• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  E06B
管理番号 1061323
異議申立番号 異議2002-70616  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-02-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-03-07 
確定日 2002-07-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第3211730号「断熱形材」の請求項2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3211730号の請求項2に係る特許を維持する。 
理由 1 本件発明
本件特許第3211730号の請求項2に係る発明(平成9年6月26日出願、優先権主張平成9年5月13日、平成13年7月19日設定登録)は、明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項2】室内側形材と、室内側形材と対向して設けた室外側形材と、両形材を連結する断熱材を備え、室内側形材および室外側形材のうちの少なくともいずれか一方の形材を、断熱材を伴わない熱伸縮が可能な状態で断熱材に係合するとともに、断熱材は、いずれか一方の形材との係合部にいずれか一方の形材との非当接部を間隔をおいて有していることを特徴とする断熱形材。」

2 特許異議の申立ての理由
特許異議申立人須田純平は、甲第1号証〜甲第3号証を提出して、本件請求項2に係る発明は、甲第1号証〜甲第3号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、特許法113条1項2号に該当し、取り消されるべきである旨主張する。

甲第1号証:特公昭60-24273号公報
甲第2号証:特公平7-111113号公報
甲第3号証:特開昭57-61175号公報

3 特許異議の申立てについての判断
3-1 甲各号証の記載事項
(1)甲第1号証には、以下の記載が認められる。
a「本発明は、相互間隔をおいて保持されていて、かつ固定側で金属シエル体のみぞ内に係合する2つの絶縁棒を介して互いに結合されている2つの金属シエル体から形成されており、このばあい金属シエル体のみぞウエブが塑性変形されて絶縁棒の切欠き内に押し込まれるようになつている窓、ドア、フアサード又は類似のもの用の断熱性の結合成形体……に関する。本発明の課題は、わずかな誤差で製作できしかも金属シエル体と絶縁棒との間の三次元的にずれ動かない結合がわずかな作業費用で行なうことができるようにすることにある。」(5欄18〜30行)
b「第1図、第2図で図示された断熱性の結合成形体は金属シエル体1,2とプラスチツクから製作されている絶縁棒3とから構成されている。絶縁棒3は該絶縁棒3の固定軸で金属シエル体1,2のみぞ内に差し嵌められていて、該みぞは側方でみぞウエブ4,5によつて制限されている。内側のみぞウエブ5はマンドレル6又は7を介して絶縁棒3の切欠き内に押込み成形させられ、該切欠き8は絶縁棒3の全長に亘つてのびている。」(7欄2〜10行)
c「第11図および第12図による実施例のばあいは絶縁棒44は切欠き45を有していて、該切欠き45は傾斜した内側制限面46を有している。前記内側制限面46から絶縁棒44内に突入する凹所47がのびていて、該凹所47は絶縁棒44の全長に亘つて分配されて配置されている。マンドレルを介して変形しようとするみぞウエブ48は絶縁棒44とは反対側に材料盛り上げ部49を有していて、この材料盛り上げ部49はみぞウエブ48の全長に亘つてのびている。……材料盛上げ部49は完全に変形されるので、凹所47をみぞウエブ材料で充填するために十分な材料を有している。」(9欄23〜44行)

