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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C03C |
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管理番号 | 1061256 |
異議申立番号 | 異議2001-73155 |
総通号数 | 32 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-10-14 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-11-20 |
確定日 | 2002-06-17 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3169055号「ガラスクロスの製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3169055号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3169055号は、平成8年4月2日に出願され、平成13年3月16日にその特許権の設定登録がなされたところ、これに対し、永井真由美から特許異議の申立てがなされたものである。 2.特許異議申立てについて (2-1)特許異議申立ての概要 特許異議申立人(以下、「申立人」という)は、証拠方法として、甲第1号証(特開平6-144889号公報)及び甲第2号証(特開平7-267690号公報)を提出して、本件請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであると主張している。 (2-2)本件発明 本件請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】エポキシ樹脂に多価アルコールを付加反応させて得られる、エポキシ樹脂30wt%未満、多価アルコール70wt%以上の水溶性エポキシ変性物を含むガラス繊維用集束剤で被覆処理した無撚りのガラス繊維ヤーンを加熱乾燥し、前記無撚りのガラス繊維ヤーンを製織することを特徴とするガラスクロスの製造方法。 【請求項2】請求項1に記載の方法により得られたガラスクロス。」 (2-3)証拠の記載内容 申立人が提出した甲第1号証及び甲第2号証には、それぞれ次の事項が記載されている。 (1)甲第1号証:特開平6-144889号公報 (ア)「ヒドロキシル基を有する化合物(a)にエチレンオキサイド(EO)、またはEOとプロピレンオキサイド(PO)を付加した水溶性ポリオキシアルキレン化合物(A)およびポリイソシアネート(B)から誘導され、重量平均分子量が2万〜50万で、オキシエチレン単位の含有重量が60%以上である水溶性ポリウレタン樹脂からなるガラス繊維用集束剤。」(第2頁左欄【請求項1】参照) (イ)「本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、特定の水溶性ポリウレタン樹脂をガラス繊維用集束剤として用いることにより、毛羽立ち抑制、溶液安定性、熱分解性に優れ、脱油工程が水洗、加熱のどちらでもよく、さらに省略も可能であるガラス繊維用集束剤が得られることを見いだし本発明に到達した。 すなわち本発明は、ヒドロキシル基を有する化合物(a)にエチレンオキサイド(EO)、またはEOとプロピレンオキサイド(PO)を付加した水溶性ポリオキシアルキレン化合物(A)およびポリイソシアネート(B)から誘導され、重量平均分子量が2万〜50万で、オキシエチレン単位の含有重量が60%以上である水溶性ポリウレタン樹脂からなるガラス繊維用集束剤である。」(第2頁右欄【0004】参照) (ウ)「上記表1で配合した集束剤をガラス繊維径13ミクロン、400本のフィラメントに塗布し、集束して合糸しロービングとした。その際1時間あたりに発生した毛羽量で毛羽立ち抑制力をみた。さらに、このロービングを用いてガラスクロスをつくり、このクロスを350℃、5時間焼成して脱油を行い外観を観察して熱分解性をみた。この結果を表2に示す。」(第4頁【0016】参照) (2)甲第2号証:特開平7-267690号公報 (ア)「ビスフェノール型エポキシ樹脂とポリエチレングリコールと多価アルコールとの重縮合物である水分散性エーテル変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含有することを特徴とするガラス繊維用集束剤。」(【請求項1】参照) (イ)「本発明は、前述の課題を解決すべくなされたものであり、ビスフェノール型エポキシ樹脂とポリエチレングリコールと多価アルコールとの重縮合物である水分散性エーテル変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含有することを特徴とするガラス繊維用集束剤と、かかる集束剤が付与されたことを特徴とする樹脂強化用ガラス繊維を提供する。 本発明において、水分散性エーテル変性ビスフェノール型エポキシ樹脂のエーテル変性とは、ビスフェノール型エポキシ樹脂のようなポリマーの分子中に、ポリエチレングリコールに代表されるポリエーテルの分子を導入することを意味する。また、水分散性とは、界面活性剤を使用することなく、ポリマーが自己乳化して水に均一に分散できることを意味する。」(【0009】及び【0010】参照) (ウ)「本発明のガラス繊維用集束剤は、水分散性エーテル変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含有するので、この集束剤を付与したガラス繊維は、従来のビスフェノール型エポキシ樹脂を含有する集束剤を付与したガラス繊維と比較して、毛羽の発生が少ない。即ち、集束性が良好で、取扱い性に優れている。更に、本発明の集束剤を付与したガラス繊維を特にPET樹脂、PBT樹脂またはPC樹脂等に配合する強化剤として使用した場合は、従来の集束剤を付与したガラス繊維を使用した場合と比較して、機械的強度が高く、かつ色相が良好なガラス繊維強化樹脂の成形体を得ることができる。」(【0044】参照) (2-4)当審の判断 (1)本件発明1について 甲第1号証には、多数のガラス繊維フィラメントに集束剤を塗布して集束し、合糸してロービングし、製織してガラスクロスを製造することが記載されているが、この製造で用いられる集束剤は、「水溶性ポリウレタン樹脂」であるから、本件発明1の「エポキシ樹脂に多価アルコールを付加反応させて得られる、エポキシ樹脂30wt%未満、多価アルコール70wt%以上の水溶性エポキシ変性物を含むガラス繊維用集束剤」とは別異の材料である。 申立人は、本件発明1の上記集束剤は甲第2号証に記載されていると主張しているから、甲第2号証について検討すると、甲第2号証に記載されている集束剤は、「ビスフェノール型エポキシ樹脂とポリエチレングリコールと多価アルコールとの重縮合物である水分散性エーテル変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含有する」ものであり、ビスフェノール型エポキシ樹脂とポリエチレングリコールと多価アルコールの3者を「重縮合反応」させた「水分散性」の性質を呈するものである。 これに対し、本件発明1のガラス繊維用集束剤は、「エポキシ樹脂30wt%未満、多価アルコール70wt%以上の水溶性エポキシ変性物」であるから、「水溶性」と「水分散性」との性質を比較しただけでも両者は別異の集束剤であることが明らかである。 してみると、本件発明1のガラス繊維用集束剤は、甲第1号証及び甲第2号証に示唆されていないから、本件発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の製造方法で得られた「ガラスクロス」の発明に係るものであるところ、本件発明1にその進歩性が認められるから、本件発明2の進歩性についても上記証拠方法によっては否定することができない。 3.むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては本件発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、上記結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2002-05-24 |
出願番号 | 特願平8-80042 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C03C)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 前田 仁志 |
特許庁審判長 |
沼沢 幸雄 |
特許庁審判官 |
野田 直人 唐戸 光雄 |
登録日 | 2001-03-16 |
登録番号 | 特許第3169055号(P3169055) |
権利者 | 日東グラスファイバー工業株式会社 日東紡績株式会社 |
発明の名称 | ガラスクロスの製造方法 |