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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない E04D
管理番号 1062024
審判番号 無効2002-35117  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-20 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-03-29 
確定日 2002-07-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第2964223号発明「屋根」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 (一)手続の経緯
1)出願(特願平8-154945号) 平成8年5月27日
(優先権主張平成7年9月8日)
2)登録(特許第2964223号) 平成11年8月13日
3)無効審判請求 平成14年3月29日
4)答弁書 平成14年4月30日

(二)請求人及び被請求人の主張の概要
請求人は、「特許第2964223号発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」という趣旨で無効審判を請求し、請求の理由として、審判請求書において、甲第1乃至7号証を提示して、本件請求項1及び2に係る各発明は、甲第1号証に甲第2号証を適用したり、或いは甲第1号証に甲第2号証及び甲第3号証を適用することで、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明、或いは甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、これらの特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきであると主張している。
一方、被請求人は、本件請求項1及び2に係る各発明は、特許法第29条第2項の規定に該当せず、同法第123条第1項によって無効とされるべきものではないと答弁書において主張している。

(三)本件発明
本件特許第2964223号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という。)は、特許明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定された次のとおりのものである。
【請求項1】 両側に立ち上り部(14b)(14c)(36a)(36b)が形成された長尺状の金属板から成る屋根板(14)(36)を複数、屋根の下地材上に並列配置し、前記下地材に吊子(8)(34)を立設し、互いに隣接する前記屋根板(14)(36)の立ち上り部(14b)(14c)(36a)(36b)を前記吊子(8)(34)を介して互いに接合し、該接合部の上部を固着して、前記下地材上に、屋根板(14)(36)の帯状部(14a)と両立ち上り部(14b)(14c)(36a)(36b)とで形成された屋根板(14)(36)の長手方向に延びる凹部を複数形成し、各屋根板(14)(36)の帯状部(14a)に水止め用の立ち上げ部(16)(36d)を設けて水溜め部(18)(38)を構成し、該水溜め部(18)(38)に吸水材(20)(40)を配置し、該吸水材(20)(40)の上に、芝生(26)などの植物を植え付けることができるように成し、前記水溜め部(18)(38)に給水パイプ(24)(50)から水を供給するようにしたことを特徴とする屋根。
【請求項2】 前記水止め用の立ち上げ部(16)(36d)を屋根板(14)(36)を屈折し、該屈折部を起立させて、屋根板(14)(36)に一体的に形成したことを特徴とする「請求項1」に記載の屋根。

(四)無効理由についての検討
1.証拠に記載された事項の認定
1)甲第1号証(特公昭61-9462号公報)
