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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03H
管理番号 1062099
審判番号 審判1999-16781  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-01-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-10-14 
確定日 2002-07-17 
事件の表示 平成 8年特許願第161534号「IFフィルタ自動整合方式」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 1月16日出願公開、特開平10- 13181]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、平成 8年 6月21日の出願であって、その請求項1、2に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
これに対して、平成14年 1月22日付けで次のとおりの拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

「本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1;特開平6?283967号公報
刊行物2;特開昭61?196633号公報
刊行物3;特開平4?329034号公報
刊行物1には、実施例3、図3、図1に関連した整合回路装置の発明について次の記載がされている。
【0020】・・・受信電界強度表示値(以下RSSIという)・・・
【0022】・・・整合回路2をクリスタルフィルタ1の入力部に接続した場合について説明したが、それをクリスタルフィルタ1の出力部に接続してもよく・・・
【0023】・・・図3はそのような実施例を示すブロック図で、相当部分には図1と同一の符号を付してその説明を省略する。図において、・・・30はこの無 線機29から出力されるRSSIを測定する電圧計であり、31はこの電圧計の 計測値を読み込みながら、生成した設定データをシリアル通信によって順次CPU28に入力するパーソナルコンピュータである。
【0024】次に動作について説明する。この場合、基本的な動作は実施例1の場合と同様である。即ち、CPU28はパーソナルコンピュータ31からシリアル 通信にて入力される設定データを、温度補償部24からの組成データで補正して D/Aコンバータ19の制御を行い、整合回路内の可変容量素子17に対応した制御電圧を印加させる。パーソナルコンピュータ31は出力する設定データを順 次変化させながら、電圧計30の計測した無線機29の受信部より出力されるその時々のRSSIの値を読み込み、このRSSIの値が最大となる設定データをメモリ23に設定値として記憶させる。CPU28は以降、このメモリ23に記憶された設定値を温度補償部24からの補正データで補正してD/Aコンバータ19の制御を行う。
【0025】これにより、整合回路2の整合状態の調整を、キーパッドよりいちいち設定データを入力しながら行わなくとも、自動的に行うことが可能となる。
【0026】・・・無線機のクリスタルフィルタに接続した場合を説明したが、無線機の他の部分の整合に適用してもよく、上記実施例と同様の効果を奏する。・・・」

刊行物2には、無線機を用いたデータ伝送の誤り率評価方法として、PNランダムなデータを発生し、更に伝送前後のデータを比較し誤り率を測定することが示されている(従来の技術の欄参照)。

刊行物3には、受信電界強度の低下が復調ベースバンド信号の符号誤り率に反映されることを利用し、電界強度を検出する方式として、復調されたベースバンド信号の符号誤り率を基に間接的に検出する方式がある旨説明されている【0006】。

【請求項1に係る発明に対して】
本願請求項1に係る発明と刊行物1の前記整合回路装置の発明とを比較する。
刊行物1の発明は、変調信号を送信する送信部、復調信号を得る受信部、IFフィルタ、制御部などの通常の無線機の構成を備え、IFフィルタに少なくとも1つの整合回路2を備えた無線機が想定でき、電圧計30は無線機29の受信部より出力されるその時々のRSSIの値を計測する点を踏まえると、本願請求項1に係る発明の
「 送信部及び受信部と、前記送信部及び前記受信部を制御する無線制御部とを備え、前記受信部にはIFフィルタ及び少なくとも一つの整合回路を有するIFフィルタ部が備えられた無線通信装置において、
前記整合回路はその回路定数が可変であり、前記IFフィルタ部の特性を自動的に調整する際、前記送信部は信号に応じて送信信号を出力し、
前記受信部は受信信号を復調して復調信号を得ており、
前記無線制御部には前記送信部を制御して前記送信信号を前記受信部に前記受信信号として与え前記受信部から前記信号を受けて値に応じて前記整合回路の回路定数を変化させる調整手段が備えられていることを特徴とするIFフィルタ自動整合方式。」
に相当する構成を備えている点で一致し、そして、次の(1)、(2)、(3)の構成を備えていない点で相違している。
[相違点]
(1)送信部が送信信号を出力し、受信部で該送信信号を受ける信号が、本願請求項1に係る発明は、送信部は所定長さの疑似ランダム信号に応じて送信信号を出力し、受信部は該受信信号を復調して復調信号を得ているのに対し、刊行物1の発明は送受信信号の内容について言及されていない点。
(2)調整手段が、受信部から信号を受けて整合回路の回路定数を変化させることに関して、本願請求項1に係る発明は、受信部から復調信号を受けて、前記疑似ランダム信号の位相と前記復調信号の位相との位相差の絶対値の合計を求め該合計値に応じて変化させているのに対し、刊行物1の発明は、受信部より出力されるその時々の電界強度表示値をもとに生成した設定データに基づいて変化させている点。
(3)IFフィルタ部の特性を自動的に調整する際、本願請求項1に係る発明は、通信品質に応じて調整するのに対し、刊行物1の発明は、そのような記載がない点。

