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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B41M |
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管理番号 | 1062014 |
審判番号 | 不服2000-9780 |
総通号数 | 33 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-07-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-06-29 |
確定日 | 2002-07-31 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第155838号「可逆性感熱記録材料」拒絶査定に対する審判事件〔平成 5年 7月 9日出願公開、特開平 5-169808、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成4年5月22日の出願であって、平成4年7月23日付けで明細書の補正がなされた。その後、平成11年12月7日付けで拒絶の理由が通知され、平成12年2月14日付けで明細書の補正がなされ、平成12年5月22日付けで拒絶の査定がなされたものであり、その請求項1ないし8に係る発明は次のおりのものである。 「【請求項1】 支持体上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明状態と白濁状態とが可逆的に変化する感熱層を設けた可逆性感熱記録材料に於いて、該支持体が2枚のフィルムを接着剤層または粘着剤層を介して積層したものであり、その接着強度が、JIS K-6854、180度剥離の方法で測定した引張り荷重の平均値で表わした場合、0.5kgf/25mm以上であることを特徴とする可逆性感熱記録材料。 【請求項2】 前記接着強度が1.0kgf/25mm以上であることを特徴とする請求項1記載の可逆性感熱記録材料。 【請求項3】 前記接着剤層または粘着剤層を形成する材料が、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル-アクリル系共重合体樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体樹脂、メタクリル酸エステル系共重合体樹脂、天然ゴム、シアノアクリレート系、シリコン系樹脂の少なくとも1種からなる接着剤またはこれ等の接着剤に粘着付与剤を添加した粘着剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の可逆性感熱記録材料。 【請求項4】 前記2枚のフィルム間の接着剤層又は粘着剤層の一部に、接着剤又は粘着剤を施さない、内部に空気を有する非密着部を設け、該非密着部を表示部としたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の可逆性感熱記録材料。 【請求項5】 前記支持体のいずれかの部分に磁気記録層を設けたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の可逆性感熱記録材料。 【請求項6】 前記支持体の感熱層を有さない側のフィルムが、ICカード等の半導体デバイスを応用した情報記録担体であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の可逆性感熱記録材料。 【請求項7】 請求項1、2、3、4、5又は6記載の可逆性感熱記録材料を用い、加熱により画像の形成と消去を行うことを特徴とする画像形成および消去方法。 【請求項8】 サーマルヘッドを用い、画像の形成と消去を行うことを特徴とする請求項7記載の画像形成および消去方法。」 2.原査定の概要 原査定の拒絶の理由は、補正前の本願請求項1ないし3、5および6に係る発明は、その出願前日本国内で頒布された、 文献1:特開平3-7377号公報 文献2:特開昭62-198497号公報 文献3:特開平2-38089号公報 文献4:特開平2-3395号公報 文献5:実願昭63-50496号(実開平2-3876号)のマイ クロフィルム 文献6:実願昭63-121579(実開平2-44071号)のマ イクロフィルム 文献7:特開平2-192999号公報 に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.当審の判断 そこで、原査定の拒絶の理由について検討する。 3.1 文献1ないし7の記載事項 文献1には、 「樹脂母材とこの樹脂母材中に分散された有機低分子物質とを主成分としてなり、温度に依存して透明度が可逆的に変化する可逆性感熱記録層と、光反射層としての金属薄膜層を有する可逆性感熱記録材料において、該金属薄膜層が、 (i)光沢度(JIS Z 8741)70〜250%をもつものであるか、または (ii) 表面が0.5〜10μmの表面粗さの微細凹凸形状をもつものである ことを特徴とする可逆性感熱記録材料。」(【請求項1】) に関し、その目的は、高コントラストで、且つ耐久性の向上した、余分な正反射を抑え、どの角度から見も見やすい画像を形成できる可逆性感熱記録材料を提供すること(第2頁左上欄第11〜17行)である旨記載されている。 文献2には、 「(1)基材上に、加熱時に熱転写シートから移行する染料を受容する受容層を設けた被熱転写シートにおいて、上記基材が芯材の少なくとも片面に合成紙を貼着してなり、該基材の合成紙側に直接又は中間層を介して受容層を設けたことを特徴とする被熱転写シート」(特許請求の範囲第1項)に関し、その目的は、「合成紙にカール防止のための芯材を貼着した基材を用いることにより、画像形成後のカールを抑え、写真調画像等を形成した後にも平面性のよい、仕上がりの良い被熱転写シートを提供すること」(第2頁左上欄第9〜14行)にあり、実施例には、感熱昇華転写シートの例が記載されている。 文献3には、 「本発明は熱転写画像受容シートに用いられる基層シートに関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、染料加熱昇華型プリンターなどのように熱エネルギーを大量に用いるプリンターにおいて、加熱によりカールすることなく、昇華した染料などの熱転写インク画像をシャープに転写受容し、高解像度の中間調の画像を高忠実に印刷可能な熱転写画像受容シート用基層シート」(第1頁左下欄第17行〜右下欄第4行)が記載されている。 