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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1062079
審判番号 不服2001-9880  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-05-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-06-13 
確定日 2002-07-18 
事件の表示 平成 3年特許願第277796号「硫黄を含む化合物を含有する廃水の処理方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 5月14日出願公開、特開平 5-115886]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年10月24日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成13年7月10日付手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】硫黄を含む化合物を含有する廃水を、180℃未満の温度かつ該廃水が液相を保持する圧力下に、(a)チタンを含有する酸化物と、(b)マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銅、セリウム、銀、白金、パラジウム、ロジウム、金、イリジウムおよびルテニウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属または金属化合物とを含んでなり、成分(a)75〜99.95重量%および成分(b)25〜0.05重量%(ただし、両者の合計は100重量%である)の組成を有する固体触媒の存在下で分子状酸素により湿式酸化することを特徴とする硫黄を含む化合物を含有する廃水の処理方法。」
2.引用例記載の発明
(1)これに対して、平成13年2月22日付けで通知した拒絶の理由に引用した本件出願前に頒布された刊行物「特公昭63-51730号公報」には、以下の記載がある。
ア-1.「(1)炭化水素油と有機イオウ含有ガスとを接触せしめて有機イオウを炭化水素油中に移行せしめことによりガス中の有機イオウを除去する工程、(2)ガスを該有機イオウ含有炭化水素油と接触せしめて有機イオウを該ガスに移行せしめることにより炭化水素油の再生を行う工程、(3)該再生炭化水素油を前記(1)の工程に循環する工程および、(4)アンモニアを含む廃水を100〜370℃の温度且つ該廃水は液相を保持する圧力を保ちつつ、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金、銅、金及びタングステン並びにこれ等金属の水に不溶性又は難溶性の化合物の1種又は2種以上を有効成分として含む担持触媒の存在下且つ廃水中のアンモニア、有機性物質及び無機物質を分解するに必要な理論量の1〜1.5倍量の酸素を含有するガス及び前記(2)の工程からの高濃度有機イオウ含有ガスの供給下に該廃水をpH8〜11.5で湿式酸化に供するとともに、湿式酸化後の液のpHが約5〜8となる様に湿式酸化反応系にアルカリ物質を供給する工程 を備えたことを特徴とするガス精製及び廃水処理方法。」(特許請求の範囲)
ア-2.「このpH低下は、被処理廃水中のアンモニア成分の窒素への分解、SCN-,S2O3-,SO3--等のSO4--への酸化等によるものである。」(第4頁7欄3〜5行)
ア-3.「湿式酸化反応時の温度は、通常100〜370℃、より好ましくは200〜300℃とする。反応時の温度が高い程、アンモニア、有機性及び無機性含有物の除去率が高まり且つ反応塔内での廃水の滞留時間も短縮されるが、反面に於いて設備費が大となるで、廃水の種類、要求される処理の程度、運転費、設備費等を総合的に考慮して定めれば良い。」(第4頁8欄28〜34行)
ア-4.「コークス炉工場に於いて発生するpH8.5のガス液を空間速度2.0l/hr(空塔基準)としてステンレス鋼(SUS316L)製円筒型反応器最下部に供給する。液の質量速度は、2.82t/m3hrである。一方空気を空間速度35.1l/hr(空塔基準、標準状態換算)として再生塔Bからからの出ガスとともに上記ステンレス鋼製円筒型反応器下部に供給する。該反応器にはチタニア担体にパラジウム2.0重量%を担持させた径5mmの球形触媒が充填されている。反応内部を温度250℃、圧力45kg/cm3Gに保持し、湿式酸化後の液のpHが約7.2となるように貯槽26から48%カ性ソーダ溶液を供給する。」(第7頁13欄29〜41行)
ア-5.「4000時間後の湿式酸化状況は第2表に示す通りである。」(第7頁14欄5〜6行)
ア-6.「第2表」(第7頁14欄)には、湿式処理前廃水、及び処理済水中のH2S,全有機体炭素量(TOC),SCN-,S2O3-,SO3--,SO4-- の量が記載されている。

3.本願発明と刊行物記載の発明との対比、判断
記載ア-1によれば、刊行物には、液相を保持する温度及び圧力で、アンモニア、有機性物資及び無機性物質を含有する廃水を、特定の金属その化合物を含む担持触媒、すなわち固体触媒の存在下に、酸素を含有するガスの供給下に湿式酸化する廃水の処理方法が記載されているといえる。
また、記載ア-4によれば、上記固定触媒として、チタニア担体にパラジウム2.0重量%を担持させた球形触媒を用いることが記載されており、ここでチタニア担体は本願発明における「(a)チタンを含有する酸化物」に相当し、パラジウムは「成分(b)」に例示されている金属であり、その割合が2重量%であるから、本願発明における「成分(a)75〜99.95重量%および成分(b)25〜0.05重量%の組成」を満足する。
さらに、記載ア-2及び記載ア-6の第2表によれば、被処理廃水中には、SCN-,S2O3-,SO3--等の硫黄化合物が含まれ、湿式酸化処理前後の含有量の変化からみて、これ等のイオウ化合物がSO4--に湿式酸化されているものと解される。
したがって、本願発明と刊行物記載の発明とを対比すると、両者は「硫黄を含む化合物を含有する廃水を、該廃水が液相を保持する温度、及び圧力下に、(a)チタンを含有する酸化物と、(b)ロジウムとを含んでなり、成分(a)98重量%および成分(b)2重量%の組成を有する固体触媒の存在下で分子状酸素により湿式酸化することを特徴とする硫黄を含む化合物を含有する廃水の処理方法。」である点で一致するが、刊行物には、湿式酸化を、180℃未満で実際に実施した実施例は記載されていない。
しかしながら、刊行物には記載ア-3にみられるように、刊行物記載の廃水処理方法は100〜370℃の範囲で実施できるのであり、どの程度の温度で実施するかは、記載ア-3に例示されるような種々の条件を総合的に考慮して決めればよいとしているのであるから、刊行物には、湿式酸化反応を100℃から180℃未満の温度で実施することが、実質的に記載されると解するのが相当である。
してみれば、本願発明と刊行物記載の発明の構成に相違点はなく、本願発明は刊行物に記載された発明である。

4.むすび
したがって、本願発明は、、刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-05-14 
結審通知日 2002-05-21 
審決日 2002-06-03 
出願番号 特願平3-277796
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 幹中野 孝一  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 野田 直人
西村 和美
発明の名称 硫黄を含む化合物を含有する廃水の処理方法  

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