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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B41F |
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管理番号 | 1062275 |
審判番号 | 審判1999-35722 |
総通号数 | 33 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-12-06 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-12-03 |
確定日 | 2001-02-16 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3000249号発明「両面刷枚葉オフセット印刷機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3000249号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本件発明 本件特許第3000249号の請求項1に係る発明は、平成5年6月25日(優先権主張 平成5年3月24日、平成5年3月30日)に特許出願され、平成11年11月12日にその特許の設定登録がされたものであり、特許明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下、「本件発明」という。) 「紙くわえ爪を設けた圧胴の上部に1個のブランケット胴と1個の版胴及びインキング機構を配置した表面印刷ユニットと、紙くわえ爪を設けた他の圧胴の下部に1個のブランケット胴と1個の版胴及びインキング機構を配置した裏面印刷ユニットとを構成して、これらの両圧胴を水平方向若しくは斜線状に接続させて一単位とした表裏面印刷ユニットとし、この表裏面印刷ユニットの複数単位を水平方向に配列してなり、圧胴径を版胴及びブランケット胴径と同一にしかつ各一単位の表裏面印刷ユニット間に中間胴を介する構成若しくは圧胴径を版胴及びブランケット胴径の倍径にして中間胴を介さない構成にし、圧胴の胴軸心、または圧胴及び中間胴の胴軸心を略直線状又はジクザグ状に連接して、印刷紙の表面と裏面とを交互に印刷することを特徴とする両面刷枚葉オフセット印刷機。」 2.請求人の主張 これに対して、請求人は、本件発明の特許を無効とする、との審決を求めその理由として以下に示す第1乃至第5の無効理由を上げ、その特許は無効にされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証乃至甲第22号証を提出している。 第1の無効理由 特許第3000249号発明の明細書(以下、「本件特許明細書」という)の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という)は、甲第1号証(デイビッド・スコット)及び甲第2号証乃至甲第22号証に示される周知の技術から当業者が容易に発明をすることが出来たものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。 第2の無効理由 本件特許発明は、甲第2号証(ウオルター・スコット)及び甲第1号証、甲第3号証乃至甲第22号証に示される周知の技術から当業者が容易に発明をすることが出来たものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。 第3の無効理由 本件特許発明は、甲第3号証(アルベート&シー)及び甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証乃至甲第22号証に示される周知の技術から当業者が容易に発明をすることが出来たものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。 第4の無効理由 本件特許は、甲第10号証(ファーバー&シュライヒャー)及び甲第1号証乃至甲第9号証及び甲第11号証乃至甲第22号証に示される周知の技術から当業者が容易に発明をすることが出来たものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。 第5の無効理由 本件特許は、甲第17号証(小森2)と甲第3号証(アルベート&シー)に記載された発明、及び甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、甲第7号証、甲第10号証乃至甲第12号証、甲第15号証乃至甲第20号証に示される周知の技術から当業者が容易に発明をすることが出来たものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。 3.被請求人の主張 被請求人は、請求人が主張する無効理由は全て理由がないものであり、本件審判請求は成り立たない、と主張している。 4.