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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 A23L |
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管理番号 | 1061132 |
異議申立番号 | 異議2000-73953 |
総通号数 | 32 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-06-13 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-10-23 |
確定日 | 2002-04-30 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3037044号「米飯の製造法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3037044号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第3037044号に係る発明についての出願は、平成5年11月30日に特願平5-300415号として出願され、平成12年2月25日にその特許の設定登録がなされ、その後、召田紀雄より特許異議申立がなされ、2回取消理由通知がなされ、平成14年4月5日に訂正請求がなされたものである。 II.訂正請求 1.訂正の内容 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 同請求項2の「α、α-トレハロースを原料米に対して0.1〜10重量%含有せしめることを特徴とする請求項1記載の米飯の製造方法。」を「α、α-トレハロースを原料米に対して0.1〜1重量%未満含有せしめることを特徴とする米飯の製造方法。」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項は、「0.1〜10重量%」を「0.1〜1重量%未満」に訂正するものであるから特許請求の範囲の減縮に該当し、また、この訂正は新規事項に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法120条の4,2項及び同条3項で準用する126条2項及び3項の規定に適合するので、請求のとおり当該訂正を認める。 III.特許異議申立 1.特許異議申立書の理由の概要 特許異議申立人は、甲第1号証を提出し、訂正前の本件請求項1乃至請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないと主張している。 記 甲第1号証:特願平5-180497号明細書(特開平7-31389号公報) 2.判断 訂正された請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、「α、α-トレハロースを原料米に対して0.1〜1重量%未満含有せしめることを特徴とする米飯の製造方法。」である。 しかるに、甲第1号証には、特許請求の範囲の項に、 「【請求項1】トレハロースを含有することを特徴とするアルファ米。 ・・・(略)・・・ 【請求項7】トレハロースを含有することを特徴とする炊いたご飯。 【請求項8】こ飯全量に対するトレハロースの含量が0.05〜5.6w/w%である請求項7記載の炊いたご飯。」が、発明の詳細な説明の項には、 「本発明は、湯戻しにより炊きたての食感を有するご飯となるアルファ米、その製造法およびアルファ米製造のための中間体としても有用なトレハロースを含有する炊いたご飯を提供することを目的とする。」(2頁2欄11〜15行)、「まず精白米を通常の炊飯の際に行うように水洗いする。水洗いは、通常1回につき精白米180ml(約157g、1合)当たり好ましくは200〜1000mlの水で、通常1〜5回行なう。そして、この水洗いした精白米に対してトレハロースを約1.0〜15.0w/w%、好ましくは約2.0〜10.0w/w%、より好ましくは約4.0〜8.0w/w%添加し、また精白米180ml(約157g、1合)に対して通常250〜350ml、好ましくは280〜330mlの水を添加して浸漬する。浸漬時間は、通常0.2〜3.0時間、好ましくは0.3〜1.0時間である。浸漬温度は、通常1〜30℃である。浸漬後、このトレハロースを含有する精白米を、常法に従って炊き上げることによって、アルファ化したご飯が得られる。」(3頁3欄31〜45行)が、それぞれ記載されている。 しかるに、本件発明は、「α、α-トレハロースを原料米に対して0.1〜1重量%未満含有せしめることを特徴とする米飯の製造方法。」であるところ、甲第1号証には、精白米に対してトレハロースを1.0〜15.0重量%添加して米飯を製造することが記載されているものの、「0.1〜1重量%未満」の量で添加することについて開示されるところはない。 そうすると、本件発明は、甲第1号証に係る発明と同一であるとはいえないから、特許法29条の2の規定に違反しているとはいえない。 3.まとめ 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。 また他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 米飯の製造法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 α,α-トレハロースを原料米に対して0.1〜1重量%未満含有せしめることを特徴とする米飯の製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、米飯の食味改善に関わり、特にα,α-トレハロースを米飯類の製造時に添加使用し食味を改善する方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 米飯は、日本古来からの主食であり、食生活の根幹をなしてきた。