前記相違点(1)、(2)、(3)について検討する。
(1)受信電界強度の低下が復調ベースバンド信号の符号誤り率に反映されることを利用し、電界強度を検出する方式として、復調されたベースバンド信号の符号誤り率を基に間接的に検出することができること、及び、PN(疑似)ランダムなデータを発生し、更に伝送前後のデータを比較し誤り率を測定することで評価できることは、刊行物2ないし3に見られるように本願出願前周知の事項である。
この周知の事項は、送信側で所定長の疑似ランダム信号を変調して送信し、受信側で復調して前記疑似ランダム信号を得て、これら送受信前後の疑似ランダム信号を比較して誤り率を検出する技術、つまり、送信部は所定長さの疑似ランダム信号に応じて送信信号を出力し、受信部は該受信信号を復調して復調信号を得る技術を示すから、刊行物1の発明において、送受信信号を疑似ランダム信号に応じたものとすることは、前記周知の事項を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。

(2)電界強度表示値が大きいことは符号誤り率が小さいことに対応する。また、前記周知の事項において、伝送前後のデータを比較し誤り率を測定することから、所定長データの対応部分の送受信号の間で、例えば位相差などの差をとること、誤り率算出過程において、差の絶対値の合計とか差の自乗の合計をとることなどの事項が想到され示されていると言える。
刊行物1の発明において、前記(1)のように送受信信号を疑似ランダム信号に応じたものとした場合に、無線機全体として疑似ランダム信号に応じたものに整合させることは当然の設計であり、したがって、受信部より出力されるその時々の電界強度表示値をもとに生成した設定データに基づいて整合回路の回路定数を変化させるのに代えて、疑似ランダム信号の誤り率に基づいて変化させることとし、変調前信号と復調後の信号の位相差の絶対値の合計を求め該合計値に応じて変化させることは前記周知の事項を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。

(3)疑似ランダムなデータを発生し、伝送前後のデータを比較し誤り率を測定することで通信品質を評価できることも引用例を挙げるまでもなく本願出願前周知の事項であるので、前記(1)、(2)の際に、通信品質に応じて調整するとなすことは当業者が容易になし得ることである。

【請求項2に係る発明に対して】
刊行物1には、整合回路内の可変容量素子17に対応した制御電圧を印加させること、及びRSSIの値が最大(PN誤り率で換言すると誤り率最小に対応する。)となる設定データをメモリ23に記憶し、制御に用いることが記載されており、また、誤り率が最小の時、つまり所定長の送受PN符号当たりの誤り数(合計値)が少ないのが通信品質が良いので、請求項1に記載されたIFフィルタ自動整合方式において、さらに、前記整合回路は電圧に応じてその容量が変化するデバイスを備えており、前記調整手段は前記合計値に応じて前記整合回路に与える電圧値を変化させ前記合計値が最小となる電圧値を前記整合回路に与えるようにすることは、刊行物1の発明において、出願前周知の事項を参酌することにより当業者が容易になし得ることである。」
これに対して、請求人からは何らの応答もない。
そして、上記の拒絶理由は妥当なものと認められるので、本願は、この拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-04-24 
結審通知日 2002-05-10 
審決日 2002-05-29 
出願番号 特願平8-161534
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳重田 尚郎  
特許庁審判長 川名 幹夫
特許庁審判官 石井 茂和
吉見 信明
発明の名称 IFフィルタ自動整合方式  
代理人 福田 修一  
代理人 京本 直樹  
代理人 河合 信明  

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