甲各号証記載の発明 [甲第1号証:米国特許第1,282,642号明細書] 被請求人は甲第1号証には、添付の翻訳文の記載内容が記載されていることについて、「列を乱して」より「列を外れて」の方が適当とする以外、特に争っていないし、当審においても適切な翻訳文であると考えるので、甲第1号証に記載された技術の認定を、添付の翻訳文において「列を乱して」を「列を外れて」とした上でそれによって行うこととする。 a)本発明は一般に両面オフセット印刷機に関するものであり、より詳細に言えば、印刷ユニットおよびそれらを構成する要素の一般的配列に関するものである。 本出願は、1915年4月2日に出願された出願18639号の分割出願であり、その主要な目的は、オフセット方法によってかつ高級な結果を得るために必要とされる要素を省略することなしにシートの両面が印刷され;しかも、胴の配置がすべての作動部品に完全に接近可能・・・であるようにされている機械を提供することにある。本発明の他の目的は、印刷機を構成する様々な機器を都合よく制御するための手段を提供することにある。(翻訳文第1頁第9〜16行) b)本機械は二つのユニットよりなり、一方のユニットは圧胴E、トランスファーまたはブランケット胴C、および版胴・・・Aよりなり、他方のユニットは圧胴F,トランスファーまたはブランケット胴D、および版胴Bよりなる。各ユニットの版胴およびトランスファー胴は、その機械に対し露出された操作面・・・を形成するように、一方が他方の上方に配置され、そしてこれらユニットはその露出された操作面が最外方であるようにグループされる。・・・その版胴に関連して通常のインキング機構Oがあり、もし作業の性質により要求されるときは、湿し機構Nを使用してもよい。・・・一方、第2図において、ウェブは切断胴Mへ搬送されるが、切断胴Mはオールサイズ回転カッターとして知られた形式のものでよく、そこから、シートパスM1上を送り胴・・・M2へ送られ、その後、シートは第1の圧胴Eを通過しついで第2の圧胴Fを通過する。(翻訳文第1頁下から4〜2頁19行) c)シートの印刷された側が第2の圧胴表面を染みで汚す(smutting)のを防止するために汚れ防止装置(anti-smutting device)37が設けられ、それは第2の圧胴の表面と係合し、(翻訳文第2頁下から3行〜末行) d)特許請求の範囲 1.両面オフセット輪転印刷機において: 複数の陽画の版・・・から刷り受取材料の両面・・・上に印刷する二つのユニットを備え、各ユニットは、一つの版胴、一つのトランスファー胴および一つの圧胴よりなり、一方のユニットの前記版胴およびトランスファー胴は一つの垂直コラム内に前記版胴が最上方にあるよう配置され、前記圧胴はユニットの露出された操作面を形成するために他の胴から列を外れてかつ最下方にあるように配置されており、他方のユニットの前記版胴およびトランスファー胴は、垂直コラム内に前記版胴が最下方にあるよう配列され、前記圧胴は露出された操作面を形成するために他の胴から列を外れてかつ最上方にあるように配列されており、それらユニットは、それらの操作面が最外方にくるようにかつ前記圧胴同士が互いに隣接するするようにグループされていることを特徴とする両面オフセット輪転印刷機。(翻訳文第3頁17〜28行) 甲第1号証の記載を対比のためにまとめると、 ア)上記d)の記載の「一方のユニットの前記版胴およびトランスファー胴は一つの垂直コラム内に前記版胴が最上方にあるよう配置され、前記圧胴はユニットの露出された操作面を形成するために他の胴から列を外れてかつ最下方にあるように配置されており、他方のユニットの前記版胴およびトランスファー胴は、垂直コラム内に前記版胴が最下方にあるよう配列され、前記圧胴は露出された操作面を形成するために他の胴から列を外れてかつ最上方にあるように配列されており」は、言い換えると、一方のユニットの版胴およびトランスファー胴(ブランケット胴)は一列とはなっていないものの圧胴の上方に配列され、他方のユニットにおいては圧胴の下方に配列されているということができ、 イ)Fig2に記載された例において、ロール紙は切断胴Mによって切断され、枚葉紙と同視できるシートとして印刷機に供給されているということができ、 以上のこと及びFig2の記載からみて、甲第1号証には、次のような発明が記載されている。 「圧胴の下方に1個のブランケット胴と1個の版胴及びインキング機構を配置した一方面印刷ユニットと、圧胴の上方に1個のブランケット胴と1個の版胴及びインキング機構を配置した他方面印刷ユニットとを構成して、これらの両圧胴を水平方向に接続させてなり、圧胴径を版胴及びブランケット胴径と同一にし、圧胴の胴軸心を略直線状に連接して、印刷紙の表面と裏面とを交互に印刷することを特徴とする両面刷枚葉オフセット印刷機。」 [甲第2号証(米国特許第511,095号明細書)] 甲第1号証と同様に添付の翻訳文で認定する。 a)本発明は印刷機械に関するものであり、以下に説明されかつこの明細書を完結する特許請求の範囲中でより詳細に指摘された装置の組合わせよりなる。 