特許請求の範囲には「1 主板1の幅方向両側に側部立上り部2,2を形成した長尺な被覆金属材Aの側部立上り部2に、隣接の被覆金属材Aの側部立上り部2をシーム溶接して第1X方向伸縮継手部5を形成し、これらを順次繰返して葺成し、その第1X方向伸縮継手部5の端部寄りを主板1面に当接するように折曲してこの部分と共に、長手方向一側に端部立上り部6を連続的に形成し、これらと同じもの相互をその被覆金属材Aの長手方向が同方向をなすように対向させ、その隣接する端部立上り部6,6…………相互をシーム溶接して第1Y方向伸縮継手部7を形成し、この第1Y方向伸縮継手部7の長手方向中間の適宜を分離しつつ、この個所に、その第1Y方向伸縮継手部7の長手方向に略直行する第2X方向伸縮継手部8を複数条併設し、この複数の第2X方向伸縮継手部8の長手方向の両端部に夫々、この第2X方向伸縮継手部8の長手方向に略直交する第2Y方向伸縮継手部10を設け、この第2Y方向伸縮継手部10夫々の長手方向両端寄りを折曲して前記第1X方向伸縮継手部5に重合させたことを特徴とした被覆金属外囲体。」
第2頁第4欄第3〜13行には「その被覆金属材Aが、構造物の外表面に載置され、次いで、その被覆金属材Aの側部立上り部2に可動吊子Bの可動舌片4が接するようにして、吊子本体3を構造物上または構造材上に固着されている。その可動吊子Bは、その側部立上り部2の長手方向に対して、適宜の間隔をおいて複数設けられている。そして、その可動舌片4が存在する側部立上り部2に、隣接の被覆金属材Aの側部立上り部2が重合され、この両側部立上り部2,2が可動舌片4と共にシーム溶接されて、第1X方向伸縮継手部5が形成されている。」
と記載されており、第1,10図を参照すると、甲第1号証には、両側に側部立上り部が形成された長尺な被覆金属材を複数、構造物上または構造材上に並列配置し、構造物上または構造材上に固着され立設している可動吊子を介して互いに隣接する被覆金属材の側部立上り部の上部が可動吊子の上部である可動舌片と共にシーム溶接されて第1X方向伸縮継手部が形成され、構造物上または構造材上に被覆金属材の主板と両側部立上り部とで形成された被覆金属材の長手方向に延びる凹部を複数形成し、被覆金属材の主板に第1Y方向伸縮継手部を形成する端部立上り部を連続的に形成し、その両端寄りを折曲して第1X方向伸縮継手部に重合させた被覆金属外囲体が記載されていると認められる。
2)甲第2号証(特公平2-62661号公報)
特許請求の範囲には「2 板体の一端下部面に係合水切片22を有し、他端上部面に係合水返片23を備え、両側縁に上方に向く防水壁24と、この防水壁24上端から外方下向きに、外方に突に湾曲する係合突片25とを形成した基盤材を複数有し、これら基盤材を前記係合水切片22と係合水返片23とを摺動調節自在に係合したことを特徴とする太陽エネルギ収集屋根の基盤。」
と記載されており、第3〜10図を参照すると、甲第2号証には、両側縁に上方に向く防水壁が形成された板体の一端下部面に係合水切片を有し、他端上部面に係合水返片を備えた基盤材を複数下地材上に配置し、係合水切片と係合水返片とを摺動調節自在に係合した、太陽エネルギ収集屋根の基盤が記載されていると認められる。
3)甲第3号証(特開平7-231722号公報)(平成7年9月5日公開)
段落【0013】〜【0018】には「図1〜図4に示す基本的実施例において、1はこの出願の発明の要旨の中心をなす屋根であり、梁2,2…に対して所定の木材製、或いは、合板製,金属製等の野地板3が所定角度下り勾配に載置されており、該野地板3に対し傾斜方向所定ピッチで同じく木材製,合板製,合成樹脂製,金属製等の所定の仕切壁5(所定の防錆処理を施されている)が上端から所定部位に水はけ通路孔4,4を縦方向所定ピッチで穿設されて一体的に立設されている。したがって、各仕切壁5は野地板3に対し階段状に設けられていることになる。そして、各仕切壁5と野地板3の間には粘土等の所定の泥土6が下り勾配、或いは、上り勾配(プラス,マイナスの角度で)にその上面を略水平状態にされて充填載置され、下部には集水性能を有する・・・多孔性の滲出性パイプ7が縦方向に埋設されて排水機能を有するようにされている。尚、該泥土6は生産地により当該家屋の粘度や降水条件に対し最適な断熱性能を有する土壌のものから採用されるものである。そして、仕切壁5,5…の両側には側壁8が(図2に於ては図示の都合上、仕切壁5よりもやや低い断面で示されている。)設けられ、しかも、その外側に所定間隔を介し他の側壁10が設けられて水はけ通路11を下り勾配に形成し、側壁8の水はけ通路孔9が泥土6内の水はけ通路のパイプ7に接続されて泥土6に対する降水の排水機能を司どるようにされている。尚、設計によっては各階段の泥土6には適宜の植生12が設けられてその根12' が泥土6中に在って該泥土6をからめその流出脱落を防止するようにされている。」