その一方、日本人の食生活の洋風化に伴って、日本人の食生活における米飯類の占める位置が変化してきている。 かかる食生活の変化に伴って、白飯の他に寿司、味付け飯、おにぎり、ピラフ等で最近簡便性を備えた多用な調理米が開発され、米の重要性が再認識されている。 【0003】 例えば、冷凍焼きおにぎり、冷凍ピラフに代表される冷凍加工米飯が多様化され風味が向上したこと、また無菌米飯に代表される白飯が良食味化、簡便化されてきたこと等を具体的に挙げることができる。 この米飯類の多様化、簡便化、風味・品質向上を目的とする競争は留まるところを知らず、従来より米飯類の食味の改善方法として数多くの検討がなされている。 【0004】 例えば、食品添加物等を炊飯時の前後に添加使用する方法としては、例えば、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等の酵素類を添加する方法(特開昭58-86050号公報、特開昭60-199355号公報);スクロース、グルコース、マルトース、サイクロデキストリン、デキストリン、ソルビトール、マルチトール、3糖類、4糖類、5糖類のオリゴ糖及びその糖アルコール等の糖類及び糖アルコール類を添加する方法(特開昭63-267246号公報,特開昭64-60341号公報);ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤を添加する方法(特開平3-61459号公報,特開昭64-80447号公報,特開平2-35049号公報);ゼラチン等のタンパク質を添加する方法;その他油脂類、縮合リン酸塩、グルタミン酸ナトリウム等を添加する方法(特開昭60-17497号公報、特開昭60-75243号公報)等を挙げることができる。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記方法は食味の改善効果が不十分であったり、香味,着色,物性等の点から米飯の品質を低下させてしまうという課題や、上記方法の実行に際して、煩雑な処理を必要とする等の課題が依然として存在している。 よって、最近の米飯類の食形態に合致した、長期間食感及び味質の変わらない米飯類を製造する技術に関しては更なる改良が望まれている。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明者は、上記課題の解決のために鋭意検討を重ねた結果、α,α-トレハロースを原料米に添加して炊飯することにより、従来よりも効果的に米飯類の経時的な食感及び味質の劣化を防止が可能であることを見出し、本発明を完成した。 【0007】 すなわち、本発明は以下の事項をその要旨とするものである。 (1)原料米を、α,α-トレハロースの存在下で炊飯することを特徴とする米飯の製造方法。 (2)α,α-トレハロースを原料米に対して0.1〜10重量%含有せしめることを特徴とする前記(1)記載の米飯の製造方法。 【0008】 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明にいう、α,α-トレハロースとは、分子式C12H22O11,分子量342.30の、2分子のD-グルコースが還元基同士で結合し、その結合形式がα,α-形式であるものを意味する。具体的には、式(1)で示される構造式を示すものである。 【0009】 【化1】 【0010】 当該α,α-トレハロース(以下、トレハロースと記載する。)は、細菌、真菌、藻類、昆虫等広く天然に分布しているが、例えば特願平4-321135号に記載された方法に従って精製することができる。また、当該トレハロースを化学合成によって得ることも可能である。 本発明においては、トレハロースの由来を問わない。そして、本発明においては、トレハロースの市販品をも用いることが可能である。 【0011】 本発明製造方法の製造対象物である、米飯の原料となる原料米は、イネ(Oryza)属に属するものであればとくに限定されない。また、その銘柄も問わない。 例えば、食味の良好な米として人気の高い、コシヒカリ、ササニシキをはじめ、日本晴、アキヒカリ等を用いても、経時的な食感及び味質の劣化を防止せしめる所期の効果を奏することが可能である。また、低品質米及び保存により風味の低下した米に本発明を適用すると、より一層本発明の所期の効果が顕著に発揮させることができる。 【0012】 本発明は上記原料米を、上記トレハロースの存在下で米を炊くこと、すなわち炊飯することを特徴とする。 かかる炊飯方法は、通常行われる炊飯方法に従って行うことができる。すなわち、原料米を研いで、炊飯用水に浸し、これを加熱することにより本発明にいう炊飯を実行することができる。 【0013】 本発明においては、上記の炊飯用水の中にトレハロースを存在せしめて上記炊飯を実行することを特徴とする。 トレハロースの添加方法はトレハロースと原料米とが充分接触する方法であれば、特に限定されるものではない。例えば粉末状、シラップ状でトレハロースを直接添加する方法や当該トレハロースを溶解した水溶液で炊飯する方法等を挙げることができる。ただし、炊飯後にトレハロースを添加する方法を採るのは好ましい方法であるとはいい難い。すなわち、粉末状のトレハロースを炊飯後に米飯に添加する場合には、これを分散させることが難しく、さらに当該トレハロース粉末が溶解していない場合には固形分が存在するがごとき食感が認められ好ましくない。また、溶液状のトレハロースを炊飯後に添加する場合であっても分散性が不十分であり、所望の効果を期待し難い。さらに、研ぎ水にトレハロースを添加することも可能ではあるが、研ぎ水は通常洗い流してしまうので、トレハロースの分散性という点で非効率的であり好ましくない。 【0014】 炊飯時には、上記トレハロースが原料米に対して0.1-10重量%、好ましくは0.5-5重量%共存することが必要である。