本発明の目的は一方の面上に一色あるいはそれ以上の色で、そして他方の面上に複数の色でシートを印刷することにあり;そしてまた、シートを収集しそれらをデリバリー(排紙)するすることにあり、他の目的は以下で明らかとなろう。(翻訳文第1頁第9〜15行) b)本出願人によって使用される印刷機構は、その複数の圧胴が一列になるよう配置された三つあるいはそれ以上の印刷対・・・よりなり、それら版胴は該列の両側に交互に配置される。各版胴は、如何なる適切なあるいは通常のインキング装置によってインキ着けされる;そのようなインキング装置は如何なる通常の形態であってもよいのでこれ以上は説明しない。列のそれぞれの側にあるそれら版胴・・・は、シートが機械を通過するにつれ、シートのそれらの面上に異なる色を印刷する。圧胴は複数のピンあるいは爪のような如何なる適切な複数の紙保持器を備える。シートは、一つのフィードテーブルからあるいは一つのロールおよび複数の切断胴から行われるように、端部圧胴のうちの一つへ如何なる望ましい方法によって送られてもよい。(翻訳文第1頁下から8行〜第2頁第4行) c)図面において、複数の圧胴の軸は水平面内にあるいはほぼ水平面内にあり、そして複数の端部版胴・・・は、該端部版胴の軸と圧胴の軸を結合する面が、それら圧胴の軸同士の面と鋭角を形成するように、端部版胴の対応する圧胴に対して相対的に置かれるということが分かる。本出願人はこの角度は約四十五度とするのが好ましいと思う。また、該端部版胴のインキ練胴D、D1 は該版胴より下に置かれるということが分かるであろう。この構成によって各版胴の一方の側に自由な空間が得られ、それによって版を容易に取り付けあるいは取り外すことができ、そして機械の如何なる部品も取り外すことなく修理が行われる。(翻訳文第3頁第4〜18行) d)特許請求の範囲 1.組合わせにおいて、一列に設けられた三つあるいはそれ以上の圧胴と、各圧胴上の複数のシート保持器と、各圧胴に対する一つの版胴であって複数の版胴が該列の反対側に交互に位置されてなる版胴と、前記複数の圧胴のうち第1の圧胴に複数のシートを供給する手段とから成り、それによってシートが一方の面で一色あるいはそれ以上の色で印刷され、かつ他方の面で複数の色で印刷されることを特徴とする、実質的に記載したような組合わせ。 2.組合わせにおいて、一列に設けられた三つあるいはそれ以上の圧胴と、各圧胴上の複数のシート保持器と、各圧胴に対する一つの版胴であって複数の版胴が該列の反対側に交互に位置されかつその端部版胴は該列と鋭角に置かれてなる版胴と、前記複数の圧胴のうち第1の圧胴に複数のシートを供給する手段とから成り、それによって複数のシートが記載したように印刷され、そして前記複数の版胴が容易に接近可能であることを特徴とする、実質的に記載したような組合わせ。(翻訳文第9頁第10〜24行) [甲第4号証:特開昭58-147364号公報] a)1.少なくともそれぞれ1つの圧胴とゴム胴と版胴とインキ機構と湿し機構とを備えかつそれぞれ同じ構成ユニットとして構成された複数の印刷機構を有する枚葉紙オフセット輪転印刷機であって、各ゴム胴の軸線が一平面内にあり、各圧胴の軸線が前記ゴム胴の軸線を含む平面に対して平行な別の一平面内に配置されている形式のものにおいて、ゴム胴(17,18,19,20;59,60,61,62)及び圧胴(21,22,23;63,64,65,66)が互いに接してそれぞれ一列に配置されており、各印刷ユニットのそれぞれ1つの圧胴が順次に隣接する印刷ユニットのゴム胴に接触せしめられており、ゴム胴の軸線と圧胴の軸線との間の結合線がジグザグ線(C)を形成しており、この結合線が70Oから175Oまでの角度(α)で互いに傾けられており、前記各ゴム胴と圧胴とにグリッパが設けられていることを特徴とする、枚葉紙オフセット輪転印刷機。(公報第1頁、特許請求の範囲の1の項) b)本発明の構成を使用すれば単に必要とされる構成部材の数を減少させることができるばかりではなく、この印刷機全体の組立て長さをも短縮することができる。それにも関わらず表印刷機構において施されるインキ数を任意に変える印刷機の改造可能性は全く損なわれない。さらに本発明による構成では同様に最小数の構成部材を用いて極めて簡単な形式で、単数または複数の表印刷ユニットに対して裏印刷ユニットを設けることができるというもう1つの著しい利点が得られる。(公報第2頁右下欄末行〜第3頁左上欄第10行) c)インキ機構、湿し機構及び版胴に対する接近性と印刷機全体の組立て長さは、版胴、ゴム胴、圧胴の直径の大きさによって決定される。原則的には各印刷機構の3つの胴の大きさを等しく設計し、外周面に版板を張設できるように版胴の直径を選んでおくことができる。この構造は紙判の小さい幅の狭い印刷機が対象となる。印刷機全体の組立て長さの短縮化と構成部材に対する接近至便性とに対する2つの相反する要求に申分なく応える構造は第1図に示されている。この構造においてはゴム胴17、18、19、20の直径と圧胴21、22、23の直径とには版胴13、14、15、16の直径の2倍になるような大きさが選ばれている。当然ながらこの構造においてはゴム胴か圧胴のどちらか一方だけを直径が版胴及び第3の胴の直径の整数倍になるように構成しておくこともできる。