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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C02F |
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管理番号 | 1061254 |
異議申立番号 | 異議2001-73442 |
総通号数 | 32 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-01-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-12-25 |
確定日 | 2002-06-17 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3178969号「純水または超純水の製造装置」の請求項1乃至3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3178969号の請求項1乃至3に係る特許を維持する。 |
理由 |
[一]手続の経緯 特許第3178969号の請求項1乃至3に係る発明は、平成6年7月18日に特許出願され、平成13年4月13日に登録の設定がなされ、その後、特許異議申立人田中丈晴により特許異議の申立てがなされたものである。 [二]特許異議申立ての概要 異議申立人は、請求項1乃至3に係る発明は下記の甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1乃至3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。 (1)甲第1号証:特開昭63-111994号公報 (2)甲第2号証:用水廃水便覧編集委員会編 “改訂二版 用水廃水便覧”、丸善株式会社、昭和48年10月30日発行、p.310〜313 (3)甲第3号証:特公昭63-37919号公報 [三]特許異議の申立についての判断 1.本件発明 本件特許の請求項1乃至3に係る発明(以下、「本件発明1」乃至「本件発明3」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものである。 2.刊行物記載の発明 (1)異議申立人が提出した甲第1号証には、「純水製造装置」に関し、以下の記載がある。 (1-a)「原水の脱塩を行う第1のカチオン塔および第1のアニオン塔と、その処理水に漏出する不純物を除去するポリッシャとしての第2のカチオン塔および第2のアニオン塔と、第1のアニオン塔出口の電導度およびpHを検出する検出手段と、これらの検出結果からイオンブレークがカチオンブレーク領域にあるかまたはアニオンブレーク領域にあるかを判定し、カチオンブレーク領域の場合は所定の電導度で採水を停止し、アニオンブレーク領域の場合は第1のアニオン塔から許容濃度を越えるシリカが漏出する前に採水を停止するように演算制御する演算制御装置とを含む純水製造装置。」(特許請求の範囲第1項) (1-b)「この発明は上記問題点を解決するためのもので、シリカの漏出を防止することができる純水製造装置を提供することを目的としている。」(第2頁左下欄5-7行) (1-c)「アニオンブレーク領域のときは処理水の電導度およびpHからシリカの漏出量を演算し、その許容範囲を越える前に採水を停止するように演算制御を行う。再生は第2のカチオン塔から第1のカチオン塔へ再生剤を流し、また第2のアニオン塔から第1のアニオン塔へ別の再生剤を流して再生する。」(同頁右下欄下9-3行) (1-d)第1図には、第1のカチオン塔1、第1のアニオン塔3、第2のカチオン塔4、第2のアニオン塔5、電導度計12、19、20、pH計21を有する純水製造装置の実施例が示されており、「第1カチオン塔1および第1アニオン塔3は主たるイオン交換による脱塩を行うもので、それぞれ上向流で通水するようになっている。第2カチオン塔4および第2アニオン塔5は不純物を除去するポリッシャとして用いられるもので、・・・下向流で通水されるようになっている。」(第3頁左上欄下7行-右上欄3行) (2)同じく甲第2号証には、イオン交換による液処理に関し、 「b.多床式 単床式と同じ用途に用いられるが、吸着すべきイオンを平衡吸着量に近い程度まで吸着させたい時・・・や、処理水への定常漏出量をできるだけ減じたい時に用いられる。方法として、2塔式でサイクルごとに通液順序を変えて第1塔のみを再生する方法や、3塔式で第1→第2塔で通液し、第1塔がブレークした時第2→第3塔で通液し、その間に第1塔を再生するメリーゴーランド方式がある。」(第313頁下12-7行)と記載されている。 (3)同じく甲第3号証には、「非再生式脱塩法及びその装置」に関し、以下の記載がある。 (3-a)「廃液の脱塩処理において、少くとも2塔の脱塩器を直列に連結して第1塔から順次廃液を通して脱塩し、第1塔がほぼ完全に破過した後これを運転系から切離してイオン交換樹脂を新樹脂に交換し、その後この塔を運転系の最後部に直列に組入れることを特徴とする原子力発電所廃液の非再生式脱塩法。」(特許請求の範囲第1項) (3-b)「本発明は通常の脱塩器と異なり、H型カチオン樹脂とOH型アニオン交換樹脂とを混合充填したイオン交換樹脂を再生せず、その交換容量を完全に使いきって廃却処分するもので、2塔又はより多くの脱塩器を用いて、イオン交換樹脂の能力が破過状態に近い塔から順次直列に通液する。」(第2欄下1行-第3欄5行) 3.当審の判断 (1)本件発明1について (1-ア)本件発明1と甲第1号証に記載された発明との対比判断、 甲第1号証の上記2.(1-a)における「第1アニオン塔」、「第2アニオン塔」はいずれも塔内にアニオン(陰イオン)交換樹脂が充填された塔であるから、上記2.(1-a)の「原水の脱塩を行う第1のカチオン塔および第1のアニオン塔と、その処理水に漏出する不純物を除去するポリッシャとしての第2のカチオン塔および第2のアニオン塔を含む純水製造装置」は、本件発明1の「陰イオン交換樹脂が少なくとも充填された複数の直列に接続されたイオン交換塔からなるイオン交換装置を有する純水製造装置」と云うことができるし、この純水製造装置の上記「第1アニオン塔」は、本件発明1の「前記イオン交換装置の最前段のイオン交換塔」に相当する。 そうであるならば、甲第1号証に記載の「純水製造装置」を本件発明1の記載振りに則って表現すると、甲第1号証には、「陰イオン交換樹脂が少なくとも充填された複数の直列に接続されたイオン交換塔からなるイオン交換装置と、前記イオン交換装置の最前段のイオン交換塔の処理水の電導度およびpHを検出する検出手段と、これらの検出結果からイオンブレークがカチオンブレーク領域にあるかまたはアニオンブレーク領域にあるかを判定し、カチオンブレーク領域の場合は所定の電導度で採水を停止し、アニオンブレーク領域の場合は第1のアニオン塔から許容濃度を越えるシリカが漏出する前に採水を停止するように演算制御する演算制御装置とを有する純水製造装置」の発明(以下、「甲1発明」という)が記載されていると云える。 そこで、本件発明1と甲1発明とを比較すると、両者は、「陰イオン交換樹脂が少なくとも充填された複数の直列に接続されたイオン交換塔からなるイオン交換装置を有する純水の製造装置」である点において一致し、下記i)乃至ii)において相違していると云える。 i)本件発明1は、イオン交換装置の最前段のイオン交換塔の処理水中のシリカ濃度をシリカ計で監視するのに対し、甲1発明は、電導度計、pH計及び演算制御装置により該処理水中のシリカ濃度を演算している点、 ii)本件発明1は、イオン交換装置が最前段のイオン交換塔の処理水中のシリカ濃度が所定値に達した場合、最前段のイオン交換塔を再生して最後段に配置するか、叉は最前段のイオン交換塔を除くと共に最後段のイオン交換塔の後段にイオン交換樹脂を再生した新たなイオン交換塔を連結する方式のものであるのに対し、甲1発明は、第1のアニオン塔から許容濃度を越えるシリカが漏出する前に採水を停止する点。 次に、上記相違点のうち、相違点ii)について検討する。 甲第2号証には、多床式のイオン交換方式の場合に、メリーゴーランド方式によりブレークしたイオン交換塔を再生することが示唆されているが、このメリーゴーランド方式は、「最前段のイオン交換塔を再生して最後段に配置するか、叉は最前段のイオン交換塔を除くと共に最後段のイオン交換塔の後段にイオン交換樹脂を再生した新たなイオン交換塔を連結する方式」まで示唆するものではない。 また、甲第3号証には、複数のイオン交換塔による原子力発電所の廃液の非再生式脱塩法において、最前段のイオン交換塔が破過した場合に新たなイオン交換塔と交換し、これを最後部に直列に組み入れる脱塩法が示唆されているが、この脱塩法は、原子力発電所の廃液処理に関するものであり、本件発明1の「純水製造装置」と全く別異の分野の技術である。 ところで、甲1発明について、その第1及び第2のアニオン塔の処理目的をみてみると、第1のアニオン塔は、原水の脱塩のために設けられたものであり、一方第2のアニオン塔は、処理水に漏出する不純物を除去するポリッシャとして設けられたものであるから、両者の設置目的、機能はまったく異なっている。そうすると、甲1発明では、処理水の通水順序は先ず第1のアニオン塔に通水したのち第2のアニオン塔に通水するのが前提であると解されるから、本件発明1の上記相違点ii)のような第1のアニオン塔と第2のアニオン塔を相互に入れ替えて連結することはできないと云うべきである。 してみると、甲1発明は、そもそも上記甲第3号証に示唆される新たなイオン交換塔を最後部に組み入れる等の連結方式を取り得ない内容のものであるから、本件発明1の上記相違点ii)は、甲第2号証及び甲第3号証に記載の技術的事項を考慮しても、当業者が容易に想到することができない事項であると云える。 