段落【0029】には「図5に示す実施例は上述実施例において、各段差部に充填された泥土6に於ける植生12に対する降水だけでは不充分で乾燥した季節等において人為的に給水する必要がある場合に、所定数のノズル13,13…を有する散水装置のパイプ14を適宜のポンプ15を介し水道水等に接続して適宜に散水することが出来るようにし、植生12の成長が有効に促進される態様であり、」
と記載されており、図1、2、5を参照すると、甲第3号証には、梁に対して金属製の野地板が所定角度下り勾配に載置されており、該野地板に対し、上端から所定部位に水はけ通路孔が縦方向所定ピッチで穿設された金属製の仕切壁が傾斜方向所定ピッチで一体的に立設され階段状に設けられており、各仕切壁と野地板の間の各段差部には植生が行えるよう泥土が充填載置され、下部には集水性能を有する多孔性の滲出性パイプが縦方向に埋設され、仕切壁の両側に設けられた側壁の水はけ通路孔は該パイプに接続されていて、側壁の外側に下り勾配に形成された水はけ通路が泥土に対する降水の排水機能を司どるようにされていて、散水装置のパイプから各段差部に人為的に給水することができるようにした屋根が記載されていると認められる。
4)甲第4号証(特開平6-181627号公報)
特許請求の範囲の請求項1には「スラブ上に一面に設けた樹脂製の根切りシートと、芝の植生用地の外周を囲った外枠と、この外枠内の根切りシート上に敷き詰めた排水層と、上記外枠内に区画を形成するための縦横の仕切と、この縦横仕切によって形成された各区画内の排水層上面に敷設した保護層と、上記縦横仕切および保護層の上面に敷設した芝の植生層とを備え、さらに上記外枠内部には給水管路を配管し、この給水管路から並列に1本または複数本の多孔質管を分岐したことを特徴とする芝生植生構造体。」
段落【0012】には「外枠10内を仕切11・12でさらに細かく区画したことによって、多孔質管15による散水を効率よく拡散している。即ち、図2で説明したように排水を考慮して用地は通常AからBに向かって傾斜しているが、特に横仕切12を省略した場合には散水は傾斜に従って低地側に流れることになるので、保護層の高地側と低地側の湿度バランスが崩れ、芝の成長も均一ではなくなる。また降雨があった場合には、低地側が絶えず浸った状態になるので根腐れを促進するおそれもある。しかし、区画を形成した場合にはその区画内で湿度バランスが調整されるので、高地側と低地側のバランスが大きく崩れることを回避することができる。」
と記載されており、図1、2、5を参照すると、甲第4号証には、スラブ上に一面に設けた樹脂製の根切りシートと、芝の植生用地の外周を囲った外枠と、この外枠内の根切りシート上に敷き詰めた排水層と、上記外枠内に、その区画内で湿度バランスが調整され低地側で根腐れがおきないように区画を形成するための縦横の仕切と、この縦横仕切によって形成された各区画内の排水層上面に敷設した保護層と、上記縦横仕切および保護層の上面に敷設した芝の植生層とを備え、さらに上記外枠内部には給水管路を配管し、この給水管路から並列に1本または複数本の多孔質管を分岐した芝生植生構造体が記載されていると認められる。
5)甲第5号証(「R-Tシーム溶接工法」三晃金属工業株式会社のカタログ)
第8頁には「露出工法/非露出工法」 非露出工法として、コンクリート層の上のステンレス板に排水層、土木シートを介して盛土した層構成、及び屋上を芝等で緑化した写真、
第14頁には「押え層のバリエーション」として、ステンレス板の上に透水層、土木シートを介して植生のための植土を設けた図が記載されていると認められる。
なお、裏頁に920505-T3の記載がある。
6)甲第6号証(「三晃金属工業株式会社Sanko総合カタログ」)