(公報第3頁右下欄第1〜18行) d)第2図に示された実施例においても同様に構成ユニットとして構成された表印刷機構51、52、52、54が設けられており、これらは第1図に示された印刷機の表印刷機構1、2、3、4と同じ形式で構成されている。これらの表印刷機構の下方には4つの裏印刷ユニット55、56、57、58が設けられており、これらは第1図に示された裏印刷ユニット32と同様に構成されている。表印刷機構51、52、52、54の各ゴム胴59、60、61、62は圧胴63、64、65、66と協働する。これらの圧胴はどれもゴムブランケットが張られて裏印刷ユニットのゴム胴として使用される。ゴム胴59、60、61、62、圧胴63、64、65、66には全てグリッパが設けられている。(公報第4頁左下欄11〜右下欄5行) e)さらにこの形式の印刷機は表印刷機構で施されるインキ数と同数になるまでは裏印刷ユニットを加えて印刷様式を改造することができる。(公報第5頁右上欄第3〜6行) [甲第5号証:新版印刷事典 日本印刷学会編 昭和50年9月1日発行] 甲第5号証には、次の用語説明が記載されている。 輪転機のうちの,一まとめの印刷装置を示す単位。ユニットを2台以上連結して一組の印刷機械を構成する。たとえば,タンデム型の枚葉紙オフセット印刷機・グラビア輪転機では,1色分の一まとめの印刷装置を1ユニットといい,同時刷り式の両面オフセット輪転機・新聞輪転機では1色両面分の一まとめの印刷装置を1ユニットとするのが一般的である。 b)ユニットがた ―型 unit type 印刷装置のユニットをいくつか連結して多色機にした型。水平に直列に連結したタンデム型と,上下に連結したデッキ型とに区別する。しかし,デッキ型は現在では実用されることが少ないので,ユニット型といえばタンデム型を指すことが多い。」(第402頁) [甲第6号証(オフセット印刷機 著者代表高柳茂直 昭和61年2月25日発行)] a)図2.5.2〜図2.5.3は、中間胴で、ユニット間を連結した構造のものである。図2.5.4は、1-2色、3-4色は共通圧胴とし、それら共通圧胴の間を、チェーン搬送装置で、連結した構造のものである。(第74頁第3〜5行) [甲第7号証(印刷技術一般(改訂版) 印刷技術一般刊行会編 昭和50年12月15日発行)] a)四色刷オフセット印刷機 2色以上の多色刷を行なうためにはわが国ではユニット型のものが多く用いられる。すなわち1ユニットで1色を刷る機構のものを2基または4基と連結して順次に紙を通して2色または4色の印刷をする。第III.2.101図はその例で各印刷装置の間には3個の紙移し胴を用い、爪のくわえかえによって紙がはこばれる。(第375頁第6〜9行) b)第III.2.101図には、圧胴径をゴム胴及び版胴径と同一にし、中間胴を介してユニットを連結する四色刷オフセット印刷機が図示されている。 [甲第9号証(平版印刷技術-知識と実務- 平版印刷技術編纂委員会編 昭和54年5月30日発行)] a)1.枚葉多色オフセット印刷機 枚葉紙を1回の紙通しで2色以上の印刷物を印刷する機械である。印刷部をユニット化することにより、共通部品で製作でき、製品コストが安くなる、必要な胴数(色数)により印刷ユニットの増減が可能である、色ユニット間にスペースが取れるので、操作性が良い、などの利点が生まれることから、ユニット形式の2色機、4色機が一般的である。ユニット間の紙の搬送方式、渡し胴の配置、胴の大きさの違いによりいろいろの種類がある。 (1)渡し胴3胴型 ユニットの圧胴間の渡し胴は1本または3本の奇数本でなければならず、同径の渡し胴3本で紙を搬送する方法で,爪のくわえ替え回数が多いので精密な印刷の場合には,見当ての狂うおそれがある。しかし,ユニット間スペースが広くなるのでユニット間の作業がしやすい利点がある。この種の印刷機にはM.A.N.などがある。(図23.1)(第283頁左欄下から3行〜右欄末行) b)図23.1には、圧胴径をブランケット胴及び版胴径と同一にし、中間胴を介してユニットを連結する渡し3胴型が図示されている。 [甲第15号証:特公平3-21346号公報] a)横に並べて配列した直径の等しい版胴とゴム胴2対を上下2段に間隔をおいて配置するとともにこれ等胴の3倍直径からなりかつくわえ爪を具備した圧胴を前記上下両ゴム胴に共通の圧胴として連接させてなる5胴型の枚葉紙2色刷り印刷ユニットであって、前記圧胴に対する前記の版胴及びゴム胴の関係位置が左右勝手違いにになるように配置したものを各2組ずつ設け、しかして、上記勝手違い印刷ユニットを上下方向に交互に配置してその圧胴軸心を結ぶ直線がジグザグ状を呈するように各圧胴を連接した胴配列構造を有し、その最下方に位置する前記圧胴には枚葉紙を供給するための給紙装置が、そしてさらに、最上位の圧胴には排紙装置がそれぞれ連結されていることを特徴とする両面4色刷りオフセット印刷機(公報第1頁1欄 特許請求の範囲) b)また、前記の構成にしたとき、版胴周面間の距離も30cm程あるので、作業に支障をきたすことはない。(公報第4頁7欄第5〜7行) c)B-Bタイプの両面刷り印刷機と異なり、ブランケット間の印刷ではなく、いわば版・ゴム・圧の3胴式のものであるからB-Bタイプに比較してツブレの良いシャープな印刷が可能である。