の記載
「【請求項2】 回転に伴って移動する球体1を所定の一方向から複数の静止円形画像として撮影記録する記録手段2と、該記録手段2にて記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する計測手段3と、一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせた状態において該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段4と、を備えたことを特徴とする球体の回転量測定装置。」を、
「【請求項2】 回転に伴って移動する球体1を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段2と、該記録手段2にて記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測する計測手段3と、一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせた状態において該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値から、XYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段4と、を備えたことを特徴とする球体の回転量測定装置。」
と訂正する。
a3.特許請求の範囲の請求項4の記載
「【請求項4】 回転中の球体1を所定の一方向から所定のタイミングで複数の静止円形画像として撮影記録した後、その記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測し、その後、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を、上記球体1の中心Cを原点とする3次元座標系の各軸廻りについて演算することを特徴とする球体の回転量測定方法。」を
「【請求項4】 回転中の球体1を所定の一方向から所定のタイミングで複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録した後、その記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測し、その後、一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記球体1の中心Cを原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算することを特徴とする球体の回転量測定方法。」
と訂正する。
a4.特許請求の範囲の請求項5の記載
「【請求項5】 回転に伴って移動する球体1を所定の一方向から所定のタイミングで複数の静止円形画像として撮影記録した後、その記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測し、その後、一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせ、その重ね合わせた状態において、該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を3次元座標系の各軸廻りについて演算することを特徴とする球体の回転量測定方法。」を
「【請求項5】 回転に伴って移動する球体1を所定の一方向から所定のタイミングで複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録した後、その記録された複数の静止円形画像内の所定の2点の位置を計測し、その後、一の静止円形画像と他の静止円形画像の中心を重ね合わせ、その重ね合わせた状態において、該一の静止円形画像の所定の2点の位置と他の静止円形画像の回転した所定の2点の位置に基づいて上記球体1の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値から,XYZ座用の3次元座標系の各軸廻りについて演算することを特徴とする球体の回転量測定方法。」
と訂正する。
2.訂正事項B:平成10年10月15日発行特許第2810320号公報に記載の特許明細書(以下、「特許明細書」という)中、
b1.明細書の段落【0007】の“前半部”に、「回転中の球体を所定の一方向から複数の静止円形画像として撮影記録する記録手段」とあるのを、「回転中の球体を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段」に訂正する。
b2.明細書の段落【0007】の“後半部”に、「上記球体の回転量を、上記球体の中心を原点とする3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段」とあるのを、「上記球体の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記 球体の中心を原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段」に訂正する。
b3.明細書の段落【0008】の“前半部”に、「球体を所定の-方向から複数の静止円形画像として撮影記録する記録手段」とあるのを、「球体を所定の一方向から複数のXY座標のみの静止円形画像として撮影記録する記録手段」に訂正する。
b4.明細書の段落【0008】の “後半部” に、「上記球体の回転量を3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段」とあるのを、「上記球体の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値からXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する演算手段」に訂正する。
b5.【0010】の“前半部”に、「静止円形画像」とあるのを、「XY座標のみの静止円形画像」に訂正する。
b6.明細書の段落【0010】の“後半部”に、「球体の回転量を、上記球体の中心を原点とする3次元座標系の各軸廻りについて演算する」とあるのを、「球体の回転量を、上記XY座標のX座標値及びY座標値から上記球体の中心を原点とするXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する」に訂正する。
b7.明細書の段落【0011】の“前半部”に、「静止円形画像」とあるのを、「XY座標のみの静止円形画像」に訂正する。
b8.明細書の段落【0011】の“後半部”に、「球体の回転量を3次元座標系の各軸廻りについて演算する」とあるのを、「球体の回転量を上記XY座標のX座標値及びY座標値からXYZ座標の3次元座標系の各軸廻りについて演算する」に訂正する。
異議決定日 2002-04-04 
出願番号 特願平6-104866
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山下 雅人神谷 健一  
特許庁審判長 西川 一
特許庁審判官 三輪 学
高橋 泰史
登録日 1998-07-31 
登録番号 特許第2810320号(P2810320)
権利者 住友ゴム工業株式会社
発明の名称 球体の回転量測定装置及び測定方法  
代理人 中谷 武嗣  
代理人 中谷 武嗣  

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