第25頁には「R-T工法」「ステンレス鋼板を吊子を介して躯体に止めることにより、振動や地震から防水層を保護し、なおかつ、シーム溶接することで、長期にわたって完全な水密性と気密性を保持するステンレスシート防水工法です(建築工事標準仕様制定)。コンクリート、鉄骨、デッキプレート、木造など、あらゆる下地材に施工が可能で、ビルの屋上防水分野をはじめ、新設屋根や改修にも広く利用できます。」の記載、及び、取付断面形状 非露出工法【標準タイプ】 テラス・屋上庭園として、コンクリート層上の発泡ポリエチレンの上のSUS316に砂利、透水シート(土木シート)を介して植生のための埴土を設けた図、更に、部分断面形状、構成図を参照すると、両側に立ち上り部が形成された長尺状のステンレス鋼板から成る屋根板を複数、屋根の下地材上に並列配置し、前記下地材に吊子を立設し、互いに隣接する前記屋根板の立ち上り部を前記吊子を介して互いにシーム溶接し、前記下地材上に、屋根板の帯状部と両立ち上り部とで形成された屋根板の長手方向に延びる凹部を複数形成した屋根が記載されていると認められる。
なお、「全国事業所一覧」の頁に920715-ISD2の記載がある。

2.本件発明1及び2と証拠に記載されたものとの対比、判断
1)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明の「側部立上り部」、「被覆金属材」、「構造物上または構造材上」、「可動吊子」、「シーム溶接」、「第1X方向伸縮継手部」、「主板」、「被覆金属外囲体」は、本件発明1の「立ち上り部」、「金属板から成る屋根板」、「下地材上」、「吊子」、「固着」、「接合部」、「帯状部」、「屋根」に相当し、甲第1号証に記載された発明の「第1Y方向伸縮継手部を形成する端部立上り部」と、本件発明1の「水止め用の立ち上げ部」とは、「長手方向と交叉する方向の立ち上げ部」で共通しているから、両者は、両側に立ち上り部が形成された長尺状の金属板から成る屋根板を複数、屋根の下地材上に並列配置し、前記下地材に吊子を立設し、互いに隣接する前記屋根板の立ち上り部を前記吊子を介して互いに接合し、該接合部の上部を固着して、前記下地材上に、屋根板の帯状部と両立ち上り部とで形成された屋根板の長手方向に延びる凹部を複数形成し、各屋根板の帯状部に長手方向と交叉する方向の立ち上げ部を設けた屋根の点で一致し、次の点で相違している。
相違点:本件発明1では、長手方向と交叉する方向の立ち上げ部が水止め用の立ち上げ部であって、両側に立ち上り部が形成された各屋根板の帯状部に水止め用の立ち上げ部を設けて水溜め部を構成し、該水溜め部に吸水材を配置し、該吸水材の上に、芝生などの植物を植え付けることができるように成し、前記水溜め部に給水パイプから水を供給するようにしているのに対し、甲第1号証に記載された発明では、端部立上り部の両端寄りが折曲され、水止め作用を有しておらず、かつ、上記のような構成を有していない点。
上記相違点について検討する。
甲第2号証には、下地材上に複数配置される基盤材からなり、両側縁に上方に向く防水壁が形成され、これと交叉する方向に位置する係合水切片と係合水返片との係合部分が設けられた、太陽エネルギ収集屋根の基盤が記載されているが、この基盤は太陽エネルギ収集器の受け体となるものであり、この上に水を溜めることは考えられないから、請求人が主張するように、係合水切片と係合水返片との係合部分が、本件発明1の水止め用の立ち上げ部のように水溜め部を構成するものと解すことはできず、本件発明1の上記相違点に係る両側に立ち上り部が形成された各屋根板の帯状部に水止め用の立ち上げ部を設けて水溜め部を構成したという事項は記載されていない。
甲第3号証には、両側に側壁(本件発明1の「立ち上り部」に相当。)が、側壁間には傾斜方向所定ピッチで金属製の仕切壁が設けられた金属製の野地板の、各仕切壁と野地板の間の各段差部に泥土が充填載置され、泥土に植生できるように成し、前記段差部に散水装置のパイプ(本件発明1の「給水パイプ」に相当。)から水を供給するようにした屋根が記載されており、甲第3号証に記載された発明の金属製の野地板は、その上に屋根材が葺かれるものではなく、下地材兼屋根材と解することはできるが、本件発明1の金属板から成る屋根板のように複数並列配置されるものとはいえない。また、甲第3号証に記載された発明の仕切壁は、本件発明1の水止め用の立ち上げ部に構造上は対応しているが、甲第3号証に記載された発明において、植生される泥土はもともと水を多く含むものであり、仕切壁には上端から所定部位に水はけ通路孔が縦方向所定ピッチで穿設されていると共に、各段差部の下部には集水性能を有する多孔性の滲出性パイプが縦方向に埋設され、仕切壁の両側に設けられた側壁の水はけ通路孔は該パイプに接続されていて、側壁の外側に下り勾配に形成された水はけ通路が泥土に対する降水の排水機能を司どるようにされており、本件発明1のように、植生される吸水材のための水を積極的に溜めておこうとしているとはいえない。そうすると、甲第3号証に記載された発明の段差部は、本件発明1のように水溜め部を構成するものと解すことはできず、本件発明1の上記相違点に係る両側に立ち上り部が形成された各屋根板の帯状部に水止め用の立ち上げ部を設けて水溜め部を構成したという事項は記載されていない。