(公報第4頁第8欄第25〜29行) 5.対比 ここでは請求人の主張する無効理由1について検討する。 本件発明を甲第1号証記載の発明と対比すると、 a)甲第1号証記載の発明の「一方面印刷ユニット」、「他方面印刷ユニット」と本件発明の「表面印刷ユニット」、「裏面印刷ユニット」とは、「一方面印刷ユニット」、「他方面印刷ユニット」である点で共通し、 b)甲第1号証記載の発明の「圧胴の下方に1個のブランケット胴と1個の版胴及びインキング機構を配置」、及び、「圧胴の上方に1個のブランケット胴と1個の版胴及びインキング機構を配置」と、本件発明の「圧胴の上部に1個のブランケット胴と1個の版胴及びインキング機構を配置」、及び、「圧胴の下部に1個のブランケット胴と1個の版胴及びインキング機構を配置」は、「圧胴の下方に1個のブランケット胴と1個の版胴及びインキング機構を配置」、及び、「圧胴の上方に1個のブランケット胴と1個の版胴及びインキング機構を配置」した点で共通し、 以上のことから両者間には次のような一致点、相違点がある。 (一致点) 圧胴の上方に1個のブランケット胴と1個の版胴及びインキング機構を配置した一方面印刷ユニットと、他の圧胴の下方に1個のブランケット胴と1個の版胴及びインキング機構を配置した他方面印刷ユニットとを構成して、これらの両圧胴を圧胴の胴軸心を水平方向に略直線状に接続させた両面刷枚葉オフセット印刷機。 (相違点) (1)本件発明の圧胴が紙くわえ爪を設けているのに対して、甲第1号証記載の発明は、その点について言及していない点。 (2)「一方面印刷ユニット」、「他方面印刷ユニット」を、本件発明がそれぞれ「表面印刷ユニット」、「裏面印刷ユニット」としているのに対して、甲第1号証記載の発明では特に表裏面いずれの印刷ユニットであるか限定していない点 (3)本件発明が、表面印刷ユニットと裏面印刷ユニットを圧胴同志で接続したものを一単位とした表裏面印刷ユニットの複数単位を水平方向に配列したものであるのに対して、甲第1号証記載の発明は表面印刷ユニットと裏面印刷ユニットを圧胴同志で接続して水平方向に配列したものである点 (4)ユニットを連結する構成として、本件発明が「圧胴の上部あるいは下部に版胴やインキング機構を配置するとともに、圧胴径を版胴及びブランケット胴径と同一にしかつ各一単位の表裏面印刷ユニット間に中間胴を介する構成若しくは圧胴径を版胴及びブランケット胴径の倍径にして中間胴を介さない構成にし、圧胴の胴軸心、または圧胴及び中間胴の胴軸心を略直線状又はジクザグ状に連接」しているのに対して、甲第1号証記載の発明は圧胴の上方あるいは下方に版胴やインキング機構を配置するとともに、圧胴径を版胴及びブランケット胴径と同一とし、両圧胴を圧胴の胴軸心を水平方向に略直線状に接続させている点。 6.当審の判断 まず、判断に引用する各甲号証の「ゴム胴」は本件発明の「ブランケット胴」に相当する。 相違点(1)に関しては、枚葉紙の印刷機である甲第2号証や甲第15号証に圧胴に紙くわえ爪を設ける点が記載されており、本件発明が枚葉紙の印刷機である以上、圧胴に紙くわえ爪を設けることは当業者が容易に考えつくことである。 相違点(2)については、表面と裏面は相対的なものであり、いずれのユニットを表面印刷あるいは裏面印刷とするかは設計上任意に選択可能であるから、この点は当業者が容易に考えつくことができた構成の変更である。 相違点(3)について検討する。 甲第1号証記載の発明も表面印刷ユニットと裏面印刷ユニットを圧胴同志で接続して一組の両面オフセット印刷機を構成したものである。 甲第5号証には、「ユニット ユニットを2台以上連結して一組の印刷機械を構成する。・・・同時刷り式の両面オフセット輪転機・新聞輪転機では1色両面分の一まとめの印刷装置を1ユニットとするのが一般的である。」、「ユニット型 印刷装置のユニットをいくつか連結して多色機にした型。水平に直列に連結したタンデム型と、上下に連結したデッキ型とに区別する。」とあり、同時刷り式の両面オフセット輪転機では1色両面分の一まとめの印刷装置を1ユニットとし、それを2台以上連結して一組の印刷機械を構成することが示唆されている。 甲第2号証には、表印刷ユニットと裏印刷ユニットを交互に圧胴によって連接した直刷両面印刷機が記載され、甲第4号証の特にFig2には、表印刷ユニットと裏印刷ユニットを交互に連接したいわゆるB-B式オフセット印刷機が記載され、特にFig2の実施例の場合は、表面印刷ユニットと裏面印刷ユニットを連結したものを一単位とした表裏面印刷ユニットの複数単位を水平方向に配列したものともみることもでき、甲第15号証には、2色刷り表印刷ユニットと2色刷り裏印刷ユニットを交互に連接した、デッキ型の両面オフセット印刷機が記載されている。 これらの印刷機は、各種タイプの印刷機において、甲第5号証に記載されているようにユニットを2台以上連結して一組の印刷機械を構成した例であるとみることができ、これ等の公知技術からみて、甲第1号証記載の表面印刷ユニットと裏面印刷ユニットからなる両面オフセット印刷機を一ユニットとし、それを複数連結して一組の両面枚葉紙オフセット印刷機とすることは当業者が容易に考えつくことができたことである。 