文献4には、 「本発明は熱転写画像受容シート用基層シートおよびその製造方法に関するものである。更に、詳しく述べるならば、本発明は、染料加熱昇華型プリンターなどの、大きな熱エネルギーを用いるプリンターにおいて、熱でカールすることなく、昇華した染料などの熱転写インクによる、フルカラープリント画像をシャープに転写受容する、高解像度を有する中間調の画像を高忠実に印字可能な熱転写画像受容シートに有用な基層シートおよびその製造方法」(第1頁左下欄第19行〜右下欄第8行)が記載されている。 文献5には、 「支持体上に樹脂母剤とこの樹脂母剤中に分散された有機低分子物質とを主成分とし、温度により透明度が可逆的に変化する感熱記録層と磁性材料を主成分とする磁気記録層とを有すると共に、少なくとも感熱記録層直下又は支持体の感熱記録層対応部分が着色されている情報記憶カード。」(実用新案登録請求の範囲第1項)が記載されている。 文献6には、 「カード表面の少なくとも一部に反復記録及び消去が可能な感熱記録層を設けることにより、小面積のカード上に多くの情報の繰り返し表示が可能となる。又、好ましい実施態様においては、感熱記録層の下面に着色層を設けることにより印字を鮮明且つ見やすくすることができる。更に着色層を磁気記録層とすることにより、製造工程が省略できるとともに、磁気記録層の良好な熱伝導性により印字がシャープとなり解像度が向上する。」(第5頁第1〜10行)と記載されている。 文献7には、 「プリペイドカード1は、表面側においては、カード本体部としての基板2上の一方側に熱可逆性材料からなる書き換え可能な表示層3が設けられ、表示層3が存在しない基板2上に着色層が設けられ、表示層3と着色層4上に連続してカード保護用の透明オーバーコート層5が設けられ、裏面においては、基板2の全体に金額度数の書き込まれた磁気層6が設けられて構成されている。」(第2頁右上欄第12〜20行)と記載されている。 3.2 対比判断 3.2.1 補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)について 本願発明1は、請求項1に記載の事項を構成要件とすることにより、「初期及び繰り返し画像の形成-消去後のカールが防止され、また、カード等のへの応用の際にもくり返し記録によってフィルム界面での剥離がなく、高コントラストで繰り返し耐久性に優れる効果を奏するものである。(段落【0052】)」 本願発明1と文献1に記載された発明とを対比すると、「支持体上に、樹脂母材及び樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分とし、温度に依存して透明状態と白濁状態とが可逆的に変化する感熱層を設けた可逆性感熱記録材料」で一致し、本願発明1の支持体が、「2枚のフィルムを接着剤層または粘着材層を介して積層したものであり、その接着強度が、JIS K-6854、180度剥離の方法で測定した引張り荷重の平均値で表わした場合、0.5kgf/25mm以上」であるのに対し、文献1には、このような特定の物性を有する構造の支持体については記載されていない点で両発明は相違する。 相違点について文献2〜7を検討する。 文献2〜4には、積層構造の支持体を有する昇華型熱転写画像受容シートについて記載されている。 しかしながら、本願発明1は可逆性感熱記録材料に関するものであって、本願発明1の技術分野と、文献2〜4に記載の発明の技術分野とは全く別のものである。 即ち、本願発明1の可逆性感熱記録材料は、画像の記録・消去を何百回となく繰り返されるのに対して、引用文献2〜4に記載の発明の受容シートは、画像の記録は1回のみであり、消去されることはなく、まして画像の記録・消去は繰り返されるものではない。 このように、本願発明の可逆性感熱記録材料は、文献2〜4に記載された発明の昇華型転写画像受容シートの場合ではあり得ない繰り返し繰り返して印刷装置の中で加熱されるものであるから、両者はその求められる特性が大きく異なるものであり、文献2〜4に記載されたカール防止の手段が文献1に記載の発明に直ちに適用できるものではない。 しかも、本願発明1は、その可逆性感熱記録材料の支持体が、上記特定の接着強度を有する2枚のフィルムの積層構造のものであることから、これらフィルムの剥がれをも防止し得るものであるが、引用文献2〜4にはこのような積層の剥れ防止については示唆されていない。 更に引用文献2〜4には、保護層塗布液の塗布後の乾燥、架橋反応時の収縮により生じるカール発生防止についても記載されていない。 以上述べたように、本願発明1と、文献2〜4に記載された発明とは技術分野が全く異なり、本願発明の課題を解決するために、文献1に記載された発明と、文献2〜4に記載された発明とを組み合わせること自体困難であるといわざるを得ない。 また、文献5〜7にも、上記相違点に係る本願発明1の構成、及びそれによって奏される作用効果を示唆する記載はない。 したがって、本願発明1が文献1〜7に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 3.2.2 補正後の請求項2,3,5ないし8に係る発明について 本願請求項2,3,5ないし8に係る発明は、本願発明1の構成要件を全て引用するものであるから、3.2.1 の本願発明1の項で述べたものと同じ理由で、文献1〜7に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 4.まとめ 以上のとおりであるから、原査定の理由及び証拠によっては本願請求項1ないし3,5ないし8に係る発明を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2002-07-09 |
出願番号 | 特願平4-155838 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B41M)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 史郎、藤井 勲、野田 定文 |
特許庁審判長 |
嶋矢 督 |
特許庁審判官 |
植野 浩志 伏見 隆夫 |
発明の名称 | 可逆性感熱記録材料 |
代理人 | 池浦 敏明 |