甲第4号証に記載された発明は、本件発明1と同様にスラブ上(本件発明1の「屋根の下地材上」に相当。)に芝生の植生構造体を設けることを目的としたものであるが、芝が植生される保護層(本件発明1の「吸水材」に相当。)の下には排水層が敷き詰められており、外枠及び縦横の仕切によって形成された区画内は、本件発明1のように水溜め部を構成するものと解すことはできず、かつ、両側に立ち上り部が形成された長尺状の金属板から成る屋根板を複数、屋根の下地材上に並列配置される屋根ではないから、本件発明1の上記相違点に係る両側に立ち上り部が形成された各屋根板の帯状部に水止め用の立ち上げ部を設けて水溜め部を構成したという事項は記載されていない。
甲第5及び6号証は、いずれもカタログであって、本件の出願前に国内において頒布された刊行物であるか否か不明であるが、いずれにも(特に甲第6号証参照)、両側に立ち上り部が形成された長尺状の金属板から成る屋根板を複数、屋根の下地材上に並列配置し、前記下地材に吊子を立設し、互いに隣接する前記屋根板の立ち上り部を前記吊子を介して互いに接合し、該接合部の上部を固着して、前記下地材上に、屋根板の帯状部と両立ち上り部とで形成された屋根板の長手方向に延びる凹部を複数形成し、該凹部上に埴土(本件発明1の「吸水材」に相当。)を配置し、その上に、植物を植え付けることができるようにした屋根は記載されていても、本件発明1の上記相違点に係る両側に立ち上り部が形成された各屋根板の帯状部に水止め用の立ち上げ部を設けて水溜め部を構成したという事項は記載されていない。
したがって、本件発明1の上記相違点に係る両側に立ち上り部が形成された各屋根板の帯状部に水止め用の立ち上げ部を設けて水溜め部を構成したという事項は、甲第2乃至6号証のいずれにも記載されておらず、示唆もされていないから、本件発明1は、上記甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明、或いは甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
2)本件発明2について
本件発明2は本件発明1を更に限定したものであるから、上記本件発明1についての検討事項と同様の理由により、本件発明2は、上記甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明、或いは甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3.まとめ
以上のように、本件発明1及び2における、両側に立ち上り部が形成された各屋根板の帯状部に水止め用の立ち上げ部を設けて水溜め部を構成したという事項は、甲第1号証ないし甲第3号証のいずれの証拠にも記載されていないから、請求人の主張は採用できない。なお、他に提示された甲第4号証乃至甲第6号証のいずれの証拠にも上記の事項は記載されていない。

(五)むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1及び2の特許を無効とすることはできない。
また、審判費用の負担については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-05-21 
結審通知日 2002-05-24 
審決日 2002-06-04 
出願番号 特願平8-154945
審決分類 P 1 112・ 121- Y (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 山田 忠夫
特許庁審判官 山口 由木
鈴木 憲子
登録日 1999-08-13 
登録番号 特許第2964223号(P2964223)
発明の名称 屋根  
代理人 岩堀 邦男  
代理人 西島 綾雄  

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