ところで、甲第2号証記載の発明は直刷両面印刷機である点で、甲第4号証記載の発明はB-B式両面印刷機である点で、甲第15号証記載の発明は1ユニットで2色印刷するデッキ型印刷機である点で、甲第1号証のような表面裏面を交互に印刷する両面オフセット印刷機とは形式が異なる。しかし、それらの印刷機の形式の違いがあっても、ユニットを複数連結して一組の印刷機械を構成するという技術思想を提供するものである点では共通しており、むしろ印刷機の形式を問わずユニットを複数連結して一組の印刷機械を構成することが公知技術であることを示すものであり、上記印刷機の形式の違いが、甲第1号証記載の発明に対してユニットを複数連結して一組の印刷機械を構成するという技術思想を適用することに対し阻害要因とはならない。 相違点(4)について検討する。 まず、甲第1号証記載の発明において「各ユニットの版胴およびトランスファー胴は、その機械に対し露出された操作面・・・を形成するように、一方が他方の上方に配置され、そしてこれらユニットはその露出された操作面が最外方であるようにグループされる。二つのユニットの圧胴は機械の最内方に位置され、それら圧胴がお互いに接触している。一方のユニットでは版胴Aがユニットの上方端部に、圧胴Eがユニットの下方端部にあるのに対し、他方のユニットでは版胴がユニットの下方端部に、圧胴Fがユニットの上方端部にある。」とあるように、ユニットを連結するに際して、各ユニットへの操作空間を確保することが必要なことが示唆されている。 また、甲第9号証において「印刷部をユニット化することにより、共通部品で製作でき、製品コストが安くなる、必要な胴数(色数)により印刷ユニットの増減が可能である、色ユニット間にスペースが取れるので、操作性が良い、などの利点が生まれる」とあるようにユニットを複数連接するに当たって、ユニット間に操作スペースを確保することが必要なことが示唆されている。 甲第4号証には、「印刷機全体の組立て長さの短縮化と構成部材に対する接近至便性とに対する2つの相反する要求に申分なく応える構造は第1図に示されている。この構造においてはゴム胴・・・の直径と圧胴・・・の直径とには版胴・・・の直径の2倍になるような大きさが選ばれている。」とあり、このことは第2図に示された例においても同じであり、接近至便性のための連結構造として、ユニットを連接するための各印刷ユニットのゴム胴や圧胴の径を版胴の倍径とし、表印刷ユニットと裏印刷ユニットをゴム胴をその胴軸心がジグザグ状となるように連接するとともに、版胴やインキング装置をゴム胴の上部ほぼ真上あるいは下部ほぼ真下に配置したB-B式両面オフセット印刷機が記載され、甲第15号証には、各印刷ユニットの圧胴の径をブランケット胴や版胴の径の3倍径とし、表印刷ユニットと裏印刷ユニットを圧胴をその胴軸心がジグザグ状となるように連接するとともに、ゴム胴、版胴、インキング装置を圧胴の真横に配置したデッキ型の両面オフセット印刷機が記載され、さらにこのように構成すると版胴間に作業に支障をきたさない空間が形成されることが記載され、甲第7、9号証には圧胴径をゴム胴や版胴と同径にするとともに、各ユニット間を中間胴で連結した多色刷り片面オフセット印刷機が記載され、特に9号証にはユニット間スペースが広くなり作業がしやすくなる旨が記載されている。 これらの印刷機は上で述べたように印刷機の形式が甲第1号証記載の発明とは異なるが、ユニットを複数連結するに当たって、連結のための胴の径を他の胴の径の倍径あるいは3倍径にしてユニット間の操作スペースを確保するとか、各胴径は同じにして中間胴を介在させることによってユニット間の操作スペースを確保する技術思想を示唆するものである点では共通しており、また、ユニットを複数連結した構成にあって、ゴム胴や版胴を圧胴の上部あるいは下部に配置することを示唆するものである点で共通しており、むしろ印刷機の形式を問わずユニットを複数連結する場合、連結のための圧胴の径を版胴などの倍径とすることや、胴径を同じにして中間胴で連結することを示唆するものであるし、またゴム胴や版胴を圧胴の上部あるいは下部に配置することを示唆するものである。 このことから、甲第1号証記載の発明のような表面印刷ユニットと裏面印刷ユニットからなる両面オフセット印刷ユニットを複数連結して一組の印刷機械を構成するに際して、各ユニット間の連結のための構成を「圧胴径を版胴及びブランケット胴径と同一にしかつ各一単位の表裏面印刷ユニット間に中間胴を介する構成若しくは圧胴径を版胴及びブランケット胴径の倍径にして中間胴を介さない構成にし、圧胴の胴軸心、または圧胴及び中間胴の胴軸心を略直線状又はジクザグ状に連接しているとともに、圧胴の上部あるいは下部に版胴やインキング機構を配置」することは当業者が容易に考えつくことができた構成の変更である。 7.被請求人の主張に対する見解 平成12年9月21日に行われた口頭審理において陳述した内容を記述した平成12年8月31日付け口頭審理陳述要領書において、被請求人は特にオフセット印刷機に於ける表裏面印刷ユニットを複数水平方向に連結することの困難性、および阻害要因と本件特許発明による阻害要因の解決について述べているので、それを検討する。 