したがって、本件発明1は、相違点i)について検討するまでもなく、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (1-イ)本件発明1と甲第3号証に記載された発明との対比、判断 甲第3号証の上記2.(3-a)における「少なくとも2塔の脱塩器」は、いずれもH型カチオン樹脂とOH型アニオン交換樹脂とを混合充填した塔であるから、本件発明1の「少なくとも陰イオン交換樹脂が充填されたイオン交換塔」に相当し、また、同じく2.(3-a)の「第1塔を運転系から切離して、新たな塔を運転系の最後部に直列に組入れる」なる運転方法は、本件発明1の「最前段のイオン交換塔を除くと共に最後段のイオン交換塔の後段に新たなイオン交換塔を連結する」に相当する。 そうであるならば、甲第3号証に記載の「非再生式脱塩装置」を本件発明1の記載振りに則って表現すると、甲第3号証には、「陰イオン交換樹脂が少なくとも充填された複数の直列に接続されたイオン交換塔を有する原子力発電所廃液の非再生式脱塩装置であって、最前段のイオン交換塔から順次廃液を通して脱塩し、最前段のイオン交換塔がほぼ完全に破過した後これを除くと共にイオン交換樹脂を新樹脂に交換し、その後この塔を最後段のイオン交換塔の後段に連結する方式のものであることを特徴とする原子力発電所廃液の非再生式脱塩装置」の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると云える。 そこで、本件発明と甲3発明とを比較すると、両者は、「陰イオン交換樹脂が少なくとも充填された複数の直列に接続されたイオン交換塔を有する装置であって、最前段のイオン交換塔を交換する際に、最後段のイオン交換塔の後段に連結する方式のものであることを特徴とする装置」である点で一致し、下記i)乃至iii)において相違していると云える。 i)本件発明1は純水または超純水の製造装置であるのに対して、甲3発明は原子力発電所の廃液の脱塩装置である点、 ii)本件発明1はイオン交換樹脂を再生して用いるのに対して、甲3発明は破過したイオン交換樹脂を廃棄する非再生式である点、 iii)本件発明1は最前段のイオン交換塔の処理水中のシリカ濃度を監視するためのシリカ計を有するのに対し、甲3発明はこれを有しない点。 次に、上記相違点について検討すると、イオン交換技術自体は、水処理に広く用いられている技術であるが、水処理のための装置や方法の具体的態様は、その処理すべき水の種類や処理水量、処理すべきイオンの種類、濃度等の諸条件によって、個々に工夫されているものである。特に、甲3発明の処理水と甲第1号証や甲第2号証に記載の処理水とは、「廃液」と「純水」などのように全く別異のものであり、その処理の具体的な内容も全く別異のものであるから、甲3発明と甲第1号証及び甲第2号証に記載の技術を組み換えることは当業者といえど容易なことではないと云うべきである。 この点について具体的にいうならば、甲3発明は、最前段のイオン交換塔を交換する際に、最後段のイオン交換塔の後段に連結する方式を示唆するだけで、その余の構成が「純水製造装置」と全く別異のものであるから、これを組み換えることが容易であるとは到底云うことができない。 したがって、本件発明1は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2)本件発明2乃至3について 本件発明2乃至3は、いずれも本件発明1に技術的限定を付したものであるから、上記3.(1)で検討した理由と同様の理由により、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 4.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1乃至3の特許を取り消すことはできない。また、他に本件発明1乃至3の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、上記結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2002-05-21 |
出願番号 | 特願平6-165472 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C02F)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 目代 博茂 |
特許庁審判長 |
沼沢 幸雄 |
特許庁審判官 |
服部 智 唐戸 光雄 |
登録日 | 2001-04-13 |
登録番号 | 特許第3178969号(P3178969) |
権利者 | オルガノ株式会社 |
発明の名称 | 純水または超純水の製造装置 |
代理人 | 石橋 政幸 |
代理人 | 伊藤 克博 |
代理人 | 金田 暢之 |