トレハロースの添加量が0.1重量%未満である場合には、本発明の所期の効果である米飯類の経時的な食感及び味質の劣化の防止を十分に行うことができず、逆に10重量%を越えると食感及び味質に悪影響を与えるので、共に好ましくない。 【0015】 炊飯方法は、トレハロースが十分に溶解していて、析出せずに米飯類と十分に作用する炊飯方法である限り特に限定されない。好ましくは、米の水浸開始時又は炊飯開始時に十分に溶解したトレハロース溶液を添加するのが好ましい。 このようにして、トレハロースを添加することにより、澱粉の老化、乾燥等による経時的な食感及び味質の低下を効果的に防止することができる。これは、トレハロースが炊飯直後の米飯類の構造を長時間安定化することに起因すると考えられる。 【0016】 なお、トレハロースはオリゴ糖又は糖アルコールの中でも、非常に甘味度の低いオリゴ糖であるので、味質に影響を与えることなく上記効果を付与することができる。 また、本発明に従いトレハロースを米飯に添加するのとは別に、当該トレハロースの作用機序とは異なる食味改善効果を有する添加物、例えば食品添加用界面活性剤や酵素等を添加することにより、米飯の光沢、粘り、硬さ等を更に改良することが可能である。 【0017】 【実施例】 〔実施例1〕 標準米のあきひかり1合(145g)に対して、水232g(1.6倍加水)を加えたもの、それにトレハロース又はマルトースをそれぞれ1.45g添加した計3種類のサンプルを炊飯した。そして、各米飯をテクスチュロメータの試料台にのせ、プランジャーによる押圧と引張を人間の咀嚼速度に合わせてバランス度の測定を行った。このバランス度は、引張力即ち米飯の粘りを、押圧力、すなわち米飯の硬さで除した値であり、米飯食味の良否を表す指標の一つとして知られている。日本の米は約0.1〜0.2の間の値を示しており、バランス度が大きい程食味が良いとされている。炊飯直後及び10℃で2時間保存後のバランス度の結果と炊飯直後の炊飯米の重量及び高さを表1に示した。表1の結果からトレハロースの添加区では冷却保存後も高いバランス度が保持されており、加えて重量及び体積が増加する釜増えの現象が認められた。 【0018】 【表1】 *同じ釜を使用しているので、炊飯米の高さの比較で体積の比較が可能である。 〔実施例2〕 標準米のあきひかり1合(145g)に対して、水217.5g(1.5倍加水)を加えて炊飯したものを基準として、実施例1で検討した無添加区(1.6倍加水)、トレハロース添加区及びマルトース添加区について13名による官能評価を行った。その結果を表2及び表3に示した。炊飯直後は、トレハロースを添加することによって香りは低下するが、硬さ及び粘りが上昇し、結果的に総合評価は良好になる傾向が認められた。 【0019】 一方、10℃で2時間保存後はトレハロース添加区で光沢が増加するが、総合評価では添加する水の量だけを増やした無添加区(1.6倍加水)と同程度の結果となった。マルトース添加区では、炊飯後も10℃で2時間保存後も、粘り及び総合評価で食味が低下する傾向が認められた。 【0020】 【表2】 *基準を0として+5〜-5までの10点評価 【0021】 【表3】 *基準を0として+5〜-5までの10点評価 〔実施例3〕 実施例2で同程度の評価となっている無添加区(1.6倍加水)とトレハロース添加区の2つを比較した。無添加区(1.6倍加水)を基準としてトレハロース添加区について同様に官能評価を行った。表4からトレハロースを添加することによって、炊飯後も10℃で2時間保存後も粘りが上昇して、総合評価が良くなる傾向が認められた。 【0022】 【表4】 *基準を0として+5〜-5までの10点評価 〔実施例4〕 実施例1と同様に調製した無添加区(1.6倍加水)、トレハロース添加区及びマルトース添加区の各サンプルを10℃で2時間保存後、走査型電子顕微鏡による観察を行った。その結果、トレハロースに特徴的な均質な組織が観察された。 〔実施例5〕 実施例1と同様に、標準米のあきひかり1合(145g)に対して、水232g(1.6倍加水)と各種オリゴ糖1.45gを加えたものを炊飯し、バランス度を測定した結果を表5に示した。トレハロースの添加によって、10℃で2時間保存しても米飯の食感及び味質を良好に保持することが認められた。 【0023】 【表5】 *デキストリン;グルコース等量,25 【0024】 【発明の効果】 上記のように本発明によれば、トレハロース存在下で炊飯することにより、澱粉の老化、乾燥等による米飯類の経時的な食感及び品質の低下を効果的に防止することが可能になり、極めて良い品質の米飯類を製造することができる。 |
訂正の要旨 |
(訂正の要旨) 特許請求の範囲の請求項1を特許請求の範囲の減縮を目的として削除する。 同請求項2の「α、α-トレハロースを原料米に対して0.1〜10重量%含有せしめることを特徴とする請求項1記載の米飯の製造方法。」を特許請求の範囲の減縮を目的として「α、α-トレハロースを原料米に対して0.1〜1重量%未満含有せしめることを特徴とする米飯の製造方法。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2002-04-09 |
出願番号 | 特願平5-300415 |
審決分類 |
P
1
651・
161-
YA
(A23L)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 脇村 善一、鈴木 恵理子 |
特許庁審判長 |
徳廣 正道 |
特許庁審判官 |
田中 久直 斎藤 真由美 |
登録日 | 2000-02-25 |
登録番号 | 特許第3037044号(P3037044) |
権利者 | 日本食品化工株式会社 麒麟麦酒株式会社 |
発明の名称 | 米飯の製造法 |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 安田 徹夫 |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 安田 徹夫 |
代理人 | 安田 徹夫 |