A.困難性、および阻害要因 (1)甲第1号証の構成は表1色、裏1色印刷機で、連結の示唆がないことは勿論、両圧胴とトランスファー胴は「横」に並んでいるものであり、表裏面印刷ユニットの接続に致命的な問題を含み、その連結を否定する機械構成である。従って、甲第1号証の構成は、表裏面単色印刷機であり、圧胴隣接のタイプではあるが、自己完結単色印刷機であり、その連結を可能とする表裏面印刷ユニットとは異質の印刷機である。 甲第1号証の両面単色印刷機を、何の知識もなく、甲第5号証乃至9号証の片面タンデムにより、当業者が容易に連接できる技術とすることは無理である。 (2)反転式両面印刷機での両面印刷の場合品質が低下することは当業者ならば常識であり、ましてや本件特許発明のように圧胴が隣接している場合はさらに地汚れやオフセットダブリなどの品質低下が起こる。 片面でも裏移りが起こるのに、本件特許発明のように両面刷りの連接はより重い裏移りになると考えるのが常識であり、この常識を破る新たな知識や発想は出なかった。 (3)印刷ユニットを水平に連結するタンデム型は、本件特許出願当時、圧胴を使用するタイプは片面印刷機、反転式両面印刷機のみであった。したがって、タンデム型の多色両面印刷機で非反転式のものは提案もされておらず、勿論、実際の機械は全く存在しなかったのである。 (4)従来、圧胴の上部又は横方向にブランケット胴、版胴、インキング装置を設けた印刷ユニットは存在したが、圧胴の下部にこれらを設けて実際に使用した例はない。B-B方式のウェブ印刷機の場合にはユニット間にスペースがとれるため、印刷機間で作業ができるが、枚葉印刷機では困難であった。 (5)片面印刷機や反転式両面印刷機の場合、印刷が紙の片面に連続して行われるため、紙が同一方向に丸められるのでカールしやすい。 (6)圧胴間に形成されなければならぬ隙間によって圧胴の数を増やせば増やすほど機械のガタは拡大し、印刷障害は大となるのである。表裏面印刷ユニットの複数連結を為し得なかった理由の一つである。 B.本件特許発明による解決 (1)本発明者等は、表面印刷と裏面印刷の平均化印刷の方法として表面印刷と裏面印刷のサイクルの短縮化を考えた。表裏面品質の平均化とサイクルの短縮化の考えがない限り、複数交互印刷の着想は出てこない。 (2)表裏面印刷ユニットの複数の連結によって、交互印刷することにより、従来考えられていたよりも大きくインキの動きが逆転移することが解りインキの改良と相俟って、これにより良好な紙面印刷を得たのである。このインキの逆転移という新知見を基に各種工夫により、世界ではじめて交互に表裏面印刷機を配す複数連結の新しい成果が得られたのである。 (3)印刷ユニットが交互に複数連接され、印刷面の両面とも圧胴、ブランケット胴間にて押圧される回数が多いため、印刷されたインクに対する印圧が多く加えられ、所謂インキのレベリングが良好になり易く、続く圧胴への付着が制約される。又、交互両面刷りの場合、時間の経過がなく略同時に両面印刷されるため、表裏の用紙へのインキの吸収性の違いは発生し難い。 (4)交互印刷により表裏面が時間差が少なく同時的に印刷されるため、且又ブランケット胴への通過による表カール裏カールが繰り返されるため、紙は矯正される。 (5)作業性については表裏面印刷ユニットの接続する圧胴を倍径にするか、同径の場合中間胴を設けることにより、単なる印刷ユニットの連結手段だけでなく、作業スペースの確保のためにその構成を使用することにより、圧胴下部での作業が世界で初めて可能になった。 (6)本件特許発明に於いても圧胴間の隙間は存在するが、この問題の解決にはギアの芯間の設定を変え、ギアを転位させることにより、ギア間に隙間のないように形成し、ガタのない騒音のない機構としたのである。 C.当審の見解 [阻害要因] (1)については、甲第1号証記載の発明は被請求人の主張するように単色印刷機であって、これを複数連結することを予定する構成にはなっていない。しかし、甲第1号証記載の発明においても、圧胴はブランケット胴や版胴と一列にはなっていないものの、圧胴が最上方あるいは最下方にあるように配列されているとあることから、接続を否定するような致命的な問題を含む構成となっているとはいえないし、甲第2、4、15号証には、両面印刷機においてもユニットを連接したものが示されていることから、この点での被請求人の主張は採用できない。 (2)については、まず、甲第1号証においても「シートの印刷された側が第2の圧胴表面を染みで汚すのを防止するための汚れ防止装置37」を設けて非反転式両面印刷機の問題点を解消しようとするものであり、常識を破る新しい発想がなかったとすることはできない。 そして、甲第15号証に非反転式両面多色印刷機が記載されており、両面刷りを連接するという発想もあり、この点での被請求人の主張は採用できない。 