(2)甲第2号証には、以下の記載が認められる。
a「本発明は、金属製の室内枠と室外枠とを断熱材製の介装体を介して連結し、介装体により前記両枠間の熱伝導を防止したサッシ、ドア、引戸等の建具用枠に関する。」(段落【0001】)
b「【発明が解決しようとする課題】……最も視認され易いのは下側横枠であるが、この横枠が備える介装体は露出されている。したがって、外観が良くないという問題がある。そこで、……カバーを室内枠に設けて、外観を向上することを提案し、……合成樹脂製のカバーは、室内枠を構成する上下左右のうち少なくとも下側横枠材のサッシ開口に臨む部分の表面を覆って取付けられるが、その熱膨張係数は前記枠材をなす金属材料の熱膨張係数よりも大である。しかも、断熱サッシの使用時の温度差も大である。……特に下側横枠材の温度差が大きい。そのため、製造時にカバーの長さを前記各枠材のサッシ開口に臨む部分の長さと同寸法に合わせても、製造時と建物への窓装置の取付け施工時の温度差に基くカバーの膨張・収縮により、カバーを複数箇所において室内枠の枠材にねじ止めすることが困難になる場合があるとともに、無理な取付けを行うと、カバーが伸びている場合にはその一部が盛り上がって体裁を損ない、また、使用時におけるカバーの膨張・収縮に伴いねじ止め部に負荷が集中して早期にカバーの破損を招き易いなどの問題がある。本件発明の目的は、外観を向上できるだけでなく、そのために設けられるカバーを、その膨張・収縮に拘らず容易に取付けることができるとともに、このカバーが早期に破損することも防止できる建具用枠を得ることにある。」(段落【0003】〜【0007】)
c「【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明の建具用枠は、金属製の上下の横枠材および金属製の左右の縦枠材を枠組みして形成されるとともに断熱材製の上下左右の介装体を介して連結される室内枠と室外枠と、これら室内枠および室外枠の前記下側横枠材とこれらを連結した下側介装体とからなる下側横枠の表面に、少なくとも前記下側横枠の介装体を覆い隠して設けられるカバーとを備え、前記カバーを前記下側横枠材よりも熱膨脹係数が大きい低熱伝導性材料で形成し、前記カバーの長手方向両端部のうち少なくとも一端部を前記下側横枠の長手方向に変位可能な自由端部として、前記カバーの一部を前記下側横枠またはこれに連なる縦枠に固定したものである。」(段落【0008】)
d「【作用】前記建具用枠の構成において、下側横枠を覆うカバーは、下側横枠の介装体をサッシ開口の内側から覆い隠し、下側横枠の介装体の視認を妨げる。このカバーは低熱伝導性材料であるので、室内枠と室外枠との熱伝導経路となることがない。そして、カバーは、その一部のみが固定されて少なくとも一端部が自由端部となっているから、温度変化に応じ前記自由端部の位置が長手方向に変位する。それにより、カバーが最大に伸びても、その寸法が下側横枠の建具用枠開口に臨む部分の長さより長くなって、下側横枠に対するカバーの取付けに困難を来すことがない。これとともに、カバーの少なくとも両端部を固定する場合と異なり、カバーの一部のみを固定したことにより建具用枠の組立て後にカバーが縮むことも許され、しかも、以上のようなカバーの伸び縮みの際に、このカバーの固定部に負荷が作用することも極めて少ない」(段落【0009】〜【0010】)
e「また、障子71,72の召し合わせ框に夫々取り付けた框カバー93,100においても、介装体73,83の視認をなくすことができるとともに、風止めピース98,99,101,102を利用して框カバー93,100の端部の視認をなくしたから、窓の体裁を向上させることができる。しかも、室内側框カバー93はその両端に自由端部93a,93bを有し、室外側框カバー100はその上端に自由端部100aを有していて、その長さ方向の変位により熱膨脹の差を吸収できる。そのため、これらの框カバー93,100が障子71,72の組立て性を損なうことがないとともに、伸び縮みに伴う框カバー自体93,100およびその固定部への負荷を少なくできる。」(段落【0060】)

(3)甲第3号証には、以下の記載が認められる。
a「本発明は窓枠、ガラス戸、雨戸、障子の框等を構成する断熱サツシバー材の製造方法に関するものである。」(1頁左下欄11〜13行)
b「その目的は、簡単に製造できると共に、内,外側部材の連結強度が強く安定した連結状態を得られるようにした断熱サツシバー材の製造方法を提供することである。」(1頁右下欄3〜6行)
c「竪枠aは断熱性に優れた合成樹脂製内側部材1とアルミニウム等の金属製外側部材10とを連結したものであり、……竪枠aの内側部材1は、……断面略四角形となり、外壁3の中間部には凹部6が形成されかつ外側部分には略V字状の係止溝7が形成してあり、内壁4の外側部分には略V字状の係止溝8が形成してある。前記竪枠aの外側部材10は、……断面略四角形となり、外壁12は内側壁11よりも内側に延長して延長片12’を形成し、延長片12’の内側端には前記凹部6の段部6aに当接する当接片15が形成され、かつ前記係止溝7に嵌合する略三角形状の係止突起16が一体形成してあり、内壁14には前記係止溝8に嵌合する略三角形状の係止突起17が一体形成してある。」(1頁右下欄12行〜2頁左上欄11行)
d「以上の様に、断熱材製の内側部材と金属製の外側部材との一方の係止溝と係止突起とを嵌合係止して仮連結し、その後に他方の係止溝に金属製外側部材の係止突起をカシメ嵌合係止して内側部材と外側部材とを連結して断熱サツシバー材とするので、その製造が簡単となると共に、内側部材と外側部材とは相互に嵌合係止した一対の係止溝と係止突起を介して直接連結されるので連結強度が強く、しかも金属製外側部材の方をカシメて内側部材と一体とするため係止突起が係止溝に深く喰い込み係止突起と係止溝との嵌合係止状態は強く相互に微動することがなくて安定した連結状態を得られる。」(2頁左下欄3〜15行)