なお、甲第15号証の非反転式両面多色印刷機はデッキ型であるし、2色ずつ印刷するものであるから、甲第1号証記載の発明とは印刷機の形式が異なり連接を示唆しないと主張するかもしれないが、デッキ型とタンデム型はともに周知であって連接の方向が違うだけであるし、2色ずつ印刷するものであるけれども、表面印刷ユニットと裏面印刷ユニットを連接して両面印刷機とする点では共通しており、甲第1号証記載の発明を一単位の表裏面印刷ユニットとし、それを複数連結して一組の印刷機械を構成することに関して、上記印刷形式の違いが阻害要因とはならない。 (3)については、甲第15号証には非反転式両面多色印刷機が記載されており、タンデム型とデッキ型はともに周知であって連接の方向が違うだけであるから、タンデム型の多色両面印刷機で非反転式のものが提案されていないからといって、そのことが甲第1号証記載の発明を一単位の表裏面印刷ユニットとし、それを複数連結して一組の印刷機械を構成することに関して、阻害要因とはならないから、この点での被請求人の主張は採用できない。 (4)については、圧胴の下方にブランケット胴、版胴、インキング装置を設ける点が甲第1号証に記載されているし、甲第4号証にも版胴やインキング装置を圧胴の下方に設ける点が記載されているから、実機はなかったかもしれないが、版胴やインキング機構を圧胴の下部に配置するという技術思想は従来あった。また、B-B方式のウェブ印刷機の場合にはユニット間にスペースがとれるため、印刷機間で作業ができるが、枚葉印刷機では困難であったと主張しているが、甲第4号証のいわゆるB-B式のオフセット印刷機も枚葉紙用印刷機であり、作業空間に関しては本件発明と基本的に同じであり、その主張の理由が不明である。 したがって、この点での被請求人の主張は採用できない。 (5)については、片面印刷機や反転式印刷機との比較であり、両面印刷機や非反転式両面印刷機が甲第2、4、15号証に記載されているように公知であり、これらはカールの問題に関しては交互印刷によって解消しているものであり、この点での被請求人の主張は採用できない。 (6)については、この点も理由の一つとしてタンデム型非反転式両面多色印刷機の実機がなかったといえるとしても、その点については本件発明とは関係のない構成であり、本件発明とは関係のない点で解消されていない問題点があったからといって、タンデム型非反転式両面多色印刷機を構成することが困難であったとすることはできないから、この点での被請求人の主張は採用できない。 [本件発明による解決] (1)については、表裏面印刷機において、表印刷と裏印刷を1色ずつ交互に行うことは甲第1、2号証に記載されており、この点が新規な発想に基づく解決方法ということはできない。 (2)については、インキの逆転移は甲第1、2、4、15号証においても同様に起こりうることであり、この点が新規な発想に基づく解決方法ということはできないし、インキの逆転移を積極的に利用することが、本件発明によって実現できるようになったのか、あるいはインクの材質や圧胴表面層の構造など本件発明とは関わりのないところで実現できるようになったのか本件発明の明細書の記載からは理解できない。 (3)については、インクレベリングは連接する個数を増やせばその属性としてインクレベリングが良好になるものであり、格別の作用効果とはいえないし、インキの吸収性の違いが発生しない点に関しても甲第2、4号証においても同様の作用効果を有するから、この点が新規な発想に基づく解決方法ということはできない。 (4)については、上の阻害要因に対する当審の見解の(5)で述べたとおり、この点が新規な発想に基づく解決方法ということはできない。 (5)については、ユニットの連接に当たって圧胴径を倍にしたり、中間胴を設けることは甲第4、7、9、15号証に記載されており、この点が新規な発想に基づく解決方法ということはできない。 (6)については、本件発明が圧胴間の隙間を調整する点を構成の一部としていない以上、本件発明がこの点が新規な発想に基づく解決方法ということはできない。 8.むすび 以上のとおりであるから、本件発明は、甲第1、2、4乃至7、9、15号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、他の無効理由について検討するまでもなく、請求人が主張する無効理由1によって無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-11-22 |
結審通知日 | 2000-12-05 |
審決日 | 2000-12-25 |
出願番号 | 特願平5-155124 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
Z
(B41F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 國田 正久 |
特許庁審判長 |
石川 昇治 |
特許庁審判官 |
小沢 和英 砂川 克 |
登録日 | 1999-11-12 |
登録番号 | 特許第3000249号(P3000249) |
発明の名称 | 両面刷枚葉オフセット印刷機 |
代理人 | 杉山 真一 |
代理人 | 高橋 三雄 |
代理人 | 鈴木 きほ |
代理人 | 鈴木 和夫 |
代理人 | 土橋 皓 |
代理人 | 黒田 健二 |
代理人 | 松本 孝 |