3-2 対比・判断
本件請求項2に係る発明は、前記の事項により特定されるものであり、「室内側形材が晒される雰囲気温度と室外側形材が晒される雰囲気温度に差がある場合や、二つの形材の熱膨張率が異なっている場合であったとしても、室内側形材および室外側形材のうちの少なくともいずれか一方の形材が断熱材を伴わないで長手方向に伸縮して両形材間に生じる長さ寸法のずれを吸収することから、断熱形材全体に反りが発生するのが阻止されることとなり、このように熱による反りが発生しないので、制約を受けることのない断熱形材の自由な設計がなされることとなるとともに、断熱材が非当接部を有しているので、断熱材と、この断熱材を伴わない熱伸縮が許容された形材との間に、全体的ながたつきが生じるのが阻止されて、断熱材を伴わない熱伸縮が許容された形材の固定強度の向上が図られる一方、係合部に非当接部を間隔をおいて有しているので、係合部を相手方に係合して連結する作業が軽い力で円滑になされることとなる。」(本件明細書の段落【0016】)との作用、効果を奏するものである。
本件請求項2に係る発明と甲第1号証記載のものとを対比すると、甲第1号証記載の「金属シエル体1,2」は、本件請求項2に係る発明の「室内側型材」と「室外側型材」に相当し、甲第1号証記載の「絶縁棒」及び「断熱性の結合成形体」は、本件請求項2に係る発明の「断熱材」及び「断熱形材」に相当する。そして、本件請求項2に係る発明は、断熱材が非当接部を有することにより、「断熱材を伴わない熱伸縮が許容された形材との間に、全体的ながたつきが生じるのが阻止されて、断熱材を伴わない熱伸縮が許容された形材の固定強度の向上が図られる」ものであるところ、甲第1号証記載の「絶縁棒」は、凹所47を全長に亘つて間隔をおいて有しているものの、該凹所47には、みぞウエブ48が押し込まれて充填され、金属シエル体と絶縁棒との間の三次元的にずれ動かない結合(上記甲第1号証のaの記載参照。)が形成されるものであり、金属シエル体(形材)が、絶縁棒(断熱材)を伴わない熱伸縮が可能な状態で絶縁棒(断熱材)に係合されているものではなく、該凹所47が、本件請求項2に係る発明の「非当接部」に相当するということはできないから、両者は、
「室内側形材と、室内側形材と対向して設けた室外側形材と、両形材を連結する断熱材を備える断熱形材」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点
本件請求項2に係る発明は、室内側形材および室外側形材のうちの少なくともいずれか一方の形材を、断熱材を伴わない熱伸縮が可能な状態で断熱材に係合するとともに、断熱材は、いずれか一方の形材との係合部にいずれか一方の形材との非当接部を間隔をおいて有しているのに対し、甲第1号証記載のものは、そのような事項を備えていない。
そこで、上記相違点について検討すると、甲第2号証には、室内枠と室外枠とを断熱材製の介装体を介して連結し、介装体により両枠間の熱伝導を防止したサッシ、ドア、引戸等の建具用枠において、下側横枠の介装体を覆い隠すカバーを低熱伝導性材料で形成し、カバーの長手方向両端部のうち少なくとも一端部を前記下側横枠の長手方向に変位可能な自由端部として、カバーの一部を下側横枠またはこれに連なる縦枠に固定することが記載されている。しかしながら、上記低熱伝導性材料で形成されたカバーは、室内枠と室外枠とを連結するものではなく(両者の連結は断熱材製の介装体が行っている)、また、カバーの長手方向両端部のうち少なくとも一端部を下側横枠の長手方向に変位可能な自由端部としたのは、カバーの膨張・収縮による施工時の困難あるいは使用時の破損等の問題を解決するためであり、本件請求項2に係る発明のように、両形材間に生じる長さ寸法のずれを吸収して、断熱形材全体に反りが発生するのを阻止することを意図したものでもなく、甲第2号証には、相違点における本件請求項2に係る発明の事項が記載されているということはできないし、示唆もされていない。
甲第3号証には、断熱性に優れた合成樹脂製内側部材1とアルミニウム等の金属製外側部材10とを凹部6を介して連結した窓枠の竪枠aが記載されているが、上記竪枠aは、そもそも内側部材1と外側部材10を連結する断熱材を備えておらず、また、内側部材1と外側部材10は、相互に嵌合係止した一対の係止溝と係止突起を介して直接連結されるので連結強度が強く、しかも金属製外側部材の方をカシメて内側部材と一体とするため係止突起が係止溝に深く喰い込み係止突起と係止溝との嵌合係止状態は強く相互に微動することがなくて安定した連結状態とされているものであり、甲第3号証にも、相違点における本件請求項2に係る発明の事項が記載されているということはできないし、示唆もされていない。
したがって、本件請求項2に係る発明は、甲第1号証〜甲第3号証記載のものに基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4 むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項2に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-06-26 
出願番号 特願平9-170721
審決分類 P 1 652・ 121- Y (E06B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 蔵野 いづみ
鈴木 公子
登録日 2001-07-19 
登録番号 特許第3211730号(P3211730)
権利者 三協アルミニウム工業株式会社
発明の名称 断熱形材  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